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248 貴族の婚礼 (1)
248贵族婚礼(1)
「今、お時間よろしいでしょうか?」
“现在有时间吗?”
米の試食を終え、時間が中途半端だから今日はのんびり過ごそうか、と話していたところにやって来たのは、アーリンさんだった。
米的试吃结束后,因为时间不完整,所以今天就悠闲地度过吧。
この町にいる間は、エカートたち領兵が護衛を務めるため、俺たちは完全休養、イリアス様も忙しいのか、メアリたちが呼ばれる事も無かったのだが……。
在这个城市期间,埃克托等领兵担任护卫,所以我们完全休养,伊利亚斯大人也很忙吗,也没有被叫到玛丽们……。
「えぇ、構いませんよ。今日は特に予定もありませんから」
“啊,没关系。今天没有什么特别的安排”
仕事中じゃありませんから、と追い返すわけにもいかず、俺たちは快くアーリンさんを受け入れ、椅子を勧める。
因为不是工作中,所以不能追回去,我们很快就接受了阿林先生,并推荐椅子。
「ありがとうございます。少し情報が集まりましたので、それを共有しておこうかと思いまして」
“谢谢。因为稍微收集了一些信息,所以我想还是共享一下吧”
「情報というと、あの襲撃ですか?」
“要说情报的话,是那个袭击吗?”
「はい。あれです」
“是的。就是那个”
あれ以外に俺たちと情報共有が必要な物は無いだろう、とは思ったのだが、襲撃の背景など敢えて教える必要が無いとも言えるし……なんだか不穏である。
除此之外没有其他需要和我们共享信息的东西了吧,虽然这么想,但也可以说没有必要告诉我们袭击的背景……总觉得有点不稳定。
だが、そんな俺の心情は他所に、アーリンさんは話し始める。
但是,那样的我的心情在别处,阿林先生开始说。
「私たちで情報収集を進めた結果ですが、どうやらあの襲撃にはユピクリスア帝国が関わっている可能性が高そうなのです」
“虽然是我们进行情报收集的结果,但是好像和尤比里亚帝国有很大关系。”
「ユピクリスア帝国って……この国の南方にある敵国ですよね? イリアス様が襲われるほど、険悪な状況なんですか?」
“尤比里亚帝国……是这个国家南方的敌国吧?是不是像伊利亚斯大人那样险恶的状况呢?”
聞かされた少し意外な情報に、ハルカは首をかしげる。
听到了一点意外的消息,Haruka歪着头。
俺の知る範囲では、ユピクリスア帝国は仮・想・敵国の範疇で、わざわざこんな国境から離れた、しかもあまり有力とも言えない貴族の子供を狙って、ゲリラ活動を行うほどの状況にはなっていないとの認識である。
在我所知的范围内,尤比里亚帝国是假想的、设想的、敌国的范畴,并没有专门针对远离这样的国境,而且也不能说是有力的贵族的孩子,进行游击活动的那样的状况。
イリアス様を拉致したとしても、レーニアム王国が何らかの要求を飲むとは思えないし、ネーナス子爵に身代金を要求したところで、所詮は弱小の貴族、国家単位で考えれば大した額でもないだろう。
即使绑架了伊利亚斯大人,也不认为列尼安王国会接受某些要求,即使向纳纳斯子爵索要赎金,说到底还是弱小的贵族,以国家为单位考虑的话也不是什么大不了的金额吧。
それであれば、サトミー聖女教団がどこかの手練れを雇ったと考える方が、まだしっくりとくる。
如果是这样的话,认为萨特米圣女教团雇佣了某个花招的人还比较合适。
「はっきりと言ってしまえば、当家である必要性はまったく無い……いえ、ほとんど無かったようです。単純に、少人数でも襲撃が成功しそうだから狙われた、と思われます」
“说白了,完全没有作为本家的必要性……不,几乎没有。单纯地说,就算人数少,袭击也会成功,所以才被瞄准的”
実はイリアス様以外にも、今回の婚礼参加者の中に襲われた人が何人かいたらしい。
实际上除了伊利亚斯先生以外,这次参加婚礼的人中似乎也有几人遭到袭击。
そして、総じて襲ってきたのは少人数、襲われたのは護衛の人数が少なく、手練れもいないような弱小貴族。
然后,总的来说袭击的是少数人,被袭击的是护卫人数少,没有什么花招的弱小贵族。
「ユピクリスア帝国としても、敵国内に大人数の兵士を浸透させるのは難しいですからね。今回の婚礼を邪魔するための一手として行われたのでしょう」
“即使是尤比里亚帝国,也很难让大批士兵渗透到敌国。这是作为妨碍这次婚礼的一手而举行的吧”
「なるほど。しかしなぜ? ダイアス男爵領もユピクリスア帝国とは接していませんよね?」
“原来如此。但是为什么?戴斯男爵领也没有和尤比利亚帝国接触吧?”
