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# 237 お勉強のお時間
237学习时间
『時間が合えば検討する』などと言っていた俺たちだったが、結果的に言えば、全員揃ってイリアス様の勉強会に、ガッツリと参加することになっていた。
虽然我们说过“有时间的话会讨论的”,但从结果来看,全体成员都会一起参加伊利斯大人的学习会。
小さな女の子に迎えに来られて、笑顔で『さあ、行きましょう!』などと言われたら、さすがに断れないよな?
小女孩来接我,她笑着说:“那么,我们走吧!”被这样说的话,果然还是不能拒绝吧?
その後ろで穏やかな笑みを浮かべている一人の執事がいたのだが……黒幕が判ったところで、意味は無い。
在那之后,有一个执事脸上露出了平静的笑容……即使黑幕明白了,也没有意义。
まぁ、イリアス様の主目的はメアリとミーティアだったみたいなので、二人だけ差し出して、俺たちは遠慮する方法もあったのだが、心細そうなメアリたちの視線にも、また勝てなかった。
嘛,伊利亚斯大人的主要目的好像是玛丽和米蒂亚,所以只有两个人伸出手来,我们也有顾虑的方法,但是,即使是担心的玛丽们的视线,也无法战胜。
それに、ちょっと予想外なことに、ハルカとナツキが思ったよりも乗り気だった事も大きい。
而且,有点出乎意料的是,Haruka和夏树比想象中更感兴趣的事也很多。
執事のビーゼルさんが言っていた『知っていて損は無い』事に加え、実際に『知ろうと思ってもその機会が無い』事が理由のようだ。
管家比泽尔所说的“知道了也没什么损失”,再加上实际上“就算想知道也没有那个机会”这件事的理由。
実際この世界、何かしらの勉強をしようと思っても、なかなかに難しいのだ。
实际上,这个世界,即使想学点什么,也很难。
何故なら、まず教師が見つからない。
因为,首先找不到教师。
日本ならちょっと探せば、低価格のカルチャースクールから、料理教室、音楽教室など、色々な物が見つかるが、こっちにそんな物は無い。
在日本稍微找一下的话,从低价的文化学校,料理教室,音乐教室等,能找到各种各样的东西,但是这里没有那样的东西。
仮に教師を見つけられても、専門職故に、必要な謝礼は高い。
即使找到了教师,因为是专门的职业,所以必要的谢礼也很高。
戦闘技術などであれば、冒険者に依頼を出すことで学ぶことはできるが、通常、まともな技術がある冒険者のランクは高く、つまりは依頼料も高額になる。
如果是战斗技术的话,可以通过向冒险者提出委托来学习,但通常,有着正规技术的冒险者的等级较高,也就是说委托费也很高。
その上、ラファンなどではその高ランクの冒険者自体がいない。
而且,拉斐尔等地没有高等级的冒险者。
俺たちも戦闘技術の向上のため、一時期、師匠になってくれそうな人はいないかと考えた事はあったのだが、そんな事情もあって諦めたのだ。
我们也为了提高战斗技术,曾经想过有一段时间没有人能成为老师,但是也有那样的情况所以放弃了。
それを考えれば、タダで領兵と一緒に訓練する経験が積めたり、貴族の子女が受けるような授業を聞ける事は、非常にありがたい事なのだろう。本来は。
考虑到这一点,能够免费积累和领兵一起训练的经验,也能听贵族子女上的课,这是非常难得的事情吧。本来是。
だがしかし。勉強と聞いて尻込みしてしまうのは、学生の本能ではあるまいか?
但是。一听到学习就退缩,这难道不是学生的本能吗?
