養蜂家の青年は、自宅にて目覚める 养蜂家的青年在家里醒来 にゃんにゃんと、猫の鳴き声が聞こえる。 喵喵地听到猫的叫声。 いつもだったら気にしないのに、どうしてか鳴き声が聞こえるほうへと誘われる。 如果是平常的话就不介意了,不知为什么被邀请去能听到叫声的地方。 家族の誰かが「イヴァン!」と呼んでいる気がしたが、後回しにした。 我觉得家里有人叫我“伊凡!”,但我把它往后推了。 猫の鳴き声はだんだん遠ざかっていく。 猫的叫声渐渐远去。 走って追いかけないと、姿を見ることはできないだろう。 不跑去追的话,是看不到你的身影的吧。 なんだか走りにくい気がして、兄のおさがりの帽子や外套を脱ぐ。ロマナが贈ってくれた靴や手作りの靴下も脱いだ。 总觉得很难跑,脱下哥哥的帽子和外套。她还脱下了罗曼娜送给她的鞋子和手工制作的袜子。 唯一自分で買ったシャツと、ズボンだけになると、ずいぶん走りやすくなった。 如果只是自己买的衬衫和裤子的话,就很容易跑了。 ここでようやく、猫の姿が見える。 在这里终于看到了猫的身影。 金色の毛並みに、青い瞳を持つ美しい猫だった。まるで、こっちへついてこいと誘っているような鳴き声をあげていた。 是一只金色的毛色,有着蓝色眼睛的美丽的猫。简直就像是在邀请他跟我来一样的叫声。 花畑を走り抜け、草原を通り過ぎ、走って、走って、走り抜けると、生まれ育ったブレッド湖を取り囲む景色は見えなくなる。 穿过花圃,穿过草原,跑过去,跑过去,跑过去,就看不到围绕着土生土长的布莱德湖的景色了。 たどり着いたのは、深い、深い、エメラルドグリーンの美しい湖。果てなく広がる湖は、ブレッド湖よりも大きく感じた。 到达的是深、深、翡翠绿的美丽湖泊。我感觉无边无际的湖泊比布莱德湖还要大。 そして、天を衝くようにそびえる雄大な山々。見たこともない光景が、これでもかと広がっていた。 而且,耸立着冲天的雄伟群山。从未见过的光景,就这样蔓延开来。 あまりにも美しく、自然と涙が零れる。 太美了,自然会流泪。 「ここは!?」 “这里是!?” 猫の姿は消え、一人の少女の姿になった。姿はおぼろげで見えないけれど、どうしてか強く惹かれるものがある。 猫的身影消失了,变成了一个少女的身影。虽然样子很模糊看不见,但不知为什么却有被强烈吸引的东西。 差し出された手を掴もうとしたら、景色がぐにゃりと歪んだ。 想要抓住伸出的手,景色却扭曲了。 「にゃんにゃん、にゃんにゃん」 “喵喵,喵喵” 低い、中年親父の声が聞こえた。先ほどの、鈴の音が鳴るような猫の声とは真逆である。 听到了低沉的中年父亲的声音。和刚才那铃铛般的猫的声音完全相反。 あまりにもにゃんにゃん言うので、叫んでしまった。 因为太喵喵地说了,所以喊了起来。 「うるさいな!!」 “真烦人!!” 瞼を開くと、俺を覗き込む中年親父の姿があった。 睁开眼睛,看到了窥视我的中年父亲的身影。 「にゃんにゃんおじさん……じゃなくて、マクシミリニャン?」 “喵喵叔叔……不是,是马克西米莉娜?” 「そうである」 “是的。” どうやら、今まで夢を見ていたようだ。何か印象的な内容だった気がするが、よく思い出せない。それよりも、顔面がズキズキ痛み、夢どころではなかった。 看来,到现在为止都在做梦。我觉得是什么印象深刻的内容,但是想不起来。与此相比,脸上的疼痛并不是梦。 「痛った……!」 “好痛……!” ここでようやく、サシャに殴られたときの記憶が甦ってきた。 在这里,终于恢复了被萨沙殴打时的记忆。 まずは、マクシミリニャンに感謝の気持ちを伝える。彼がいなかったら、俺はサシャに殺されていただろう。 首先,向马克西米利尼亚表达感谢之情。如果他不在的话,我会被萨沙杀死的。 「おじさん……ありがとう、ございました」 “叔叔……谢谢,谢谢。” 「気にするでない。それよりも、灯りも持たずに我に助けを求めてきた、少年に感謝するといい」 「我不介意。与其这样,还不如感谢没有点灯就向我求助的少年。」 ツィリルが、マクシミリニャンを呼んできてくれたようだ。 好像是齐里尔把马克西米利尼亚叫来了。 もともと、小屋に向かっていたようだが、それでも走って五分くらいの距離は離れていたという。 原本好像是去了小屋,但据说即使这样也离跑了五分钟左右的距离。 