# 311 休息と探索 (3) 311休息和探索(3) そんな感じで森を進んでいた俺たちだったが、やがて昼を迎えた頃、ついに森が途切れ、俺たちの目の前に現れたのは、切り立った岩山だった。 就这样在森林里前进的我们,终于在迎来白昼的时候,森林终于中断了,出现在我们眼前的是陡峭的岩山。 「やっと、不意打ちエリアは終わりか……結構疲れたな」 “终于,冷不防区域结束了啊……真是太累了。” 「お疲れ様です。魔力は大丈夫ですか?」 “辛苦了。魔力没问题吗?” 「正直に言えば、しばらく休みたいな」 “老实说,我想暂时休息一下。” トレントによってかなりの魔力を消費させられたこともあるが、それ以外にも精神的にかなり疲れた。 虽然根据Trant消耗了相当大的魔力,但除此之外精神上也相当疲劳。 シャドウ・バイパーやトレントなど、いずれも感知が難しい敵。 阴影、振动和Trant等,都是感知困难的敌人。 それが何時襲ってくるか判らない状況で、【索敵】に注意を向け続けているのは、なかなかにしんどいのだ。 在不知道那个什么时候会袭击的情况下,持续注意【索敌】,真的很辛苦。 トーヤがいれば、ある程度分担できる部分があるのだが、二人だけだからなぁ。 有TOYA在的话,虽然有一定程度的分担,但是只有两个人啊。 「一先ずは、お昼ご飯を食べて休みましょう。『聖域サンクチュアリ』を使っておけば、多少は気が抜けますよね?」 “首先,先吃午饭休息吧。”使用圣域圣殿的话,多少会有些泄气吧?” 「だな」 “是吗?” 俺たちは森から出ると、崖から少し離れた場所に腰を下ろし、『聖域』を使ってから昼食の準備を始めた。 我们从森林里出来,坐在离悬崖有点远的地方,使用“圣域”开始准备午饭。 周囲に怪しげな木は無いし、トレントもシャドウ・バイパーも気にする必要は無いが、用心するに越したことはない。 周围没有可疑的树,山沟和阴影·振动都不需要在意,不过最好小心。 一応、崖にロック・スパイダーが張り付いていたりしないことは確認しているのだが……思えばこの階層、森に限らず不意打ち狙いの敵ばっかだな? 大体上,我已经确认过悬崖上不会贴着摇滚蜘蛛……仔细一想,这个阶层不仅仅是森林,全是突然袭击的敌人吧? って事は、不意打ちエリアは終わりじゃなく、今後も続くのか? 也就是说,突然袭击区域不是结束,今后也会继续吗? 嫌だなぁ。疲れそう。 真讨厌啊。看起来很累。 「さて、ナオくん、何を食べますか? やはり、温かい物が良いですよね」 “那么,娜奥,吃什么呢?果然还是热的东西好” 「あー、とりあえず、何か甘い物が食べたい。ディンドルでも食べるか?」 “啊,总之,想吃点甜的东西。要不要吃点丁元?” 「ディンドルですね。――はい、どうぞ」 “是丁元吧。——好的,请。” 疲れた時には甘い物。 累的时候吃甜食。 庶民から見れば『何と贅沢な!』とか言われそうだが、俺とナツキは一つずつ、ディンドルを平らげる。 在老百姓看来“多么奢侈啊!”我和枣各吃一个,就能平定一美元。 まぁ、この実一個で、ちょっと良いお店のランチ一食分よりも高いのだから、贅沢と言えば贅沢である。 嘛,这一个果实比一个稍微好点的店的午餐贵,所以说奢侈就是奢侈。 だからといって、節約するつもりは毛頭無いが。 虽然这么说,但我丝毫没有节约的打算。 大した娯楽も無いのだから、美味い物ぐらい自由に食べたい。 因为没有什么大不了的娱乐活动,所以想吃点好吃的东西之类的。 それが買った物ではなく、自分で採った物ならなおさらである。 如果不是那个买的东西,而是自己采的东西的话就更不用说了。 「ケーキも残ってますけど、食べますか?」 “蛋糕也剩下了,要吃吗?” 「ケーキか……」 “蛋糕吗……” ストライク・オックスのミルクが手に入るようになって以降、ナツキたちはバターや生クリームも作るようになっていた。 自从好球·牛克斯的牛奶到手以后,枣树们也开始制作黄油和鲜奶油了。 それらがあるおかげで、お菓子も色々と食べられるようにはなったのだが、さすがに菓子を昼食代わりにするのはちょっと厳しい。 