養蜂家の青年は、蜜薬師の娘と蕎麦の種まきをする 养蜂家的青年和蜜药师的女儿一起播种荞麦面 飼育しているのは、山羊だけではなかった。 饲养的不仅仅是山羊。 鶏と犬もいた。 还有鸡和狗。 鶏は黒い羽を持つ品種だった。十年から十五年も生きるらしい。卵と肉を目的に飼っているようだ。 鸡是有黑色羽毛的品种。好像活了十到十五年。好像是以鸡蛋和肉为目的饲养的。 犬は母屋にいた。アニャの部屋で飼っているという。小型犬かと思いきや、熊みたいにでかい犬が出てきたので驚いた。 狗在主房。据说是在阿尼亚的房间里养的。原以为是小型犬,没想到却出现了像熊一样大的狗,吓了一跳。 毛量の多い犬で、茶色と黒の混じった毛並みをしている。 毛量大的狗,有茶色和黑色混合的毛。 ツヤツヤと輝く毛は、アニャが丁寧に手入れをしているのだろう。 闪闪发光的毛,是阿尼亚精心保养的吧。 「この子は、ヴィーテス。護畜犬なんだけれど、おっとりしていて、向いていなかったみたい。異国人が犬鍋にして食べたいって言っているところを、私が飼うって引き取ってきたのよ」 “这孩子是维特斯。虽然是护畜犬,但是很大方,好像不适合。外国人说想做狗锅吃的时候,我养了他回来。” 「そうだったんだ」 「原来是这样。」 初対面の俺に対して吠えもせず、それどころか頭を撫でただけでお腹を見せていた。 对初次见面的我也不叫,不仅如此,只是抚摸着头就让我看到了肚子。 護畜犬とは思えないほど人懐っこい。 与人亲近得不像是护畜犬。 普段は家で眠ったり、庭をのそのそ散歩したりしているのだという。驚くほど、普通の愛玩犬であった。 平时在家里睡觉,在院子里散步。令人吃惊的是,这是一只普通的宠物狗。 夜は、アニャを温めてくれるらしい。布団に入れて、一緒に寝ているのだとか。 晚上好像会给我加热。放进被子里一起睡觉之类的。 それにしても、異国では犬を鍋にして食べる文化があるとは……。 即便如此,在异国竟然有把狗做成锅吃的文化……。 「お前、犬鍋にならなくて、よかったな」 “你没成为狗锅,真是太好了。” 「わっふ!」 “哇!” そんなことを話しかけながら、朝食である牛の骨付き肉を与えた。 一边说着那样的话,一边给了作为早餐的牛的带骨头的肉。 ◇◇◇ ◇◇◇ マクシミリニャンお手製の朝食を囲む。 围着马克西米利尼亚亲手做的早餐。 「たんと食べるがよい!」 “一下子吃吧!” 食卓には、昨日アニャが焼いた蕎麦パンに昨晩の残りのスープ、蜂蜜に、スライスしたハムにオムレツが並べられている。 餐桌上摆着昨天阿尼亚烤的荞麦面包和昨晚剩下的汤、蜂蜜、切片的火腿和煎蛋。 オムレツは綺麗な形に焼き上がっている。剛腕のマクシミリニャンが作ったとはとても思えない。 煎蛋卷烤得很漂亮。我不认为这是铁腕马克西米莉娜做的。 祈りを捧げたのちに、いただく。 祈祷之后再吃。 「イヴァン、これ、オレンジの花の蜂蜜なの。食べてみて」 “伊凡,这是橘子花的蜂蜜。尝尝看。” 山には百年ほど前にオレンジの木が植えられ、蜂蜜を採っているようだ。寒暖差の激しい気候から、甘い果実を生らすことはないが、おいしい蜂蜜は採れるらしい。 山上大约一百年前种了橘子树,好像在采蜂蜜。在温差很大的气候下,虽然不会长出甜的果实,但好像能采到美味的蜂蜜。 蕎麦パンに塗り、頬張る。 涂在荞麦面面包上,大口吃。 「――わっ、おいしい」 “——哇,真好吃。” ほのかな酸味があり、あっさりしている。パンとの相性も抜群だ。 有淡淡的酸味,很清淡。和面包的搭配也很出众。 「ヨーグルトに垂らしても、おいしいのよ。もう少ししたら、山羊のお乳が取れるから、作ってあげるわ」 “滴在酸奶里也很好吃。再过一会儿,山羊的奶就掉了,我给你做。” 「楽しみにしている」 “我很期待。” ヨーグルトが作れるまで、ここにいるかは謎であるが。深く突っ込まないで返事だけしておいた。 在酸奶做好之前,在这里是个谜。没有深入,只回答了。 