養蜂家の青年は、食いっぱぐれて湖に行く 养蜂青年贪吃着去湖边 ミハルは草むらにゴロリと転がり、目を細めながら青空を見る。 米哈尔咕噜咕噜地滚动在草丛里,眯着眼睛看着蓝天。 「イヴァン、お前さ。このままだと、働き過ぎて早死してしまうぞ」 “伊凡,是你。照这样下去,你会因为工作过度而早死的。” 「大丈夫だよ。うちに優秀な女王蜂がいる限り、死にはしない」 “没关系,只要我们家有优秀的蜂王,就不会死。” 兄達は酷い扱いをするが、まだ、母親がたしなめてくれている。状況はまだ、最悪ではない。 哥哥们虽然很严厉,但是母亲还在责备我。情况还不是最糟糕的。 「お袋さんが死んだあとは、どうするんだよ」 “你母亲死后,你该怎么办?” 「一応、独立は考えているよ」 “首先,我在考虑独立。” 週に一度の休日に、ミハルの祖父の趣味である漁に付き合っていた。釣りの名手で、毎回大量の魚を釣って帰るのだ。 在一周一次的假日里,我和米哈尔的祖父的爱好捕鱼打交道。他是钓鱼高手,每次都要钓大量的鱼回来。 そのあと、釣った魚を捌いて街に売りに行く。そのさい、売り上げの二割を報酬として渡してくれるのだ。 之后,把钓到的鱼卖到街上。那个时候,把销售额的二成作为报酬交给我。 その金を、コツコツ貯めている。いつか独立して、自分だけの養蜂園を開くのが夢だ。 我孜孜不倦地存着那笔钱。梦想有一天能独立开一个只属于自己的养蜂园。 「祖父ちゃん、イヴァンを養子として引き取ったら、漁師になるとか言っているぜ」 “爷爷,他说如果把伊凡领养回来,他就会成为渔夫。” 「週に一回するから、楽しいだけなんだよ」 “一周做一次,只是很开心而已。” 「だよなあ」 “是啊。” ミハルの祖父は、特に俺を気に入ってくれている。ブレッド湖のほとりにある小屋を、譲ってくれたくらいだ。 米哈尔的祖父特别喜欢我。甚至把布莱德湖边的小屋让给了我。 「あーあ。俺達家族は、選ばれなかったか。蜜蜂さえいなかったら――ぶわっ!!」 “啊——啊。我们家人没被选上吗?如果连蜜蜂都没有的话——哇!!” ミハルの顔面目がけ、蜂が飛んできた。ぶぶぶ、と音を立てながら、ミハルの顔にまとわりついている。手で乱暴に払おうとしているところを制止した。 蜜蜂朝着米哈尔的脸飞了过来。一边发出噗噗的声音,一边缠在米哈尔的脸上。我制止了想用手粗暴地驱除的地方。 「待ってミハル。動かないで」 “等等,米哈尔,别动。” 飛び回る蜂を、素手で捕まえる。 徒手抓住飞来飞去的蜜蜂。 「うわっと!」 “哇!” 「もう大丈夫」 “已经没事了。” ミハルは飛び起き、安堵の息を吐いた。 米哈尔跳起来,吐出了安心的气息。 「イヴァン、ありがとう」 “伊凡,谢谢。” 「いえいえ」 “不,不。” 拳に蜂を握りしめたままだったので、ミハルはぎょっとする。 拳头里一直握着蜜蜂,米哈尔大吃一惊。 「お、おい。蜂を握りしめて、大丈夫なのかよ」 “喂,喂。你握紧蜜蜂,没事吧?” 「平気。これは雄蜂だから、針は持っていないんだ」 “没关系,这是雄蜂,我没有针。” 「え、そうなのか!? でも、蜜蜂の針は、通常は体内にあるんだよな? どうして見た目だけで雄蜂だとわかったんだ?」 “啊,是吗!?但是,蜜蜂的针通常都在体内吧?为什么光从外表就知道是雄蜂呢?” 「雄蜂は雌蜂より、体が大きいからね」 “因为雄蜂比雌蜂身材高大。” 「あー、なるほど」 “啊,原来如此。” 手を開くと雄蜂は勢いよく跳び上がり、礼を言うように頭上を飛び回ったあといなくなった。 一张开手,雄蜂就飞快地跳了起来,像道谢一样在头顶上飞来飞去之后就不见了。 