――ま、良い経験なのは間違いないし、一つ頑張ってみるか。
——嘛,一定是很好的经验,试着努力一下吧。
「ですから、この場合の挨拶は――」
“所以,这种场合的问候是——”
授業は予想外の形で進んでいた。
授课以预料之外的形式进行着。
案内された部屋にいたのは、少しふくよかな三〇代半ばほどの女性。
在被引导的房间里,是一位有点丰满的三十多岁左右的女性。
てっきり、その人が授業をするのかと思ったら、そんな事は無く、俺たちが席に座った後、前に立ったのはイリアス様だった。
我以为那个人一定会来上课的,没想到我们坐在座位上后,站在了前面的是伊利亚斯先生。
どうも、イリアス様の復習も兼ねて、これまで習った事を俺たちに教えるという形を取るらしい。
怎么说呢,为了复习伊利亚斯大人,好像采取了把至今为止学过的东西教给我们的形式。
女性教師――名前はシデアと言うらしい――は基本的には口を出さず、時折注釈を入れたり、ちょっと訂正をしたりするのみである。
女教师——名字好像叫“シデア”——基本上不说,只是偶尔加注释,稍微订正一下。
まぁ、出発まで残り五日。
距离出发还有五天。
この時点でイリアス様に対する授業が終わっていなければ、それはそれでマズいだろう。
如果此时对伊利亚斯先生的课还没有结束的话,那就太糟糕了吧。
それに俺たち(具体的には、メアリとミーティア)に教える事で、イリアス様の習熟具合も把握でき、更には年下には負けられないというプライドを刺激して、自学自習を促す意図もあるようだ。
而且,通过告诉我们(具体来说,玛丽和米蒂亚),也能掌握伊利亚斯大人的熟练情况,更能刺激不输给年下的自尊心,促使他们自学。
――シデアさんがニコニコと人の良い笑みを浮かべつつ、コッソリと俺たちに教えてくれたところによると。
——西德亚先生笑嘻嘻地浮起人的好笑容,一边偷偷地告诉了我们。
「相手の爵位によって挨拶が変わるのは解ったのです。でも、爵位が判らない場合は、どうするのです?」
“我明白了问候会根据对方的爵位而变化。但是,不知道爵位的话,怎么办?”
そんなわけで、当然主役はイリアス様、脇役がメアリとミーティアで、俺たちはモブ。賑やかし。エキストラ。
因此,当然主角是伊莉亚斯大人,配角是玛丽和米蒂亚,我们是路人。很热闹。临时演员。
後ろの方に座ってのんびりと話を聞いている。
坐在后面悠闲地听着话。
矢面に立たされるメアリとミーティアは大変だなぁ、理解できるのかなぁ、とか思っていたのだが、目がぐるぐるしているメアリはともかくとして、ミーティアの方は話を理解して、時には質問すらしている。
虽然我一直在想,被立在众矢之的玛丽和米蒂亚真的很辛苦啊,能理解吗,但是眼睛滴溜溜的玛丽暂且不说,米蒂亚理解了她的话,有时甚至还提出了问题。
そんなミーティアの様子に、シデアさんも驚いたように、「とんでもなく優秀ですね」と漏らす。
面对米蒂亚那样的样子,希迪亚也惊讶地说:“真是太优秀了。”。
幼い頃から教育を受ける貴族の子女ならともかく、ミーティアはごく普通の市井の子供なのだ。
从小接受教育的贵族子女自不必说,米蒂亚是非常普通的市井孩子。
家で勉強を教えている時にも優秀だとは思っていたが、やはり一般的に見ても、かなり賢かったらしい。
在家里教学习的时候也觉得很优秀,但一般看来还是相当聪明的。
ちなみに、俺たちの方は……まぁ、普通?
顺便说一下,我们这边……嘛,普通?
