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養蜂家の青年は、蜜薬師の娘と一緒に薬用クリームを作る
养蜂青年和蜜药师的女儿一起制作药用奶油
帰宅後、アニャが俺の顔の傷や腫れを改めて確認したいという。
回家后,阿尼亚说想再次确认我脸上的伤和肿。
アニャはじっと、覗き込んでくる。きれいな顔が接近したので、身を引いてしまった。
阿尼亚一动不动地窥视着。因为漂亮的脸接近了,所以抽身了。
よく見えないから、動くなと怒られる。
因为看不清楚,所以被骂不要动。
見えなければいいのだと思い、瞼を閉じた。
我想如果看不见就好了,闭上了眼睛。
「うん。だいぶいいわね。近いうちに、腫れも完全に引くと思うわ」
“嗯,很好。我想不久之后,肿也会完全消退的。”
「アニャのおかげだ」
“多亏了阿尼亚。”
「まあ、私は蜜薬師ですから」
“嗯,我是蜜药师。”
瞼を開くと、胸を張るアニャの姿があった。その様子を想像していたので、笑ってしまう。
睁开眼睑,看到了挺起胸膛的阿尼亚的身影。因为想象着那个样子,所以笑了。
「ちょっとイヴァン、どうして笑ったのよ」
「喂,伊凡,你为什么笑?」
「いや、アニャが、かわいいから」
“不,因为阿尼亚很可爱。”
「かわいい!? 私が!?」
“好可爱!?是我!?”
「え、うん」
“嗯,嗯。”
改めて聞き返されると、照れてしまう。その辺は、サラッと流してほしかった。
再次被反问的话,会害羞的。我希望那一带能爽快地冲走。
「私、かわいいんだ」
“我很可爱。”
「よく言われるでしょう?」
“经常被这么说吧?”
「言われたことなんて、一度もないわよ。イヴァンが初めて。リブチェフ・ラズにいる男なんか、ブスとか、かわいくないとか、言ってくるし」
「我一次都没听说过。伊凡是第一次。在利布切夫·拉兹的男人,会说他长得丑,不可爱。」
「あー……」
“啊……”
リブチェフ・ラズにいる男とは、以前アニャに「いつまで経ってもお子様だ」と言っていた奴だろう。
在里布切夫·拉兹的男人,是以前对阿尼亚说“无论过多久都是孩子”的家伙吧。
当然、「ブス」や「かわいくない」と声をかけたのは、アニャの気を引くためだ。口が裂けても、アニャには言わないけれど。
当然,打招呼说“丑”和“不可爱”是为了吸引阿尼亚的注意。即使嘴巴裂开了,也不会对阿尼亚说。
どうして酷いことを言って、怒らせるのだろうか。本当に、理解に苦しむ。
为什么说这么过分的话,会让人生气呢。真的很难理解。
リブチェフ・ラズの男が言ったことを思い出したからなのか。アニャは顔を俯かせ、シュンとしている。きっと、マクシミリニャンも心の中ではかわいいと思っていても、口には出さなかったのだろう。
是因为我想起了里布切夫·拉兹的男人说的话吗。阿尼亚低下头,舒恩。一定,即使麦克西米利尼亚在心里觉得很可爱,也不会说出来吧。
仕方がないと思い、本日二回目のかわいいを発する。
我觉得没办法,今天发了第二次可爱。
「アニャはかわいいよ。他の男が言うことなんか、気にするな」
“阿尼亚很可爱,别在意其他男人说的话。”
すると、アニャは顔を上げて、花が綻ぶような笑顔を見せてくれた。
于是,阿尼亚抬起头来,露出了鲜花绽放的笑容。
リブチェフ・ラズの男は知らないのだろう。アニャに「かわいい」といったら、こんなに愛らしい微笑みを見せてくれることを。
里布切夫·拉兹的男人不知道吧。对阿尼亚说“可爱”的话,会露出这么可爱的微笑。
絶対に、人生を損している。
绝对是在损害人生。
「イヴァンがそう言うなら、もう、気にしない」
“如果伊凡这么说的话,我就不介意了。”
にこにこしていたアニャだったが、すぐさまハッとなる。いったいどうしたのか。
虽然是笑嘻嘻的阿尼亚,但马上就变成了哈。到底怎么了。
笑顔だったアニャの顔が、だんだん無となった。
笑容满面的阿尼亚的脸,渐渐消失了。
「アニャ、どうしたの?」
“阿尼亚,怎么了?”
「イヴァン、あなた、ずいぶんと女慣れをしているようだけれど?」
“伊凡,你好像已经习惯女人了?”
「女慣れって……」
“习惯女人……”
「会う女性全員に、かわいい、かわいいって、言って回っているんじゃないの?」
“不是对所有见面的女性都说可爱、可爱吗?”
「ないない、ないから。女慣れしているように見えるのは、兄の嫁が十三人もいたから。俺より年上の姪だっているし」
“没有,因为没有。之所以看起来很习惯女人,是因为有十三个哥哥的媳妇。她是比我大的侄女。”
「兄嫁と、姪?」
“嫂子和侄女?”
「全員、身内。実家は女所帯だから」
“所有人都是自己人,因为老家是女性家庭。”
「そう、だったんだ」
“是的。”
「かわいいなんて、赤ちゃん時代の姪や甥以外で、言ったことがないし」
“可爱什么的,除了婴儿时代的侄女和侄子以外,没有说过。”
「だったら、同じ年頃では、私は初めて?」
“那么,同样年纪的我还是第一次?”
