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280 二〇層のボスに挑む (3)
挑战280二十层的BOSS(3)
「さて。次はお待ちかねの初回討伐報酬、だね!」
「那么。接下来是期待已久的初次讨伐报酬,对吧!”
一仕事終えた所で、嬉しそうにパンと手を叩いたのは、ユキだった。
工作结束后,YUKI高兴地拍了拍面包和手。
そんなユキを、メアリとミーティアが不思議そうに見る。
玛丽和米蒂亚惊奇地看着这样的雪。
「初回討伐報酬、ですか?」
“是第一次讨伐报酬吗?”
「うん。ボスを倒すと宝箱が出る……ううん、宝箱がある部屋に行けるの。ほら、あそこ」
“嗯。打倒BOSS就会出宝箱……不,可以去有宝箱的房间。看,那里”
俺たちにとっては少し慣れてきた、そしてメアリたちにとっては初めての経験。
对我们来说已经习惯了一些,而且对玛丽们来说是第一次的经验。
よく解っていなさそうな表情の彼女たちを連れ、俺たちはその部屋へ入る。
带着不太明白的表情的她们,我们进入了那个房间。
「宝箱なの!」
“是宝箱!”
「ほ、本当にありました……」
“真的有……”
いつも通りに宝箱が置いてある部屋。
和往常一样放着宝箱的房间。
でもそこにあったのは、いつもとは少し形が違う宝箱だった。
但是在那里的,是和平时稍微形状不同的宝箱。
喩えるならば長櫃ながびつ。
比喻的话就是长柜。
それぐらいの長さの、ただし全体の大きさはやや小さめの宝箱が一つ。
那么长的,但是整体的大小只有一个稍微小一点的宝箱。
そしていつもと変わらないのは、転移陣と下へと続く階段。
而且和往常一样没有变化的是转移阵和向下延伸的楼梯。
「罠は……やっぱり無さそうですね。メアリ、ミーティア、開けてみます?」
“陷阱……果然没有啊。玛丽,米蒂亚,要打开看看吗?”
「良いんですか?」
“可以吗?”
「開けたいの!」
“我想打开!”
「構わないわよ。……中身をあげるってわけにはいかないけどね」
“没关系。……虽然不能把里面的东西给你”
「当然です! そ、それじゃあ……」
“当然啦!那、那就……”
「何かな、何かな!」
“什么啊,是什么啊!”
動悸を抑えるように胸に手を当てたメアリは右手を宝箱に掛け、ミーティアは両手を宝箱の蓋に置く。
为了抑制心跳,将手放在胸前的玛丽将右手放在宝箱上,米蒂亚将双手放在宝箱的盖子上。
そして姉妹は顔を見合わせると、タイミングを合わせて蓋を開け、同時に中を覗き込んだ。
然后姐妹俩面面相觑,合上时机打开盖子,同时往里看。
「えっと……これは、テント、でしょうか」
“呃……这是帐篷吗?”
「ちょっと地味なの……」
“有点朴素……”
不思議そうなメアリに対して、ミーティアは少し不満そう。
对于不可思议的玛丽,米蒂亚似乎有点不满。
まさか、金銀財宝でも期待していたのだろうか?
难道,也期待着金银财宝吗?
宝箱からあふれ出す金貨とか、ちょっと見てみたいが、あいにく俺たちもそんな物に出会った事は無い。
想看看从宝箱里溢出的金币,但是不巧的是我们也没遇到过那种东西。
「一見すると、普通のテント、だな」
“乍一看,是普通的帐篷。”
苦笑を浮かべたトーヤが歩み出て、宝箱の中から取りだしたのは、確かにテント。
浮现苦笑的火炬走了出来,从宝箱里取出的确实是帐篷。
大きさとしては、四、五人用ぐらいだろうか?
大小大概是四、五个人用的吧?