基本的に単なる知識なので、暗記するだけ。
基本上只是单纯的知识,只需要背诵。
実際の場面で活用できるかは別にして、理解できないような物は無い。
先不说在实际的场合能不能活用,没有不能理解的东西。
俺とトーヤ、それにユキは単に話を聞くだけだったのだが、ハルカとナツキは興味深そうにメモも取っていたので、困った時にはそれを見せてもらえば良いだろう。
我和TOYA,还有雪只是单纯的听她说话,但是Haruka和夏琪好像很有兴趣地做了笔记,有困难的时候给我看一下就好了。
たぶん、必要性は無いと思うが。
我想大概没有必要。
そんな感じで、半日ほど授業を受けたりしていると、なんだかんだと言葉を交わす機会も多くなる。
像这样,上了半天的课的话,会有很多机会和他交谈。
俺たちを授業に引っ張り出した人の意図が、イリアス様の学習意欲を高める事にあったのか、それともメアリたちとの仲を深める事にあったのかは不明だが、三日も経てば、比較的リラックスして、一緒にお茶の時間を楽しめる程度には仲良くなっていた。
虽然不知道是为了提高伊利亚斯大人的学习欲望,还是为了加深和玛丽他们的关系,但是经过三天的时间,两人的关系变得比较轻松,甚至可以一起享受茶时间。
当然、お茶とお菓子は子爵家から提供されるのだが、昨日、ミーティアがポツリと『ハルカお姉ちゃんたちが作るお菓子の方が美味しいの』と漏らしてしまった。
当然,茶和点心是从子爵家提供的,但是昨天米蒂亚嘟嘟囔囔着“Haruka姐姐们做的点心更好吃”。
メアリによって、即座に黙らされたミーティアではあったが、その言葉にイリアス様の方が興味を示してしまう。
根据玛丽的说法,虽然是被当场沉默的米蒂亚,但伊利亚斯对这句话更感兴趣。
『どんなお菓子を食べているんですの?』と。
“你在吃什么样的点心?”等等。
クライアントにそう言われ、俺たちに無視ができるはずも無い。
客户这么说,我们不可能无视。
そんなわけで今日のお茶菓子は、ハルカたちが提供したアップルパイである。
因此今天的茶点是Haruka们提供的苹果派。
「まぁまぁまぁ! すごく美味しそうです!」
“算了吧!看起来很好吃!”
「皆様はお菓子作りもされるのですね?」
“大家也做点心吧?”
テーブルに並んだアップルパイに目を輝かせるイリアス様と、ちゃっかりとご相伴に与りつつ、俺たちの方に不思議そうな視線を向けてくるシデアさん。
在桌子上排列的苹果派上让眼睛闪闪发光的伊莉丝大人,和一个劲地陪在一起,向我们投来不可思议的视线的希迪亚先生。
イリアス様がメアリとミーティアにばかり構う関係で、逆に俺たちは彼女の方と親睦を深めているので、別に問題は無いのだが。
伊利亚斯大人只关心玛丽和米蒂亚,相反我们和她关系更亲密,所以没什么问题。
「大した腕ではありませんが。冒険者をしていると、なかなか買えないような素材を手に入れる事もできますから」
“虽然不是什么了不起的本事。因为如果是冒险者的话,也可以买到很难买到的素材”
「いえ、これで大した腕では無い、と言われると、料理人も困ってしまいますよ」
“不,如果说这样就没什么了不起的本事的话,厨师也会很为难的。”
ナツキの謙遜に、シデアさんが苦笑を浮かべる。
对于夏树的谦虚,西德亚露出苦笑。
まぁ、ミーティアじゃないが、昨日食べたお菓子と、今日ナツキが提供したお菓子。
嘛,虽然不是炸肉饼,但昨天吃的点心和今天的炸肉饼提供的点心。
食べ比べれば、確実にナツキのお菓子の方が美味しい。
比起吃来,确实枣的点心更好吃。
これは、単純に腕の問題では無く、使っている素材の違いと、お菓子を作った経験の違いもあるのだろう。
这并不是单纯的技术问题,而是使用的材料的不同和制作点心的经验的不同吧。
歴史の積み重ねがあるレシピを知っているというのは、確実に大きなアドバンテージなのだから。
知道历史积累的食谱,确实是很大的优势。
「イリアス様は貴族でも、あまりお菓子は食べないのです?」
“伊利亚斯大人即使是贵族,也不怎么吃点心吗?”