多亏有了这些,点心也能吃很多了,但是把点心作为午饭的替代品还是有点严格。 「……いや、普通のご飯にしよう。肉でも食べるか」 “……不,就吃普通的饭吧。要不要吃肉?” 「解りました」 “我明白了。” 再びナツキが出してくれたパンと肉でお昼を終え、俺は寝台を取りだしてそこにゆったりと横になった。 吃完午饭后,我又拿出了海枣给我端来的面包和肉,拿出床悠闲地躺在那里。 ナツキの方は、軽く火を熾し、そこにお茶っ葉と水を入れたヤカンを掛けている。 枣的话,要轻轻地把火加热,在那里挂上茶叶和水的水壶。 完全に休息モード。 完全处于休息模式。 このまま夕方ぐらいまでは、魔力の回復に専念したいところである。 就这样到傍晚为止,我想专心恢复魔力。 「そう言えばさ、ナツキ。バターとかは作っているのに、チーズは作らないんだな?」 「这么说来,就是枣。明明做了黄油什么的,却不做奶酪吗?” 「チーズ、ですか? 私たちも食べたいとは思っているんですが、フレッシュチーズならともかく、本格的なチーズは、少しハードルが高いんですよね」 “芝士吗?我们也想吃,新鲜芝士就不说了,真正的芝士难度有点高呢” 少し気になっていたことを聞いてみれば、そんな答えが返ってきた。 问了一下有点在意的事情,得到了这样的回答。 「あぁ、やっぱ難しいのか。作り方は知っているのか?」 “啊,果然很难啊。知道做法吗?” 「大まかには、ですが。でも、それで上手くできるほど、簡単ではないでしょうね。【調理】スキルがあったとしても」 “大概是这样。但是,并不是那么容易就能做好的烹饪:即使有技巧” 「時間も掛かるだろうしなぁ。――クレヴィリーには売ってたんじゃないか? 買わなかったのか?」 “也需要时间啊。——在克里维里不是有卖的吗?没有买吗?” 俺とユキが入った食堂では、チーズが使われた料理があったわけで。 在我和雪树进去的食堂里,有用芝士做的料理。 俺のイメージするチーズとは少し違ったが、あれはあれでなかなかに美味かった。 虽然和我印象中的芝士有点不同,但是那个很好吃。 ほぼ液体だっただけに、どのような形で売られているのかは解らないが、店で出ている以上、存在はしているはずである。 因为几乎都是液体,所以不知道是以怎样的形式出售的,但是既然在店里出现了,就应该存在。 だが、俺の疑問に対してナツキから返ってきたのは、苦笑だった。 但是,对于我的疑问,从枣那里得到的却是苦笑。 「売ってはいましたが、それが私たちの口に合うかどうかは別問題でして。大半の物は、トーヤくん、メアリちゃん、ミーティアちゃんが無理という事で、買わなかったんです。匂いがきつすぎて」 “虽然有卖,但是那个合不合我们的口味是另一个问题。大部分的东西都是因为Toya君、meari酱、mitia酱不行,所以没有买。味道太重了” 「……あぁ、外国の物とか、匂いがきついって聞くもんな。そんな感じか?」 “……啊,听说外国的东西之类的味道很重。是那种感觉吗?” 「大半の物はそれ以上ですね、私の感想としては。一部、食べられそうな物は買ってきましたが……」 “大部分的东西就这些了,作为我的感想。我买了一部分能吃的东西……” 俺も、あまり匂いのきついチーズはダメだし、鼻が良い獣人だともっと厳しいだろう。 我也不能吃味道太重的芝士,如果是鼻子好的兽人的话会更严格吧。 考えてみればチーズって、カビと一緒に食べる物もあるわけで、なかなかにリスキーな食べ物である。 仔细想想,芝士也有和霉一起吃的东西,是相当有风险的食物。 「今のところ、隠し味的に入れるだけですね。少しだけなら、美味しく食べられますから。あまり気になりませんよね?」 “现在只是放进佐料里而已。只要一点点,就能吃得很好吃。不太在意吧?” 「入ってたのか。ナツキたちの作る料理はいつも美味しいぞ? 感謝してる」 “进去了吗?”。海枣们做的菜总是很好吃哦?非常感谢” 「いえいえ。そう言って頂けると、頑張ってる甲斐もあります。――さ、お茶が入りましたよ」 “不不不不。