「はい。ですが、結婚相手の貴族が、ユピクリスア帝国と対峙しているのです」
“是的。但是,结婚对象的贵族和尤比里亚帝国对峙着”
今回のダイアス男爵との婚姻相手、それは時折ユピクリスア帝国と小競り合いを起こしているアシー男爵家の娘。
这次和戴斯男爵的结婚对象,是偶尔和尤比利斯帝国发生小冲突的阿伊男爵家的女儿。
当然、ユピクリスア帝国としては、金持ちのダイアス男爵とアシー男爵家が縁戚関係になるのは歓迎できない。
当然,作为尤比里亚帝国,不欢迎有钱人的戴斯男爵和阿西男爵家成为亲戚。
距離的に見れば、アシー男爵領とダイアス男爵領はかなり離れているのだが、クレヴィリー傍そばを流れる川の下流、そこにあるのがアシー男爵領なのだ。
从距离上看,阿斯男爵领和戴斯男爵领相距甚远,但在克雷维利旁边流淌的河流下游,那里就是阿斯男爵领。
逆はともかくとして、ダイアス男爵領からアシー男爵領へと物資を運ぶのであれば、かなり交通の便は良く、緊急支援などもやりやすい。
反过来暂且不说,如果从戴斯男爵领向阿斯男爵领运送物资的话,交通相当便利,也很容易进行紧急支援。
そんな事を考慮すると、ユピクリスア帝国としては、確かになかなか嬉しくない婚礼だろう。
考虑到这一点,作为尤比里亚帝国,这的确是一场不怎么令人高兴的婚礼。
「ですが、出席者を襲撃したぐらいで婚礼の阻止ができるんですか?」
“但是,袭击出席者的话就能阻止婚礼吗?”
「うん。だよな? 結婚する本人たちならともかく」
“嗯。是吧?如果是结婚的本人那就另当别论了”
特にネーナス子爵なんて、単に隣に領地があるというだけであり、俺たちが通ってきた街道の様子を見ても判るとおり、交流も乏しく親しくも無いのだ。
特别是内那斯子爵,仅仅是因为旁边有领地,从我们走过的街道的样子就可以看出,他们缺乏交流,也没有亲近感。
万が一、イリアス様が殺されるような事があったとしても、婚礼が中止になるとは思えない。
即使万一伊利亚斯大人被杀了,婚礼也不会中止。
「もちろんそれが可能なら、やったでしょうが、お金があるダイアス男爵家の護衛は精強、頻繁に実戦を経験するアシー男爵領の兵士は言うまでもありません。ですので、次善の策でしょうね。今回の婚礼を阻止できなくても、ケチが付くだけでも意味はある、と」
“当然,如果可能的话,应该会做的,但是有钱的戴斯男爵家的护卫是精强的,频繁实战经验的阿斯男爵领的士兵就不用说了。所以,这是次善之策吧。”
つまり、今後の外交、政策で何らかの布石になれば価値があると、そんな感じらしい。
也就是说,在今后的外交政策上,如果成为某种布局的话,就有价值了。
まぁ確かに、今回の事で殺された貴族は、ダイアス男爵とアシー男爵に対して感情的なしこりは抱えてしまうかもしれない。
确实,这次被杀的贵族可能会对戴斯男爵和阿斯男爵抱有感情上的芥蒂。
悪いのはユピクリスア帝国だと解っていたとしても。
即使知道错的是尤比里亚帝国。
「……あ、他に襲われた貴族はどうなったんですか?」
“……啊,其他被袭击的贵族怎么样了?”