「しかし、なんで、雄蜂には針がないんだ?」 “可是,为什么雄蜂没有针呢?” 「何もしないから」 “因为我什么都不做。” 「へ?」 “咦?” 「蜜蜂の雄の存在意義は子孫繁栄のみで、あとは巣でぐうたら過ごすんだよ」 “蜜蜂雄性的存在意义只是子孙繁荣,之后就在巢穴里无所事事了。” 「えー、なんだそれ! お前のところの、兄さんみたいじゃん!」 “嗯,那是什么!你那里的,不是像哥哥吗!” ミハルの容赦ない指摘に、思わず笑ってしまった。 对于米哈尔毫不留情的指责,我情不自禁地笑了起来。 ◇◇◇ ◇◇◇ あっという間に、一日が終わる。 一转眼,一天就结束了。 疲れた体を引きずるように、家路についた。 拖着疲惫的身体,踏上了回家的路。 イェゼロ家は、家長である母ベルタを始めに、親から孫世代まで大家族が暮らしている。母屋の他に離れが六つあるが、まだまだ増える予定だ。 耶泽罗家族以家长的母亲贝塔为首,从父母到孙子一代都有大家庭生活。除了主屋还有六个距离,但还将增加。 俺個人の部屋なんてあるわけがなく、屋根裏部屋を改造して使っていたが、それも甥や姪に占領されてしまった。 我不可能有个人的房间,把阁楼改造后使用,但也被侄子和侄女占领了。 恐ろしいかな。兄の妻だけで十三人、甥と姪だけで、二十三人もいるのだ。 好可怕啊。光是哥哥的妻子就有十三个人,光是侄子和侄女就有二十三个人。 くたくたに疲れて帰ってくると、元気いっぱいの甥と姪が遊んでと集まってくる。まともに相手にしていると、夕食を食いっぱぐれてしまう。彼らが可愛くないわけではないけれど、勘弁してくれと思ってしまうのだ。 疲惫不堪地回来后,精神饱满的侄子和侄女一玩就聚集在一起。如果认真对待对方的话,就会吃不完晚饭。虽然并不是他们不可爱,但我还是想原谅他们。 夜は夜で子どもの夜泣きに、走り回って遊ぶ物音や声が聞こえる。それだけならば百歩譲って許せるのだが、兄夫婦の夫婦の営みが聞こえてきた日には、死にたいと思った。 夜晚是夜晚孩子的夜哭,能听到跑来跑去玩的声音和声音。如果只是这样的话,退一百步就可以原谅了,但是在听到哥哥夫妇夫妇的生活的日子里,我想死了。 双子の兄、サシャは去年結婚したばかり。周囲は子どもの誕生を、今か、今かと楽しみにしている。 双胞胎哥哥萨沙去年刚结婚。周围的人都很期待孩子的诞生。 二十三人も子どもがいるのに正気かよと、という率直な感想が浮かんできたが、口にできるわけもなく。 虽然脑海中浮现出了一种坦率的感想,那就是明明有二十三个孩子却很清醒。 新婚夫婦の奮闘を頑張れ、頑張れと応援もできないでいた。 也没能支持新婚夫妇的奋斗,加油。 新しい離れの完成なんて待てやしない。 不能等待新的分离的完成。 そんな中で、ミハルの爺さんから、ブレッド湖のほとりにある小屋を譲って貰った。 在这种情况下,米哈尔的爷爷让我把布莱德湖边的小屋。 夜中に家を飛び出し、小屋で眠る毎日を過ごしている。 半夜从家里跑出来,每天在小屋里睡觉。 夕食を食いっぱぐれたら、湖で魚を釣って食べたらいい。 如果晚饭吃不饱的话,可以在湖里钓鱼吃。 爺さんのおかげで、なんとか暮らしていた。 多亏了爷爷,我才勉强生活着。 今日も今日とて、俺の分の夕食なんて影も形もなかった。 今天和今天,我的晚餐什么的一点影子都没有。 家族が大勢いたら、誰が食べたとか食べていないとか、確認するのは不可能なのだろう。 如果家人大势所趋的话,要确认是谁吃的还是没吃的是不可能的吧。 ロマナも、サシャに部屋に呼び出されていたようなので、顔を合わせる暇もなく。 