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養蜂家の青年は、親友に事情を話す

养蜂家的青年向好友说明情况

小屋に移動し、事の次第をすべて話した。それから、独立を決意して家を出ることも。

移动到小屋,把事情的经过全部说了出来。然后,决定独立离开家。

「そうか。そんなことがあったのか。まあ、いつか何か起こるだろうなとは思っていた」

“是吗?原来是这样。我还以为总有一天会发生什么事呢。”

「よく、わかったね」

「明白了。」

「長年、お前とロマナを見ていたからな」

「因为我看了你和罗曼娜这嚒多年。」

ミハルは仕事をする俺を熱烈に見つめるロマナの姿を、何度か目撃していたらしい。

米哈尔好像多次目击了热情凝视着工作的我的罗曼娜的身影。

普段の態度も、俺とそれ以外の人に対する言動や行動は、まったく違っていたようだ。

平时的态度,对我和其他人的言行和行动,好像完全不同。

「街の男がさ、使いにやってきていたロマナに、茶でも飲まないかって声をかけたことがあったらしいんだ。そのときのロマナは、ダニでも見るような目で相手を見ながら、“忙しいので”なんて返していたんだとよ。ロマナが優しいのは、お前とお前の家族だけだったんだ」

“街上的一个男人,好像跟来用的罗曼娜打过招呼,要不要喝杯茶。那个时候的罗曼娜,用达尼也能看到的眼神看着对方,还说‘因为很忙’。罗曼娜温柔的只有你和你的家人。”

「そうだったんだ」

「原来是这样。」

「一番怖かった瞬間は、ここ最近だったかな。お前を見つめるロマナを、背後からサシャが睨んでいるときだった。ありゃイヴァン、いつか刺されるのではと思っていた」

“最可怕的瞬间是最近吧。萨沙从背后盯着盯着盯着你的罗曼娜的时候。哎呀,伊凡,我还以为总有一天会被刺伤呢。”

「だから、サシャに気を付けろって言っていたんだな」

「所以,他说要小心萨沙。」

ミハルは険しい表情で、うんうんと頷く。

米哈尔表情严肃地点头。

「しかし、狂っているように見えて、どこか手加減していたのかもしれないな」

“但是,看起来很疯狂,可能是哪里手下留情啦。”

「手加減、していた? 俺の顔、ぐちゃぐちゃなんだけど」

“手下留情了吗?我的脸,乱七八糟的。”

「本気を出していたら、歯が折れていたり、骨が折れていたりしていただろう」

“如果认真的话,牙齿会折断,骨头也会折断吧。”

「あー、そうだね」

“啊,是啊。”

会話が途切れ、なんとなく空を見上げる。気持ちいいくらいの晴天だった。

对话中断了,总觉得仰望天空。是个很舒服的晴天。

「思ったんだけどさ、サシャって、お前が好きで好きで堪らなかったんじゃないのか?」

“我是这么想的,萨沙不是因为喜欢你而无法忍受吗?”

「は!?」

“哈!?”

ミハルの言葉から、真冬のブレッド湖の水を頭からぶちまけられるほどの衝撃を受ける。

从米哈尔的话中,可以感受到隆冬的布莱德湖的水从头上洒出来的冲击。

「本気で言っているの?」

“你是认真说的吗?”

「うん。だって、サシャがおかしくなったの、ロマナが来てからなんだろう? それまで、よく遊んでいたし、養蜂の仕事もたまにだけど手伝っていたじゃん」

“嗯。因为萨沙变得很奇怪,是罗曼娜来之后的事吧?在那之前,我经常玩,偶尔也会帮她做养蜂的工作。”

「まー、うん」

“嗯,嗯。”

サシャが変わったのは、思春期だからだと思っていた。けれど、記憶を遡ってみると、ロマナを家で引き取った時期とぴったり重なる。

我以为萨沙变了,是因为青春期。但是,追溯记忆的话,和在家里收留罗曼娜的时期正好重合。

「いや、でも、ありえないよ」

“不,但是,这是不可能的。”

「いや、ありえるんだな。俺も、サシャとイヴァンが一緒にいるところに仲間に入ろうとしたら、めちゃくちゃ睨まれたことがあったんだ」

“不,有可能。我也曾在萨沙和伊凡在一起的时候加入伙伴,被狠狠地盯上过。”

「えー」

“嗯。”

「たぶん、サシャにとって、イヴァンはもう一人の自分なんだよ。だから、ロマナに取られて面白くなかったし、俺とも仲良くもしてほしくなかった。この気持ちを持て余した結果、イヴァンの気を引こうと、あれこれいやみを言ってきたり、ロマナと結婚してみたりしたんじゃないかな」

“也许,对萨沙来说,伊凡是另一个自己。所以,被罗曼娜拿走了很没意思,也不希望和我关系很好。因为无法保持这种心情,所以为了引起伊凡的注意,说了很多讨厌的话,也试着和罗曼娜结婚了吧。”

「でも、もう一人の自分を、めちゃくちゃに殴る?」

“但是,你会把另一个自己打得一塌糊涂吗?”

「自傷行為的な?」

“是自伤行为吗?”