「お父様はとても倹約家なのです。必要な部分には使いますが、不必要な部分や普段の生活では無駄なお金は一切使いませんの」
“父亲非常节约。虽然是在必要的部分使用,但是在不必要的部分和日常生活中完全不使用多余的钱”
ミーティアの素朴な疑問に、イリアス様は少し苦笑して首を振る。
对于米蒂亚单纯的疑问,伊莉亚斯先生苦笑着摇头。
今回のアップルパイは、ストライク・オックスのミルクから作ったバター、それをたっぷりと使った逸品。
这次的苹果派是由好球·牛克斯的牛奶做的黄油,充分使用了那个的绝品。
もし値段を付けるなら、一切れ分の素材で軽く金貨が飛んで行くような、そんな高級菓子である。
如果加上价格的话,那就是用一块的材料轻轻地金币飞走的高级点心。
やや甘さ控えめのリンゴの甘酸っぱさと、濃厚なバターの香りがなんとも言えない。
苹果的酸甜和浓厚的黄油的香味实在无法形容。
家で食べた時は、この上に更にアイスまで載っていたのだが、今回それは無し。
在家吃的时候,上面还放了冰淇淋,但是这次没有。
そのアイスにしても、俺たちだって素材を自前で用意できなければ、とても食べられないほどの原価が掛かっている。
即使是那种冰淇淋,我们也要花很多成本,如果不能自己准备食材的话,是吃不下去的。
――いや、数時間で数十枚の金貨を溶かすトーヤぐらい思い切れれば可能だろうが、たかが菓子にそんな金は使えない。普通の経済感覚では。
——不,像几个小时就能融化数十枚金币的火炬那样,如果能断念一想的话应该是可以的,但只是点心上不能用那样的钱。按一般的经济感觉。
「確かに、気軽に買うのは難しいでしょうね。あ、せっかくですから、まだ温かいうちに召し上がってください」
“确实,随便买很难吧。啊,难得来一次,趁热吃吧”
ハルカが納得したように頷き、イリアス様とシデアさんにアップルパイを勧める。
像Haruka理解了一样地点头,向伊莉亚斯先生和希迪亚先生推荐苹果派。
こんなときでも焼きたてを提供できるのは、やはりマジックバッグの大きな利点だろう。
这种时候也能提供刚烤好的,果然是魔术包的大优点吧。
「それでは、遠慮無く頂きますね」
“那我就不客气了。”
「頂きます。――わぁっ! すごく美味しいです! こんなに美味しいお菓子、初めて食べました!」
“我开动了。——哇!非常好吃!第一次吃到这么好吃的点心!”
アップルパイを一口食べ、素直に感嘆の声を上げたイリアス様と、声こそ上げなかったものの、口元を押さえて目を丸くするシデアさん。
吃了一口苹果派,天真地发出了感叹声的伊利亚斯先生,虽然没有发出声音,但压住嘴角瞪圆眼睛的希迪亚先生。
イリアス様はそのままパクパクと、お皿の上のアップルパイを見る見るうちに消費し、とろけるような笑みを浮かべている。
伊利亚斯先生就这样一脸朴拙,看着盘子上的苹果派就消费了,脸上浮现出融化般的笑容。
そんな笑顔に誘われるように俺たちもまた、アップルパイに手を付ける。
为了被那样的笑容所吸引,我们也再次动手苹果派。
――うん、やっぱ美味いな。
——嗯,果然很好吃啊。
パイ生地のサックリと軽い感じが、コンビニとかで買う菓子パンのアップルパイとは全然違う。
派底的酥皮和轻飘飘的感觉,和在便利店买的点心面包的苹果派完全不同。
あとは特徴的で濃厚なバターの香り。
还有特征性浓厚的黄油香味。
バター自体が日本で市販されている物よりもずっと美味しく、焼きたてである事も影響しているのだろう。
黄油本身比在日本市场上贩卖的东西好吃得多,可能也是受刚烤好的影响吧。
あえて不満点を挙げるのならば、やはり砂糖がちょっと重く感じる事と、シナモンの香りが無い事だが、これに苦情を言うのは少々贅沢という物だ。
如果硬要列举不满点的话,还是觉得砂糖有点重,没有肉桂的香味,但是抱怨的话就有点奢侈了。
「……あぁ、もう無くなってしまいました」
“……啊,已经没有了。”
パクパクと食べていれば無くなってしまうのも当然早く、俺が半分も食べ終わらない前に、イリアス様の皿は空になっていた。
如果大口地吃的话,当然就没有了,在我还没吃完一半之前,伊利亚斯大人的盘子已经空了。
少々はしたなくもフォークを口にくわえるイリアス様に、すかさずシデアさんから注意が飛び、イリアス様がしょんぼりとするが、どちらかと言えば注意された事よりも、無くなった事に意気消沈している様子。
虽然有点粗鄙,但对嘴里叼着叉子的伊利亚斯大人,立刻就被西德亚先生警告了,伊利亚斯先生很垂头丧气,但总的来说,比起被提醒的事情,似乎对失去的事情更加消沉。
俺はいつでも食べられるから譲っても良いのだが、さすがに食べかけはマズいよな。
我随时都能吃,所以可以让我吃,但到底是吃了一半不好吃。
と、思ったのだが、そんな事を気にしない人がここにいた。
虽然这么想,但是这里有一个不在意这件事的人。
「イリアス様、ミーの食べる?」
“伊利亚斯大人,要吃米吗?”
