養蜂家の青年は、結婚前に話を聞く 养蜂家的青年在结婚前听故事 かつての俺は、養蜂家として、ただただがむしゃらに働くばかりだった。 以前的我,作为养蜂家,只是拼命地工作。 家族にいいように使われている自覚はあったものの、蜜蜂のためを思って世話を続けた。 虽然有被家人很好地使用的自觉,但是为了蜜蜂而继续照顾着。 そんな考えが、家族の歪みの原因になっていたのかもしれない。 这样的想法可能是家庭扭曲的原因。 双子の兄の嫁ロマナが、俺への好意を吐露した瞬間に、家族の関係にヒビが入ってしまった。 双胞胎哥哥的媳妇罗曼娜吐露对我的好意的瞬间,家人的关系出现了裂痕。 家を出る決意を固め、偶然出会ったマクシミリニャンの娘、アニャとの結婚を決意する。 下定决心离家出走,与偶然相遇的马克西米莉娜的女儿阿尼亚结婚。 生まれ育ったブレッド湖の光景を背にしながら、旅立った。 背着土生土长的布莱德湖的景象,踏上了旅程。 そして、ボービン湖を取り囲む山を登ったのだ。 然后,登上了围绕着波文湖的山。 マクシミリニャンの娘アニャは、息を呑むほど美しかった。 马克西米莉娜的女儿阿尼亚美得令人窒息。 金の髪は三つ編みをクラウンのように巻き、昼間は後頭部でまとめ、夜はそのまま流している。アーモンドのような大きな瞳は、まるで青空を映しだしているかのように澄みきっていた。ふっくらとした唇は、いつも弧を描いている。 金发像皇冠一样卷着,白天用后脑勺扎起来,晚上就这样流着。像杏仁一样大的眼睛,就像映照出蓝天一样清澈。丰满的嘴唇,总是画着弧线。 くるくると変わる表情は、どれだけ眺めていても飽きない。 转来转去的表情,无论看多少都不会厌倦。 アニャは明るく、太陽のような少女だった。 阿尼亚是一个阳光明媚,像太阳一样的少女。 マクシミリニャンからは十九だと聞いていたが、見た目は完全に十三、四くらいの少女にしか見えない。 从马克西米利尼亚那里听说是十九,看上去完全是十三、四个左右的少女。 正真正銘十九歳だが、なんでもアニャは未熟児として生まれたらしい。助産師によれば、十歳まで生きられるかわからないとまで言われていたようだ。 确实是十九岁,但不管怎么说阿尼亚好像是作为早产儿出生的。据助产师说,甚至不知道能不能活到十岁。 予想に反し、アニャは元気いっぱい、健康な娘に育った。 与预想相反,阿尼亚成长为一个精力充沛、健康的女儿。 けれど、十九になった今も、初潮がきていないという。つまり、子どもを産める状態にないのだ。 但是,据说到了十九岁的现在,初潮还没有来。也就是说,没有生孩子的状态。 それを知って尚、俺はアニャとの結婚を受け入れた。 知道了那个之后,我接受了和阿尼亚的结婚。 アニャは子どもを産めないから結婚はできないと言っていたが、俺にとっては大きな問題ではない。 阿尼亚说因为不能生孩子所以不能结婚,但对我来说不是大问题。 義姉を何人も見てきて思うのは、妊娠、出産は女性の負担があまりにも大きすぎるというもの。 看了好几个大嫂,我觉得怀孕、生孩子对女性的负担太大了。 アニャの母親は産じょく熱で亡くなってしまったというし、家系的にあまり妊娠、出産に強くないのかもしれない。アニャの小さな体では、命を削ってしまうほどの負担になるだろう。だから、別に子どもなんていなくてもいいと思っている。 据说阿尼亚的母亲因为生育热而去世了,从家系上来说可能不太擅长怀孕和生育。阿尼亚小小的身体,会成为削减生命的负担吧。所以,我觉得没有孩子也可以。 理解があるといっても、アニャは結婚できないというので、俺たちは結婚を蕎麦の種に賭けることとなった。三日以内に蕎麦の芽が出たら、アニャと結婚する。そう宣言した。 虽说有理解,但因为阿尼亚不能结婚,所以我们把结婚赌在了荞麦面的种子上。如果三天之内荞麦面发芽的话,就和阿尼亚结婚。我这样宣布了。 見事、三日目に蕎麦の芽は土から顔を覗かせたのだ。 