養蜂家の青年は、蜜薬師の娘とチーズを作る 养蜂青年和蜜药师的女儿一起做奶酪 翌朝、アニャは朝から俺が寝泊まりしている離れの扉を叩く。 第二天早上,阿尼亚从早上开始敲我住的远离的门。 「イヴァン、起きて! 蕎麦の芽を、見に行きましょう」 “伊凡,起来!我们去看看荞麦的芽吧。” 大変可愛らしいお誘いだが、起きてすぐ活動できるわけではない。 虽然是非常可爱的邀请,但是起床后并不是马上就能活动。 顔を出さずに、返事をする。 不露面,回答。 「アニャ、十五分くらい待って」 “阿尼亚,等十五分钟。” 「なんで身支度にそんなにかかるのよ」 “为什嚒要花那嚒多时间打扮?” 「いや、いろいろあるし」 “不,有很多。” 「いろいろって?」 “各种各样?” 「……」 「……」 一瞬黙ってしまったが、別にアニャに本当の事情を説明する必要はない。てきとうに、顔を洗ったり、歯を磨いたり、髭を剃ったりするんだよと伝えておく。 虽然一瞬间沉默了,但没有必要向阿尼亚说明真正的情况。事先告诉他要洗脸、刷牙、刮胡子。 「そんなの、気にしなくてもいいのに」 “你不用在意。” 「最低限の礼儀だから」 “因为是最低限度的礼仪。” なんとか説き伏せ、アニャにはしばし待ってもらう。 想办法说服,让阿尼亚等一会儿。 服を着替え、昨日、アニャが洗って乾かしてくれた服に袖を通した。ふんわりと、かぐわしい花の香りがする。何か、特別な石鹸で洗ったのだろうか。いい匂いだ。 换了衣服,昨天把袖子穿过了阿尼亚洗干的衣服。散发着柔和、芬芳的花香。是用什么特别的肥皂洗的吗。好香。 外に出たら、アニャが手を腰に当てた状態で待ち構えていた。 一出门,阿尼亚就把手放在腰上等着。 「うわっ!」 “哇!” 「なんでそんなに驚くのよ」 “你为什嚒这嚒惊讶?” 「ごめん。まさか、外で待っているとは思わなくて。他のことでもして、待っていてもいいよ。ひげ剃りも歯磨きも、まだだから」 “对不起,我不认为你会在外面等我。你可以做其他的事,等着。刮胡子和刷牙都还没好。” 「もう、仕事は終わったわ」 “工作已经结束了。” なんでもアニャは、早起きして朝の仕事は済ませてしまったらしい。 不管怎么说,阿尼亚好像早起完成了早上的工作。 「なんでまた、早起きしてまで働いていたの?」 “为什么又早起工作了?” 「イヴァンと蕎麦の芽を見に行くのを、楽しみにしていたの。少しでも早く、確認に行きたくて」 “我很期待和伊凡一起去看荞麦面的芽。我想尽快去确认。” 一人でも確認できるのに、あえて俺と一緒に見たいのだという。なんていじらしいことを言ってくれるのか。 虽然一个人也能确认,但还是想和我一起看。你说的多嚒刁钻。 頭をぐりぐり撫でたくなるが、アニャは見た目が幼いだけで立派な成人女性である。そうでなくても、女性に気軽に触れてはいけない。 虽然想摸摸脑袋,但是阿尼亚只是外表年幼,是个优秀的成年女性。即使不是,也不能随便接触女性。 俺は、ロマナとの一件で大いに学んだ。 我在和罗曼娜的一件事上学到了很多。 「じゃあ、もうちょっと待って」 “那嚒,再等一下。” 「ええ」 “是的。” 急いで顔を洗い、髭を剃って歯を磨いた。 赶紧洗脸,刮胡子刷牙。 顔の腫れは、昨日よりだいぶいい。あと、三、四日もすれば完治するだろう。 脸上的肿比昨天好多了。再过三四天就能痊愈了吧。 蜜薬師である、アニャのおかげだ。 多亏了蜜药师阿尼亚。 「お待たせ」 “让您久等了。” 「ええ、行きましょう」 “嗯,我们走吧。” 昨日、蕎麦の種を植えた畑を目指した。 昨天,以种植荞麦种子的田地为目标。 まあ、当然ながら、昨日の今日なので、芽なんて出ていない。 当然,因为是昨天的今天,所以没有发芽。 アニャは姿勢を低くし、目を凝らしていたが、発見には至らなかったようだ。 阿尼亚低着姿势,目不转睛地盯着,但似乎没有发现。 「蕎麦の芽は、早くても四日から五日くらいだし、まだ早いよ」 “荞麦的芽最早也要四到五天左右,还早呢。” 運がよければ、三日目の朝に生えているかもしれない。 如果运气好的话,可能长在第三天早上。 アニャはしゃがみ込んだまま、しょんぼりしているように見えた。 阿尼亚蹲着,看上去无精打采的。 なんとなく、間違っているかもしれないけれど、アニャは蕎麦の芽が出てほしいと望んでいるように見える。 总觉得可能错了,但是阿尼亚看起来希望荞麦面发芽。 