「……っ! い、いえ、大丈夫ですよ? それはミーティアが食べてください」
“!不,不,没关系的?那个请美蒂亚吃”
フルフルと迷うようにフォークを震わせながらも、イリアス様は笑顔を浮かべ、きっぱりと断った。
仿佛犹豫了很久似的,叉子颤抖着,伊利亚斯脸上浮现出笑容,断然拒绝了。
それを見て、シデアさんは満足そうに頷く。
看到这一幕,西德亚满足地点了点头。
それも教育という事なのだろうが、やっぱり貴族って、ちょっと窮屈だなぁ。
这也是教育吧,果然贵族有点拘束啊。
授業でも食事の作法なんかが語られる事があったのだが、なかなかに面倒くさかったし。
在上课的时候也有人讲吃饭的方法,但是非常麻烦。
ある程度は覚えたが、きっちりやろうと思ったら、絶対美味しく食事なんかできそうもない。
虽然记住了一定程度,但是如果想好好做的话,绝对不会好吃的。
「しかし今更ですが、よろしいのですか? 私たちが提供したお菓子を食べても」
“但是事到如今,可以吗?吃我们提供的点心也可以”
名残惜しそうにフォークを置いたイリアス様に、ナツキがそんな事を尋ねた。
夏树向恋恋不舍地放下叉子的伊利亚斯先生询问了这件事。
もちろん、提供する前には、執事のビーゼルさんなどにもきちんと確認を取っているので、これで俺たちが何か言われるような心配は無いのだが、想像以上にあっさりと許可が出たのは少し意外だった。
当然,在提供服务之前,我们已经和执事比泽尔先生等确认过了,所以不用担心我们会被说些什么,但是比想象中还要爽快地得到了许可还是有点意外的。
「これに警戒するようでしたら、護衛の依頼など致しませんわ。それに、皆さんはディオラお姉さまのご紹介ですし」
“如果对此有所警戒的话,就不会委托护卫了。而且,大家还介绍了迪奥拉姐姐”
まぁ、毒殺を警戒するぐらいなら、護衛依頼なんかできないか。
嘛,与其警戒毒杀,还不如委托护卫吗。
それこそ、護衛の最中に殺す方がよほど楽だろうし。
正因为如此,在护卫的过程中杀人才更轻松。
――だが、それよりも気になった点が一つ。
——但是,比起这个,我更在意的一点是。
それに引っかかったのは俺だけではなかったようで、すぐにナツキが聞き返した。
似乎不仅仅是我一个人被那个吸引了,夏树马上反问了一下。
「ディオラ、お姉さま? 失礼ですが、ディオラさんとのご関係は?」
“迪奥拉,姐姐大人?不好意思,您和迪奥拉先生的关系是?”
「血縁としてはお母様の姉、私の伯母様のお子様に当たります。簡単に言うなら、従姉妹の関係ですね」
“血缘关系相当于母亲的姐姐和我伯母的孩子。简单来说,就是表姐关系吧”
これまでのやり取りから、ネーナス子爵家とは何か関係があるとは思っていたが、想像以上に近い関係だった。
从至今为止的对话中,我以为和纳纳斯子爵家有什么关系,但却是比想象中更接近的关系。
「……そうなると、ディオラさんも貴族、なのでしょうか?」
“……这样的话,迪奥拉也是贵族吗?”
