diff --git a/295js.md b/295js.md new file mode 100644 index 0000000..5c0e161 --- /dev/null +++ b/295js.md @@ -0,0 +1,643 @@ +# 295 月下の逢瀬 + +295月下的相逢 + +昼過ぎから始まったパーティーは、日が落ちる頃にお開きとなった。 + +从午后开始的派对,是在太阳落山的时候举行的。 + +まるで欠食児童であるかのように食べまくっていた子供たちも、さすがに半日も食べれば満腹になったのだろう。 + +就连像是缺食儿童一样一个劲地吃的孩子们,也吃了半天就吃饱了吧。 + +テーブルの上の料理はまだ残っていたが、終わり頃には手を伸ばす子供はほとんどいなくなっていた。 + +桌子上的菜还留着,但是到了最后几乎没有孩子伸出手了。 + +イシュカさんは『これで二食分浮きました』とか笑顔で言っていたので、本当にお昼ご飯は欠食だったらしい。 + +伊什卡笑着说“这样就浮上了两餐的分量”,看来真的是午饭不吃了。 + +せっかくなので、残った料理も渡してお引き取り頂いた。 + +因为很难得,所以把剩下的菜也交给了我。 + +職人三人は用意していた酒を飲み干しても、しっかりとした足取りで帰って行ったが、ディオラさんの方は、やはり『酔っていない』と言いつつも、なんだか怪しかったので、トーヤを付けて送り返す。 + +三个工匠喝完准备的酒后,迈着坚实的步子回去了,但迪奥拉先生还是一边说着“没有醉”,一边觉得有点奇怪,就带着火炬送回了家。 + +俺とハルカ、それにナツキは後片付け。 + +我和Haruka,还有夏树之后收拾。 + +メアリとミーティアも手伝うと言ったのだが、はしゃぎすぎたのか、眠たそうな様子が見て取れたので、寝るように言って部屋に帰した。 + +玛丽和米蒂亚也说了要帮忙,但是可能是因为太兴奋了,看到了他好像睡着了的样子,就让他睡了然后回了房间。 + +実際、片付けと言っても、あまり手間は掛からないしな。 + +实际上,虽说是收拾,也不怎么费工夫。 + +食べられる物は全てイシュカさんに押しつけたので、残飯をコンポストに放り込んでしまえば、後はハルカとナツキが『浄化ピュリフィケイト』を使うだけ。食器洗いも不要なのだ。 + +因为能吃的东西都推给了伊修卡先生,所以把剩饭放进了电子邮箱里,剩下的就只有Haruka和nacci使用了“净化Prificato”了。不需要洗碗。 + +そのまま食器とテーブルを片付ければ終わりである。 + +就这样收拾餐具和桌子就结束了。 + +そしてあらかたの作業が終わった時に、俺はハルカに声を掛けた。 + +然后在大部分的工作结束的时候,我向Haruka打了招呼。 + +――今夜、少し時間をもらえるか、と。 + +——今晚能给我一点时间吗。 + +◇ ◇ ◇ + +◇ ◇ ◇ + +日が完全に落ちた頃。 + +太阳完全落下的时候。 + +俺は玄関の前に立って、ハルカのことを待っていた。 + +我站在玄关前等着Haruka。 + +月明かりの下、夜の冷たい空気を大きく吸い込み、深呼吸をする。 + +在月光下,大大地吸入夜晚的冷空气,做深呼吸。 + +やがて静かに玄関の扉が開く。 + +不久大门静静地打开了。 + +そこから出てきたハルカが、俺の隣に立った。 + +从那里出来的Haruka站在了我的旁边。 + +「待たせた、かしら?」 + +“让你久等了吗?” + +「いいや。空を見ていたからな」 + +“不用了。因为我一直在看天空” + +空には雲も無く、満月に近い月が静かに光を落としている。 + +天空没有云,接近满月的月亮静静地落下了光。 + +この一年で少しは見慣れた星々も輝いているが、明るい月の光に隠されて影が薄い。 + +在这一年里,有些司空见惯的星星也在闪闪发光,但是在明亮的月光下,影子却很薄。 + +「月が、綺麗だな」 + +“月亮真漂亮啊。” + +「……なに? 『死んでも良いわ』と答えれば良いの?」 + +“……什么?‘死也可以啊”这样回答就可以了吗?” + +思わず漏らした俺の言葉に、ハルカが微笑みを浮かべて応じた。 + +对于我无意中说出的话,春香微笑着回应了。 + +そんなハルカに俺もまた、笑みを返す。 + +我也再次对那样的遥微笑。 + +「ふっ、違うさ。単にそう思っただけだ」 + +“嗯,不对。我只是这么想而已” + +「月じゃないけどね、厳密に言うと」 + +“虽然不是月亮,但严格说来。” + +「そうだな。しかも二つあるしな」 + +“是啊。而且还有两个呢” + +そう、実のところ、俺たちのいるこの世界には月が――正確には衛星が二つあった。 + +没错,事实上,我们所在的这个世界里有两颗月亮——正确地说是两颗卫星。 + +ただし、二つの衛星が同時に見えることは無く、見た目も、大きさもほとんど違わないため、教えられるまで気付かなかったのだが。 + +但是,两颗卫星没有同时看到,外观和大小几乎没有差别,所以在被告知之前都没有注意到。 + +いや、正しくは『大きさが違って見えるな?』とは思っていたのだが、地球で見ていた月だって、『今日の月は大きく見える』とか普通に経験していたので、まさか本当に違う衛星だとは思わなかったのだ。 + +不对,正确的说法是“看起来大小不一样啊?”虽然这么想,但是在地球上看到的月亮,也有过“今天的月亮看起来很大”这样普通的经历,所以没想到真的是不同的卫星。 + +「今日は、大きい方の月だから、明るいわね」 + +“今天是大月亮,所以很明亮。” + +「少しだけな。だが、今日はその事に感謝したい気分だ。――おかげで、ハルカの綺麗な顔がよく見える」 + +“只有一点点。但是,今天我想感谢这件事。——多亏了你,我才能清楚地看到Haruka漂亮的脸” + +月明かりに煌々と照らされたハルカの碧眼が、少し意外そうに瞬いた。 + +被月光照得熠熠生辉的遥的碧眼,有点意外地闪烁着。 + +「どうしたの? らしくないけど」 + +“怎么了?虽然不像” + +「たまには良いだろう? そういう気分なんだ」 + +“偶尔也不错吧?就是这种心情” + +「そう、ね。私も女だし、嬉しくないとは言わないわよ?」 + +“是啊,是啊。我也是女生,不会说不开心吧?” + +俺に肩を預けるように立ち、ハルカもまた、俺の隣で空を見上げる。 + +像是把肩膀寄存在我身上一样站着,Haruka也在我的旁边仰望天空。 + +「こちらに来て、一年経ったな」 + +“来这里已经一年了。” + +「そうね。今日、その事を祝うパーティーをしたからね」 + +“是啊。因为今天开了庆祝那件事的派对” + +「だから、ちょうど良い機会かと思ってな」 + +“所以,我觉得这是个很好的机会。” + +「……何の?」 + +“……什么?” + +不思議そうに俺を見上げるハルカの前に、俺は小さな木箱を差し出し、蓋を開ける。 + +在不可思议地仰视着我的Haruka面前,我拿出了一个小木箱,打开了盖子。 + +その中には二つの指輪が並べられていた。 + +那里面摆着两个戒指。 + +月光に静かに輝く指輪を見て、ハルカが息をのむ。 + +看着月光下静静闪耀的戒指,Haruka屏住了呼吸。 + +「……これは、エンゲージリング、という事で良いのかしら?」 + +“……这是订婚戒指吗?” + +「あぁ。今はまだ無理だが、色々落ち着いて、のんびりと暮らせるようになったら……俺と結婚、してくれるか?」 + +“啊。虽然现在还不行,但是如果能冷静下来,悠闲地生活的话……能和我结婚吗?” + +「えぇ、良いわよ」 + +“啊,好啊。” + +かなりの勇気を振り絞り、俺が押し出した言葉に対して、ハルカはサラリと答えを返した。 + +对于我鼓起相当大的勇气说出的话,Haruka爽快地回答了。 + +僅かな躊躇も無く返ってきた言葉に、俺は暫し言葉を忘れる。 + +对于毫不犹豫地回复过来的话语,我暂时忘记了这句话。 + +「……あっさり答えたな」 + +“……我回答得很干脆。” + +「あら、悩んだ方が良かったの?」 + +“哎呀,烦恼一下比较好吗?” + +「いや、じらされたら、それはそれで嫌だが……俺の決意が、その、な?」 + +“不,如果被人欺负的话,那我就不喜欢了……我的决心就是那个,是吗?” + +これでも結構悩んだのだ。 + +这样也很烦恼。 + +今言うべきなのか。 + +现在该说吗。 + +なんと言うべきかなのか。 + +该说什么呢。 + +どういう場面で言えば良いのか。 + +用什么场合说比较好呢。 + +だから、ハルカからあまりにも普通に返答されてしまい、何というか拍子抜けしてしまったのだ。 + +所以,春佳回答得太普通了,总觉得有些失望。 + +そんな俺の心情を理解してか、ハルカは優しげに微笑む。 + +大概是理解了我的心情吧,Haruka温柔地微笑着。 + +「正直に言うと、日本にいた時から、何時いつかそうなりたいと思っていたからね」 + +“老实说,我从在日本的时候开始,就一直想着总有一天会变成那样。” + +「そうなのか……?」 + +“是吗……?” + +「気付いていなかった? ――そんな事、無いわよね?」 + +“没有注意到吗?——没有那样的事吧?” + +「ま、な……」 + +“嘛,是吧……” + +いくら幼馴染みとは言え、日が落ちても俺の部屋に居座るとか、ちょいちょい料理を作ってくれるとか、思春期を過ぎた単・な・る・幼馴染みがやるはずもない。 + +虽说是青梅竹马,但就算太阳落山,也会坐在我的房间里,为我做一点小料理,青春期过后的单纯·な·る·青梅竹马是不可能做的。 + +実際、トーヤもほぼ同じ頃からの幼馴染みだが、ハルカはそんな事をやっていないわけで。 + +实际上,TOYA也是差不多的青梅竹马,但是Haruka并没有做那样的事。 + +これで『気付いていませんでした』とか言ってしまうと、俺は難聴系主人公を超える逸材になってしまう。 + +如果这样说“我没有注意到”的话,我就变成了超越重听系主人公的卓越人才了。 + +「でも、できればもうちょっとロマンチックな、プロポーズの言葉を聞きたかったところだけど」 + +“但是,如果可以的话,我想听听求婚的话。” + +「それは、俺に期待しても無理な部分だな」 + +“那是即使期待我也不行的部分。” + +「うん、解ってる。そういう、飾らない部分も嫌いじゃないわよ?」 + +“嗯,我知道。这种不加修饰的部分也不讨厌吧?” + +「それは……ありがとう。俺の事を理解してくれて」 + +“那是……谢谢。请理解我” + +まったく考えなかったわけじゃなかったのだが、下手に取り繕って失敗するよりも、素直に言えば良いかな、と思ったのだ。 + +虽然并不是完全没想过,但比起巧妙地掩饰失败,还是坦率地说出来比较好。 + +それぐらい、俺たちの間には共に過ごした時間がある。 + +那样的话,我们之间有共同度过的时间。 + +「それじゃ、せっかくだから、ナオがはめてくれる?」 + +“那么,好不容易来一次,娜奥能戴上吗?” + +「解った」 + +“我明白了。” + +俺は指輪を手に取ると、ハルカが差し出した左手、その薬指にそっと指輪を嵌めた。 + +我拿起戒指,春香伸出左手,将戒指轻轻戴在了无名指上。 + +スッと入った指輪は俺が手を離すと、ハルカの指にフィットするサイズへと形を変える。 + +一下子放进去的戒指,我放开手的话,就会变成适合Haruka手指的尺寸。 + +「あら、ピッタリ……じゃ、ないわね。これ、ユキ?」 + +“哎呀,正好……那就不合适了。这个是雪?” + +「あぁ。ユキが『アジャスト』を付加してくれた。『せっかくだから、今日渡せたら良いよね』、とか言ってな」 + +“啊。