養蜂家の青年は、まさかの訪問者に目を剥く 养蜂家的青年对来访者睁大了眼睛 そうこうしているうちに、太陽があかね色に染まっていく。 在这样的过程中,太阳染上了红色。 「あ、やべ。話し過ぎた! イヴァン、またな!」 “啊,糟了。说得太多了!伊凡,再见!” 「じゃあね――あ!」 “再见——啊!” ミハルを引き留め、用事を頼む。 留住米哈尔,拜托了事情。 「ごめん、ミハル。にゃんにゃんおじさんを見かけたら、湖の小屋に来るよう言っておいて」 “对不起,米哈尔。如果看到猫咪叔叔,请告诉他来湖里的小屋。” 「わかった。会えたらな」 「好的,希望我们能见面。」 今度こそ、ミハルと別れた。 这次,我和米哈尔分手了。 太陽は沈みつつあるが、仕事はまだ終わらない。腕まくりし、作業を再開させる。 太阳正在下沉,但工作还没有结束。挽起袖子,重新开始作业。 腐りかけた木材を処分していたら、しょんぼりとうな垂れるツィリルを発見した。 在处理快要腐烂的木材时,发现了垂头丧气的齐里尔。 「ツィリル、どうしたんだ?」 “齐丽尔,怎么了?” 「……」 「……」 涙目のまま、黙り込んでしまう。何か、嫌なことがあったのだろう。しゃがみ込んで、話をきいてみる。 眼泪就这样沉默着。有什么讨厌的事吗。蹲下,试着听说话。 「ツィリル、こっちにおいで」 “齐丽尔,过来。” 白詰草の花畑が見える柵に、ツィリルを抱き上げて座らせた。ポケットに入れていた、非常食の飴玉を手のひらに握らせる。 在能看到白诘草花圃的栅栏上,抱起齐丽尔让他坐了下来。把放在口袋里的紧急食品的糖果握在手掌上。 ツィリルは飴を口に放り込み、ポロリと涙を零した。 齐里尔把糖扔进嘴里,扑通一声流下眼泪。 よほど、辛い目に遭ったのだろう。 大概是遭遇了相当痛苦的事情吧。 しばらく、白詰草が揺れる花畑を眺める。夕暮れ時でも、蜜蜂はせっせと蜜を集めていた。俺達と同じで、街の就業を促す鐘の音が聞こえても、仕事は終わりではないらしい。 暂时眺望白诘草摇曳的花田。即使是傍晚,蜜蜂也在不停地收集蜜。和我们一样,即使听到催促街道就业的钟声,工作也不会结束。 ツィリルは服の袖で涙を拭っていたので、ハンカチを差し出す。すると、豪快に鼻をかんでいた。思わず、笑ってしまう。 齐丽尔用衣服的袖子擦着眼泪,拿出手帕。于是,豪爽地擤着鼻子。不由得笑了起来。 ツィリルも、なんだかおかしくなったのだろう。泣きながら、笑っていた。 齐里尔也总觉得奇怪吧。一边哭一边笑。 それから、ツィリルは何があったのかぽつり、ぽつりと話してくれた。 然后,齐里尔嘀嘀咕咕地告诉我发生了什么事。 「ロマナ姉ちゃんからもらったクリームケーキを食べていたら、いきなりサシャ兄に頭を叩かれたんだ」 “吃着罗曼娜姐姐给我的奶油蛋糕,突然被萨沙哥哥敲了头。” 「なんだそりゃ。酷いな」 “那是什么?太过分了。” 「うん。サシャ兄は、ロマナ姉ちゃんから、クリームケーキを貰ってなかったみたいで」 “嗯。萨沙哥哥好像没有从罗曼娜姐姐那里得到奶油蛋糕。” 俺が二切れも食べたからだろうか。夫には最優先にしてほしい。 是因为我吃了两片吗。希望丈夫最优先。 「それにしても、呆れるな。サシャの奴、食い意地が張った、恥ずかしい奴め」 “即便如此,也别吃惊。