330 岩山の中へ (1)
330岩山中(1)
その後、ロープを二本に増やした俺とトーヤは、『隔離領域アイソレーション・フィールド』で背後を守りつつ、並んで崖を懸垂下降、穴の直上まで達したところで『光ライト』を発動し、穴の中へと先行させる。
在那之后,我和TOYA增加了两条绳子,一边在《隔离领域隔离领域隔离场》中保护着背后,一边并排悬垂着悬崖下降,到达洞口正上方时发动“光灯”,让它先行到洞中。
「よし、それじゃオレから行くぞ」
“好吧,那我去。”
「大丈夫か?」
“没事吧?”
「お前が行くよりはマシだ。……よしっ!」
“比你去要好。……好!”
穴の大きさが小さいため、トーヤは少し身体を丸めるようにして岩壁を蹴ると、振り子の原理で穴の中へと飛び込む。
因为孔的大小很小,所以火炬把身体稍微揉成团,踢了一下岩壁,按照钟摆的原理跳进洞里。
結構ギリギリのサイズだけにちょっと危なげではあったが、壁にぶつかったりすることもなく、トーヤの姿はきっちりとその中へと消えた。
因为尺寸相当接近,所以稍微有点危险,但是没有撞到墙壁,火炬的身影正好消失在里面。
それを確認し、俺も同様に飛び込むと、そこには奥へと続く通路が延びていた。
确认了这一点,我也同样跳了进去,在那里延伸着通往深处的通道。
やや狭かった入口に対し、中は少し広がっていたが、それでも高さは二メートルほど。幅も一・五メートルほどで、これまでのダンジョンと比べると、人一人がやっと歩けるという広さ。
相对于稍窄的入口,里面稍微扩大了一点,但是高度却只有2米左右。宽约1.5米,和以前的地牢相比,可以一个人走路。
そこを一〇歩ほど入った所で、トーヤが中腰で盾と剣を構え、洞窟の奥を睨んでいた。
在从那里进去大约十步的地方,TOYA腰间立着盾和剑,注视着洞窟的深处。
「敵か!?」
“敌人吗
その姿にやや焦って尋ねた俺に、トーヤは曖昧に応える。
对那个身姿稍微着急询问了的我,toya暧昧回应。
「いや……判らん。けど、なんかいそうな気がする。ナオは?」
“不,我不知道。但是,总觉得有点。那奥呢?”
「これは……また【擬態】か?」
“这是……又是‘拟态’吗?”
注意深く周囲を見回し、俺は洞窟の一点を指さす。
仔细环视周围,我指的是洞窟的一点。
「トーヤ、そこの岩を叩いてみてくれ。インパクト・ハンマーで」
“Toya,请敲一下那里的岩石。用冲击锤”
「これか? ――セイッ」
“这个吗?——Thay”
トーヤが俺が指さした岩を『ガツン』と叩くと、四〇センチぐらいのその岩に震えが走り、バラバラと崩壊。その下からでろりとした軟体動物が地面の上に広がった。
Toya敲了我指的岩石“gatsu”,在那块约40厘米的岩石上颤抖着,啪啦啪啦地崩溃了。从下面开始胖乎乎的软体动物扩展到了地面上。
「ぬわっ! 気持ち悪っ!? ――ロック・シェル?」
“哇!心情不好摇滚贝壳?”
「みたいだな。――っと、先にハルカたちを呼ぶか。遅くなると、心配するだろうし」
“好像啊。——先叫一下Haruka他们吧。迟到的话,会担心的”
ロック・シェルの死体を剣で突いているトーヤをその場に残し、俺は入口まで戻ると上に呼びかけた。
把用剑刺着洛克・贝壳尸体的TOYA留在那里,我回到入口后向上面呼唤。
「問題ない! 下りてきても大丈夫だ」
“没问题!下来也没关系”
「了解です!」
“我明白了!”