それなりに大きなテントだが、構造自体は普通の――この世界に於いての普通のテント。
虽然是相当大的帐篷,但是构造本身却是普通的——这个世界上普通的帐篷。
瞬間的に展開する機能も、コンパクトに収納できるような機能も存在しない様子。
既没有瞬间展开的功能,也没有能够紧凑收纳的功能。
現代の高機能なテントを知る俺たちからすれば、かなりがっかりなアイテムだが、これまでのパターンから言えば、何らかの魔道具である可能性は高いと思われる。
对于知道现代高机能帐篷的我们来说,这是一个相当令人失望的项目,但是从至今为止的模式来看,作为某种魔道道具的可能性很高。
「たぶん、魔道具だよな?」
“大概是魔道具吧?”
「おそらくは、そうよね。でも、いきなり使ってみるのも不安だし、これも一先ずは収納しておきましょ」
“恐怕是这样吧。但是,突然试着使用也会不安,这个也暂且先收纳起来吧”
「ですね。仮に良い効果でも、『その場面で』良い効果とも限りませんから、注意は必要ですよね」
“是啊。即使是好的效果,也不一定是好的效果,所以需要注意”
「んん……? 例えばなに?」
“嗯……?比如说什么?”
ナツキの言葉が良く理解できなかったのか、ユキがそう訊ねると、ナツキは少し考えて、一つの例えを口にした。
是不是因为不能很好地理解枣的话,小雪这样问了一下,枣想了想,说了一个例子。
「そうですね……『とてもよく眠れるテント』とかはどうですか? 安眠できるのは良い効果かもしれませんが、野営中など、安全のために夜通し起きているつもりだったらどうします?」
“是啊……‘睡得很好的帐篷’怎么样?能睡个好觉也许是很好的效果,但是在露营等地方,为了安全打算彻夜熬夜的话怎么办?”
「それは困るね。そっか、そういう可能性もあるのか」
“那可不行。这样啊,还有这种可能性吗?”
ふむふむと頷くユキと、同じように頷いているトーヤ&獣人姉妹。
嗯嗯点头的小雪和同样点头的Toya和兽人姐妹。
「ま、そんな可能性もあるから、使うのは鑑定してからね」
“嘛,也有这种可能性,用的话要先鉴定一下。”
ハルカはマジックバッグの中に、シュルシュルとテントを片付け、改めて階段の方へ向き直った。
Haruka在魔术包里,整理了舒尔和帐篷,重新向楼梯方向走去。
「さて、いよいよ二一層ね」
“那么,终于到了第二层了。”
「おう。それじゃ、降りていくか?」
“哦。那要下去吗?”
そう訊ねたトーヤは、俺たちが全員頷くのを確認すると、いつものように先頭に立って階段を降り始める。
听到这个消息的Toya确认了我们全体人员的点头后,像往常一样站在最前面开始下楼梯。
てくてく、てくてくと、無言で下り続け……やがて足を止めた。
一步一步地、一步地、无言地继续下去……不久就停下了脚步。
階段の途中で。
在楼梯的途中。
「……なぁ、この階段、長過ぎねぇ?」
“……啊,这个楼梯太长了吧?”
「あ、やっぱり? あたしもさっきからそう思ってた」
“啊,果然是?我从刚才开始也这么想”
「少なくとも、二〇層までの階段よりは長いわね」
“至少比20层的楼梯还长。”
少しほっとしたように応えたユキに、ハルカも頷いて同意する。
对于稍微松了一口气的YUKI,Haruka也点头同意。
かなり暗く狭い階段なので、気分的には長く感じると思うのだが、それにしても長すぎる。
因为是相当暗很窄的楼梯,所以心情上会感觉很长,但是即使那样也太长了。
十一層以降、自然環境のような天井の高い階層になってから階段は長くなっていたのだが、それにしても今回は長すぎる。
十层以后,成为像自然环境一样高的顶棚阶层之后,楼梯变长了,不过,即使那样这次也太长了。
だとしても、下りないわけにもいかず、俺たちはトーヤを促して再び階段を下り始めた。
但是,也不能不下去,我们催促着火炬再次开始下楼梯。
……いつもの三倍以上、いや、もしかすると四倍を超えているだろうか?
……是平时的三倍以上,不,或许超过四倍了吧?