萨沙的家伙,是个贪吃的,害羞的家伙。” 「だよな」 「是啊。」 サシャは子どもが苦手なようで、甥や姪とも極力関わらないようにしている。それなのに、ツィリルを見つけてはいじわるを言ったり、からかったりしているらしい。 萨沙好像不擅长孩子,尽量不和侄子和侄女扯上关系。尽管如此,找到齐里尔却又说欺负人的话,又好像在嘲笑他。 たぶんだけれど、俺とツィリルの仲がいいので、変なふうに絡んでしまうのだろう。 大概是因为我和齐丽尔的关系很好,所以会像奇怪的样子缠在一起吧。 ミハルが言っていたように、俺がこの家にいると、いろいろダメになってしまうのかもしれない。 正如米哈尔所说,我在这个家里的话,可能会变得各种各样的不行。 ロマナやサシャだけではなく、ツィリルも。 不仅是罗曼娜和萨沙,还有齐里尔。 「サシャ兄は、おれが、嫌いなのかな?」 “萨沙哥哥讨厌我吗?” 「そんなことはないよ。機嫌が悪かっただけだ」 “没那回事,我只是心情不好。” 「だったら、いいけど」 “那就好。” しょんぼりうなだれるツィリルを、柵から下ろしてやった。 他把垂头丧气的齐里尔从栅栏上弄下来。 もう、元気づける菓子はないし、かける言葉も見つからない。どうしたら、元気になってくれるのか。 已经没有让人振奋的点心了,也找不到打招呼的话了。怎样才能恢复精神呢。 一個だけ、思いつく。 只想到一个。 どうしようか迷ったが、ツィリルを元気づけるために使うことにした。 虽然不知道该怎么办,但还是决定用它来鼓舞齐丽尔。 「よし! ツィリル、これから、秘密基地に案内してやる」 “好!齐丽尔,我现在带你去秘密基地。” 「え、いいの? おれ、大きくなっていないけれど」 “啊,可以吗?我还没长大呢。” 「特別だから」 “因为特别。” 「やったー!」 “太好了!” 花畑養蜂園からブレッド湖の小屋まで、徒歩十分ほど。 从花圃养蜂园到布莱德湖的小屋,步行10分钟左右。 暗くなる前に、帰らないといけない。駆け足で向かった。 天黑之前必须回去。跑着去了。 小屋を見せた瞬間、ツィリルの瞳はキラリと輝いた。 看到小屋的瞬间,齐丽尔的眼睛闪闪发光。 中を見せてやると、興奮した様子で振り返る。 让他看看里面,他兴奋地回头看。 「すげーー! 秘密基地だ! イヴァン兄、ここで寝泊まりしていたんだ」 “太棒了!这是秘密基地!伊凡哥哥,就住在这里。” 「まあね」 “嗯。” 保存食の棚と、釣り道具一式、それから就寝用の寝具があるばかりの部屋だ。だが、ツィリルにとっては最高の秘密基地なのだろう。 这是一间有保存食品的架子和一套钓鱼用具,还有睡觉用的寝具的房间。但是,对齐里尔来说是最好的秘密基地吧。 今日は見せるだけ。後日、また連れてきて、一緒に釣りをしようと誘った。ツィリルは頬を赤く染めながら、何度も頷く。 今天只给你看。后来我又带你来,约你一起钓鱼。齐里尔红着脸颊,多次点头。 「一人で、ここに来たらダメだからね」 “一个人来这里是不行的。” 「わかった!」 “知道了!” 帰りも走る。早く行かないと、夕食を食いっぱぐれてしまうだろう。 回去也跑。不早点去的话,晚饭会吃个稀饭的吧。 元気な横顔を見せているツィリルを見て、心から安堵した。 