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養蜂家の青年は、こっそり帰宅する

养蜂家的青年悄悄地回家了

外はまだ暗い。焚き火の始末をしてから、ランタン片手に家に戻る。

外面还很黑。做完篝火之后,一只手拿着灯笼回家。

まだ、居間のほうは灯りは灯っていないものの、台所は煌々と明るい。こっそり窓を覗き込むと、ロマナと三つ年上の兄の嫁であるパヴラが朝食と昼食の準備をしていた。

虽然起居室的灯还没有亮,但是厨房却很明亮。偷偷地看了看窗户,罗曼娜和比她大三岁的哥哥的媳妇帕夫拉正在准备早餐和午餐。

ロマナ一人だけだったら、声でもかけようと思ったが止めた。

如果只有罗曼娜一个人的话,我想打个招呼,但是停了下来。

裏口からこっそり家の中に入り、気配と足音を殺して屋根裏部屋まで上がる。

从后门悄悄地进入家中,杀了气息和脚步声,走到阁楼房间。

屋根裏部屋へ繋がる小口をそっと開き、顔だけ覗かせる。

轻轻地打开连接阁楼房间的小口,只露出脸。

狭い部屋なのに、八人もの甥と姪が転がっていた。俺が横たわって眠る隙間なんて、少しもありはしない。子どもはこういう狭い場所が大好きなのだろう。

虽然是很小的房间,但是有八个侄子和侄女在滚动。我躺着睡觉的间隙,一点也没有。孩子很喜欢这样狭窄的地方吧。

ため息をつきつつ、部屋に上がってはだけていた毛布をかけてやる。

一边叹气,一边上到房间盖上剩下的毛毯。

その中で、五つ年上の兄ミロシュの息子ツィリルは、俺の外套を毛布代わりに眠っていた。

其中,年长五岁的哥哥米洛什的儿子齐里尔,用我的外套代替毛毯睡觉。

先月八歳になったツィリルは甥や姪の中で、俺に一番懐いている。仕事中もついて回ることが多い。

上个月8岁的齐里尔是侄子和侄女中最亲近我的。工作中也经常跟着转。

眉間に皺を寄せながら眠っていたので、指先で伸ばしてやった。

因为眉间皱着皱纹睡着了,所以用指尖伸长了。

朝の早い時間は、貴重な勉強の時間である。

早起的时间是宝贵的学习时间。

ランタンを点していても子どもは起きないので、部屋の端を陣取って養蜂の本を読む。

即使点着灯笼孩子也不会起床,所以站在房间的边缘看养蜂的书。

この国の養蜂は五百年ほどの歴史がある。

这个国家的养蜂有五百年左右的历史。

なんといっても、養蜂の父と呼ばれるアントン・ヤンシャの存在は大きい。

不管怎么说,被称为养蜂之父的安东·扬沙的存在很大。

出版した二冊の書籍は、養蜂家の間で聖典とも呼ばれている。

出版的两本书籍在养蜂人中间也被称为圣典。

アントン・ヤンシャは画家になるために帝国へと渡ったが、その夢は叶わなかった。

安东·扬沙为了成为画家来到了帝国,但那个梦想没有实现。

代わりに、当時帝国領を統治していた女帝に命じられ、帝国の地で養蜂学校の初代指導者となる。

取而代之的是,被当时统治帝国领土的女皇命令,在帝国之地成为养蜂学校的第一任领导人。

彼の教えは、画期的だった。

他的教导是划时代的。

それまでの養蜂は蜂蜜が採れたあとは巣に硫黄を流し込み、蜜蜂を殺していた。けれど、アントン・ヤンシャの養蜂は、蜜蜂と共に生きる方法を提示したのだ。

之前的养蜂在采到蜂蜜后,在巢中注入硫磺,杀死了蜜蜂。但是,安东·扬沙的养蜂提示了与蜜蜂一起生活的方法。

春は巣箱を準備し、夏は蜜を採り、秋は天敵であるスズメバチを警戒し、冬は越冬の手助けをする。

春天准备蜂箱,夏天采蜜,秋天警戒天敌黄蜂,冬天帮助越冬。

彼の教えに従うと、蜂蜜はこれまで以上に採れるようになった。

按照他的教导,蜂蜜比以往任何时候都能采到。

以後、養蜂家達は蜜蜂とともに生きる方法を選択する。

之后,养蜂家们选择了和蜜蜂一起生活的方法。

蜜蜂を大切にすれば、その気持ちに応えてくれる。しだいに、養蜂家達は蜜蜂を心から愛するようになった。

如果珍惜蜜蜂的话,就会回应你的心情。渐渐地,养蜂家们从心底爱上了蜜蜂。

長きにわたり、温厚な“灰色熊のカーニオラン”は、養蜂家にとってよきパートナーである。そのため、蜜蜂が死ぬと、口を揃えて「亡くなった(ウムレティ)」と嘆く。

长期以来,温厚的“灰熊嘉年华”是养蜂人的好搭档。因此,蜜蜂一死,异口同声地叹息“死了”。

それほどに、養蜂家達にとって蜜蜂は大切な存在なのだ。

对养蜂人来说蜜蜂是很重要的存在。

春は警戒すべき蜜蜂の病気がいくつかある。

春天有一些值得警惕的蜜蜂病。

もっとも警戒すべきなのは、ダニの発生だろう。この時季、蜂の幼虫の体液を吸い、繁殖するのだ。

最应该警戒的是螨虫的发生吧。这个季节,吸蜂的幼虫的体液,繁殖。

おかしな動きをしている蜜蜂や、巣穴辺りで死んでいる蜜蜂を発見したら、すぐに巣の中を確認しなければならない。

如果发现了动作奇怪的蜜蜂或死在巢穴附近的蜜蜂,就必须马上确认巢穴中。

階下から、声が聞こえる。母や義姉達が起きていたのだろう。

从楼下传来声音。母亲和大嫂们起床了吧。

屋根の隙間から、太陽の光も差し込んでいる。本を閉じ、一応、子ども達を起こして回った。

阳光也从屋顶的缝隙中射入。合上书,先把孩子们叫起来转了一圈。

「ねえ、起きて。朝だよ。ほら!」

“喂,起来。早上到了。看!”