かなりの時間に亘って階段を下り続けた俺の耳に、前方から微かに何かの音が届いた。
经过了相当长的一段时间,我一直下楼梯,耳边从前方传来了微弱的声音。
「トーヤ、何の音だ?」
“火炬,什么声音?”
「わかんねぇ。けど……なんか響くような音だよな」
“我不知道。但是……好像是回响的声音啊”
一番耳の良いトーヤに確認してみるが、返ってきた答えは要領を得ない物。
试着向耳朵最好的火炬确认,得到的回答是不得要领的东西。
メアリとミーティアにも視線を向けてみるが、彼女たちも首を振るのみ。
也试着将视线转向玛丽和米蒂亚,她们也只是摇头。
更に階段を降り続けると、少しずつ音が大きくなっていくのだが――確かに響くような音だな。
再继续下楼梯的话,声音就会一点点变大——确实是回响的声音。
『ゴゴゴゴッ』というのか、『ドドドドッ』というのか、長い階段も影響して、とにかく響く鈍い音。
是“咯噔咯噔”呢,还是“ドドドドド”呢,长的楼梯也有影响,总之是回响着迟钝的声音。
何の音かと言われても、これは答えづらい。
即使被说是什么声音,这个也很难回答。
「えーっと、もしかするとこの音って……」
“呃,那个地方的声音……”
「ナツキ、何か心当たりがあるのか?」
“你有什么线索吗?”
訊ねた俺に、ナツキは曖昧に笑って首を振った。
夏树对问起的我暧昧地笑着摇了摇头。
「いえ、以前聞いた音に似ている気がしたのですが、ここだと狭い通路に反響もしますから……。降りきってしまえば判る事です。進みましょう」
“不,我觉得和以前听到的声音很相似,但是在这里的话在狭窄的通道上也会有反响……。下车后就知道了。前进吧”
「ま、そうだよね。ナオ、敵の反応は無いんだよね?」
“是啊,是啊。娜奥,没有敌人的反应吧?”
「あぁ。それは大丈夫だ」
“啊。那没关系”
「なら行ってみれば良いじゃん。トーヤ、Go、Go!」
“那就去看看吧。火炬、Go、Go!”
「了解!」
“明白了!”
ユキに促され、やや早足で歩き出したトーヤ。
在雪的催促下,火炬稍微加快了步伐。
だがその速度でも階段の下に到達するまでは、今しばらくの時間が掛かり……降りきった俺たちの前に現れたのは――。
但是,即使以这个速度到达楼梯下面,现在也需要一段时间……出现在我们面前的是——。
「えぇっ!? な、何ですか、これぇぇ!!」
“啊,我的直觉!”!?喂,这是什么
「ふあぁぁぁはぁ!!! ふぇああぁ!!」
“呼啊啊啊啊啊!!!失败了啊
素直に驚きを口にしたのはメアリとミーティア。
坦率地说出了惊讶的话的是玛丽和米蒂亚。
メアリは尻尾を丸めて股の間に入れて、叫び声を上げ、ミーティアは大きく口を開けて、良く判らない言葉を漏らしている。
玛丽蜷着尾巴进入胯股之间,发出叫声,米蒂亚张着大嘴,说出了不太明白的话。
言葉の意味は理解はできないが、驚いているのは間違いないだろう。
虽然不能理解语言的意思,但是肯定会很吃惊吧。
「まさか、こんな所に、こんな物が……」
“不会吧,这种地方竟然有这种东西……”
ハルカが呆れたように見上げるそこにあったのは、滝。
春香惊讶地抬头看,看到的是瀑布。
それも並の滝では無い。
那也不是一般的瀑布。
イメージ的には、ナイアガラの滝。
印象中是尼亚加拉瀑布。
ただし、俺は実物を見たこと無いので、本当にイメージ。
但是,我没有见过实物,所以真的是印象。
巨大。
巨大。
それ以外の言葉が思い浮かばないほど、とにかくデカい。
除此之外的话想不起来,总之很大。
「一応、滝だな」
“姑且算是瀑布吧。”
「これが滝ですか!? 私が知っているのと全然違う……」
“这就是瀑布吗!?和我知道的完全不同……”
「ふわぁぁぁ~」
