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244 クレヴィリー (3)

244克里维里(3)

宿に戻ってみると、帰ってきたのは俺たちが最後だったようだ。

回到旅馆一看,回来的好像是我们最后一次了。

部屋の中で各々がベッドに寝っ転がったり、椅子に座ったりして自由に寛ぎ、メアリとミーティアなどは、杏飴のような物を美味しそうに食べている。

在房间里,每个人都躺在床上,或者坐在椅子上,自由自在地享受着,玛丽和米蒂亚等,吃着像杏糖一样的食物。

「おかえりなさい」

“欢迎回来。”

最初に俺たちに声を掛けてきたのは、ベッドの上に座っていたハルカ。

最初跟我们打招呼的是,坐在床上的Haruka。

暇だったのか、その膝の上には本が一冊置かれている。

也许是有空,在膝盖上放着一本书。

「ただいま。ちょっと遅かったか?」

“我回来了。有点晚吗?”

「いいえ、私たちもそんなに変わらないから」

“不,我们也没什么变化。”

「そか。それじゃ早速だが……、何か面白い物とかあったか?」

“是的。那我就不客气了……有什么有趣的东西吗?”

「おっきな鳥がいたの!」

“有一只很厉害的鸟!”

俺の問いに即座に答えたのはミーティア。

立刻回答我的问题的是米蒂亚。

杏飴を持った手で、『こんなに!』と両手を広げたものだから、メアリに慌てて飴を取り上げられている。

拿着杏糖的手,“这么多!”因为是张开双手的东西,所以被玛丽慌慌张张地拿起了糖。

ミーティアの言う事を信じるなら、ダチョウぐらいの大きさはありそうだが、子供の言う事。

如果相信Metia说的话,好像有鸵鸟那么大,但是孩子说的话。

一緒にいたハルカに視線をやると、ハルカもまた頷く。

看着在一起的Haruka,Haruka也点了点头。

「身体の大きさはミーティアよりも大きくて、羽を広げれば、私が両手を広げるよりも大きいんじゃないかしら?」

“身体的大小比米蒂亚还要大,张开翅膀的话,不是比我张开双手还要大吗?”

「それはまた……デカいな? 大鷲以上か?」

“那个又……好大啊?大鹫以上吗?”

「大鷲は羽を広げると二メートル以上あるらしいですよ? 私も近くで見た事は無いですが、身体の大きさはミーティアよりは小さいはずですし、ハルカの見た鳥はもっと大きいかもしれないですね」

“大鹫张开翅膀的话好像有2米以上哦?我也没在附近见过,不过身体的大小应该比米蒂亚小,也许Haruka看到的鸟更大”

北海道辺りに行けば、大鷲も観察できるらしい。

如果去北海道附近的话,好像也可以观察大鹫。

大鷲ほどは大きくない鷹でも、近くで見るとかなりの迫力があるので、大鷲ぐらいの鳥が近くを飛んでいたら、かなり怖いかもしれない。

即使是没有大鹫那么大的鹰,在附近看的话也会有相当大的震撼力,如果大鹫那样的鸟在附近飞的话,可能会很恐怖。

「その鳥は、空送鳥くうそうどりって言うらしいわ。小ぶりの段ボールぐらいの荷物を運べるんだって。ちなみに、猛禽類みたいな鋭さが無い、可愛い鳥だったわね……大きさを除けば」

“那只鸟好像叫空送鸟。可以搬运小纸箱之类的行李。顺便说一下,这只鸟不像猛禽类那样锐利,很可爱呢……除了大小之外”

「へぇ。伝書鳩みたいだな」

「啊。就像信鸽一样”

「鳩よりは賢いみたいで、指定された二点間をきちんと往復できるみたいだけどね」

“好像比鸽子聪明,好像能在指定的两个点之间来回跑。”

「あぁ、巣に帰るだけじゃないのか。偉いな」

“啊,不只是回家吗?”。真了不起!”

伝書鳩の場合、片道は籠に入れて運ぶ必要があるからな。

信鸽的话,单程需要放进笼子里搬运。

「ちなみに、たまに荷物を落として、事故が起きるらしいわ」

“顺便说一下,好像偶尔会掉东西发生事故。”

「危なっ! 結ぶとかできないのかよ」

“危险啊!不能系吗?”