「まあ、そうだね」
“是啊。”
「だったら、いいわ」
“那就好。”
機嫌が直ったようなので、ホッとする。
心情好像变好了,松了一口气。
◇◇◇
◇◇◇
夕食が済んだら、アニャに呼び出される。
晚饭结束后,被阿尼亚叫出来。
「夜に塗る薬用クリームを作りましょう」
“做晚上涂的药用奶油吧。”
「そんなのがあるんだ」
“有那样的事。”
「ええ。眠っている間に、肌を再生してくれるのよ」
“是的。睡觉的时候,可以让皮肤再生。”
材料は蜜蝋にオリーブオイル、蒸留水に乳香、薔薇精油。
材料是蜜蜡、橄榄油、蒸馏水、乳香、玫瑰精油。
「まず、薬鍋にオリーブオイルと蜜蝋を入れて、湯煎で溶かすの」
“首先,在药锅里放入橄榄油和蜂蜡,用热水煎融化。”
アニャは慣れた手つきで、作業を進めていく。
阿尼亚用习惯了的手势,推进工作。
「次に、湯煎から薬鍋を上げて、精油を垂らして混ぜるのよ」
“接下来,从煎汤里把药锅拿起来,滴上精油搅拌。”
これを煮沸消毒した瓶に詰め、熱が引いたら夜専用の薬用クリームの完成となる。
把它装在煮沸消毒的瓶子里,退烧后晚上专用的药用奶油就完成了。
「乳香には、癒傷(ゆしょう)作用や鎮痛、瘢痕(はんこん)形成作用――かさぶたを作る能力を促す力があるの」
“乳香有愈伤作用、镇痛、形成瘢痕的作用——促进结痂能力的力量。”
それに、肌の保湿効果がある蜜蝋や炎症を抑える効果がある薔薇精油を加えることによって、肌の再生を促すクリームが完成するようだ。
再加上对皮肤有保湿效果的蜂蜡和有抑制炎症效果的玫瑰精油,促进皮肤再生的奶油就完成了。
「アニャの知識は、本当にすごいね。でも、それは、誰から習ったの?」
“阿尼亚的知识真的很厉害。但是,那是从谁那里学到的呢?”
「先生は、お母様が遺した本だったの」
“老师是母亲留下的书。”
アニャの母親も、かつて蜜薬師と呼ばれる存在だったらしい。
阿尼亚的母亲曾经也是被称为蜜药师的存在。
そもそも、蜜薬師とはなんぞや。
说起来,蜜药师是什么呢。
「蜜薬師の歴史は、帝国にあるの。その昔、お医者さん嫌いで蜂蜜大好きな王女様のために、侍女が各地を奔走して集めた蜂蜜の知識を数冊の本にまとめて残していたみたい。その本を読んだり、師匠から習ったりして、蜂蜜で治療を行う人を蜜薬師と呼んでいたそうよ」
“蜜药师的历史在帝国。从前,为了不喜欢医生、非常喜欢蜂蜜的公主,侍女在各地奔走收集的蜂蜜知识好像整理成了几本书。读了那本书,从师傅那里学习,用蜂蜜进行治疗的人被称为蜜药师。”
「へえ、そうなんだ」
「咦?是的。」
かつての帝国では蜜薬師の侍女を侍らせることが、ステータスシンボルであると囁かれていた時代もあったらしい。
在过去的帝国中,也有被认为让蜜药师的侍女侍女是地位象征的时代。
現代では、医療が発達して、蜜薬師のほとんどは表舞台から姿を消したようだ。
在现代,医疗发达,蜜药师几乎都从舞台上消失了。
「ここは田舎だし、リブチェフ・ラズにお医者様はいないから、私みたいな蜜薬師でもありがたいと思ってくれるみたい」
“这里是乡下,里布切夫·拉兹没有医生,像我这样的蜜药师也会觉得很感谢的。”
「そっか」
“是吗?”
蜜薬師になるまで、相当な努力と苦労をしたに違いない。
在成为蜜药师之前,一定付出了相当大的努力和辛苦。
知識はあっても、実際に薬を作れなければ意味がないから。
虽然有知识,但如果不能实际制作药物的话就没有意义了。
「どうしてアニャは、蜜薬師になろうと思ったの?」
“为什么阿尼亚想成为蜜药师呢?”
「きっかけは、幼いころの私が、病弱だったからよ。咳をするたびに、お父様が蜂蜜で喉薬を作ってくれたのだけれど、失敗ばかりで、いっこうによくならなかったのよね。自分で作った物のほうが効くんじゃないかって思って作ったのが始まりよ。あとは、亡くなったお母様との、繋がりがほしくて……」
“契机是,小时候的我病弱。每次咳嗽的时候,父亲都会用蜂蜜给我做喉药,但都是失败,一点也没变好。我开始觉得自己做的东西更有效。之后,我想要和去世的母亲联系起来。”想……“
家にあった蜜薬師の本は、直筆のメモが書き込まれていたらしい。それを読み進めているうちに、極めてしまったようだ。
家里的蜜药师的书好像写着亲笔的笔记。在读那个的过程中,好像已经到了极致。
「と、話しすぎてしまったわね。もう冷えたかしら?」
“话说得太多了,已经冷了吗?”
熱が引いた薬用クリームを、アニャは丁寧に塗ってくれた。
阿尼亚认真地给我涂了退烧的药用奶油。
塗布されるというのは、何度経験しても慣れない。
被涂抹,无论经历多少次都不习惯。
「はい、これでいいわ。傷が治るまで、夜、眠る前に塗るのよ」
“好的,这样就可以了,晚上睡觉前涂,直到伤口痊愈。”
「うん。アニャ、ありがとう」
“嗯,阿尼亚,谢谢。”
「どういたしまして」
「不客气。」
薬用クリームを受け取り、離れに戻る。
收到药用奶油,返回离开。
明日は、種を植えて二日目だ。果たして、芽はでているのか。
明天是种种子的第二天。到底发芽了吗。
祈るばかりである。
只是祈祷。