雪加了“调节器”难得有机会,今天能交给她就好了” + +本来の予定であれば、指輪本体ができるのも、もう少し先になるはずだったのだが、俺の知らない間にユキが職人を急かして、納期を短縮。 + +本来预定的话,戒指本身就可以做了,应该会更早一点,但是在我不知道的时候,由纪催促工匠缩短交货期。 + +その上で、『アジャスト』の付加も頑張ってくれて、今この指輪が揃っているのだ。 + +而且,“调节器”的附加也很努力,现在这个戒指都有了。 + +ちょいちょい罠を仕掛けるユキではあるが、色々とお世話になっていることは否定できず、なんとも憎めない奴ではある。 + +虽然yuki是个小小的陷阱,但是不能否定他受到了很多照顾,是个让人恨不起来的家伙。 + +「それじゃ、ナオには私が嵌めようかな」 + +“那么,我来装娜奥吧。” + +ハルカはもう一つの指輪を手に取り、俺の指に嵌めると、俺の左手と自分の左手を重ねるように握り、並んだ指輪を見て嬉しそうに笑う。 + +春香手上拿着另一个戒指,戴在我的手指上,左手和自己的左手重叠地握着,看着并排的戒指开心地笑着。 + +「うん。お揃いだね」 + +“嗯。都到齐了呢” + +「ペアリングだからな」 + +“因为是对戒。” + +当たり前の事を口にした俺に、ハルカが少し不満そうに口を尖らせる。 + +我把理所当然的事说出口了,Haruka好像有点不满地插嘴。 + +「むー、もう少しだけ、素敵な言葉が聞きたいかな?」 + +“呃,你想再多听一点漂亮的话吗?” + +「飾らない俺が嫌いじゃないんだろ?」 + +“你不讨厌不加修饰的我吗?” + +「大丈夫。飾ってるナオも好きだから」 + +“没关系。因为我也喜欢装饰着的娜奥” + +そう言って、何か期待するように俺の顔を覗き込むハルカ。 + +说着,Haruka像是在期待着什么似的窥视着我的脸。 + +俺は『ふぅ……』と息を吐くとハルカの左手をそっと握り返し、右手を彼女の頬に添えて、その瞳を見つめる。 + +我吐出“呼……”的气息后,轻轻握住了Haruka的左手,右手贴在她的脸颊上,凝视着她的眼睛。 + +「……この指輪が、ハルカの指で輝き続ける限り、俺は自分の持てる力のすべてを以て、お前を守る事を誓う。叶うなら互いの命が尽きるその時まで、輝きが失われないことを、俺は願う」 + +“……只要这枚戒指在Haruka的手指上继续闪耀,我就发誓要用我所有的力量来保护你。如果能实现的话,我希望在彼此生命终结之前,不要失去光辉” + +「……格好つけすぎ。でも嬉しいかな。長い時間になると思うけど、よろしくね?」 + +“……打扮得太过了。但是很开心吧。我想时间会很长,请多关照吧?” + +「あぁ。よろしく」 + +“啊。请多关照” + +俺はハルカと見つめ合い、そして――。 + +我和Haruka互相凝视,然后——。 + +「かぁぁ! 甘酸っぺぇなぁ、おい!」 + +“啊啊啊!甘酸好厉害啊,喂!” + +俺たちの間を裂くように、声が響き渡った。 + +像是撕裂我们之间一样,声音响起了。 + +俺とハルカが、パッと同時にそちらに視線を向けると、そこには玄関前で仁王立ちし、額にペシリと手を当てたユキが天を仰いでいた。 + +我和Haruka同时向那边看去,在玄关前仁王立着,把手贴在额头上的雪仰望着天空。 + +そしてその後ろで、ナツキが申し訳なさそうに、扉の陰から顔を覗かせている。 + +然后在那后面,夏树好像很对不起似的,从门后面露出了脸。 + +「ユ、ユキ!? お前、寝てたんじゃないのか!?」 + +「ユウ、ユキミ33!?你不是睡觉了吗 + +「えぇ、えぇ、寝てたとも! 寝てましたとも! 中途半端に寝ちゃいましたとも! あのままぐっすり、朝まで寝るつもりでしたとも!」 + +“哎,哎,睡了!睡了!中途就睡着了!