245 クレヴィリー (4)
245克里维里(4)
「おい、ナオ、起きろ」
“喂,娜奥,快起来。”
「……んあ?」
“……嗯?”
翌日の早朝、惰眠をむさぼっていた俺は、身体を揺すぶられてうっすらと目を開けた。
第二天早上,贪睡懒觉的我,被摇晃着身体微微睁开了眼睛。
目の前にあったのは、狼の耳……じゃなくて、トーヤの顔。
眼前的不是狼的耳朵,而是火炬的脸。
「なんだよ、今日は朝練とか無いだろぉ」
“什么啊,今天没有早练吧。”
移動時間が長い上に、交代で見張りも必要な関係で、護衛の間はやや睡眠不足。
不仅移动时间长,还需要轮流监视,护卫之间睡眠不足。
そのため、宿に泊まっている間は早朝の訓練などは取りやめ、自由に起きるように決めていた。
因此,决定在住宿期间取消早上的训练,自由地起床。
目を向ければ、大抵は俺よりも早く起きるハルカやナツキのベッドも、まだ埋まったまま。
放眼望去,大部分比我起得早的Haruka和枣的床都还被埋着。
窓を見ればすでに日は昇っているが、その角度を見るに朝早い事は間違いない。
一看窗户,太阳已经升起了,但是从那个角度来看,早上肯定很早。
「こんな時でも早起きとか、トーヤ、どんだけだよ……」
“这种时候也要早起啊,Toya,到底有多少啊……”
寝不足はきっちり解消しておかないと、パフォーマンスが落ちるんだぞ?
睡眠不足如果不好好消除的话,表演就会下降哦?
そんな思いを込めた苦情を呈し、俺は布団を引き上げてその中に潜り込む。
我提出了带着这样的想法的抱怨,把被子拿出来钻进了里面。
だが、そんな俺の行動を気にした様子も無く、トーヤは俺の布団を引っ張る。
但是,没有在意我这样的行动的样子,托亚拉着我的被子。
「いや、重大事、なんだよ。米? っぽいものを見つけたんだよ」
“不,是很重要的。米?我发现了很像的东西”
「マジで!?」
“真的很浪漫。”
それなら仕方ない。
那就没办法了。
トーヤの重大発言に即座に飛び起き、つい声が大きくなる。
听到了火炬的重大发言立刻就跳了起来,不知不觉声音变大了。
慌てて口を押さえてハルカたちの方を見るが、少し身じろぎしただけで、誰も起き出す事は無かった。
慌慌张张张张张地捂住嘴朝Haruka他们看,只是有点畏缩不前,谁也没能起来。
「で、当然確保はしたんだろうな?」
“那当然是确保了吧?”
声を潜め、トーヤに確認するが、トーヤは少し困ったような表情で、首を振る。
隐藏声音,向TOYA确认,TOYA表情有点为难,摇了摇头。
「いや、それが……一応、ハルカたちに相談した方が良いんじゃね? と思って、買ってはいない」
“不,那个……还是先和Haruka他们商量一下比较好吧?”
「バッカ! 売り切れたらどうする!」
“巴卡!卖完了怎么办!”
「それは多分心配ねぇよ。たくさんあったし、普通に入荷するらしい。……まあ、来い」
“那大概不用担心。有很多,而且好像是普通进货。……来,来!”
「おう、もちろんだ!」
“哦,当然啦!”
米のために惜しむ労力は無い。
没有为大米而惋惜的劳力。
俺は素早く服を着替えて、トーヤに案内されるままに朝市へと出向いたのだが……。
我很快就换了衣服,在TOYA的引导下就去了早市……。
「米、だよな?」
“是米吧?”
「多分な? オレが躊躇うのも理解できるだろ?」
“大概吧?你也能理解我的犹豫吗?”
「あぁ……これは、ちょい困ったな?」
“啊……这个,有点为难吧?”
朝市の一角にある露店。
早市一角的摊子。
そこに、麻袋に詰められて並んでいたのは籾状態の米。
在那里,装在麻袋里排列的是稻谷状态的米。
但し、サイズ感が全く違う。
但是,尺寸感完全不同。
形はタイ米などよりもジャポニカ米に近いのだが、縦方向のサイズが明らかに一センチを超えている。
虽然形状比泰国米更接近日本米,但是纵向的尺寸明显超过了一厘米。
「これ、サイズ的には米と言うより、豆じゃね?」
“这个,从尺寸上来说,与其说是米,不如说是豆子吧?”
「あぁ、確かに、そんな感じだな!」
“啊,确实是这样的感觉啊!”
精米すればある程度は小さくなるだろうが、イメージとしては小粒納豆サイズの米、だろうか?
如果精米的话一定程度上会变小,但是印象中是小粒纳豆大小的米吗?