ツィリルのおかげで、俺は助かったのだ。 多亏了齐里尔,我得救了。 マクシミリニャンは「しばし休め」と言って出て行った。 马克西米利尼亚说着“暂时休息”就出去了。 入れ替わるように、母が部屋に入ってくる。 母亲像换一样走进房间。 ここでようやく、この場所が母の寝室であることに気付いた。さすがに、屋根裏部屋に俺を運べなかったのだろう。 在这里,我终于注意到这个地方是母亲的卧室。真不愧是没能把我搬到阁楼里吧。 「全治、一週間ですって。幸いにも、骨は折れていないそうよ」 “痊愈一周,幸好骨头没有骨折。” 呆れたように、言われてしまった。 像是被吓了一跳似的,被说了。 顔全体が死ぬほど痛いのに、骨は折れていないなんて。意外と、頑丈なのだなとしみじみ思う。 整张脸都痛死了,骨头居然没有折断。意外地觉得很结实。 顔は包帯だらけのようだ。傷口が痒いような気がして、気持ち悪い。 脸上好像全是绷带。我感觉伤口很痒,很恶心。 口の中も、切っているのかじくじく痛む。 嘴里也在切吗。 それよりも、気になっている件を質問してみた。 比起那个,我试着问了一下在意的事情。 「サシャは?」 “萨沙呢?” 「あの子は、酷く取り乱していたから、ブレッド湖の教会に連れて行ったわ。神父様が、しばらく預かってくれるそうよ」 “那孩子太慌乱了,所以带他去了布莱德湖的教堂。听说神父会暂时保管的。” 「そうなんだ。大丈夫かな」 “是啊,没事吧。” 「あなたは、そんな状態になっても、サシャの心配をするのね」 “你即使到了那种状态,也会担心萨沙的。” 「だって、サシャは、双子の兄、だし」 “因为萨沙是双胞胎哥哥。” 自分も一歩間違えば、サシャのようになっていた可能性はある。だから、他人事のようには思えなかった。 如果自己也走错一步的话,有可能会像萨沙一样。所以,我不认为这是别人的事。 俺とサシャは、元は一つだったものが、二つになった存在だから。 我和萨沙本来是一个,但却是两个。 「ロマナは?」 “罗曼娜呢?” 「修道院に行くと言って、出て行ったわ」 “他说要去修道院,然后就出去啦。” 義姉達が引き留めたようだが、修道女になると言って聞かなかったと。母も説得に行ったらしいが、取り合ってもらえなかったらしい。 大嫂们好像挽留了他,但他说要成为修女却没问。母亲好像也去劝说了,但好像没有被理睬。 「まさか、サシャとロマナが上手くいっていなかったなんて、思いもしなかったわ」 “没想到萨沙和罗曼娜没能顺利进行。” 「まあ、元は他人だから、本当の家族になるのは、難しいよ」 “哎呀,原来是别人,要成为真正的家人是很难的。” 「結婚していないあなたが、どうしてわかったふうな口をきくのよ。でも、その通りなのよね」 “没有结婚的你,为什么会说出明白的话呢?但是,你说得对。” 家族とは、なんなのか。改めて、考える。 家人是什么。重新考虑。 俺達人が定義する家族とは、決して蜜蜂のように割り切った関係ではない。 我们人类定义的家族,绝对不是像蜜蜂一样割舍的关系。 手と手を取り合って助け合い、愛を与え、また愛を返す存在なのだろう。 是手和手互相帮助,给予爱,又返还爱的存在吧。 それができないと、関係は破綻してしまう。 如果做不到这一点,关系就会破裂。 結婚を経て結ばれた存在であれ、血を分け合った存在であれ、特定の家族に頼り切るというのは、もはや家族ではない。 无论是经过婚姻结合的存在,还是分享着鲜血的存在,依靠特定的家人已经不是家人了。 言葉を選ばないで言うと、蜜蜂に寄生する害虫のようになってしまうのだ。 如果不选择语言的话,就会变成寄生在蜜蜂上的害虫。 寄生されたら、本人も、家も、何もかもがダメになってしまう。 如果被寄生的话,本人、家、一切都会变得不行。 ロマナもそれに、気付いてしまったのかもしれない。 也许罗曼娜也注意到了这一点。 俺も、そうなりたくない。 我也不想变成那样。 いい機会だと思い、母に決意を告げる。 我觉得这是个好机会,告诉母亲我的决心。 「母さん、俺、この家を出る」 “妈妈,我要离开这个家。” 「なんですって!?」 “你说什么!?” 「独立したいんだ」 “我想独立。” 母は、怒りとも悲しみともとれない表情で、じっと俺を見つめていた。 母亲带着愤怒和悲伤都无法消除的表情,目不转睛地看着我。