看到露出健康侧脸的齐丽尔,我从心底感到安心。 ◇◇◇ ◇◇◇ 夜、ツィリルと共になんとか夕食を確保し、星空の下で食べた。 晚上,我和齐里尔一起设法确保了晚餐,在星空下吃了。 今度の休みに行く釣りについて、ああではない、こうではないと話し合っていたら、義姉がツィリルを迎えにやってきた。風呂の時間らしい。 关于这次休假去钓鱼的事,不是那样的,不是这样的话,姐姐来接齐丽尔了。好像是洗澡的时间。 俺も、自分で作った風呂で湯を浴びる。 我也在自己做的浴室里洗澡。 大家族ともなると、風呂の順番も戦争だ。なんども沸かしては湯を追加し、というのを女性陣は繰り返している。 一旦成为大家庭,洗澡的顺序也是战争。女性阵容反复着多次烧开后追加热水。 待つ時間がもったいないし、女性陣の手をわずらわせるのも申し訳ない。そのため、自作したのだ。 等待的时间太浪费了,让女性阵容的手麻烦也很抱歉。因此,是自制的。 とは言っても、風呂と呼べる代物ではないのかもしれない。 话虽如此,也许不是可以称为浴室的东西。 大人数用の大鍋を買い、そこに水を張って外でぐつぐつ煮立たせる。それを、三分の一水を注いだ樽に注ぐだけだ。 买了很多人用的大锅,在那里贴上水,在外面咕嘟咕嘟地煮。只是把它倒进倒了三分之一水的桶里。 屋外なので、冬は寒い。けれど、蜜蜂は汗の臭いに敏感なので、巣箱に近づけなくなる。 因为是室外,所以冬天很冷。但是,蜜蜂对汗臭很敏感,所以不能靠近蜂箱。 体は清潔さを保っていないといけないのだ。 身体必须保持清洁。 石鹸で全身洗い、樽の湯船に浸かる。 用肥皂全身清洗,浸泡在桶里的澡盆里。 「はー……」 “啊……” 星がきれいだ。そんなことを考えつつ、ゆったりと空を眺めていた。 星星很漂亮。一边想着那样的事情,一边悠闲地眺望着天空。 家に戻ると、兄達は酒盛りを楽しんでいるようだった。いい気なものである。 回到家,哥哥们好像很享受酒宴。好心好意。 屋根裏部屋に行こうとしたが、押し上げて開ける小口が開かない。 我想去阁楼房间,但是推上去打开的小口打不开。 「うわっ、最悪」 “哇,糟透了。” 誰かが、小口の上で眠っているのだろう。たまに、あるのだ。 有人在小口上睡着了吧。偶尔会有。 まあ、今日は小屋に行こうと思っていたので、別にいいのだが。 嗯,我今天想去小屋,没关系。 にゃんにゃんおじさんこと、マクシミリニャンは小屋に来ているだろうか。きっと、必死になって婿を探していたはずだ。 喵喵叔叔,马克西米莉娜来小屋了吗。一定是拼命地寻找女婿。 肉が売れたかも、気になる。 肉可能卖出去了,我很在意。 外套を着込み、小屋へ向かった。人影はない。 穿上大衣,走向了小屋。没有人影。 来たら、扉でも叩いてくるだろう。そう思い、布団へ潜り込んだ。 来了的话,门也会敲的吧。这样想着,钻进了被窝。 まどろんでいたら、扉がトントンと叩かれる。ハッと目を覚まし、起き上がった。 如果睡着了,门就会被咚咚地敲。突然醒来,爬了起来。 マクシミリニャンだろう。 是马克西米利尼亚吧。 寝ぼけ眼で扉を開くと、思いがけない人物が懐へと飛び込んできた。 睡眼惺忪地打开门,一个意想不到的人跳进怀里。 「イヴァンさん!」 “伊凡先生!” 「ロマナ!?」 “罗曼娜!?”