これを茶碗に盛った姿は……う~ん、味次第?
把这个盛到碗里的样子……嗯,看味道如何?
美味ければすべて許せる。
好吃的话可以全部原谅。
だが、本当に米なのだろうか?
但是,真的是米吗?
イネ科の植物である事は間違いないと思うのだが……。
我觉得肯定是稻科植物……。
「兄ちゃんは、さっきも来てたよな? 買ってくれる気になったのかい?」
“哥哥刚才也来了吧?你想买给我吗?”
店番をしているのは三〇ぐらいの男。
看守店铺的是三十左右的男人。
他に並んでいるのも穀物ばかりなので、穀物を専門に扱う行商なのかもしれない。
其他排列着的也都是谷物,可能是专门经营谷物的行商。
「いや、相談に行ってた。これ、どうやって食うんだ?」
“不,我去商量了。这个怎么吃?”
「ん? 適当に砕いて煮込むのが一般的だな。ドロッとするから好みがあるんだが……。それを利用して、ドロッとした料理を作る時に使ったりもするな。あぁ、もちろん、皮は剥くんだぞ?」
“嗯?一般都是适当地捣碎后炖煮。因为黏糊糊的所以有喜欢的东西……。也可以利用那个来做黏糊糊的料理。啊,当然,剥皮了?”
ドロッとするのか。
黏糊糊的吗。
お粥みたいな感じか?
像粥一样的感觉吗?
「一粒もらっても良いか?」
“可以给我一粒吗?”
「あぁ、一粒なら構わないぜ?」
“啊,一粒的话没关系吗?”
男に許可を取り、一粒手に取り、籾殻を剥いてみれば、出てきたのは玄米――に見える物。
取得男子的许可,手上拿着一粒,剥下稻壳,出来的是糙米。
糠ぬかの部分を爪で削ると、半透明の米が現れる。
用指甲削糠的部分,就会出现半透明的米。
「サイズ以外は間違いないみたいだが……これ、いくらだ?」
“好像除了尺寸以外没有错误……这个多少钱?”
「それなら、一袋で大銀貨五枚だな」
“这样的话,一袋五个大银币。”
袋の大きさ的には二〇キロから三〇キロはあるか。
袋子的大小有二到三十公斤吗。
それなら、そんなに高くはないな。
那样的话,就不会那么贵了。
袋の底まで手を突っ込んでかき混ぜてみても、砂や石が混ざっている様子もないし、粗悪品をそこに詰めていたりもしない。
就算把手伸进袋子的底部搅拌,也不会有砂子和石头混合在一起的样子,也不会把劣质品装在那里。
「おいおい、心配しなくても、この町で騙すような奴はいねぇぞ? 見つかれば一発で追い出されるからな」
“喂喂,不用担心,在这个城市里没有骗你的家伙?如果找到的话会一下子被赶出去的”
そんな俺の様子を見て、店番の男は苦笑を浮かべる。
看到我这样的样子,店里的男人露出苦笑。
こんな露店で買う時には必須の確認なのだが……。
在这样的小摊上买的时候是必须要确认的……。
「そのへん、厳しいのか?」
“这一点,很严厉吗?”
「ああ、厳しいな。たまに抜き打ちでチェックされるからな。しかも、普通の客の振りをして。当然だが、見せる物と売る物をすり替えたりもできねぇよ」
“啊,好严格啊。因为偶尔会被冷不防的检查。而且,装作普通的客人。当然,展示的东西和卖的东西是不能偷换的”
ホント、商売のしやすさだけは間違いないんだな……。
真的,只有做生意容易是没错的……。
「よし、買って帰って、ハルカたちと相談しよう。作るのはあいつらなんだ。俺たちが悩んでも仕方ない」
“好吧,买回来和Haruka他们商量吧。制作的是他们。我们烦恼也没办法”
「だな。このぐらいなら、失敗しても痛くねぇし。おっちゃん、一袋くれ」
“是啊。这样的话,失败了也不痛。大叔,给我一袋吧”
「毎度!」
“每次!”
トーヤが大銀貨を五枚差し出すと、それを受け取った男は、俺が確認した米袋の口をちゃっちゃと縛り、トーヤにホイと渡す。
托亚拿出五枚大银币,男子收到后,就把我确认的米袋口一下子绑起来,递给托亚。
結構重いと思うんだが……穀物を扱うだけあって、力はあるのだろう。
我觉得相当重……不愧是处理谷物,应该很有力量吧。
「ちなみに、他の種類はあるのか?」
“顺便问一下,还有其他种类吗?”