マクシミリニャン特製の、オムレツも絶品だった。卵はとろとろ半熟で、トマトソースに絡めて食べる。パンの上に載せて食べても、おいしかった。 马克西米利尼亚特制的煎蛋也是绝品。鸡蛋是粘糊糊的半熟,和番茄酱缠在一起吃。放在面包上吃也很好吃。 ハムは塩けが強かったが、これから汗を掻いて働くのでちょうどいいだろう。 火腿的盐伤很重,但是接下来要出汗工作,正好吧。 しかし、アニャは口にした途端、マクシミリニャンに抗議する。 但是,阿尼亚一开口就向马克西米利尼亚提出抗议。 「お父様、これ、スープ用のハムよ」 “爸爸,这是汤用的火腿。” 「む、そうであったか?」 “嗯,是这样吗?” 「塩辛いでしょう?」 “很咸吧?” 「言われてみれば、そうだな」 “说起来,是这样啊。” どうやら、塩けの利いたハムではなく、スープ用に塩っ辛く仕上げたものだったようだ。 看来,不是放盐的火腿,而是做汤用的咸的。 「イヴァン、あなた、塩辛くなかったの?」 “伊凡,你不觉得咸吗?” 「ちょっと塩けが強いなとは思ったけれど、こういうものだと」 “我还以为盐有点重,原来是这样的。” アニャはこめかみを押さえ、深いため息を返す。 阿尼亚按住太阳穴,发出深深的叹息。 「お父様は、たまにこういうことをやらかすの。もしも何か気づいたら、指摘してあげて」 “父亲偶尔会做这样的事。如果有什么发现的话,请指出。” 「はい」 “是的。” ここは従順に、頷いておいた。 这里顺从地点头了。 「今日は、畑に蕎麦の種を植えに行って――それから蜂の巣箱を見に行くわ」 “今天去田里种荞麦种子——然后去看蜂箱。” 「ならばアニャ、イヴァン殿に、大角山羊の乗り方を教えてやってくれ」 “那嚒,阿尼亚,请告诉伊凡大人大角山羊的乘坐方法。” 「いいけれど、大丈夫?」 “没关系,没关系吗?” 「あまり、大丈夫ではないかも」 “可能不太好。” 馬の乗り方でさえ知らないのに、山羊に乗れというのは無謀ではないか。 连骑马的方法都不知道,骑山羊是不是太鲁莽了。 「山羊も、嫌がらない?」 “山羊也不讨厌吗?” 「大丈夫よ。あの子達は、優しい子だから」 “没关系,那些孩子都是温柔的孩子。” 不安でしかないが、山羊が背中に乗せてくれることを祈るしかない。 虽然只是不安,但只能祈祷山羊能骑在背上。 「じゃあ、蜜蜂との付き合い方も、教えなければいけないわね」 “那嚒,我也得教你怎么和蜜蜂交往。” 「アニャ、イヴァン殿は養蜂家だ」 “阿尼亚,伊凡大人是养蜂人。” 「え、イヴァンは養蜂家なの!?」 「咦,伊凡是养蜂人吗!?」 アニャは瞳を見開き、俺を見る。 阿尼亚睁开眼睛,看着我。 「あれ、言ってなかったっけ?」 “咦,你没说吗?” 「言っていないわ!」 “我没说!” マクシミリニャンは俺が話していると思い込み、俺はマクシミリニャンが話していると思っていたようだ。一番ダメなパターンである。 马克西米莉娜以为是我在说话,我好像以为是马克西米莉娜在说话。这是最不行的模式。 共に、アニャに謝罪した。 一起向阿尼亚道歉。 「俺がしていたのは花から蜜を採る養蜂なんだ。野山の木々から蜜を採る養蜂は初めてで、いろいろ教えてもらうことになるけれど」 “我做的是从花中采蜜的养蜂。这是我第一次从山野的树木中采蜜的养蜂,我会教你很多东西。” 「大丈夫よ。蜜蜂との付き合い方を知っていたら、私が教えることは何もないわ。ほとんど、街のほうで行われている養蜂と、同じはずだから」 “没关系,如果我知道怎么和蜜蜂打交道,我就没什嚒可教的了。几乎和街上的养蜂一样。” 「だったら、よかった」 “那就好了。” 野草茶を飲みながら腹を休めたあと、アニャと共に畑に移動した。 一边喝着野草茶一边休息之后,和阿尼亚一起去了田地。 マクシミリニャンは、山のいたる場所に仕掛けている罠を見て回るらしい。 马克西米利尼亚好像在到处寻找设置在山上的陷阱。 罠猟で、獣肉を得ているようだ。 