「えぇと……そのあたりは少し微妙なところがありますね」
“呃……这附近有点微妙呢。”
ここで貴族に関して簡単に説明しておくと、レーニアム王国の場合、必ず貴族として扱われるのは貴族家の当主とその配偶者になる。
在这里简单说明一下贵族的情况,在列尼安王国,贵族家的户主和其配偶一定会被当做贵族来对待。
その子供は、厳密には貴族ではないのだが、扱いとしては親の爵位の一つ下、例えばイリアス様であれば男爵相当として扱われる。
那个孩子严格来说并不是贵族,但是作为处理来说是父亲的爵位之一,例如伊利亚斯的话就相当于男爵。
親の爵位の影響が無くなるのは、独立して別家を立てたり、婿入り、嫁入りしたとき。
父母的爵位的影响消失的时候,是独立立别家,入赘入赘,出嫁的时候。
上手く他家の当主と婚姻できれば貴族のままでいられるのだが、当然ながら当主の数よりも子供の方が多い。
如果能很好地和其他家的户主结婚的话,就可以保持贵族的身份,当然孩子比户主的数量要多。
貴族の場合、一夫多妻、そして稀には多夫一妻もあるわけだが、それは配偶者の地位と共に、子供の数も増やす事であり、必然的に大半の子供は、平民に落ちる事になる。
在贵族的情况下,一夫多妻,还有少有的多夫一妻,这是伴随着配偶的地位,孩子的数量也在增加,必然会有大半的孩子落入平民之中。
さて、ディオラさんに話を戻すと、彼女の父親自体は小さいながらも男爵家の当主であり、未婚の彼女は男爵の一つ下、騎士爵としての扱いを受ける事になる。
话说回来,回到迪奥拉身上,她的父亲虽然很小,但却是男爵家的户主,未婚的她在男爵之下,被当做骑士爵对待。
だが、だがここで少し複雑なのが、彼女の家での立場。
但是,这里稍微复杂一点的是她在家的立场。
まず、ディオラさんの母親は側室であり、男爵の正妻は別にいる。
首先,迪奥拉的母亲是侧室,男爵的正妻是分开的。
しかし、男爵家の子供はディオラさんただ一人。
但是,男爵家的孩子只有迪奥拉一个人。
つまり、男爵家の跡継ぎ候補はディオラさんのみなのだ。
也就是说,男爵家的继承候选人只有迪奥拉。
こういった場合、普通はディオラさんが婿を取って家を継ぐ事になるのだが、問題となるのは正妻との関係。
这种情况下,一般是迪奥拉女婿继承家业,但问题是和正妻的关系。
万が一、正妻に子供ができた場合、ディオラさんが継嗣となっていては困るので、正妻としては婿を取って欲しくない。
万一正妻生了孩子的话,如果迪奥拉继承家业的话就麻烦了,所以作为正妻不想招女婿。
かといって、結婚して家を出てしまっては、跡継ぎがいなくなるので男爵としては困る。
但是,如果结婚离家出走的话,就没有继承人了,所以作为男爵就很困扰了。
斯かくしてディオラさんは、いい年なのに未だ結婚ができていないらしい。
就这样,迪奥拉虽然是个好年纪,但好像还没结婚。
不憫である……。
很可怜……。
「少し困った方なのです、あそこの正妻は……」
“有点为难,那边的正妻……”
ネーナス子爵家の教育係になるだけあって、シデアさんもその辺りの事は知っているらしく、困ったように笑みを浮かべている。
不愧是内那斯子爵家的教育人员,西迪亚好像也知道那附近的事情,脸上露出困惑的笑容。
ついでに正妻の年齢も教えてくれたのだが……ちょっと子供は厳しくないか?
顺便告诉了我正妻的年龄……孩子有点严厉吗?
