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318 仕込みと休息 (4)

318训练和休息(4)

「あ、おい――!」

“啊,喂——!”

俺の言葉を遮って言った、ユキのとんでもない言葉。

你打断了我的话,我说的话太荒唐了。

だが、それを聞いたシモンさんは、予想外にも平然と頷いた。

然而,听到这一消息的西蒙先生却出乎意料地坦然地点了点头。

「なんだ。なら心配する必要もねぇか。なら、子供ができた後、冒険に行けない期間のバイト程度でもかまわねぇぞ?」

“什么啊。那就没必要担心了。那么,有了孩子之后,不能去冒险期间的打工也没关系吧?”

「……いや、おかしいでしょ、シモンさん」

“……不,很奇怪吧,西蒙先生。”

「ん? なにがだ?」

“嗯?什么?”

「なにって、結婚相手が三人とか」

“怎么说呢,有三个结婚对象?”

「そうか? お前らぐらい稼いでいれば、普通だろう? 儂ら職人でも、稼げる奴は複数の嫁がいるからな。儂も二人いるぞ?」

“是吗?像你们这样赚钱的话,很普通吧?就算是工匠,能赚钱的人也有很多妻子。也有两个人哦?”

「………」

「………」

初耳である。

第一次听说。

……いや、そもそもシモンさんの家庭事情なんて、聞いた事はなかったのだが。

……不,我本来就没听说过西蒙先生的家庭情况。

しかし、貴族じゃなくても複数の嫁がいるとか……一般的な話なのか?

但是,即使不是贵族,也有多个媳妇……这是一般的说法吗?

「シモンさん、複数人と結婚するのって、普通なのか?」

“西蒙先生,和多个人结婚是正常的吗?”

「稼げる奴はそうじゃねぇか? 結婚できる男はなかなか少ないからな」

“能赚钱的人不是这样吗?因为能结婚的男人很少”

「だよね? やっぱり、甲斐性がある男は頑張らないとね!」

“是吧?果然,有出息的男人不努力不行啊!”

シモンさんの言葉を聞いて、ユキは嬉しそうに笑う。

听了西蒙先生的话,雪高兴地笑了。

結婚できる男が少ない――簡単に言えば、家族を養えるだけの稼ぎがある男が少ない、と言う事らしい。

能结婚的男人很少——简单说来,能养活家人的男人很少。

例えば農家。

例如农家。

農地をもらえるのは長子だけで、次男以降はその下働きだったり、家から放逐されたり。

只有长子才能获得农地,次子以后会做农活,或从家里放逐。

職人に関しても、それはほぼ同じ。

关于手艺人,那个也大致相同。

放逐された子供たちは、運が良ければ街で安定した仕事にありつけるのだが、大半は冒険者になって日雇いの仕事をしたり、俺たちのような本当の意味での“冒険者”になったり。

被放逐的孩子们,如果运气好的话,就可以在街上找到稳定的工作,但是大半都是冒险者做临时工,成为像我们这样真正意义上的“冒险者”。

つまり、長子以外がまともな仕事に就く事は、なかなかに難しいという事である。

也就是说,除了长子以外,从事正经工作是很难的。

そして、まともな仕事に就いていなければ、結婚は難しいわけで……。

而且,如果没有正经工作的话,结婚就很难了……。

男女が一対一の割合で生まれるとするならば、婚活競争、なかなかに激しそうである。

如果男女以一对一的比例出生的话,婚活竞争会非常激烈。

男に比べ、女が一人で生きて行くには厳しい社会だけに。

与男人相比,女人一个人生活是一个严峻的社会。

差別とかそういう話では無く、簡単にありつける仕事の多くは肉体労働が多いだけに、体力的に劣る女の方が稼ぎにくいのだ。

不是歧视之类的话,简单能做的工作大多是体力劳动,体力差的女人更难赚钱。

もちろん、女だからこそできる仕事もあるのだが……それはまぁ、別枠で良いだろう。

当然,也有只有女性才能做的工作……这嘛,可以分开来做吧。

「まぁ、女冒険者の中には、若い男を複数囲うようなのもいるが――」

“嘛,女冒险者中也有围着几个年轻男人的——”

なるほど。稼げるなら、逆もありなのか。

原来如此。如果能赚钱的话,反过来也有吗。

「ユキはそういうタイプじゃねぇよな」

“小雪不是那种类型吧。”

シモンさんはそう言いながらユキを見て、首を振る。

西蒙一边这样说着,一边看着雪,摇头。

そしてユキの方も、すぐにキッパリと首を振って否定した。

而小雪也立刻斩钉截铁地摇头否定了。

「うん、それは無いね」

“嗯,没有。”

「だろうな。まぁ、そのタイプは子供は産めねぇしな」

“是吧。嘛,这种类型的人是不能生孩子的”

「そうなんですか?」

“是吗?”

