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養蜂家の青年は、蜜薬師の花嫁と蜜薬を作る

养蜂青年与蜜药师新娘做蜜药

アニャは月に一度、一人で村に下りて具合が悪い村人の話を聞いたり、作った蜜薬を店に卸したりしているらしい。

阿尼亚每月都会独自一人下村听村民说一次不舒服的话,或者把做的蜜药批发给店里。

家畜や犬の世話があるので、マクシミリニャンと一緒に行くことはないようだ。

因为有家畜和狗的照顾,所以好像不会和马克西米利尼一起去。

今回、買い物のついでに、それらも済ませるらしい。アニャはせっせと薬作りを行っている。今日一日、助手を務めるよう命じられた。

这次买东西的时候,顺便把它们也做完了。阿尼亚在不停地做药。今天一天,我被命令担任助手。

「最初に作るのは、売れ筋の打ち身軟膏よ」

“最开始做的是畅销的全身软膏。”

力仕事をしていたら、知らぬ間に青あざができているときがある。あれは、地味に痛い。

如果做力气活的话,有时会在不知不觉中长出青痣。那是朴素的痛。

もしも街で打ち身に効く薬が売っていたら買っていただろう。それほど、打ち身だらけの毎日を送っていたような気がする。

如果街上有卖对身体有效的药的话就买了吧。我觉得每天都过得很懒散。

「アルニカという花を使って作るの」

“用一种花做的”

乾燥させた黄色い花を、アニャは見せてくれた。

阿尼亚给我看了干燥的黄色的花。

「このアルニカには、内出血を治してくれる力があるわ。他にも、筋肉痛やねんざに効果を示すのよ」

“这个阿尔尼卡有治疗内出血的力量。另外,对肌肉疼痛和扭伤也有效果。”

「へえ、そうなんだ」

「咦?是的。」

じめっとした、山の高い位置に自生しているらしい。

好像野生在山的高处。

夏から秋にかけて開花し、花の部分のみを摘んで使うのだとか。

从夏天到秋天开花,只摘花的部分使用。

「まず、煮沸消毒した瓶に乾燥させたアルニカを入れて、オリーブオイルにじっくり漬けていくの」

“首先,在煮沸消毒的瓶子里放入干燥的阿尔尼卡,慢慢地浸泡在橄榄油里。”

本日は瓶十個分作るらしい。アニャがアルニカを入れて、そのあと俺がオリーブオイルを瓶に注ぐ。

今天好像要做十个瓶子。阿尼亚把阿尔尼卡放进去,然后我把橄榄油倒进瓶子里。

「これを、日当たりがいい窓際に半月置くのよ。その間に、オリーブオイルに有効成分が染み出てくるの。半月経ったものが、あれよ!」

“把这个放在阳光充足的窗边半个月。在这期间,橄榄油会渗出有效成分。过了半个月的东西就是那个!”

アニャは窓際に置いてあった瓶を指し示す。

阿尼亚指着放在窗边的瓶子。

「あれ、アルニカをオリーブオイルに漬けたやつなんだ。なんか、食べ物だと思っていた」

“咦,是用橄榄油腌制阿尔尼卡的家伙。我还以为是食物呢。”

「食べ物はだいたい、地下に保存しているわよ」

“食物基本上都保存在地下。”

「だよね」

「是啊。」

オリーブオイルに漬けたアルニカを、漉していく。アルニカ自体も絞って、有効成分を一滴たりとも無駄にしない。

将浸泡在橄榄油中的阿尔尼卡过滤。阿尔尼卡本身也拧干,一滴有效成分也不浪费。

オリーブオイルでベタベタになった手を洗い、次なる作業に移る。

用橄榄油清洗粘糊糊的手,然后进行下一步的作业。

「ボウルにアルニカの成分を含んだオリーブオイルに蜜蝋を加えて、湯煎で溶かしていくの。クリーム状になったら、打ち身軟膏の完成よ」

“在碗里加入含有阿尔尼卡成分的橄榄油和蜂蜡,用热水煎融化。如果变成奶油状的话,就完成了全身软膏。”

打ち身軟膏を、小さな瓶にせっせと詰める。最後に空気を抜くため、トントンと底を叩きつけておくのを忘れない。

把打身药膏紧紧地塞进小瓶里。最后为了排气,别忘了咚咚地敲到底。

瓶には、“アニャの蜜薬・打ち身軟膏”と書かれた紙を巻いて紐で縛る。

瓶子上缠着写有“茴香蜜药·打身软膏”的纸,用绳子绑上。

「これにて、打ち身軟膏の完成よ」

“这样,打身软膏就完成了。”

「おー!」

“喂!”

薬だけでなく、女性用の美容品も作っているらしい。

不仅是药,好像还制作了女性用的美容品。

「日焼け止めに、リップバーム、化粧水にハンドクリームとか、いろいろね」

“防晒霜、唇膏、化妆水、护手霜等各种各样。”

美容品も人気のようで、すぐに売り切れてしまうようだ。

美容品也很受欢迎,好像很快就卖完了。

「とうとう、明日になったわね」

“终于到明天了。”

「そうだね」

“是啊。”

「いつも一人で行っているから、なんだか楽しみだわ」

“总是一个人去,总觉得很期待。”

