養蜂家の青年は、熟成させた山羊のチーズを食べる 养蜂青年吃熟了的山羊奶酪 アニャは昼食に、山羊のチーズを出してくれた。一週間ほど、熟成させたものらしい。驚くほど真っ白である。 阿尼亚午饭给我端了山羊奶酪。好像是成熟了一周左右的东西。白得惊人。 山羊のチーズもまた、苦手意識があった。けれど、ミルクがあれだけおいしかったので、このチーズもこれまで食べていたものとは違うのだろう。 山羊奶酪也有不擅长的意识。但是,因为牛奶那么好吃,所以这个奶酪也和以前吃的不一样吧。 「ちょっとクセがあるかもしれないから、蜂蜜をかけたほうがいいかも」 “可能有点癖好,最好浇点蜂蜜。” 「チーズに、蜂蜜!?」 “奶酪加蜂蜜!?” 未知なる組み合わせである。果たして、合うのだろうか。 是未知的组合。到底合适吗。 「山羊のチーズは酸味があるから、蜂蜜との相性がいいのよ。食べてみなさい」 “山羊奶酪有酸味,和蜂蜜很搭,你尝尝看。” アニャは問答無用で、山羊のチーズに蜂蜜を垂らしてくれた。 阿尼亚无需问答,就给山羊奶酪滴上蜂蜜。 そのまま食べるよりも、蜂蜜がかかっているほうが食べやすいかもしれない。 比起直接吃,浇蜂蜜可能更容易吃。 それでも、どきどきしながら食べる。 尽管如此,还是忐忑不安地吃。 「おいしい!」 “好吃!” 酸味はヨーグルトのようなものと表現すればいいのか。あっさりしていて、さわやかな味わいである。 酸味可以用酸奶之类的东西来形容吗。味道清淡,清爽。 「熟成が進んだら、味の濃さも変わってくるのよ」 “随着成熟的发展,味道的浓度也会改变。” 「へえ、そうなんだ」 「咦?是的。」 蜂蜜とチーズがこんなにも合うなんて、知らなかった。 我不知道蜂蜜和奶酪这么搭。 あっという間に、ペロリと平らげてしまう。 一眨眼就吃光了。 そのあと、蜂蜜をかけていない山羊のチーズも食べたが、普通においしかった。 之后,我也吃了没有蜂蜜的山羊奶酪,但一般都很好吃。 やはり、山羊のミルクは管理が命なのだろう。 果然,山羊的牛奶管理是生命吧。 ◇◇◇ ◇◇◇ 早春の養蜂家の仕事は、餌は足りているか、女王はきちんといるか、病気が出ていないか、雄蜂が増えすぎていないか――巣箱を巡回して、しっかり確認しなければならない。 早春养蜂人的工作是,食物是否充足,女王是否好好地呆着,是否出现了疾病,雄蜂是否增加过多——必须巡视蜂箱,好好确认。 春の盛り、もっとも蜜蜂が忙しくなる流蜜期に向けて、花蜜を集める蜜蜂のサポートに徹するのだ。 为了迎接春意盎然、蜜蜂最忙的流蜜期,我们将彻底支持收集花蜜的蜜蜂。 「そういえばイヴァン。もうお昼を過ぎたけれど、体や傷の調子はどう?」 “这么说来,伊凡。已经过了中午了,身体和伤口怎么样?” 「筋肉痛以外は、特に痛みはないかな」 “除了肌肉痛以外,没有什么特别的痛吧” 昨日、大角山羊に乗ったからか、尻と腿付近が筋肉痛になっていたのだ。 也许是因为昨天坐了大角山羊,屁股和腿附近肌肉疼痛。 しかしまあ、我慢できないほど痛むわけではない。 但是,并不是痛得受不了。 「筋肉痛以外に、不調はないよ。いつもより、調子がいいくらい」 “除了肌肉痛以外,没有什么不适。比平时状态好。” 「だったらよかったわ」 “那就好了。” 三食まともに食事を食べていたからだろうか。肌の調子はいいし、夜はよく眠れる。活力だって、いつも以上にある気がした。 大概是因为吃了三餐吧。皮肤很好,晚上睡得很好。我觉得活力也比平时更多。 「元気だから」 “我很好。” 「よかったわ」 「太好了。」 本日も、大角山羊に乗って野山を駆け巡るらしい。昨日みたいな崖には登らないというので、ホッと胸をなで下ろす。 今天也乘坐大角山羊在山野中奔跑。因为不能登上像昨天那样的悬崖,所以松了一口气。 アニャと共に、大角山羊に跨がり、次から次へと巣箱を確認していく。 