通过陷阱狩猎,好像得到了兽肉。 「お父様、行ってらっしゃい」 “爸爸,您走好。” 「ああ、行ってくる」 “啊,我走了。” 「気を付けてね」 “请小心。” アニャの言葉に、マクシミリニャンは背中を向けつつ手を振る。 面对阿尼亚的话,马克西米利尼亚一边背对着一边挥手。 「さて、私達も、仕事をしましょう」 “那么,我们也工作吧。” 「そうだね」 “是啊。” 農具を持ち、移動する。 拿着农具移动。 敷地内の石垣を登った先に、畑を作っているらしい。 登上用地内的石墙的地方,好像在种田。 「ここよ」 “在这里。” 想定よりもかなり広い畑があった。春はここで蕎麦とトマト、カボチャにズッキーニ、パプリカ、ラディッシュにカブなどの夏に収穫する野菜を育てるらしい。 有比预想的还要大的田地。春天在这里培育荞麦面、西红柿、南瓜、西葫芦、辣椒、萝卜等夏天收获的蔬菜。 「蕎麦は来週蒔くつもりだったけれど、ついでにやっちゃうわ。イヴァンの蕎麦は、一番端のほうに蒔いてくれる?」 “本来打算下个星期种荞麦面的,顺便做一下吧。伊凡的荞麦面,能给我在最边上种吗?” 「わかった」 「明白了。」 蕎麦は春蒔きと秋蒔きの、年二回育てることができる。 荞麦面是春播和秋播,一年可以培育两次。 この辺りでは、春に種を蒔いているようだ。 这附近好像在春天播种。 我が国の蕎麦の歴史は長い。十四世紀頃に伝播(でんぱし)たと言われている。 我国的荞麦面历史悠久。据说是十四世纪左右传播的。 小麦と大麦の間に育てられることから、農民の間で瞬く間に広がっていったらしい。 因为是在小麦和大麦之间培育的,所以在农民之间瞬间蔓延开来。 蕎麦はパン作りに使われたり、パン粉代わりにまぶされたり。練って湯がいたものを食べたりと、料理の幅も広い。国民食と言っても過言ではないだろう。 荞麦面是用来做面包的,也可以代替面包粉。吃了搅拌好的有热水的东西,料理的范围也很广。说是国民食品也不为过。 革袋の種を蒔き終えると、アニャの種蒔きも手伝う。 把皮袋里的种子播完后,还帮阿尼亚播种。 たっぷり水を与えたら、あとは芽吹くのを待つばかりだ。 给了足够的水,剩下的就等着发芽了。 「イヴァン、あなた、手持ちの種を全部植えてよかったの?」 “伊凡,你能把手里的种子全部种下来吗?” 「持っていても、仕方がないし」 “拿着也没办法。” 「そう」 “是的。” しばし、種を植えた畑を眺める。 暂时眺望种了种子的田地。 蕎麦は種蒔きから発芽まで、だいだい早くて一週間くらいか。 荞麦面从播种到发芽,最早也要一周左右。 三日でというと、奇跡に近いのかもしれない。 如果说是三天的话,也许接近奇迹了。 「アニャ、蕎麦の芽は、三日以内に出てくると思う?」 “阿尼亚,你觉得荞麦的芽会在三天之内长出来吗?” 「さあ?」 “来吧?” 神のみぞ知るものなのだろう。しかし、アニャは言葉を付け加える。 只有神才知道吧。但是,阿尼亚附加了一句话。 「でも、芽が出てきたら、いいわね」 “但是,如果发芽的话就好了。” 「うん」 “嗯。” ここが俺にとって永遠の土地となるかは、蕎麦の芽次第。 这里对我来说是永远的土地,取决于荞麦的芽。 あとは、三日間待つばかりだろう。 只剩下等三天了吧。 ◇◇◇ ◇◇◇ 種蒔きが終わったら、大角山羊の騎乗方法を教えてもらう。 播种结束后,请告诉我大角山羊的骑乘方法。 「基本的には、馬の背中に跨がるのと同じよ。鞍を装着して、頭絡(とうらく)を付けて、手綱で操るの」 “基本上就像跨在马背上一样。装上鞍,戴上头络,用缰绳操纵。” アニャは手慣れた様子で、大角山羊に装着していく。 阿尼亚用习惯了的样子,装在大角山羊上。 そして、鐙(あぶみ)を踏んで騎乗して見せた。 然后,踩着马镫骑给他看。 「ね、簡単でしょう?」 “啊,很简单吧?” その言葉に、「見ているだけだったら」と返した。 对那句话,他回答说:“如果只是看着的话。”。