アニャがにこにこしているので、俺までなんだか楽しみになってきた。

因为阿尼亚笑嘻嘻的,连我都变得很期待了。

こんな感情なんて、いつ振りだろうか。

这样的感情,什么时候会有呢。

不思議な気分だった。

感觉很不可思议。

◇◇◇

◇◇◇

朝――目覚めると着替えが入っているカゴに何も入っていなかった。アニャはまだ夢の中。先に、歯磨きと顔を洗いに行く。

早上——一醒来,有换衣服的篮子里什么都没有。阿尼亚还在梦中。我先去刷牙和洗脸。

鏡を覗き込んだら、顔面の怪我がすっかり治っているのに気づいた。

我照了照镜子,发现脸上的伤已经完全好了。

昨日までは若干顔が腫れていたが、アニャの打ち身軟膏が効いたのだろうか。ボウルにこびりついていたものを、塗ってもらっていたのだ。

到昨天为止脸有点肿,是阿尼亚的打身软膏起作用了吗。把粘在碗里的东西涂上了。

久しぶりに、自分の顔を見たような気がする。こんな顔だったんだ、と我がことながら思ってしまった。

好久没见了,感觉好像看到了自己的脸。我自己也觉得是这样的脸。

顔を拭く大判の布を手に取ったら、一緒に着替えが置いてあることに気づいた。手紙も添えてある。

我拿起擦脸的大金币布,发现一起放着换衣服。还附上了信。

手に取ってみると、新しくアニャが作ったであろう服だった。

拿在手里一看,是新阿尼亚做的衣服。

リネンで作った腰まで丈がある長袖の貫頭衣に、黒いズボン。それから、アニャが作ってくれた蔦模様が刺繍された腰帯がきれいに畳まれていた。

用亚麻布做的长到腰的长袖贯头衣,黑色的裤子。然后,阿尼亚给我做的绣有爬山虎图案的腰带被叠得很漂亮。

「え、何これ、すごい……!」

“啊,这是什么,好厉害……!”

腰帯を手に取る。蔦を刺した刺繍が立体的だった。きっと、故郷の女性が作る刺繍とは異なる縫い方をしているのだろう。

拿起腰带。扎了爬山虎的刺绣很立体。一定是和故乡的女性做的刺绣不同的缝法吧。

精緻で、繊細で、美しい。すっと伸びる姿は、結婚という意味があるという。

精致,纤细,美丽。长得很快的样子,据说有结婚的意思。

アニャと俺の縁を繋ぐような腰帯だろう。

这是连接阿尼亚和我缘分的腰带吧。

腰に巻いて結んでみる。端には房飾りがあってとてもオシャレだ。寸法もぴったり。作業に邪魔にならないような長さで結んだ先が垂れているのが、カッコイイと思った。

围在腰上试着系上。边上有房饰很时髦。尺寸也很合适。我觉得用不妨碍作业的长度系的尖端垂下来很帅。

なんていうか、気が引き締まる腰帯である。

怎么说呢,这是一条紧张的腰带。

手紙には一言。“イヴァン、いつもありがとう”と書かれていた。

信中有一句话。写着“伊凡,一直以来谢谢你”。

毎日忙しいのに、暇を見つけて作ってくれたのだ。なんだか泣けてくる。

每天都很忙,却抽空给我做。总觉得哭起来了。

アニャはありったけのものを、俺に差し出してくれる。そんな彼女に、何を返せるのだろうか?

阿尼亚把所有的东西都交给我。那样的她,能返还什么呢?

と、感激している場合ではない。そろそろ、マクシミリニャンやアニャが起きてくる時間だろう。素早く着替えた。

不是感激的时候。差不多该起床了吧。迅速换了衣服。

リネンの上着とズボンは、驚くほど着心地がいい。この服に、アニャの腰帯がしっくりくるのだ。

亚麻布上衣和裤子穿起来令人吃惊。这件衣服很适合阿尼亚的腰带。

せっかくアニャがすばらしい服を作ってくれたのだから、相応しい姿にならなければ。髪を梳ろうと思って、鏡に向き直る。しっかり櫛を通したが、癖毛なので見た目は変わらないという結果に終わった。

好不容易阿尼亚给我做了一件很棒的衣服,我必须要做出合适的样子。我想梳头,然后对着镜子。虽然很好地通过了梳子,但是因为是卷发,所以外观没有变化。

居間のほうから物音が聞こえた。アニャが起きてきたのかもしれない。

从起居室传来了响声。也许是阿尼亚起来了。

ひょっこり顔を覗かせると、起きたばかりであろうアニャと目があった。

突然露出脸,看到了刚起床的阿尼亚和眼睛。

「あの、アニャ、これ、ありがとう」

“那个,阿尼亚,这个,谢谢。”

「あ、えっと、イヴァン。その、よく似合っているわ」

“啊,呃,伊凡。那个,很适合你。”

なんだかぎこちない態度だった。どうしたのだろうか。

总觉得态度很僵硬。怎么了。

「なんか、変だった?」

“有什么奇怪的吗?”

「変じゃないわ! ちょっと、いつもと雰囲気が違うから、驚いて。あの、イヴァン、あなた、そんな顔をしていたのね」

“没什么奇怪的!气氛和平时不一样,吓了一跳。那个,伊凡,你的表情就是这样。”

そうだった。今日、やっと怪我が完治したのだ。ボコボコでないきちんとした顔を、アニャが見たのは初めてだったのだろう。

原来是这样。今天,伤终于痊愈了。这是阿尼亚第一次看到不是胖乎乎的端正的脸吧。

「そんな整った顔立ちをしていたなんて、知らなかったわ」

“我不知道你长得那么端正。”

「整った顔立ち?」

“端正的容貌?”

「なんでもないわ! 忘れて!」

“没什么!忘了吧!”

そういえば、同じ顔をしたサシャは「カッコイイ!」とか言われていたような気がする。一度も言われたことがなかったので、自分の顔についてあまり意識していなかった。

这么说来,同样的脸的sasha好象被说「帅!」一样的心情。因为一次也没被说过,所以对自己的脸没怎么意识到。

というかよく、顔がボコボコの男と結婚してくれたなと、しみじみと思ってしまった。

话说回来,我深切地感受到他竟然和一个长着一张脸的男人结婚了。