「もちろん。コイツは小さい方だな。大きい種類だと一粒のサイズが二倍ぐらいはあるぞ。えーっと、この辺だな」
“当然。这家伙真小啊。大的种类的话一粒的大小有两倍左右。嗯,就在这附近”
蓋代わりなのか、袋の上に被せていたザルをいくつか、ひょいひょいと取りのけると、その下にあったのは確かに二回りほどは大きい米(?)だった。
或许是代替了盖子,将袋子上盖着的几只猴子轻轻地取了下来,发现下面确实有两圈大的米(?)是的。
先ほどの米が小粒納豆だとすれば、今回のは大粒納豆か。
如果刚才的米是小粒纳豆的话,这次的是大粒纳豆吗。
「これも確認して良いか?」
“这个也可以确认吗?”
「構わねぇぜ。コイツと、コイツ、それにコイツが別の種類だな」
“没关系。这家伙、那家伙、还有这家伙是别的种类啊”
見た目は大粒、中粒、小粒という感じ。
看起来是大粒、中粒、小粒的感觉。
籾殻を剥いてみると、大粒が白っぽい以外はあまり違いが無い。
剥开稻壳一看,除了大粒很白之外没有什么区别。
大粒の白っぽさも、単純にデカいからそう見える、と言われれば納得できそうな程度。
大颗的白色也只是因为单纯的大而看起来那样,如果这么说的话,应该能理解的程度。
「どうする?」
“怎么办?”
「買って帰れば良いんじゃね? 大した額じゃねぇだろ。おっちゃん、いくら?」
“买回去不就好了吗?不是什么大不了的金额吧。大叔,多少钱?”
「全部大銀貨五枚だ。――あぁ、ただし、量は違うからな?」
“全部是五枚大银币。——啊,但是量不一样吗?”
具体的には小粒はトーヤが買った物と同じだが、中粒は少し少なく、大粒はそれよりも更に少ない。
具体来说,小粒和火炬买的东西是一样的,但是中粒很少,大粒比那个更少。
この世界で売っている物は結構こんな感じで、『一〇キロでいくら』とかではなく、『大銀貨一枚で買える量』とかになっている場合が多い。
在这个世界上卖的东西相当有这种感觉,不是“十公斤多少钱”,而是“一枚大银币就能买到的量”。
値段の比較がしづらくはあるのだが、硬貨の扱いや計算は楽である。
虽然比较价格有困难,但是硬币的使用和计算却很轻松。
一〇レア未満の少額硬貨がほぼ流通していない事や、計算ができる庶民があまりいない事から、そうならざるを得ない部分も大きいのだろう。
不到十分之一的小额硬币几乎没有流通,能计算的平民很少,所以不得不这样做的部分也很大吧。
「それじゃ、全部貰おう」
“那么,全部都要吧。”
俺が金貨一枚に大銀貨五枚を渡すと、男は嬉しそうにそそくさと袋の口を締めると、袋を持ち上げ、俺とトーヤの間で視線をさまよわせる。
我给了他五枚大银币一枚金币,男子很高兴地慌慌张张张地紧闭着袋子的嘴,抬起袋子,在我和托亚之间徘徊。
「二袋はあっちに。これは俺が持つ」
“两袋在那边。这个我来拿”
「お、そうかい? 兄ちゃん、力持ちだねぇ。さすが獣人!」
“哦,是吗?哥哥,真有力气啊。不愧是兽人!”
種族に関して含むところは全くないのだろう。
完全没有种族相关的东西吧。
男はニカッと笑うと、二袋をポンポンとトーヤに渡し、俺は大粒が入っている袋を持ち上げた。
男子抿嘴一笑,就把两袋啪的一声交给了火炬,我举起了装着大粒的袋子。
一番軽いはず、と選んだのだが、これでも二〇キロは超えてそうだな……?
虽然选择了应该是最轻的,但是这样也超过了20公斤吧……?
「おぉ、オレが三袋か。いや、別に持てるけどよ」
“哦,是我三袋吗?”。不,我倒是能拿”
一〇〇キロまでは無いだろうが、トーヤはそれを片方の肩の上に積み重ね、軽々と担いでいる。
虽然不到100公斤,但是火炬把它堆在一边的肩膀上,轻轻地扛着。
別に俺ももう一袋ぐらいは持てるのだが――。
我也能再拿一袋吧——。
「俺の方がトーヤの三倍、金を払ったしな」
“我花了比火炬还多三倍的钱。”
「なるほど。そう言われると、荷物持ちぐらいしねぇとな!」
“原来如此。这么说的话,至少得拿行李啊!”