「冒険者なんぞ、子供ができたら稼げねぇだろう? そうなれば破綻する関係だ。男が稼ぐのとは違うからな」

“什么冒险家,有了孩子就赚不到钱了吧?如果那样的话,关系就会破裂。这和男人赚的不一样”

「ですよね。ヒモですもんね」

“是啊。是绳子吧”

妊娠期間中、収入ゼロはなぁ……。

怀孕期间没有收入啊……。

産休制度などがしっかりしていて社会福祉がある社会であれば、男女逆もありなのだろうが、この社会では、働くのも出産も全部女性ってのは無理があるか。

如果是产假制度等严格而有社会福利的社会,也许会出现男女逆转的情况,但是在这个社会里,工作和生孩子都是女性是不可能的吧。

そもそも、お産なんて文字通りに命懸けの行為なのだ。

说起来,分娩就是字面上赌上性命的行为。

特に冒険者なんて、子供を産んですぐに働けるわけもない。

特别是冒险者,生了孩子也不可能马上工作。

『保育園に落ちた!』とか言う以前に、保育園が無いし、粉ミルクなんて売ってないので、母乳も必要。当然、お手軽な紙おむつとかも存在しない。

“掉进保育园了!”之前没有托儿所,也没有奶粉卖,所以需要母乳。当然,也不存在简单的纸尿裤。

これで男女逆というのはなかなかに厳しいだろう。

这样一来,男女逆转就相当严峻了吧。

俺がそんな事を考えていると、シモンさんが少し同情するような笑みを浮かべ、ポンポンと俺の背中を叩いた。

我一想到这件事,西蒙露出同情的笑容,啪嗒啪嗒地拍着我的背。

「ま、そういう事なら、儂が言う必要はねぇな。ナオ、三人はなかなかに大変だぞ? 金だけの問題じゃねぇからな。頑張るんだぞ!」

「嘛,这样的话,没必要你说了。娜奥,三个人很辛苦哦?因为这不仅仅是钱的问题。要加油哦!”

「え……」

“啊……”

「困ったら相談に来い。儂もそれなりに経験を積んでっからな!」

“有困难的话来找我商量。我也积累了相应的经验!”

「――あっ!」

“——啊!”

一瞬何のことか判らず、俺が戸惑っている間に、シモンさんは作業員に指示を出すために離れて行く。

一瞬间不知道发生了什么事,在我不知所措的时候,西蒙先生为了向工作人员发出指示而离开了。

それを見送った俺を、ユキがにんまりと笑みを浮かべて見上げる。

雪带着微笑抬头看了目送着这一切的我。

「頑張ってね、ナオ」

“加油,娜奥”

「……ユキ、地味に外堀を埋めていってないか?」

“……小雪,有没有朴素地填埋外沟?”

何か機会がある度に。

每次有什么机会。

そう指摘した俺に、ユキはとんでもないとばかりに首を振る。

对于这样指出的我,雪一脸不可思议地摇头。

「そんな事、無いよ?」

“没有那样的事吗?”

「そうか?」

“是吗?”

「うん。ガッツリと、派手に埋めているから。内堀も含めて」

“嗯。因为紧紧地、华丽地填满了。包括内堀”

「おい!」

“喂!”

「はっはっは。気が付いた時には、ナオ城は丸裸なのだ!」

「哈哈哈。注意到的时候,娜奥城是全裸的!”

ばーん、と手を突き出して、そんな事を宣言するユキ。

“嗯,”yuki伸出手,宣布了这样的事。

マジ、油断ならない。

真的,不能大意。

「さあさあ、十分休んだでしょ。作業を続けよう!」

“喂,已经充分休息了吧。继续工作吧!”

「いや、俺としては何が内堀で、何が外堀なのかも気になるんだが?」

“不,对我来说什么是内堀,什么是外堀呢?”

「気にしない、気にしない。判らないって事は、まだ効果が無いって事なんだよ。効果が無いって事は、気にしても意味が無い事なんだよ、うん」

“不在意,不在意。不明白的话,就是还没有效果。没有效果的话,即使在意也没有意义,嗯”

「そ、そういうものか……?」

“那,是这样吗……?”

なんか誤魔化されている気がするが、すでにユキは足場を伝い、穴の中へ降りてしまっていた。

虽然感觉好像被欺骗了,但是雪已经沿着脚手架走下去了。

俺は首を捻りつつもユキの後に続いて、作業を再開したのだった。

我一边歪着头一边继续着小雪之后,重新开始了工作。

◇ ◇ ◇

◇ ◇ ◇

「まさか、代官まで関わってくるとはね」

“难道连代官都有关系吗?”