親子の穏やかでのんびりとした生活は、俺の性格にも合っているような気がした。 父母和孩子平静悠闲的生活,感觉也适合我的性格。 かと言って、芽が出なかったら、ここに置いてくれと懇願するつもりはない。 话虽如此,如果没有发芽的话,我不打算恳求你把它放在这里。 運命は、蕎麦の芽に託してある。もしも出なかったら、ここに相応しい人間ではなかったという天の思し召しなのだろう。 命运寄托在荞麦的萌芽上。如果没有出现的话,是上天认为他不是适合这里的人吧。 「アニャ、戻ろう」 “阿尼亚,我们回去吧。” 「ええ」 “是的。” 個人的な感情は頭の隅に追いやって、働かなければ。 个人的感情要逼到脑子的角落,不工作的话。 二日目の滞在が、始まる。 第二天的停留开始了。 今日は昨日搾った山羊のミルクを、加工するらしい。 今天好像要加工昨天榨的山羊牛奶。 山羊のミルクは一晩おくと、分離する。表面に浮かんでいるものを、“クリーム”と呼んでいるらしい。このクリームを穴あき柄杓(スキーマー)で掬い、鍋に注ぎ入れる。 山羊的牛奶隔一晚就会分离。表面浮着的东西,好像被称为“奶油”。用打孔舀子舀起这个奶油,倒入锅里。 「これから、山羊のチーズを作るわ」 “接下来,我要做山羊奶酪。” 「了解」 “确定” まず使うのは、クリームを掬ったミルクらしい。これを、低温で熱する。 首先使用的好像是舀奶油的牛奶。在低温下加热。 「ほんのり温かくなったら、クリームを注ぐの」 “稍微暖和一点的话,就倒入奶油。” しばらく混ぜたら、ここにさらにミルクを入れる。 混合一段时间后,在这里再加牛奶。 「追加のミルクは、朝に搾った新鮮なものなの。チーズを作るために、さっき搾ってきたわ」 “追加的牛奶是早上榨的新鲜的。为了做奶酪,刚才榨了过来。” さらに加熱するようだ。温めすぎは注意らしい。 好像还要加热。加热过度好像要注意。 目標の温度になったら凝乳酵素(レンネット)と呼ばれる、子牛の消化液から作った凝固液を冷水で薄めて入れる。 到了目标温度后,将由小牛消化液制成的凝固液用冷水稀释后放入,称为凝乳酶(伦内特)。 これは、麓にある畜産農家から買い付けているようだ。 这好像是从山脚下的畜牧农家购买的。 この状態になったミルクを、きれいに洗った手で混ぜる。 把这种状态的牛奶用洗干净的手搅拌。 「アニャ、それ、熱くないの?」 “阿尼亚,那个不热吗?” 「熱くないわ。人肌よりも、低い温度なの」 “不热,温度比人的皮肤还低。” 「そうなんだ」 “是啊。” ミルクがもったりしてきたら、柄杓で表面をぎゅ、ぎゅっと押さえつけるのだ。 如果有牛奶的话,用舀子紧紧地按住表面。 このまま一時間放置すると、ミルクは固まった。 就这样放置一个小时,牛奶就凝固了。 ナイフで四角くカットし、布を当てた容器へ移す。その際に出た水溶液は乳清(ホエー)といって、栄養価が高いものらしい。スープに入れたり、菓子作りに使ったりするのだとか。 用小刀切成四方形,转移到贴着布的容器里。那个时候流出的水溶液叫做乳清,营养价值很高。放入汤里,或者用来做点心。 ここで、固形となったミルクに塩を加え、チーズクロスに包んで丸形の桶に詰め込む。 在这里,在固体牛奶中加入盐,用芝士布包起来塞进圆形的桶里。 石造りのチーズプレスでしっかり固めるのだ。これがまた、とんでもない力仕事だった。 用石造的奶酪压力机好好地凝固。这又是一件意想不到的力气活。 ハンドルを回してチーズを固める物なのだが、回すのに力がいる。 虽然是转动方向盘凝固奶酪的东西,但是转动起来很有力量。 「イヴァン、頑張れ!」 “伊凡,加油!” アニャに応援されたら、頑張らないといけない。 如果被阿尼亚支持的话,必须努力。 最後に、塩を表面に塗って、熟成させるようだ。 最后,把盐涂在表面,使之成熟。 「チーズ作りって、大変」 “做芝士很辛苦。” 「そうなのよ。今日は、イヴァンがいて助かったわ。きっと、おいしいチーズになるはずよ」 “是啊。今天有伊凡在,真是帮了大忙。一定会成为美味的奶酪的。” 「そう言ってもらえたら、何より」 “如果你能这么说的话,那比什么都好。” 完成したチーズは、果たして俺の口に入るのだろうか。 完成的奶酪,到底会不会进入我的嘴里呢。 それは、蕎麦の芽のみが知る、というものだろう。 那就是只知道荞麦面的芽吧。