ま、この米が美味く食べられれば、共通費から出してもらえそうだけどな。
嘛,如果这米好吃的话,好像可以从共同费用中拿出来。
「兄ちゃんたち、気に入ったらまた買いに来てくれよな! 俺は毎回の朝市で、この場所で店を広げているから」
“哥哥们,喜欢的话再来买吧!我每次在早市都会在这个地方开店”
「ああ、美味ければまた必ず寄らせてもらう」
“啊,如果好吃的话一定会再来。”
たくさん購入したからか愛想良く、笑顔で見送る店番の男に別れを告げた俺たちは、他に掘り出し物が無いかと、朝市を見ながら宿へと向かう。
也许是因为买了很多东西,所以我们很亲切,告别了笑着送走的看守店的男人,一边看着早市一边走向旅馆。
昨日の昼間は、屋台すら無かった道の両側に多くの露店が並び、食料品を主とした多くの商品が販売されている。
昨天白天,连路边摊都没有的道路两旁摆着很多摊子,贩卖以食品为主的很多商品。
ハルカたちに比べると、俺たちが朝市に行く回数は少ないが、それにしても見かけた事が無いような食べ物も数多く、活発な流通を感じさせる。
和Haruka他们相比,我们去早市的次数很少,但是也有很多我们没见过的食物,让人感受到活跃的流通。
「品揃えはやっぱり良いな」
“品种齐全果然很好啊。”
「だな。果物も多くあるし……」
“是啊。水果也很多……”
そもそも特定の時期を除けば果物の販売自体が少ないのだが、ここには多くの種類の果物が豊富に並んでいる。
原本除了特定的时期水果的销售本身就很少,但是这里摆放着很多种类的水果。
もちろん、全体として値段は高いのだが、これだけ並べられる事自体、この町の流通の良さを示していると言えるだろう。
当然,整体来说价格很高,但是能摆这么多东西本身,可以说是展示了这个城市流通的好处吧。
「あ、乾燥ディンドルが――って高っ!」
“啊,干燥的丁克美元——太贵了!”
たった一個で、二千レア。
只有一个,两千珍稀。
さっき買った米全部と同じ値段だが、腹持ちという点では天と地ほども差がある。
虽然是和刚才买的大米全部价格相同,但从耐饿这一点来看,和天和地相差很大。
「これって、オレたちが持ってきたら、それぐらいで売れるって事か?」
“这个,是我们拿过来的话,就能卖得那么好吗?”
「かもしれないが、売るか? わざわざここまで来て」
“也许,卖吗?特意来到这里”
「……無いな、うん」
“……没有啊,嗯。”
去年の事を考えれば、そ・れ・な・り・には儲かると思うが、そ・れ・な・り・でしかない。
考虑到去年的事,我觉得那样··na·ri·能赚钱,但是只有那样··na·ri·。
自分たちが食べる分を確保すれば、せいぜい金貨数百枚ぐらいか?
如果确保自己吃的量,最多也就几百块金币吧?
ここまでの距離を考えれば、その時間分、別の狩りに精を出す方が良いだろう。
考虑到到到到这里为止的距离,那个时间段,还是努力进行其他狩猎比较好吧。
「だが、それはそれとして。これは、是非ハルカたちを連れてくるべきだろ。上手くすれば、俺たちの食事が更に充実する」
“但是,那暂且不提。这个一定要带着Haruka他们来。如果做得好的话,我们的饮食会更加充实”
「ああ。香辛料っぽい物も色々あるし……もしかしたら、カレーとか食えるかも?」
「啊。香辣调料之类的东西也有很多……也许可以吃咖喱之类的?”
「カレーか! それは日本人ホイホイだな!」
“咖喱啊!那是日本人啊!”
「おう。もし面倒くさいクラスメイトがいても、カレーを餌にすれば……?」
“哦。如果有很麻烦的同学,也可以吃咖喱…?”
「ナイスアイデア! 米もセットなら、言う事無いな!」
“好主意!如果米饭也是套餐的话,那就没什么好说的了!”
もちろん、それで敵対的なクラスメイトがいきなり友好的になる、なんてイージーモードでは無いと思うが、美味い物が食えれば気分は良くなる。
当然,因此敌对的同学突然变得友好起来,我觉得这不是一种简单的模式,但是吃到美味的东西的话心情会变好。
交渉等もやりやすくなるだろう。
谈判等也会变得容易吧。
「んじゃ、早く帰ろうぜ! どうせあいつらを連れて見て回るなら、オレたちだけで見ても意味ねぇし」
「那么,早点回去吧!反正带着他们到处看的话,光我们看也没意义”
「そうだな。米も地味に重いし。急ぐか」
“是啊。大米也很重。快点吗?”
敢えてマジックバッグは持ってきていないので、二人して米袋を担いだまま。
因为没有特意拿来魔术包,所以两个人就这样扛着米袋。
トーヤは大して気にした様子は無いが、決して軽い物では無いのだ。
虽然没有太在意TOYA的样子,但绝对不是轻的东西。
俺は米袋を一度おろし、逆側の肩に担ぎ直すと、トーヤを急かしてやや足早に宿へと道を辿った。
我放下米袋,重新抬到另一边的肩膀上,催促着火炬稍微加快脚步朝着旅馆走去。