輸送経路の大半の場所は人が住んでいない場所なので、運悪く人にぶち当たる、なんて事故はほぼ起きないようだが、荷物が無くなる事故は時々、建物が壊れる事故は稀に存在するらしい。

运输路径的大部分地方是没有人住的地方,运气不好撞到人之类的事故基本上不会发生,但是行李丢失的事故时常发生,建筑物损坏的事故好像很少有。

輸送する荷物は足で掴んで運ぶようなので、足に紐で結んでおけば、と思ったのだが、そうすると上手く飛び立てないんだとか。

因为运输的行李好像是用脚抓着搬运的,所以我想如果用绳子绑在脚上就好了,但是这样的话就不能很好地起飞了。

一度飛び立った後、荷物を掴んで飛んで行くらしい。

好像是起飞一次后,抓住行李飞走。

「乗って飛んだりは、できないんだろうなぁ」

“不能坐着飞吧。”

「ミーティアでも無理でしょうね。赤ん坊ぐらいなら掴んで飛べそうだけど」

“就算是美蒂亚也不行吧。如果是婴儿的话,好像可以抓着飞”

「巨大な鳥に乗って世界旅行、なんて事はできないのか、ファンタジーなのに」

“坐着巨大的鸟去世界旅行,怎么可能呢,明明是幻想。”

モフモフの羽毛に埋もれながら、空を飛べるなら最高なんだが。

如果能一边被莫夫的羽毛掩埋,一边在空中飞翔的话那是最棒的。

そんな俺の希望に、ユキたちは苦笑を浮かべる。

对于这样的我的希望,雪他们露出苦笑。

「いや、自分たちが暮らしている場所を空想ファンタジーと言うのもどうなの? あ、でも、飛竜は存在するよ。あたしたちにはほぼ関係ないけどね」

“不,把自己生活的地方说成空想怎么样?啊,但是,飞龙是存在的。虽然和我们几乎没有关系”

「普通の貴族では持てないレベルだからね。国軍とか、国有数の大貴族とか、そのぐらいじゃないと」

“因为是普通贵族无法拥有的等级。国军啊,国有数量的大贵族啊,不是这样的话”

当然と言えば当然だが、馬ですら大量の餌を必要とするのに、人間を乗せて飛ぶような生物が食べる餌の量は、かなりの物だろう。

当然,即使是马也需要大量的饵食,但是载着人类飞翔的生物所吃的食物量,是相当大的东西吧。

それでも、飛竜は一応魔物分類なため、体格からすれば少ないらしいが、そもそも飼える場所が無いので無意味な話である。

尽管如此,飞龙毕竟是魔物分类,从体格来看似乎很少,但因为本来就没有可以饲养的地方,所以是毫无意义的。

「え~、じゃあ、オレたちが乗る機会とかねぇの? オレもちょっと空、飛んでみたかったのに」

“诶~那我们没有坐的机会吗?”?我也想稍微飞一下天空”

「んー、飛ぶだけなら、風魔法でなんとか? 着地はできないけど」

“嗯,光是飞的话,用风魔法怎么样?虽然不能着地”

「ダメじゃん!」

“不行啊!”

ユキの言葉に、トーヤが即座にツッコミ。

雪的话,托亚马上吐槽。

トーヤなら落ちても大丈夫な身体に鍛え上げる事はできるかもしれないが、それでは『飛ぶ』と言うより、『吹き飛ばされる』である。

如果是火炬的话,也许可以锻炼掉也没关系的身体,但与其说是“飞”,不如说是“被吹跑”。

「あとは、『空中歩行ウォーク・オン・エア』って魔法もあるけど、これは飛ぶのとはちょっと違うかな? ちょっと歩くってだけだし」

“还有,‘空中步行’虽然也有魔法,但是这个和飞行有点不同吧?只是稍微走一下而已”

これ、魔道書に依れば、ちょっとした谷とか、落とし穴を渡ったりするのに使う魔法で、自由に空を歩き回る、みたいな魔法では無いらしい。

根据魔道书的记载,这是一种在山谷或陷阱中穿行时使用的魔法,并不是像在空中自由行走那样的魔法。

不可能ではないようだが、上方向に上がって行くには魔力も多く必要になり、『空の散歩を楽しむぜ!』なんて事は非現実的である。

虽然好像不是不可能的,但是要向上走的话魔力也会变多,“享受空中散步吧!”这样的事是不现实的。

ちなみに俺たちの中には、まともに使える人はまだいない。

顺便说一下,我们当中还没有能好好使用的人。

一歩目で落ちる。

第一步就掉下来了。

「空送鳥の他は……昼食が美味しかったわね」

“除了空运鸟以外……午饭也很好吃呢。”

「あ、それはオレも! 店の数が多いから、結構迷ったけど、アタリだったな!」

“啊,那我也是!因为店的数量很多,所以我很犹豫,但是我是理所当然的!”