漂亮,第三天荞麦的芽从土里露出了脸。 そんなわけで、俺とアニャは結婚することとなった。 因此,我和阿尼亚结婚了。 ◇◇◇ ◇◇◇ 結婚する前に、マクシミリニャンより話があるという。何やら、決まりを話すようだ。 据说在结婚之前,他比马克西米利尼亚更有话要说。好像说了什么规定。 アニャと二人並んで、話を聞く。 和阿尼亚两个人并排听故事。 「まず、我のことは、お義父様と呼ぶように」 “首先,请叫我公公。” 「呼び方は“お義父様”、で決まっているんだ」 “称呼是由‘公公’来决定的。” 「何か言ったか?」 “你说了什么?” 「なんでもないです、お義父様」 “没什么,公公。” マクシミリニャンは満足げな表情で、コクコクと頷いた。 马克西米利尼亚带着满意的表情,咯吱咯吱地点头。 「次に、二人で仲良く母屋で暮らすこと」 “接下来,两个人好好地在开间生活。” 俺が使っていた離れは、客人用なので開けておくように言われた。 我用的离开是客人用的,所以被要求打开。 「あとは、頼むから、アニャを大事に、幸せにしてやってくれ」 “还有,拜托了,好好珍惜阿尼亚,让他幸福吧。” 「それはもちろん、そのつもり」 “那当然是打算。” アニャのほうをチラリと見たら、胸に手を当てて頬を赤く染めていた。可愛いやつめ。 看了阿尼亚一眼,手贴在胸前,脸颊被染成了红色。可爱的家伙。 続いて、マクシミリニャンのほうを見ると、同じく胸に手を当てて頬を染めていた。こっちはまったく可愛くない。 接着,看着马克西米利尼亚,同样把手贴在胸前染着脸颊。我一点也不可爱。 「話は、以上だ。これ以上、我は干渉しない。何か起こっても、夫婦の問題としてよく話し合い、解決するように」 “话到此为止。我不会再干涉了。无论发生什么,都要作为夫妻的问题好好商量,解决。” 「わかった」 「明白了。」 アニャもコクコクと頷く。 阿尼亚也点头。 「教会へは、いつ行くか?」 “什么时候去教堂?” 夫婦となるには、神父から祝福を受けないといけない。 要成为夫妻,必须得到神父的祝福。 「っていうか、結婚式とかしないの?」 “话说回来,不举行婚礼吗?” 「招く親戚はいないからな。この辺では、二人で教会に向かい、祝福を受けて、夫婦となる者が多い」 “因为没有亲戚邀请。在这一带,有很多人两个人去教堂,接受祝福,成为夫妇。” 「そうなんだ」 “是啊。” 行くならば、流蜜期になる前がいいだろう。八時間かかる登山と下山を考えたら、うんざりしてしまうけれど。 如果要去的话,最好是到流蜜期之前吧。考虑到要花八个小时的登山和下山,我会厌烦的。 「アニャ、どうする? いつ行く?」 “阿尼亚,怎么办?什么时候去?” 「別に、教会での祝福は、必要ないんじゃない? 私達の結婚は、蕎麦の芽が認めてくれたわけだし」 “另外,在教会的祝福不是没有必要吗?我们的结婚是荞麦芽认可的。” 「それはそうだけれど、形式的なものも、大事だと思うけれど?」 “虽然是这样,但我觉得形式上的东西也很重要。” マクシミリニャンもそうだと頷く。 马克西米利尼亚也点头同意。 「正直に言えば、教会が、少し苦手なの。だから、別に祝福はしなくてもいいわ」 “老实说,我有点不擅长教会。所以,不用再祝福了。” 「うーん。まあ、アニャがそう言うなら、教会での祝福はなしの方向で」 “嗯。嗯,如果阿尼亚这么说的话,在教会的祝福就在没有的方向上。” 今、この瞬間から、アニャと夫婦ということになった。 现在,从这一瞬间开始,就和阿尼亚成为了夫妇。 「まあ、教会に行かずとも、一度二人で街に行くとよい。イヴァン殿も、必要な買い物があるだろう?」 “嗯,即使不去教堂,两个人去一次街上就好了。伊凡大人也有需要的东西吧?” 確かに、着替えなどの生活必需品は買い足す必要がある。 确实,换衣服等生活必需品需要添购。 アニャを付き合わせるのは悪いと思っていたが――。 我觉得让阿尼亚交往是不好的——。 