「二名ほど、殺されています。幸い、当主ではありませんが……。後は怪我をされた方もいますね。護衛に関してはそれなりに被害が出ています」
“有两个人被杀了。幸运的是,我不是户主……。还有人受伤了。在护卫方面也有相应的损失”
「うわーぉ……」
“哇……”
なかなかに生々しい被害に、トーヤが思わずという風に声を漏らす。
面对相当严重的灾害,火炬不假思索地发出了声音。
「我々も、皆さんがおられなければ、同様だったでしょうね。改めてお礼申し上げます」
“如果大家不在的话,我们也是一样的吧。再次表示感谢”
「いえいえ、お仕事ですし。そもそも、捕まえる事もできず、全員に逃げられていますから」
“不不不,是工作。说起来,也没能抓到,大家都逃走了”
そう言いながら丁寧に頭を下げるアーリンさんに、俺は慌てて手を振り、応える。
对于一边这样说着一边认真低头的阿玲,我慌忙挥手回应。
一応、一人には重傷を負わせたが、それだけ。
姑且让一个人负了重伤,但仅此而已。
あまり誇れるような結果では無い。
结果并不值得夸耀。
二人は領兵が相手をする事になったし、もし敵があと一人、二人多ければ、かなり危険だっただろう。
两个人是领兵做对手的,如果还有一个敌人,两个多的话,会很危险吧。
ナツキたちも俺の言葉に頷きつつ、少し不思議そうに疑問を口にする。
夏树他们也一边点头赞同我的话,一边不可思议地说出疑问。
「しかし、よく判りましたね? 話を聞くと、自白を得た訳じゃなさそうですが」
“但是,你很明白吧?听了您的话,我觉得您并没有招供”
「はい。種々の情報を勘案して、ですね。賊を何人か斃した方もおられたようですが、何ら証拠となる物を持っていなかったそうです。ですから、外交ルートで抗議をする事もできません」
“是的。考虑各种各样的信息,是吧。虽然有人杀死了几个贼,但是好像没有什么证据。因此,也不能在外交途径上提出抗议”
おぉ、あのレベルの敵を斃したのか。
哦,你杀了那个级别的敌人吗。
こちらの被害を許容するなら斃せるかもしれないが、俺とトーヤでも攻めきれなかった事を考えれば、現実的にはナツキも参加してなんとか、という感じだろう。
如果能容忍我方的损失的话,也许会死,但是如果考虑到我和托亚都没能攻过来的话,现实中夏树也参加了,大概会有这样的感觉吧。
あれが実際の戦争を経験している手練れ、というものなのだろうか。
那是经历了实际战争的魔术吗。
「それは残念ですが……しかし、であるならば、帰りに襲われる危険性は低い、ということでしょうか」
“虽然很遗憾……但是,如果是这样的话,回去的时候被袭击的危险性就很低了,是吗?”
「おそらくはそうなります。もちろん、普通の盗賊や魔物に関しては判りませんが」
“恐怕是这样。当然,我不知道普通的盗贼和魔物”
「そのあたりはまぁ、問題ないでしょう。……さすがにあんなレベルの盗賊はいないと思いますし」
“这一点嘛,应该没问题吧。……我觉得没有那种程度的盗贼”
むしろ、いてくれるな。
倒不如说,别在我身边。
怖いから。
因为害怕。
そもそもあのレベルなら、盗賊なんてやってなくても、十分に稼げるだろう。
本来那个水平的话,就算不做盗贼也能赚很多钱吧。
「で、お話はそれだけじゃ無いんですよね?」
“那么,说的不只是这些吧?”
「え? そうなのか?」
“啊?是吗?”
軽くため息をつくように確認するハルカに、トーヤが少し意外そうな声を上げるが、当然と言えば当然だろう。
对于确认了轻轻叹息的春香,托亚发出了一点意外的声音,这是理所当然的吧。
今回の一行の中で、実質的に最も政治的な権限を持っているのは、恐らくイリアス様のお目付役と思われるアーリンさんなのだ。
在这一行中,实际上拥有最政治权力的恐怕是伊利亚斯先生的监督阿林先生。
単に俺たちが気になっているだろうから、だけで教えに来てくれるとは思えない。
只是因为我们很在意,所以我不认为光是来教我们。
「今の情報だけなら、私たちが知る必要ないでしょ。政治的な話は、私たちに関係ないんだから」
“如果只是现在的信息的话,我们不需要知道吧。政治性的话题和我们没有关系”
「さすがですね、ハルカさん。はい、今のお話は前提です。これを踏まえてのお願いなのです。一応、無事に撃退しているので、なんとか面目は保っているのですが、狙われた事自体が既に問題でして」
“不愧是Haruka。是的,现在的话是前提。这是基于这个的请求。因为暂时顺利地击退了,所以总算保住了面子,但是被盯上的事情本身已经是个问题了”
簡単に言えば、帝国に雑魚貴族と思われたという事であり、延いては貴族社会で侮られる原因ともなる。
简单来说,这是因为帝国被认为是杂鱼贵族,进而成为贵族社会被轻视的原因。
ネーナス子爵家として、それは少々マズい。
作为妮纳斯子爵家,那有点不太好。
そこで、なんとか婚礼の本番で巻き返したいところなのだが、出席するのは一〇歳に満たない女の子のイリアス様である。
因此,虽然想设法在婚礼的正式表演中卷土重来,但出席的是未满十岁的女孩伊利亚斯。
本来であれば、参加したという事実さえあればそれで良かったのだが、事件が起こってしまった事で、その当事者となったネーナス子爵家には必然的に耳目を集める事となる。
本来只要有参加过的事实就可以了,但是事件发生了,作为当事人的尼纳斯子爵家必然会受到关注。
「どうしてもイリアス様では、威厳に欠けますから……」
“无论如何伊利亚斯大人都欠缺威严……”
「まぁ、年齢はどうしようも無いわよね。それで、私たちにお願いとは?」
“嘛,年龄怎么也没办法啊。那么,我们的请求是什么?”