少し考えていったハルカの言葉に、トーヤも笑顔で頷き同意する。

对于Haruka稍微思考了一下的话,Toya也笑着点头同意。

「屋台の料理も美味しかったです。種類も豊富でしたし」

“路边摊的料理也很好吃。种类也很丰富”

「飴、買って貰ったの!」

“你给我买糖了!”

俺たちは屋台を見かけなかったが、ハルカたちが行った方向、そこにあった広場には多くの屋台が軒を並べていたらしい。

我们没有看到摊子,但是好像在Haruka他们去的方向,那里的广场上有很多摊子。

杏飴が――正確に杏ではないようだが――街角の屋台で売っている。

杏糖——好像不是准确的杏——在街角的摊子上有卖。

その事が既にこの町の繁栄具合を示しているようにも思える。

这件事已经显示了这个城市的繁荣情况。

「私の方では、薬の材料となる物がたくさん売っていました。ラファンでは手に入らないので、かなりの量、買い込んでしまいました」

“我这边卖很多药的材料。因为拉风机买不到,所以买了很多”

「あ、それは同感。あたしの方は錬金術だけど。ハルカと相談して買おうかな、とは思ってる」

“啊,那是同感。虽然我是炼金术。我想和Haruka商量一下再买”

「オレはミスリルを見つけたぞ。全く手が出なかったけどよ」

“我找到了米斯里尔。虽然我完全没有出手”

「ほう、ミスリル」

“哦,米斯里尔。”

「今買わないと無くなるとか、必要ならお金も貸すとか色々言われたんだけどよ――」

“虽然有人说现在不买就没了,必要的话还可以借钱之类的。”

「さすがに私が止めました。そもそも指の先ほどの量でしたし」

“果然是我阻止了。原本是指刚才的量”

基本的に、純ミスリルの武器なんて物は(金額的に)あり得ないのだが、さすがに指の先ほどのミスリルでは、ショート・ソードを作るにしても微妙すぎる量らしい。

基本上,纯米斯里尔的武器之类的东西(金额上)是不可能有的,不过,到底是手指刚才的米斯里尔,即使制作短剑也太过微妙的量了。

「冷静に考えれば、最低でも一割は混ぜるべき、って話だからな。思わずセールストークに乗せられるところだったぜ」

“冷静地考虑的话,至少也应该混合一成。真是让人情不自禁地被推销出去了”

「いや、止められる前に気付けよっ!」

“不,在被阻止之前要注意!”

『ふぃ~』とわざとらしく汗を拭くトーヤに、思わず突っ込む。

对着“呼~”故意擦汗的火炬,不由得冲了进去。

そもそもお前、娼館にお金を注ぎ込んで、あんまり余裕無いだろうに。

说起来,你把钱投入妓院,也没什么富余的。

武士の情けでハルカたちの前では口にしないけどさ!

虽然我不会用武士的同情在Haruka他们面前说的!

「総じて言えば、間違いなく豊か、なのよね、この町」

“总的来说,这个城市绝对是很富裕的。”

「はい。競争社会……ある意味、資本主義にも似ています。だからこそ料理も美味しいし、商品も多く、栄えている」

“是的。竞争社会……某种意义上,与资本主义也很相似。正因为如此,料理也很好吃,商品也很多,很繁荣”

「問題は、セーフティーネットが無い事だよね~」

“问题是没有安全网吧~”

「領主自体は特段悪い事はしてねぇみたいなんだよなぁ……税金が高い事は確かみたいだが、そんなに評判も悪くねぇし」

“领主本身好像没做什么特别不好的事情啊……虽然确实税金很高,但是评价也不坏。”

トーヤは町の人に多少話を聞いてみたらしく、複雑そうな表情を浮かべてため息をつく。

TOYA似乎多少听了街上的人的话,脸上浮现出复杂的表情叹气。

「スラムで話を聞けば、全く逆の評価になるんでしょうけど……」

“如果在贫民窟听到的话,会有完全相反的评价……”