日本ならギリギリ何とか……という年齢ではあるが、こっちだと常識的に考えれば不可能という年齢らしい。
在日本的话,虽然已经到了极限了……的年龄了,但是从常识上考虑,这个年龄似乎是不可能的。
「未だ諦めない正妻も正妻ですが、男爵が優柔不断なのが一番の問題なのです! お姉さまが可哀想です」
“还没有放弃的正妻也是正妻,男爵优柔寡断是最大的问题!姐姐很可怜”
イリアス様は、プンプンとばかりに両手を振って、不満を口にする。
伊利亚斯像是扑哧一声挥动着双手,抱怨着。
ディオラさん、現代日本なら、まだまだこれからの年齢だが、こちらの常識では結婚がちょっと厳しくなるお年頃だからなぁ。
迪奥拉先生,在现代日本的话,还只是今后的年龄,但是按照我们的常识,现在是结婚有点严峻的年龄。
ちなみに、ディオラさんとしては半ば諦め気味らしい。
顺便说一下,作为迪奥拉先生好像有点半途放弃了。
未婚のまま男爵家を継ぎ、養子を取って跡継ぎとすることすら考えているとか。
还考虑过未婚继承男爵家,继承养子作为继承人。
「でも、現状でも騎士爵、将来的には男爵になる可能性、高いんですよね? 何で冒険者ギルドで働いているんでしょうか?」
“但是,即使是现在,骑士爵将来成为男爵的可能性也很高吧?为什么在冒险者行会工作呢?”
「お姉さまの家は、こう言っては何ですが、領地を持たない名ばかりの男爵家ですから、仕事が無いのです。ですので、収入を確保する目的と、あと、結婚相手もできれば見つけたい、と言っておられましたね」
“姐姐家虽然这么说,但都是些没有领地的男爵家,所以没有工作。所以说,为了确保收入,还有,如果结婚对象也可以的话也想找到”
冒険者は通常よりも晩婚。
冒险者比通常晚婚。
それを考えれば可能性はあるが、その目的にラファンはどうなんだろう?
考虑到这一点的话是有可能的,但是拉斐尔的目的又是什么呢?
ディオラさんがラファンの副支部長になってそれなりに長い事を考えれば、答えは出ているような気もする。
如果迪奥拉先生成为拉斐尔的副支部长考虑了很久的话,我觉得答案就出来了。
「貴族って大変なの。冒険者の方が気楽で良いの」
“贵族真是辛苦啊。冒险者更轻松”
「いえ、冒険者の方が大変……でも、こんなに美味しいお菓子を……? もしかして、冒険者って……?」
“不,冒险者更辛苦……但是,这么好吃的点心……?难道,冒险者是……?”
やれやれ、とでも言うように首を振るミーティアに、イリアス様が否定しようとして、ふと空になったお皿に視線を向ける。
“哎呀,哎呀,”像这样说着摇着头的米蒂亚,伊莉亚斯大人想要否定,突然视线转向了空着的盘子。
そんなイリアス様に、メアリが慌てたように言葉を掛ける。
面对这样的伊利亚斯大人,玛丽慌张张地说道。
「い、いえ、イリアス様、冒険者は凄く大変ですから! 食事に事欠くような冒険者も多いですから! ハルカさんたちがスゴイだけですから!」
“不,不,伊利亚斯大人,冒险者非常辛苦!因为也有很多冒险者缺乏饮食!因为Haruka他们都很厉害!”
「で、ですよね? ディオラお姉さまから聞いた話と全然違ったので、ちょっと混乱してしまいました」
“那么,是吧?和我姐姐说的完全不一样,所以有点混乱”
ホッとしたようにウンウンと頷きつつ、イリアス様が俺たちの方にチラリと視線を向けたので、俺たちもまた同意するように、苦笑して頷く。
像松了一口气似的,恩恩恩地点了点头,伊利亚特大人瞥了我们一眼,我们也同意似的,苦笑着点了点头。
無いとは思うが、イリアス様が冒険者に憧れる、なんて事があっても困るしな。
虽然我觉得没有,但是伊莉亚斯大人憧憬冒险者,就算有这样的事情也很困扰。
こんな感じで、出発までの五日間、俺たちは結局一度も屋敷の外に出る事も無く、出発の日を迎えたのだった。
就这样,在出发前的五天里,我们最后一次也没有离开过屋子,迎来了出发的日子。