「お父様、いいの!?」 “爸爸,可以吗!?” 「ああ、ゆっくり買い物を楽しんでくるとよい」 “啊,慢慢地享受购物就好了。” 「やったー!」 “太好了!” アニャは買い物を、大いに喜んでいるようだった。 阿尼亚对购物似乎非常高兴。 ひとまず、買い物は流蜜期に向けての準備を行ってから行くこととなる。 首先,购物是在为流蜜期做准备之后再去的。 ◇◇◇ ◇◇◇ 流蜜期は、巣から蜜が流れるほど花蜜を集める。どんどん貯めていき、巣箱は蜜で満たされてしまうのだ。場所がなくなると、女王が卵を産み付けるスペースにまで蜜を貯め込むので、注意が必要である。 流蜜期,蜜从巢流出来的那样收集花蜜。不断地存钱,巢箱里充满了蜜。如果没有地方的话,连女王产卵的空间都会储存蜜,所以需要注意。 蜜蜂の寿命は約四ヶ月間。このシーズンに生まれる蜜蜂が減ると、あとあと採れる蜂蜜の量に影響が出る。 蜜蜂的寿命约为四个月。这个季节出生的蜜蜂减少的话,会对之后采摘的蜂蜜的量产生影响。 巣箱の状況を把握し、必要であれば巣枠を追加しなければならないのだ。 掌握巢箱的状况,必要的话必须追加巢框。 午前中は巣枠を作り、午後からは巣箱の点検に向かう。 上午制作巢框,下午开始前往巢箱的检查。 アニャと共に大角山羊に跨がり、崖を登り、斜面を走り抜け、川を飛び越える。 和阿尼亚一起跨上大角山羊,爬上悬崖,穿过斜坡,飞越河流。 すべて見回ったあとは、川縁で休憩する。 全部巡视之后,在河边休息。 今日は日差しが強く、汗でびっしょりだ。川に飛び込みたい気分だが、さすがにまだ春なので風邪を引くだろう。それに、川の流れは速いし、深さもかなりのものだろう。今日のところは、顔を洗うだけにしておいた。 今天阳光很强,汗流浃背。虽然想跳进河里,但毕竟还是春天,所以会感冒吧。而且,河的水流很快,深度也相当大吧。今天只洗了脸。 水が滴る顔を拭こうと、背後に置いた布へ手を伸ばす。 为了擦拭滴水的脸,把手伸向放在背后的布。 「はい、どうぞ」 “好的,请。” 「アニャ、ありがとう」 “阿尼亚,谢谢。” 親切なアニャが、布を手渡してくれた。 亲切的阿尼亚把布递给了我。 「今日は、暑いわね」 “今天真热啊。” 「だね」 「是啊。」 隣に座るアニャがもぞもぞ動いていたので、何をしているのかと見つめる。 坐在旁边的阿尼亚扭动着,凝视着他在做什么。 靴を脱ぎ、スカートを膝までたくしあげ、川に脚を浸け始めた。 脱下鞋子,把裙子挽到膝盖,开始把脚泡在河里。 白い脚が、これでもかと晒される。 白色的脚,即使这样也会暴露出来。 「アニャ、何を――!」 “阿尼亚,你在干什么——!” 「こうしていると、気持ちいいわよ」 “这样做的话,会很舒服的。” 「いや、若い娘が、脚を他人に見せるなんて」 “不,年轻的女儿竟然把脚给别人看。” 「なんで? 私達、夫婦じゃない」 “为什么?我们不是夫妻。” 「あ。そうだった」 “啊,是的。” 見てはいけないと思ったが、アニャは俺のお嫁さんだ。脚なんて、いくらでも見ても許されるのだ。 我以为你不能看,但是阿尼亚是我媳妇。脚什么的,无论看多少都是允许的。 じっと見つめていたら、アニャは川から脚を引き抜き、たくしあげたスカートを元に戻す。 盯着看,阿尼亚从河里抽出脚,把卷起的裙子放回原处。 「アニャ、もういいの?」 “阿尼亚,够了吗?” 「あなたが見るから、恥ずかしくなったのよ」 “因为你看了,我才害羞的。” 「恥ずかしくないじゃん。俺たち、夫婦なんだから」 “你不觉得羞耻嘛,我们是夫妻。” 「夫婦でも、恥ずかしいものは、恥ずかしいの」 “即使是夫妻,害羞的东西也会害羞。” 脚を拭くので、別の方向を向いておくように命じられる。 因为要擦脚,所以被命令朝着别的方向。 夫婦だからいいというのは、すべての物事に当てはまらないようだ。 因为是夫妻就好,似乎不适用于所有的事情。