「能力のある人は暮らしやすい、と。弱者救済が無いのが行政の不作為と言うべきかは難しいな、この世界の場合は。こりゃ、国王がどうにかするとかは無理だわ」

“有能力的人容易生活。没有弱者救济是不是应该说是行政的不作为很难,在这个世界上。这样的话,国王就没办法想办法了」

確実に領地は発展しているわけで、『きちんと統治できてないから領地没収』なんてできるはずもない。

确实领地在发展,“因为没有好好统治,所以领地没收”什么的是不可能的。

「周囲の領地が受け入れる、っていうのも難しいでしょうね。言い方は悪いけど、質の良い人材がダイアス男爵領に残り、質の悪い人材が周囲に流出する訳だから」

“要说周围的领地能接受也很难吧。虽然说法不好,但是品质好的人才会留在戴斯男爵领,品质不好的人才会流失到周围”

「素直には受け入れられないよなぁ」

“无法坦率地接受啊”

地球の難民問題と同じ。

和地球的难民问题一样。

生産性の無い人員が大量に入ってくれば、現在の領民にしわ寄せが来る。

如果没有生产性的人员大量进入,现在的领民就会受到影响。

それでもなお受け入れるようであれば、それはそれで為政者としてどうなのか、という話になるだろう。

即便如此,如果仍能接受的话,那么作为当政者又会是怎样的呢。

「普通、こんな風に『余った』人って、どうするのかな?」

“一般来说,像这样‘多余’的人怎么办呢?”

「地球の歴史から言えば、戦争で『消費』したり、無謀な開拓に駆り出したり、そんな感じよね。……私たちからすれば戦争は嫌だけど、スラムの人たちからすれば、戦争の方がまだマシなのかもね。食べる事はできるし、活躍できれば先が開けるかもしれないんだから」

“从地球的历史来看,有种在战争中‘消费’,或是着手进行鲁莽的开拓的感觉。……我们虽然讨厌战争,但对贫民窟的人来说,也许战争还比较好。既能吃,如果能活跃的话,也许能开拓未来”

なかなかにやるせないが、現実はそんな物なのかもしれない。

虽然很难瘦下来,但现实也许就是这样。

◇ ◇ ◇

◇ ◇ ◇

今回の護衛依頼、その間に必要となる宿と食事は、ネーナス子爵家から提供される事になっているのだが、クレヴィリー滞在期間に関しては、残念ながら朝夕の食事のみとなっている。

这次的护卫委托,在这期间需要的住宿和吃饭,是由内那斯子爵家提供的,但是关于克利的滞留期间,很遗憾只有早晚的饮食。

これは宿が昼食を提供していないからなのだが、予想以上に町の食堂が美味い事を知った今となっては、これもまた悪くない。

这是因为旅馆没有提供午餐,但现在知道了比预想的还要好吃的街道食堂,这也不坏。

そしてまた逆に、貴族御用達のこの宿、そこで提供される食事にも期待感が湧き上がってくる。

与此相反,贵族御用们的这家旅馆,在那里提供的食物也让人充满期待。

まさか護衛の俺たちに、イリアス様と同じ料理は提供されないだろうが、不味い物が出てくる事もまたないだろう。

没想到作为护卫的我们不会提供和伊利亚斯一样的料理,但也不会有难吃的东西出来吧。

部屋に戻ってきて、互いの見聞きした物を話し合ってしばらく。

回到房间,互相谈论着所见所闻,过了一段时间。

部屋の扉がノックされ、料理が運び込まれてきた。

房间的门被敲门,菜被送来了。

泊まり客の客層が客層だけに、宿泊客同士のトラブルを避けるためか、この宿に食堂は無く、すべて部屋食なのだ。

也许是为了避免住宿客人之间的纠纷,这个旅馆没有食堂,全部都是房间餐。

俺たちからしても気兼ねする必要が一切無いため、これは非常にありがたいシステムである。

因为我们完全没有必要担心,所以这是非常难得的系统。

そして、きちんと食事が取れるように、少し小さいながらも、全員が座れるテーブルも用意されているのだから行き届いている。

而且,为了能好好吃饭,虽然有点小,但是大家都有可以坐的桌子,所以很周到。

そのテーブルの上に並んだのは、白パンとスープ、それに飲み物としてワイン。

摆在桌子上的是白面包、汤和葡萄酒。

そして――。

然后——。

「メインは……魚、ね」

“主菜是……鱼,对吧。”