和阿尼亚一起跨上大角山羊,一个接一个地确认巢箱。 この時期は次々と蜜蜂が生まれるので、蜜箱に継箱を重ねておく。 因为这个时期蜜蜂一个接一个地诞生,所以在蜜箱上重叠着继箱。 トチノキに、アカシア、ハナスグリなど、街のほうでは見かけない樹から蜂蜜を作っていた。それだけでなく、ノバラにブラックベリー、リナリアなど、野山に自生する花からも蜜を集めているようだ。 在柏树上,用刺槐、花椰菜等在街上看不到的树制作蜂蜜。不仅如此,从野蔷薇、黑莓、莉娜莉亚等山野野生的花中也收集了蜜。 花を育てて蜜を採る実家の養蜂とは異なり、アニャとマクシミリニャンは山に自生する木々や花から採った蜜で養蜂を営んでいる。 与养花采蜜的老家养蜂不同,阿尼亚和马克西米利尼亚用山上野生的树木和花采的蜜来经营养蜂。 自然との共存で行わなければならないので、苦労は尽きないようだ。 因为必须与自然共存,所以辛苦似乎是无穷无尽的。 「巣箱が獣に荒らされているのはしょっちゅうだし、天敵となる虫も多いの」 “巢箱经常被野兽糟蹋,成为天敌的虫子也很多。” 特に、蜜蜂の天敵となるスズメバチの活動が活発化する夏には、駆除のために数日費やすときもあるという。 特别是在蜜蜂的天敌马蜂活动活跃的夏天,为了驱除蜜蜂有时会花费数日。 「スズメバチはね、捕まえた途端、蜂蜜漬けにしてやるのよ」 “马蜂啊,一抓到就用蜂蜜腌制。” 「え、何それ」 「咦?那是什么?」 「スズメバチの蜂蜜漬け、知らないの?」 “你不知道黄蜂的蜂蜜泡饭吗?” 「初めて聞いたよ」 “我第一次听说。” なんでも、二年間ほど蜂蜜に漬けると、毒成分が蜂蜜に溶け出すらしい。 不管怎么说,泡两年左右的蜂蜜的话,毒成分好像会溶解在蜂蜜里。 「え、毒が溶け出したら、ダメなんじゃ……?」 「咦,如果毒药溶解出来的话,就不行了吧……?」 「スズメバチの毒は、口から含むと人にとって薬になるのよ」 “马蜂的毒,如果从嘴里含进去的话,对人来说是药。” 「は!?」 “哈!?” 目が点となる。スズメバチに刺されたら、肌はとんでもなく腫れるし、とんでもない痛みに襲われる。スズメバチに襲われて死んだ人だっているくらいだ。 目瞪口呆。如果被马蜂蜇了,皮肤会肿得不得了,还会受到意想不到的疼痛的袭击。甚至有人被马蜂袭击而死。 その毒が、口から含むと薬になるなんて信じられない。 我不相信那种毒药,如果从嘴里含进去就会变成药。 「スズメバチの毒は、胃や腸の中で分解されて、疲労回復、美肌効果に、鎮痛、殺菌解毒作用、利尿作用など、体にいい効果をもたらすわ」 “马蜂的毒,在胃和肠中被分解,对恢复疲劳、美肌效果、镇痛、杀菌解毒作用、利尿作用等,对身体有很好的效果。” アニャは胸を張って主張しているが、本当なのだろうか。食べた瞬間に、口が腫れてしまいそうだ。 阿尼亚挺起胸膛坚持,是真的吗。吃了的瞬间,嘴快要肿了。 「ちなみに、昼食のときに山羊のチーズにかけた蜂蜜だけれど、スズメバチを漬けていたものだから」 “顺便说一下,午饭的时候撒在山羊奶酪上的蜂蜜,是腌了马蜂的。” 「え!?」 “诶!?” 「あなた、おいしいって言ってパクパクたべていたわよね?」 “你不是说好吃就山寨吃的吗?” 「食べていたけれど……!」 “虽然吃了……!” まさか、スズメバチ入りの蜂蜜を食べさせられていたとは。 没想到竟然让我吃了加入马蜂的蜂蜜。 コクがあっておいしい蜂蜜だった。 是醇厚又好吃的蜂蜜。 「別に、なんともないでしょう?」 “没什么事吧?” 「それどころか、調子がいいくらい」 “不仅如此,状态也很好。” スズメバチの毒は、驚くべきことに口から含むと薬と転ずるらしい。 马蜂的毒,令人吃惊的是,如果从口中含有的话,就会变成药。 人体は、いったいどうなっているのか。 人体到底是怎样的呢。 謎が深まるばかりである。 谜团越来越深。