作業を始めたナオたちと別れ、家の中へと戻ったハルカたちは、居間に集まって一息つきつつ、先ほどの事を話し合っていた。

和开始工作的娜奥他们分开后,回到家里的Haruka他们聚集在起居室里喘着气,谈论着刚才的事情。

「ですね。と言うか、ハルカ、ナオくんを放置して良かったんですか? ハルカだって少しは手伝えますよね?」

“是啊。或者说,春香、nao君放任不管真是太好了吗?Haruka也能帮你一点吧?”

ナツキは頷きつつも、窓から見えるナオたちに目をやりながら、ハルカに訊ねる。

夏树一边点头,一边看着从窗户看到的娜奥他们,一边问Haruka。

ハルカの方も少しばつが悪そうな表情を浮かべつつも、首を振る。

Haruka的表情也有些尴尬,但还是摇头。

「そりゃ少しはね。でも、私は土魔法、得意じゃないし、相談したい事があったからね」

“那是一点。但是,我不擅长土魔法,有想和你商量的事情”

「代官の事ですか?」

“你是说代官吗?”

「そう、それ」

“对,就是那个。”

「オレとしては、ちょっと晩酌するために、趣味で酒を造るぐらいの想像だったんだが……なんかでっかい建物を建てそうな感じだよな」

“对我来说,我只是为了稍微喝点晚酒,以兴趣来制造酒而已……感觉好像要建一座很大的建筑。”

トーヤたちが見たのは、シモンが縄張りをしているところだけだが、それだけでも建坪は判るわけで、ちょっとした小屋なんかではない事は一目瞭然だった。

Toya他们看到的只是西蒙势力范围内的地方,光是这样就可以知道建筑面积,而不是一个小小屋之类的事情就一目了然了。

「お酒造り、失敗すると……ちょっと不安ね」

“造酒,失败的话……有点不安。”

「はい。あの代官なら、おそらく無茶は言わないと思いますが。私たちとネーナス子爵家の関係も、把握していると思いますし」

“是的。如果是那个代官的话,恐怕不会乱说。我想我们和纳纳斯子爵家的关系也掌握了”

ハルカたちが代官に対して酒に関してプレゼンをし、資金を出してもらったとかいうならともかく、現状、ハルカたちと代官の間には何の関係も無く、シモンが酒の事を話したというだけのこと。

如果说Haruka他们向代官做了关于酒的发表,并拿出了资金的话那就另当别论了,现状是Haruka他们和代官之间没有任何关系,西蒙只是说了酒的事情。

それだけで彼女たちに不利益がもたらされるなど、普通はあり得ないが、酒に関する利権は決して小さい物ではない。

仅仅这样就给她们带来了不利之处,这在一般情况下是不可能的,但与酒有关的特权绝对不小。

酒に掛かる税金や販売の許認可権。

有关酒的税金和销售的许可权。

事業としてこの町で酒造りが出来るようになれば、それはかなり大きな利益を生むわけで、それに目がくらんだ代官が、ハルカたちに対して無茶を言わないとは言い切れないだろう。

作为事业,如果能在这个城市里造酒的话,那会产生相当大的利益,而且目瞪口呆的代官也不能不对Haruka他们乱说吧。

「ハルカお姉ちゃん、イリアス様が困ったら頼って良いって言ってたの!」

“Haruka姐姐说过,伊利亚斯大人有困难的话可以依赖她!”

「あ、はい! 何時でも連絡して構わないって、おっしゃってました」

“啊,是!他说什么时候都可以联系我,没关系”

胸を張って、笑顔でそんな事を言うミーティアたちに、ハルカたちは苦笑を浮かべる。

面对挺起胸膛、面带笑容说出这些话的Metier们,Haruka等人露出苦笑。

「それはありがたい申し出だけど、できれば頼らずに済ませたいところよね」

“这是一个令人感激的提议,但如果可能的话,还是不依赖别人的好。”

「ですね。ミーティアちゃんとイリアス様の間で収まる事ならともかく、ネーナス子爵が関わってくると、どうしても貸し借りの問題になりますし」

“是啊。先不说米蒂亚和伊利亚斯之间能解决的事情,如果和尼纳斯子爵有关系的话,无论如何都会成为借贷问题”

現状、ハルカたちとネーナス子爵の関係は、ハルカたちが誘拐事件の解決に尽力した見返りに、ネーナス子爵が面倒な貴族からの干渉を防ぐというもの。

现状是,Haruka他们和内那斯子爵的关系,作为Haruka他们努力解决绑架事件的回报,防止了内那斯子爵对麻烦的贵族的干涉。

その関係性を崩すようなことは、ハルカたちとしてもあまり嬉しい事ではない。

破坏这种关系性的事情,对Haruka他们来说也不是很开心的事。

「お酒造りが上手くいけば良いんだけど……いや、上手くいっても困るのかな? お米が無いんだから」

“如果能很好地酿酒就好了……不,做得好也会很困扰吧?因为没有米”

「シモンさんは、代官が考える事って言ってたが……」

“西蒙先生说是代官思考的事情……”

「私たちにとって最も都合が良いのは、この周辺で米が作られるようになる事ですが、どうでしょうね?」

“对我们来说最方便的是,在这附近可以种大米,怎么样?”