「魚……ト、トラウマが……」

“鱼……特,心灵创伤……”

ユキとナツキの表情が引きつる。

雪和枣的表情很吸引人。

ここクレヴィリーは、サールスタットの下流に位置する。

这里,克里维里位于服务器触发器的下游。

その事を考えれば、ユキたちの表情も仕方の無いところだろう。

如果考虑到这件事的话,雪他们的表情也是无可奈何的吧。

「でも、匂いは良いぞ? 泥臭い感じは無い。むしろ……なんつーか、ちょっと甘いような……?」

“但是,味道很好哦?没有土气的感觉。倒不如……怎么说呢,好像有点甜……?”

トーヤと違い、俺の鼻には甘い匂いは感じられないが、見た目は悪くない。

和Toya不同,我的鼻子感觉不到甜的味道,但是外观并不坏。

ムニエルと言うべきか、フライと言うべきか。

应该说是黄油烤鱼还是油炸食品。

二〇センチぐらいの丸身の魚。

二十公分左右的圆身鱼。

素揚げとは違うが、フライや天ぷらのように衣が付いているわけではなく……近いのは竜田揚げだろうか?

和素炸不同,并不像油炸食品或天妇罗那样有衣……近的是龙田油炸食品吗?

「とりあえず食べてみましょうか。無理そうなら、マジックバッグに食べる物はあるから」

“总之先尝尝吧。如果不行的话,我有吃魔术包的东西”

「そう、ですね。はい。お昼の事を考えればきっと……」

“是啊,是啊。是的。考虑到中午的事,一定……”

全員で席に着き、喫食。

全体人员入座,品尝。

ここは一つ、魚にトライしてみるか。

这里试试鱼吗。

パリッとした魚の皮をナイフで切り分けると、ふわりと甘いような香ばしいような、不思議な匂いが漂う。

用刀切开脆脆的鱼皮,就会飘着一股甜甜的香味,不可思议的味道。

俺の乏しい語彙力では表現しにくいが、敢えて近い物を挙げるとすれば、シナモンに少し似ているだろうか?

用我缺乏的词汇能力很难表达,但硬要举出接近的东西的话,和肉桂有点像吗?

「これは……ヒバーチに少し似てますね」

“这个……有点像希伯奇呢。”

「……なんだそれ?」

“……这是什么?”

俺と同じように、最初に魚に手を出したナツキの口から出たのは、初めて聞く名前。

和我一样,第一次听说的名字是从第一次吃鱼的枣口中出来的。

「沖縄の香辛料です。そこまでメジャーじゃないですが、香りは良いんですよね。味の方は……んっ!」

“这是冲绳的香辛料。虽然不是很主流,但是香味很好闻。味道……嗯!”

切り分けた魚を口にしたナツキが、言葉に詰まる。

将切开的鱼放在嘴里的海枣,无法形容。

「か、辛いの!」

“啊,好辣啊!”

声を上げたのはミーティア。

发出声音的是米蒂亚。

慌てたようにテーブルのカップを掴もうとしたミーティアだったが、隣に座っていたハルカが、素早くその手からワインの入ったカップを遠ざけ、代わりに水を入れたコップを手渡した。

梅蒂亚慌慌张张地想抓住桌上的杯子,但坐在旁边的春香迅速地从手中把装了红酒的杯子拉开,取而代之的是递出装了水的杯子。

ミーティアはすぐにその水を飲み干してしまったが、それでもなお辛いのか、舌を出してハーハーと息を吐いている。

米蒂亚很快就把水喝干了,但还是很难受,吐着舌头呼哧呼哧地吐着气。

そして俺も、ほぼ同時に口に含んでいたのだが……確かにちょい辛い。

然后我也几乎同时含在嘴里……确实有点难受。

匂いからは辛いなんて想像していなかっただけに、余計にびっくりする。

正因为没想到味道会很辣,所以更让人吃惊。

辛いと言っても唐辛子的な辛さではなく、山椒みたいな辛さ。ヒリヒリする。

虽说是辣,但并不是辣椒的辣度,而是像花椒一样的辣度。火辣辣的。

「ちょっと慣れない味ですが、不味くはない、ですね」

“虽然味道有点不习惯,但也不难吃。”

「うん。食べられる……いや、美味しい、かも? 辛いけど。ミーティアはパンに挟んで食べたらどうかな? 無理そうなら、他の物を出してあげるから」

“嗯。能吃……不,可能很好吃吧?虽然很辛苦。把肉饼夹在面包里吃怎么样?如果不行的话,我会给你拿其他的”

「うん、やってみるの……」

“嗯,要试试看……”

「メアリは大丈夫?」

“玛丽没事吧?”