这样说的话,也有努力的价值。——来,茶沏好了」 差し出されたお茶を受け取り、一口。 接过递过来的茶,吃一口。 温かいお茶に癒やされつつ、ナツキに「ありがとう」と礼を言う。 在热茶的治愈下,对海枣说声“谢谢”。 そしてその後も、俺はナツキと雑談をしながら、のんびりと休息を取り、魔力の回復に努めたのだった。 在那之后,我一边和夏树闲谈,一边悠闲地休息,努力恢复魔力。 夕方、概ね俺の魔力が回復したところで、俺たちは焚き火や寝台などを片付け、転移する準備を始めた。 傍晚,我的魔力大致恢复了,我们开始收拾篝火和床等,准备转移。 完全回復とはいかないが、ここからなら余裕を持って転移もできる――。 虽然不能完全恢复,但如果从这里开始的话,可以从容转移。 「ん? 転移ポイントが増えている……?」 “嗯?转移点增加了……?” 意識を集中して転移ポイントを探った俺は、朝とは違う反応に眉をひそめる。 集中意识寻找转移点的我,对和早上不同的反应皱眉。 「どうかしたんですか?」 “怎么了?” 「いや、今朝の段階で、転移ポイントは二つだったんだが、それが増えているんだよ。普通なら、増やすほどの距離でもないんだが……」 “不,在今天早上的阶段,转移点是两个,但是那个增加了。一般来说,也不是增加的距离……” 二一層の入口に設置した物に加え、もう一つ設置された転移ポイントは、俺たちの帰還の目印のためと思っていたのだが、更に増えた転移ポイントに関しては意味が解らない。 除了设置在两层入口的东西之外,还设置了另一个转移点,本以为是为了我们的归来的标志,但对于增加的转移点却不明白其意义。 敢えて置く意味が無いほど、二つ目の転移ポイントと距離が近すぎるのだ。 没有特意放置的意义,和第二个转移点距离太近了。 「何故……?」 “为什么……?” 転移ポイントを作るのにだってお金は掛かるのだ。 即使制作转移点也要花钱。 必要以上に設置することは完全な無駄遣いである。 设置在必要以上是完全的浪费。 ハルカがそんな無駄なことをするとは思えないので、何かしらの意味があるのだろうが……。 我不认为Haruka会做那样徒劳的事,所以有什么意义……。 「それも戻ってみれば解りますよ。まずは合流を急ぎましょう」 “那个也回来看看就知道了。首先赶紧汇合吧” 「おっと、そうだな。それじゃナツキ」 “哦,是啊。那就是海枣” 「はい」 “是的。” 俺はナツキの手を握り、転移ポイントを探る。 我握着枣的手,寻找转移点。 大して距離は違わないし、新しく設置された方が良いよな。 距离也没什么差别,还是新设置的好。 ハルカたちもそちらにいる可能性が高いわけだし。 Haruka他们在那里的可能性也很高。 「『領域転移エリア・テレポーテーション』。…………おや?」 “《区域转移区域·电传》。…………哎呀?” いつも通りに発動した魔法。 和往常一样发动的魔法。 ……いや、正確には発動しようとしたのに、発動しなかった魔法。 ……不对,明明想正确发动,却没有发动的魔法。 その事に俺は首を傾げる。 我会歪着头去做那件事。 「どうかした……んですよね、転移できていませんし」 “怎么了……是吧,还没有转移。” 「あぁ、なんか、転移が使えない? 途中で阻害されるような……。すまん、原因は良く判らん」 “啊,怎么说呢,转移不能使用吗?在途中会被阻碍……。对不起,我不太清楚原因” 転移ポイントの位置は把握できるのに、そこまでラインが繋がらないというか……ん? もしかして、転移ポイントの数が増えているのは、これが原因か? 明明能把握转移点的位置,却连不到那个地步……嗯?难道转移点的数量增加是因为这个吗? 遠くまで転移できないから、数を増やして対処している? 因为不能转移到很远的地方,所以会增加数量来处理吗? 「――ナオくんが転移できないなら、当然、ユキも無理ですよね。その予想、間違ってないかもしれません。近場なら、転移可能なんですか?」 “——如果娜奥君不能转移的话,当然小雪也不行。那个预想可能没有错。近场的话,可以转移吗?” 