「農地自体が少ないからね。川も傍に無いから、水田を作るなら溜め池か、川から水を引いてくるか、かなりの工事が必要よね」

“因为农地本身就很少。因为河也不在旁边,所以要修水田的话,要么是蓄池,要么是从河里引水过来,需要相当大的工程”

「ですがハルカ、もしかすると私たちの購入したお米、陸稲という可能性もありますよ?」

“但是Haruka,也许我们买的米是旱稻?”

「……そっか、水稲とは限らないのか。それなら水の心配は無いけど……逆に連作障害の問題は発生するわね」

“……这样啊,不一定是水稻吗?”。那样的话就不用担心水了……相反会发生连作障碍的问题”

一般的に農作物の多くは、同じ場所で続けて栽培すると、連作障害で育成不良が発生する。

一般来说,很多农作物在同一个地方连续栽培的话,会因连作障碍而发生培养不良。

その点、水稲は水を流す事でその連作障害を回避し、ノーフォーク農法なんて事をしなくても、毎年同じ場所で栽培する事を可能にしている。

在这一点上,水稻通过冲水来避免连作障碍,即使不采用无叉农法,每年都可以在同一个地方栽培。

実は水田とは、かなり優秀な農法なのだ。

其实水田是相当优秀的农法。

もちろん、豊富な水があってこそ可能という欠点もあるのだが。

当然,也有只有丰富的水才有可能的缺点。

「ま、米の輸入、栽培に関しては私たちがどうこうできる事じゃないわね。……美味しいお酒ができたら、それを餌にして、米の栽培を唆すぐらいで」

“嘛,关于大米的进口、栽培,我们怎么能做到呢。……如果能喝到好喝的酒,就以它为诱饵,唆使大米的栽培”

「言い方は悪いですが、それは良いアイデアですね。安定してお米が食べられるようになりますし」

“说话方式不好,但这是个好主意。可以稳定地吃米饭”

ハルカたちが買ってきた米は、それこそ年単位で食べられるだけの量があるのだが、それだけと言えばそれだけ。食べきってしまえば、また買いに行かなければいけないし、酒造りに使うのであれば、その量は一気に減少するだろう。

Haruka他们买来的大米,有足够的量可以以年为单位食用,但仅此而已。吃完了的话,又不得不去买,如果是用来造酒的话,量会一下子减少吧。

もっとも、仮に代官が米作りを決断したとしても、その結果が出るのは早くても数年後。

不过,即使代官决定要种大米,其结果最早也要数年后才能出来。

どちらにしても、米が無くなるのはほぼ確実である。

无论哪一种,米都几乎没有了。

「でも……そうね、せっかく麹菌が手に入ったんだし、日本酒に限らず、私たちで新しいお酒を作ってみるのもありなのかしら?」

“但是……是啊,好不容易得到了曲霉菌,不仅是日本酒,我们也可以试着做新酒吗?”

「いやいや、ハルカ、新しいお酒なんか、そう簡単に作れないだろ?」

“不不不不,Haruka,你不会那么容易做新酒的吧?”

意外な事を言い出したハルカを見て、トーヤが少し呆れたように言うが、ハルカは首を振る。

看到说出了意外的话的遥,托亚好像有点吃惊似的说,但遥摇了摇头。

「そうでもないわよ? お酒なんて、極論すればデンプンか、糖があれば作れるんだから。結構意外な物から造られているお酒ってあるしね。例えば……トーヤ、テキーラって知ってる?」

“不是那样的?酒这种东西,极端地说就是淀粉,有糖的话就可以做。也有由相当意外的东西制成的酒。比如……托雅,你知道龙舌兰吗?”

「あぁ、確かメキシコの酒だったよな?」

“啊,好像是墨西哥的酒吧?”

「えぇ。あれって、何から作られるか知ってる?」

“诶。你知道那个是由什么做成的吗?”

「……ん? あのあたりだと……ジャガイモとか?」

“……嗯?那附近……土豆之类的?”

南米に近いということからのイメージなのだろうが、メキシコの農産物と言えばタコスの原料にもなるトウモロコシである。

这大概是因为接近南美的印象吧,墨西哥的农产品是玉米,也是玉米的原料。

そして当然、テキーラの原材料はジャガイモでは無い。

当然,龙舌兰的原材料不是马铃薯。

「いいえ。リュウゼツランよ」

“没有。柳泽兰哟”