「ちょっと辛いですが……なんとか」

“虽然有点辣……但还是想办法。”

メアリの方も、ハルカが用意した水を飲みつつ、魚とパンを一緒に食べている。

玛丽也一边喝着Haruka准备的水,一边吃着鱼和面包。

食べられてはいるが、メアリもまだ子供という事を考えると、この辛みはちょっとキツいかもしれない。

虽然能吃,但考虑到玛丽还是个孩子,这种辣可能有点难受。

「味は悪くねぇけど、なんか、匂いとミスマッチだよなぁ」

“味道还不错,但是总觉得味道和味道不搭调。”

「同感。脳が混乱する。えーっと、ヒバーチ? それもやっぱ辛いのか?」

“同感。大脑混乱。嗯,希伯奇?那也是很痛苦吗?”

「いえ、島胡椒とか呼ばれたりするみたいですが、そんな辛みは無いですよ?」

“不,好像被叫做岛胡椒,没有那么辣吗?”

「そもそも、この匂いと辛みの原因が同じ香辛料とも限らないけどね」

“本来,这种味道和辣味的原因也不一定是同一种香辛料。”

「それもそうか。唐辛子と一緒にシナモンを放り込む事だってできるわけだし」

「那也是吗。和辣椒一起放入肉桂也是可以的”

ハルカの言葉に、トーヤが納得したように頷くが――。

对Haruka的话,Toya好像理解了似的点头——。

「聞くだけで不味そうな料理だな、それ」

“听起来就很难吃的料理,就是这个。”

「シナモン自体は甘くないけど、イメージとしては甘いお菓子のイメージだもんね、シナモンって」

“虽然肉桂本身并不甜,但是作为印象来说,肉桂给人的印象是甜点心。”

「ヒバーチみたいな匂いじゃなく、山椒のような匂いなら、もっと美味しく食べられそうですね」

“不是像希伯奇那样的味道,而是像山椒一样的味道的话,应该能吃得更好。”

「あぁ、山椒は魚に合いそうだよな。ウナギに使うし」

“啊,花椒好像很适合鱼啊。用于鳗鱼”

もしこの町で山椒が売っているのなら、是非買って帰りたいところ。

如果这个城市卖花椒的话,一定要买回去。

ウナギの蒲焼きを一段階上に引き上げてくれるから。

因为可以把烤鳗鱼放在上面一级。

「調理方法は、小麦粉だけまぶして揚げてるのかしら? バターとは違う、別の油で油を掛けながら焼いた、そんな感じかな?」

“烹饪方法是只涂上面粉油炸吗?和黄油不同,是用别的油浇着油烤的,是这种感觉吗?”

「ムニエルほどのしつこさは無いですね。切り身ではない分、こちらの方が食べやすいです」

“没有像黄油烤鱼那样粘腻。不是切块,这个更容易吃”

一番の懸案事項、魚が問題ないと判れば、あとは気軽に食事は進んだ。

如果知道最悬而未决的事情是鱼没有问题的话,之后就可以轻松愉快地吃饭了。

スープはややあっさり風味。

汤有点清淡的味道。

油を使った魚料理の後で飲めば口がすっきりとするし、パンも柔らかくて食べやすい。

用了油的鱼料理之后喝的话,口会变得清爽,面包也很软,很容易吃。

ワインは渋みも強く、そんなに美味いとも思わなかったが、出てきた以上は(ミーティアとメアリ以外)全部飲み干した。

葡萄酒涩味很重,也没觉得那么好吃,但既然上来了(米蒂亚和玛丽以外)就全部喝干了。

アルコール成分はあまり含まれていないのか、誰も酔っ払う事も無かったのだが、ミーティアたちの分も含めて飲み干したハルカだけは、長い耳の先がちょっと赤くなって少し陽気になっていたので、実は酔っていたのかもしれない。

不知道是不是含有酒精成分,谁都没有喝醉过,但只有包括美蒂亚他们的份在内喝了一杯的Haruka,长耳朵稍微红了点,变得有点开朗,实际上可能是醉了。