“哇啊~”
俺たちに出会うまで、街から出る事が無かったメアリたちが、これまで見た事のある滝なんて、せいぜい落差数メートルほど。
在遇到我们之前,从未出过街的玛丽们,到现在为止见过的瀑布,最多也就差几米左右。
それとこれとは正に比較にならない。
那个和这个不能完全比较。
実際には見た事無くても、一応、テレビなどでナイアガラの滝やヴィクトリアの滝を見た事がある俺たちとは、受ける印象も全く違うだろう。
即使没有实际看过,但和在电视上看过尼亚加拉瀑布和维多利亚瀑布的我们印象完全不同。
そんな俺でも、この迫力には圧倒されるのだから、ミーティアが言語を忘れ、おっきく口を開けっぱなしにしているのも宜なるかな。
就算是这样的我,也会被这种魄力所压倒,所以米蒂亚忘记了语言,张大着嘴也不失为一种宜吧。
ここがダンジョン内でなければ、しばらくぼーっと眺めていたくなるような雄大な光景である。
如果这里不是在地牢里的话,会让人想呆呆地眺望一会儿,真是一幅壮观的景象。
「あぁ、やっぱり滝でしたか。ですが、このサイズ、ナイアガラの滝よりも大きいですね」
“啊,果然是瀑布啊。但是,这个尺寸比尼亚加拉瀑布还要大呢”
「そういえばナツキって、行った事あったよね。あそこよりも大きいんだ?」
“这么说来,我去过酸枣呢。比那里还大吗?”
「はい。ここまでの距離には近づきませんでしたから、確実とは言えませんが、印象としては大きく見えますね」
“是的。因为没有接近到这里的距离,所以不能说是确定的,但是印象上看起来很大”
さすがはセレブ・ナツキ。
不愧是名流海枣。
実物を見た事があったらしい。
好像见过实物。
目の前に半円形に広がる巨大な滝。
眼前是一个半圆形的巨大瀑布。
その横にそそり立っている岩壁に、張り付くようにある棚のような部分。
站在它旁边的岩壁上,像是粘在一起的架子一样的部分。
そこに俺たちが降りてきた階段の出口はあった。
那里有我们下来的楼梯出口。
滝との距離は数十メートルも離れていないだろう。
和瀑布的距离不到几十米吧。
そこに立っているだけでも水しぶきが飛んできて、見上げれば滝の突端が霞んで見える。
光是站在那里水花就飞溅过来,抬头一看,瀑布的顶端朦胧可见。
下を見れば、水煙によってその滝壺を確認する事もできない。
往下看,水烟无法确认那个瀑布潭。
「……いや、しかしこれは……スケール、大きすぎだな」
“……不,但是这个……规模太大了。”
「えぇ。ダンジョンが不思議な事は知ってたけど、まさかここまでとは……」
“诶。我知道迷宫很不可思议,但没想到竟然会到这里……”
「どうなってるの? なんて、疑問に思うだけ無駄なんだろうけど……ホント、どうなってるの?」
“怎么了?之类的,只是想个疑问也没用……真的,变成什么样了?”
知識がある分、メアリたちのように唖然とはしていないが、ユキもまた、首を捻っている。
因为有知识,所以不像玛丽们那样目瞪口呆,但雪也歪着头。
「でっかいなぁ……これ、完璧に観光名所じゃね?」
“好大啊……这不是完美的观光名胜吗?”
「ここまで来られるなら、ですけどね。――自分たちの私有地に観光名所。なんか不思議な気分です」
“如果能来这里的话,那就太好了。——我们的私有地是旅游名胜。感觉有点不可思议”
ナツキの漏らした言葉に、思わず頷いてしまう。
对夏树说的话,不由得点头。
この滝、俺たちの物なんだよな、一応。
这个瀑布是我们的东西,姑且算一下。
滅茶苦茶、不思議な気分である。
乱七八糟,感觉很不可思议。
自分の家が観光名所になったりする名家の人とか、もしかして、こんな気分なのだろうか?
自己的家成为观光名胜的名家的人,难道是这样的心情吗?