「うーん」

“嗯。”

夜遅くまで、遊んでいたのだろう。ぱっちり目覚める子はいない。ただ一人、ツィリルを除いて。

晚上玩到很晚吧。没有突然醒来的孩子。只有一个人,除了齐里尔。

「ツィリル、起きて」

“齐丽尔,起来。”

「ううん……ん?」

“嗯……嗯?”

ツィリルは俺の声に反応し、重たい瞼をうっすら開いた。

齐里尔对我的声音有反应,微微睁开了沉重的眼睑。

「イヴァン兄(にぃ)?」

「伊凡哥哥?」

「そうだよ。おはよう」

“是啊,早上好。”

がばりと起き上がったツィリルは、外套を掲げて抗議する。

突然站起来的齐里尔,举着外套抗议。

「イヴァン兄、昨日の夜、また秘密基地に行ってただろう!?」

“伊凡哥哥,昨天晚上又去秘密基地了吧!?”

「まあ、ね」

“嗯。”

「この外套を持っていたら、行かないと思っていたのに!」

“拿着这件外套,我还以为你不去呢!”

「外套は、他にもあるからね」

“因为还有其他外套。”

「もー! なんだよ!」

“也是!什么呀!”

秘密基地とは、ブレッド湖のほとりにある小屋のことである。ツィリルにだけは、小屋の存在を教えていたのだ。

秘密基地是指位于布莱德湖边的小屋。只有齐里尔告诉他小屋的存在。

連れて行けと言われているものの、まだ招待はしていない。自分だけの城であってほしいのもあるし、八歳の子どもが湖の近くに行き来するようになるのは危険だから。教えるのは早いだろうと考えているのだ。

虽然被要求带去,但还没有邀请。也有希望是自己的城堡,八岁的孩子来往于湖边是很危险的。我想告诉你应该很快吧。

「もう少し大きくなったら、教えてやるから」

“再长大一点,我就告诉你。”

「どうやったら、大きくなるんだ?」

“怎样才能长大呢?”

「いっぱい食事を取って、母さんの手伝いをして、たくさん寝たら大きくなるよ」

“多吃点饭,帮妈妈多睡会长大的。”

「むうー!」

“嗯——!”

イェゼロ家では女の子は幼少時から働かせるのに対して、男の子は自由に遊ばせている。

在耶泽罗家,女孩子从小就让她工作,而男孩子却让她自由地玩。

けれど、そんなでは将来、父親や兄達のようになってしまう。

但是,那样的话,将来会变得像父亲和哥哥们一样。

だからなるべく、甥達にも仕事を手伝わせようとしていた。

所以尽量让侄子们也帮忙工作。

言うことを聞いてくれるのは、ツィリルだけなんだけれど。

听我说的只有齐里尔。

「兄ちゃん達が、女の手伝いをしていると、女みたいになってしまうぞって言うんだ」

“哥哥们说,如果帮女人的话,会变得像女人一样。”

「バカだな。女みたいって、なんなんだよ」

“你真傻,像个女人,这是什么?”

「わかんない」

“我不知道。”

兄達の教えが浸透していて、取り返しがつかない状態の甥達もいる。奴らは揃って、俺やツィリルを愚弄するのだ。

也有哥哥们的教导渗透着,无法挽回的侄子们。他们都在愚弄我和齐里尔。

叩く者の音が気持ちよく響いたら、調子に乗ってどんどん続けるのだろう。だから、ツィリルには言い返すなとだけ言っている。

如果敲击者的声音听起来很舒服的话,就会得意忘形地继续下去吧。所以,我只说不要对齐里尔回嘴。

本当に、この家は蜜蜂の巣箱のようだ。

真的,这房子就像蜜蜂的蜂箱。

女達はあくせく働き、男達は子作りしかしないで食い物を荒らす。

女人们辛勤劳动,男人们只做孩子,糟蹋食物。

ツィリルには、そんな男になってほしくない。だから、一生懸命仕事を教えているのだ。

我不希望齐里尔成为那样的男人。所以,拼命地教工作。

しょんぼりするツィリルを元気づけようと、ある提案をしてみた。

为了给垂头丧气的齐丽尔打气,我提出了一个建议。

「ツィリル、今度、一緒に釣りに行こう」

“齐里尔,下次一起去钓鱼吧。”

「本当? 漁は、いいの?」

“真的吗?捕鱼好吗?”

「うん」

“嗯。”

小舟を整備に出すので、漁はしないと言っていたのだ。たまには、ツィリルとのんびり釣りをするのもいいだろう。

因为要把小船拿去整备,所以说不捕鱼。偶尔和齐里尔悠闲地钓鱼也不错吧。

嬉しそうに笑みを浮かべるツィリルの頭を撫でる。

抚摸着高兴地露出笑容的齐丽尔的头。

「さあ、早く支度をして。今日も、忙しいから」

“那嚒,快点准备吧。今天也很忙。”

「わかった!」

“知道了!”

新しい一日が始まろうとしていた。

新的一天即将开始。