「傷ついているのは、もれなく俺だけなんだけれどね」

“受伤的只有我一个人。”

ミハルの言っていることは、あながち間違いではないのかもしれない。

米哈尔说的话,未必是错误的。

サシャに対する何でも許してしまう気持ちは、母やミハルには理解できないと言われた記憶がある。同じように、他人にできない俺に対する想いを、サシャも持っているのだろう。

我记得母亲和米哈尔对萨沙什么都原谅的心情是无法理解的。同样,萨沙也有对别人做不到的我的想法吧。

「うん。なんか、しっくりきた。やっぱり、俺はこの家にいてはいけなかったんだ」

“嗯,总觉得挺合适的。果然,我不能待在这个家里。”

「そういや、出て行くって言っていたな。これからどうするんだ?」

“对了,你说你要出去,接下来怎么办?”

「にゃんにゃんおじさんの娘と、結婚するよ」

“我要和喵喵叔叔的女儿结婚了。”

「はあ!? お前、ここを出て行くっていうのか?」

“啊!?你要离开这里吗?”

「だって、家を出ても、街にいたら家族やロマナと会うかもしれないでしょう」

“因为,即使离开家,如果在街上的话,也有可能和家人或罗曼娜见面吧。”

「それはそうだけれど……。にゃんにゃんおじさんの家は、ここから離れた場所にある、秘境なんだろう?」

“那倒是……。猫咪叔叔的家,在离这里很远的地方,是秘境吧?”

「そう」

“是的。”

「なんだよ。いつ、行くんだ?」

“什么呀,什么时候去?”

「明日の昼くらい」

“明天中午左右。”

「は!?」

“哈!?”

「明日までに、ミハルのお祖父さんや親父さんに宛てた手紙を書くから」

“明天之前,我会给米哈尔的祖父和父亲写一封信。”

「いやいやいや、なんで!? 早すぎないか?」

“不,不,不,为什么!?是不是太早了?”

「もう、決めたんだ」

“我已经决定了。”

「そりゃないぜ、イヴァン」

“那可不行,伊凡。”

「ごめん」

“对不起。”

これまで、ミハルの家族は本当によくしてくれた。心から、感謝する。

到目前为止,米哈尔的家人真的做得很好。衷心感谢。

「俺、ミハルと、ミハルの家族のおかげで、腐らずに暮らしていけたんだ。本当の家族みたいに、思っているよ」

“多亏了米哈尔和米哈尔的家人,我才没有腐烂地生活下去。我觉得就像真正的家人一样。”

「本当の家族だったら、出て行くなよ」

“如果是真正的家人,就不要出去。”

「俺も、そう思うけれど、自分の人生は、誰かに居場所を与えられるものではなくて、自分で切り開きたいんだ」

“我也是这么想的,但我的人生并不是给谁一个容身之处,而是想自己开创。”

「……」

「……」

急に黙り込んだので、ミハルを見る。瞳が、若干潤んでいるような気がした。

因为突然沉默了,所以看了米哈尔。我觉得眼睛有点湿润。

「イヴァン、俺、お前の新しい人生を、応援したい。でも、今は、急すぎて、なんて言葉をかけていいのか、わからないや」

“伊凡,我想支持你的新人生。但是,现在太急了,不知道该说些什么。”

「本当に、ごめん」

“真的,对不起。”

ミハルは立ち上がり、明日、またくると言う。

米哈尔站起来,说明天还会再来。

去りゆくミハルに、頭を下げた。

向离去的米哈尔低头。

◇◇◇

◇◇◇

屋根裏部屋を封鎖し、荷物の整理を行う。

封锁阁楼,整理行李。

不要なものは、甥や姪にあげることにした。

我决定把不需要的东西给侄子和侄女。

母やロマナが作ってくれた外套や服は、置いて行く。自分で買い集めた品だけ、持って行くようにしたい。

母亲和罗曼娜给我做的外套和衣服,我会放下。只想把自己买来的东西带去。

数枚のシャツにズボン、ミハルが譲ってくれた外套、それから下着類。ちょっとした小物に、これまで作ったり貰ったりした保存食など。

几件衬衫配裤子,米哈尔让给我的外套,还有内衣类。小东西,至今为止做过的保存食品等。

もっとも大事なのは、養蜂家の父アントン・ヤンシャが執筆した二冊の書籍である。

最重要的是养蜂人的父亲安东·扬沙执笔的两本书。

飲んだくれの父がたまにお使いを頼むことがあり、そのお駄賃を貯めて買った品だ。俺の、宝物でもある。

这是喝了酒的父亲偶尔拜托使用,存下那个浪费钱买的东西。也是我的宝物。

かつて、アントン・ヤンシャは画家になるために見知らぬ地へと渡った。

过去,安东·扬沙为了成为画家来到了陌生的地方。

同じように、俺も明日、見知らぬ土地へと旅立つ。

同样,我明天也要去陌生的地方旅行。

いったい、どんな暮らしが待っているのか。まったく想像もできない。

到底有什么样的生活在等待着呢。简直无法想象。

不安はなかった。

没有不安。

だって、自分が望んで選んだ道だから。

因为这是我自己选择的路。