本来打算就这样睡到早上的!” + +ならそのまま寝ていて欲しかった! + +那么就那样睡吧! + +もしくは、目を瞑ってフェードアウトして欲しかった! + +或者,想要闭上眼睛淡出视野! + +覗いていた方には、俺が目を瞑るから! + +看的人,我会闭上眼睛的! + +「でも、目が覚めちゃったら、見に来ざるを得ないじゃないですか! えぇ! ですよねっ! ナツキ!」 + +“但是,如果醒来的话,就不得不来看了吧!哎!是吧!大枣!” + +「い、いえ、私は、その、ユキに誘われて……。そもそも気付いていませんでしたし……」 + +“不,不,我是被雪邀请的……。本来就没有注意到……” + +バッと振り返り、ビシリと指さされたナツキの方は、焦ったようにブルブルと首を振って否定する。 + +突然回头一看,被指得紧紧的枣着急地摇着头否定。 + +「じゃあ、なんで……」 + +“那为什么……” + +「ユ、ユキに誘われて……?」 + +“yu,被yuki邀请了……?” + +そりゃユキは知ってるよな。 + +那是小雪知道的吧。 + +ユキがお膳立てしたようなもんだし。 + +好像雪已经准备好了。 + +「あんまり見たくはなかったんだけどね! でも目が覚めちゃったからね! 気になるんだもん!」 + +“虽然不怎么想看呢!但是我醒了呢!我很在意!” + +――もしかして、そのために痛飲してたのか? + +——难道是为了这个才痛饮的吗? + +俺とハルカのアレソレを見ずに、寝て過ごすために。 + +为了不看我和Haruka的那个,睡觉度过。 + +だがそれなら、パーティーの終わり頃にやるべきだったと思うぞ? + +但是那样的话,我觉得应该在晚会结束的时候做? + +俺たちの各種能力――【頑強】などを考えれば、昼間に飲み過ぎても夜になれば回復するって。 + +考虑到我们的各种能力——“顽强”的话,即使白天喝多了,到了晚上也会恢复。 + +「かぁ~~、羨ましいねぇ! 『お前を守ることを誓う』、あたしも言われてみたいね! ねっ!」 + +“啊~好羡慕啊!”我发誓要保护你!对吧!” + +「覗くだけじゃなくて、しっかり聞いていたのかよっ!」 + +“不光是偷窥,还好好地听着啊!” + +「聞くさ! そりゃ聞くさ! もし手元にスマホがあったら、確実に激写だね! 永久保存版だね! 結婚式にはエフェクトを付けて大画面で上映だね!」 + +“我会听的!那我就听!如果手边有手机的话,确实是特写!是永久保存版吧!在结婚典礼上加上效果在大屏幕上放映!” + +「ヤ・メ・ロ!」 + +“亚美·罗!” + +今ほど、ユキの手元にスマホが無い事を感謝した時はない。 + +没有比现在更感谢小雪身边没有智能手机的时候了。 + +そして、似たような道具が無い事にも。 + +而且,也没有类似的道具。 + +錬金術があるだけに、あり得ないと言えないあたりが怖い。 + +正因为有炼金术,所以不能说不可能的地方很可怕。 + +「せめて、さっきのナオの言葉をしっかりと書き記して――」 + +“至少要把刚才娜奥的话好好地写下来——” + +「――ユキ?」 + +“——雪?” + +静かに響いたハルカの言葉に、ユキの言葉が途切れる。 + +在静静回响的Haruka的话语中,雪的话语中断了。 + +「今の場面って、私の一生の中でも、かなり重要な場面だったと思うのよ?」 + +“你觉得现在的场面是我一生中非常重要的场面吗?” + +ハルカはとても静かな笑みを浮かべ、ユキに向かって一歩を踏み出す。 + +春香脸上浮现出非常安静的笑容,向着雪迈出了一步。 + +「あ、あら? ハルカ、さん? 実は、結構怒ってます?」 + +「啊,哎呀?春佳,小姐?实际上,你很生气吗?” + +エヘヘ、と笑い、小首を傾げるユキに取り合わず、更に一歩進むハルカ。 + +春香笑着说“嗯”,没有理会小脑袋歪着的雪,更进一步一步前进。 + +「そう、人生の最後で走馬灯が浮かぶなら、必ずピックアップされるぐらいに」 + +“是的,如果在人生的最后浮现出走马灯的话,一定会被拾到的。” + +走馬灯って……なんだか不穏だな、オイ。 + +走马灯……总觉得不稳啊,喂。 + +もちろん、平穏にベッドの上で見るかもしれないが、俺たちのような稼業だと、危ない場面で死にかけて見そうなイメージがある。 + +当然,也许会在床上平静地看,但是像我们这样的工作,会给人一种在危险的场合死而复生的印象。 + +「えーっと、覗きはともかく、割り込んだのは、ちょっと、やり過ぎだったかも?」 + +“呃,偷窥暂且不论,插队的话,可能有点做过头了?” + +「ナオって照れ屋だから、あんまり直接的な言葉って言ってくれないのよね」 + +“因为nao是个害羞的人,所以不怎么直接说出来。” + +「……覗いたのもマズかったですか?」 + +“……窥视了也很难吃吗?” + +ゆっくりと歩みを進めるハルカに、ユキが焦ったように冷や汗を垂らす。 + +面对慢慢前行的Haruka,雪像急了一样滴着冷汗。 + +「そんなナオが珍しく言ってくれた言葉。そんな場面を思いっきり破壊されて……」 + +“娜奥很少见地对我说了这样的话。那种场面被彻底破坏了……” + +「あ、謝った方が良いかな? 謝る用意はありますよ? あたし、反省できる人間ですよ?」 + +“啊,道歉比较好吧?有道歉的准备哦?我是能反省的人哦?” + +腰が引けているユキの前に立ったハルカは、笑顔のまま、しかし冷たさを感じさせる表情で、ユキの両肩をガッシリと掴む。 + +站在退缩的雪面前的Haruka,带着笑容,但是却让人感觉到寒冷的表情,紧紧抓住雪的两肩。 + +「――さて、怒らないと思う?」 + +“——那么,你觉得不会生气吗?” + +その後のことは、ユキの名誉のために語るまい。 + +那之后的事情,不会为了雪的名誉而说的。 + +俺がユキに向かってナムナムと手を合わせていると、苦笑を浮かべたナツキがハルカたちを避けて俺の方に来て、ぺこりと頭を下げた。 + +我和namunamu对yuki握手的时候,浮现苦笑的naruki避开Haruka他们来到了我这边,一下子低下头。 + +「すみません、覗いてしまって」 + +“对不起,我偷窥了。” + +「あー、ちょい、恥ずかしかったが……それだけだ。気にしなくて良い。ぶち壊したのはユキだし」 + +“啊,有点不好意思……就这些。不用在意。弄坏的是雪” + +「でも、お膳立てしたのも、ユキなんですよね?」 + +“但是,准备好的也是雪吧?” + +「それな。かなり協力してもらってるからなぁ……正直、俺は怒りづらい」 + +“是啊。因为得到了相当大的帮助……老实说,我很难生气” + +今日この日、指輪を渡すことができたのも、指に合わせることができたのも、ユキのおかげ。 + +今天这一天,能把戒指交给你,能合在手指上,都是多亏了小雪。 + +俺の背中を押したのはユキなのだ。 + +推我后背的是雪。 + +その事を考えると……。 + +一想到那件事……。 + +「我慢できなかったんですよ、きっと。……愛されていますね、ナオくん」 + +“我一定受不了。……真是被爱着呢,小直” + +「……幸いな事にな」 + +“……真是万幸啊。” + +「私も……」 + +“我也……” + +「ん?」 + +“嗯?” + +「……いえ、今は止めておきます。私は先に戻りますね。ユキとハルカのことはお任せします」 + +“……不,现在就不说了。我先回去吧。由我来处理雪和春香” + +「……任されても困るんだがな」 + +“……交给我也不好办啊。” + +「何事も経験、ですよ。今後のための」 + +“什么事都是经验。为了今后” + +ナツキは微笑んでそんな事を言うと、俺をその場に残して一人玄関の扉をくぐったのだった。 + +夏树微笑着说了那样的话,就把我留在了那个地方,一个人穿过了玄关的门。 \ No newline at end of file