罗曼娜好像也被萨沙叫到了房间,连见面的时间都没有。 きっと、今頃部屋でよろしくやっているのだろう。 现在一定在房间里做得很好吧。 腹がぐーっと鳴った。 肚子一下子就响了。 ひとまず、釣りをして夕食を調達しなくてはならない。 首先,必须钓鱼准备晚饭。 ブレッド湖には、豊富な魚がいる。おかげで、飢えることはない。ありがたい話である。 布莱德湖有丰富的鱼。托您的福,我不会挨饿的。值得庆幸的事。 明かりは満天の星と月明かり。それから、手元にある小さなランタンの炎だけ。 灯光是满天的星星和月光。然后,只有手边的小灯笼的火焰。 水面に、月と孤島の教会が映し出されている。世にも美しい光景を、独り占めしていた。 水面上映出月亮和孤岛的教堂。世界上也独占着美丽的景象。 と、優雅に湖を眺めている場合ではない。腹の虫は、一秒たりとも待ってくれなかった。今も、ぐーぐーと、空腹を訴えている。 不是优雅地眺望湖泊的时候。肚子里的虫子一秒钟也没等我。现在也在抱怨饿了。 土を掘ってミミズを餌にし、釣り糸を放った。全神経を釣り糸に集中し、しばし待つ。 挖土以蚯蚓为食,放出钓鱼线。全神贯注于钓鱼线,等待片刻。 すると、ググッと糸を引く力を感じた。ひときわ強い力を感じた瞬間、竿を思いっきり引いた。 于是,我感受到了拉线的力量。感受到格外强大的力量的瞬间,用力拉了一下竿。 大きな背びれを持った、縞模様の魚が釣れた。一匹だけでは、満腹にはならないだろう。 钓到了一条有着大背鳍的条纹鱼。只吃一只是不会吃饱的吧。 粘ること一時間、十二匹の魚が釣れる。なかなかの釣果だろう。一気に食べきれる量ではないが、残りは朝食にしよう。 坚持一小时能钓到十二条鱼。很不错的结果吧。虽然不是一口气吃完的量,但是剩下的就吃早饭吧。 腹からナイフを入れて腸を抜き、塩を振って串焼きにする。 从肚子里放入小刀,去掉肠子,撒上盐烤串。 パチパチ、パチパチと焚き火の火が音を立てる。 劈里啪啦,劈里啪啦的篝火发出声音。 風が強く吹くと、火を含んだ灰が舞った。 风一吹,含火的灰就飞舞了。 春が訪れようとしているが、夜は冬のように寒い。 春天就要来了,夜晚却像冬天一样寒冷。 ウサギの毛皮を繋げて作った毛布を、上から被る。 从上面盖上用兔子的毛皮做的毛毯。 魚の焼き加減は、あと少しだろうか。香ばしい匂いを漂わせていた。 烤鱼的程度还有一点吗。散发着芳香的味道。 「……ん?」 “……嗯?” 人の気配を感じた。 我感觉到了人的气息。 目を凝らしても、暗闇なので何も見えない。 即使凝视,因为是黑暗什么也看不见。 だんだんと、姿が浮き彫りになっていく。 渐渐地,身影浮现出来。 見上げるほどの大男が、体を引きずるようにしてやってきたのだ。 一个能抬头看的彪形大汉,拖着身体走了过来。 年頃は四十前後か。一番上の兄と、同じくらいだろう。 大约四十岁左右吧。和最大的哥哥差不多吧。 短く刈った髪に、彫りの深い顔、髭はのびっぱなしだった。腕や太ももは丸太のように太く、全体的にガッシリとした体つきである。 剪得很短的头发,雕刻得很深的脸,胡子一直留着。手臂和大腿像原木一样粗,整体上是硬朗的身材。 軍人かと思ったが、着ている服装は着古した外套にズボンという、一般市民そのものだった。 原以为是军人,但穿的衣服是旧外套和裤子,是普通市民本身。 男は焚き火の前でがっくりうな垂れると、呟くように言う。 男子在篝火前耷拉着,嘟囔着说。 「は、腹が、減った!」 “啊,肚子饿了!” 男の主張を聞き、はてさてどうしたものかと思う。 听了男人的主张,我想到底是怎么回事。