「はい。イリアス様を補助する目的……いえ、目を逸らす目的で、一緒に参加して頂けないでしょうか? もちろん、その分は何かしらの報酬は考えさせて頂きます」
“是的。辅助伊利亚斯大人的目的……不,为了转移视线,能一起参加吗?当然,我会考虑那部分的报酬”
細かい事情を話したのは、それが目的だったようだ。
说了详细的事情,好像是为了那个。
最初の契約に含まれていない以上、請ける、請けないは俺たちの自由。
既然不包含在最初的契约里,那就接受吧,不接受是我们的自由。
何も知らせずに『参加して』と頼むのは難しい、と考えたらしい。
他似乎觉得什么都不通知就要求“参加”很难。
「えっと……アーリンさんやケトラさんは? 他にも、エカートたちがいたと思いますけど」
“呃……阿林和凯特拉呢?我觉得还有其他的埃克托”
少し困惑した様子で尋ねるハルカに、アーリンさんは困ったように首を振る。
阿玲对着看起来有些困惑的遥,困惑地摇了摇头。
「私どもは侍女として来ています。参加はできません。エカートたちは言うまでもないですよね? フォーマルな場所など無理です」
“我们是作为侍女来的。不能参加。不用说埃克多吧?正式的场所是不行的”
「それを言ったら、俺たちもそうなんですが……貴族相手の受け答えなんかできないですし」
“这么说的话,我们也一样……贵族对方的回答是不可能的。”
「そこは立っているだけで構いません。話しかけられる事も無いでしょう。ネーナス子爵家の下に高ランクの冒険者がいる、それが重要なのです」
“只要站着就没关系。也不会被搭话吧。娜娜斯子爵家下面有高等级的冒险者,这很重要”
「高ランクの冒険者って言っても、私たち、ランク五ですよ?」
“虽说是高等级的冒险者,我们也是等级五吧?”
「大丈夫です。そこは上手くやりますから」
“没关系。因为那里会做得很好”
確認するように言ったナツキに、アーリンさんは自信ありげに胸を張る。
对夏树说要确认一下,阿林充满自信地挺起胸膛。
「停滞していたラファンの経済、その発展に寄与し――」
“为停滞的拉风经济的发展做出贡献——”
……あぁ、銘木の供給な。
……啊,是名牌的供应。
確かに仕事は増えたみたいだが。
确实工作好像增加了。
「町を混乱に陥れた宗教団体。その指導者の捕縛に尽力し――」
“这是一个让小镇陷入混乱的宗教团体。尽力捕获那个指导者——”
完全に運な。
完全是运气。
たまたま遭遇したサトミーを捕まえただけ。
只是抓住了偶然遭遇的萨特米。
サトミー聖女教団に関しては、ホント、何もしていない。
关于萨特米圣女教团,我真的什么都没做。
「新たなダンジョンを発見し――」
“发现了新的迷宫——”
たまたま入った廃坑がダンジョンだっただけな。
只是偶然进入的废坑是地牢而已。
廃坑がある事は知られていたのだから、どちらかと言えば再発見である。
因为大家都知道有废坑,所以要说起来就是再发现了。
「そのダンジョンを単独のパーティーで攻略中。現在、最も深くまで潜っている高ランク冒険者」
“正在单独的派对上攻略那个迷宫。现在潜到最深处的高等级冒险者”
俺たち以外入ってないからな!
因为除了我们以外没有加入!
嘘では無い。
不是谎言。
嘘では無いが、都合の良い部分だけをピックアップしすぎ。
虽然不是骗人的,但只挑了一些方便的地方。
完全に『誤解を招きかねない表現』である。
完全是“容易招致误解的表达”。
マスコミか。
媒体吗。