「たぶん、問題ない」 “大概没问题。” 一応は実験と、一〇メートルほど離れた場所に転移してみるが……。 暂且试着转移到距离实验100米左右的地方……。 「ヤバい……微妙にずれてる」 “糟糕……微妙地偏离了。” 転移の目標としていた、ひょろりと生えていた草。 作为转移目标,长着细长的草。 本来であれば、その真上に転移するはずだったのだが、実際に転移したのはそのすぐ隣。 本来应该转移到正上方,但实际转移到的是它的旁边。 ズレとしては二〇センチにも満たないが、最初の頃ならいざ知らず、最近の転移でズレることなんて無かったわけで……。 虽然偏差还不到20厘米,但是刚开始的时候还不知道,最近的转移并没有发生偏差……。 「これ、下手に使うと危ないかもしれない。ユキ、失敗して崖から真っ逆さま、とかなってなければ良いんだが……」 “这个如果不熟练地使用的话可能会很危险。雪,要是失败后从悬崖上完全倒过来就好了……” 「そこは……大丈夫だと、期待しましょう。ユキだって、普段通りに使えないと解れば、警戒するでしょうし」 “那是……我们期待着吧。即使是雪,如果知道不能像平时那样使用的话,也会警戒的” 「だよな?」 “是吧?” 朝から今までの間で、転移ポイント設置数が増えている以上、生存している事に間違いが無いのは、安心材料か。 从早上到现在,转移点设置数增加了,生存的事没有错的,是放心材料吗。 「問題は私たちの方です。転移ができないとなれば、なんとか自力で戻る必要があるわけですが……」 “问题是我们这边。如果不能转移的话,就需要靠自己的力量回去了……” そう言いながらちょっと困ったようにナツキが見上げるのは、目の前に聳そびえる岩山。 虽然这么说,但是有点为难的是,枣抬头仰望的是耸立在眼前的岩山。 九〇度とは言わないが、八〇度ぐらいはありそうな斜面は、山登りではなくロッククライミングである。 虽然不说是九十度,但八十度左右的斜坡不是登山而是攀岩。 一応、【登攀】のスキルは得たわけだし、天辺が見えているのなら登るのもありなのだろうが、上を見上げて見えるのは雲。 姑且来说,“攀登”的技能已经掌握了,如果能看到天边的话,也有可以攀登的吧,但是抬头看到的却是云彩。 どれぐらいの高さがあるのか、さっぱり判らない。 完全不知道有多高。 どうやっても、一日じゃ登れないだろうし、体力が保つはずもない。 不管怎么做,一天是爬不上去的,也不可能保持体力。 ロッククライマーが岩壁にテントを張って、キャンプをしているのは見た事あるが、もちろん俺たちにできるようなことではないわけで。 我见过攀岩手在岩壁上搭帐篷露营,当然不是我们能做到的事情。 宙ぶらりんの状態で寝るとか、どんな罰ゲームなのかと。 像是在半空的状态下睡觉之类的,是怎样的惩罚游戏呢。 そもそも魔物が飛んで来かねないこの場所で、そんな事をできるとは思えないしな。 原本我就不认为在这个魔物可能会飞过来的地方能做那样的事。 「この岩山、登るのはちょっとなぁ……」 “这座岩山,爬起来有点……” 「はい。危険すぎます。登れそうな場所でもないか探すべきでしょうが……」 “是的。太危险了。应该找个能不能上去的地方……” ナツキは言葉を濁し、辺りを見回すと空を見てため息をついた。 夏树含糊其辞,环顾四周,望着天空叹了一口气。 「今日のところはここまで、でしょうか。これまでに襲ってきた魔物のことを考えると、薄暗くなってから行動するのは――」 “今天就到这里吧。想到至今为止袭击过的魔物,天黑后再行动——” 「無しだな。確実に怪我をする」 “没有啊。确实会受伤” 昼間でも【隠密】や【擬態】を見破るのには神経を使うのだ。 即使在白天,要识破【隐秘】和【拟态】也要花心思。 夜にそんな事をするなんて、考えたくもない。 我不想考虑晚上做那种事。 「では、片付けたところですが、再び、野営の準備、しましょうか」 “那么,虽然已经收拾好了,但还是再准备一下野营吧。” 俺とナツキは顔を見合わせ、揃ってため息をついた。 我和枣面面相觑,一起叹了一口气。