上から返ってきたのはナツキの声。
从上面传来的是枣树的声音。
そしてすぐに、メアリとミーティアが下りてくる。
然后马上,玛丽和米蒂亚就下来了。
安全は確保されているので、俺たちみたいに勢いを付けて飛び込むことはせず、穴の位置まで下りてきたところで、俺が一人ずつ中へと引き込む。
因为安全是被确保的,所以不会像我们那样鼓足干劲跳下去,即使跳到坑的位置,我也会一个人一个人地往里拉。
そして、ハルカたちも後に続き、無事に全員が揃ったのだが……狭いな?
然后,Haruka他们也在后面继续,大家都平安的集合了……真狭窄啊?
すれ違うのがやっとという広さなので、いつものような隊列を組むこともできない。
因为是好不容易才擦肩而过的地方,所以也不能像往常一样组成队伍。
取りあえず一列になってトーヤの所まで戻ると、ミーティアが地面にでろりと広がったロック・シェルを小太刀で突つついていた。
总之先排成一列回到了火炬处,米蒂亚用刀捅了一个扩展到地面上的锁壳。
「これ、食べられるのです?」
“这个能吃吗?”
ミーティアの疑問に、トーヤがじっとロック・シェルの死体を見つめてから、頷く。
对米蒂亚的疑问,托亚一直盯着洛克・贝壳的尸体,点点头。
「あぁ、一応食える。だが、大きさの割に食える場所が少ないみたいだな」
“啊,姑且能吃。但是,比起大小,能吃的地方好像很少”
先ほど斃したロック・シェルの大きさは、直径で四〇センチほどだったが、岩にしか見えないその殻は、厚みが五センチほどもあり、殻の残骸を取り除けて残った中身は、存外大きくなかった。
刚才死了的摇滚·贝壳的大小,直径是40厘米左右,不过,只有岩石才能看见的那个壳,厚度有5厘米左右,除去壳的残骸剩下的内容,意外地不大。
単純に考えれば、中身は直径三〇センチほどの塊なのだろうが、殻がなくなると形状が保てないのか、地面で潰れているそれは、かなり見た目が悪い。
单纯地考虑的话,里面是直径约30厘米的块状,但是如果没有壳的话,形状就不能保持,在地面上被压坏了,看起来很不好看。
「えっとだな……この中で食べられるのは、中心部分の直径一五センチ、厚さ一〇センチほどの部分。それ以外は内臓などで、食用には適さない。しっかりと加熱して食べなければ、腹を壊すこともある、だと」
“呃……这里面能吃的是中心部分直径十五厘米,厚度十厘米左右的部分。除此之外还有内脏等,不适合食用。如果不好好加热吃的话,有时会坏肚子”
おそらく【鑑定】を使ったのだろう。
恐怕是使用了【鉴定】吧。
トーヤから、とても受け売りっぽい説明を頂いた。
从TOYA那里得到了很容易接受的说明。
「なら、回収するの! 食べたことないの!」
“那就回收吧!没吃过!”
アグレッシブにもミーティアは、叩き潰されてグチャッとなっている軟体生物に怯む様子も見せず、むしろ嬉々として魔石を回収すると、ロック・シェルの解体を始める。
阿古力希布也没有看到米蒂亚害怕被击溃的软体生物的样子,反而高兴地回收了魔石,开始拆卸摇滚贝壳。
トーヤの指示するまま、周辺の不要な部分を切り分けてミーティアが取り上げたそれは、一見するとアワビにも近い。
在TOYA的指示下,将周边不需要的部分切开,Metia拿起了,乍一看和鲍鱼也很接近。
こうなると食材に見えてしまうから、不思議である。
这样的话会让人觉得是食材,很不可思议。
「取り除けた周辺部分は食べられないの?」
“除去的周边部分不能吃吗?”
「毒はないが、岩を多く含んでいるらしい。食べたら、ジャリッていうか、ゴリッて感じで歯が欠けるかもな。対処方法としては、生きたまま岩から剥ぎ取り、水の中に放り込めば、岩とか土を吐き出すらしいが……手間とコストが合わないみたいだな。一番美味いのは、今ミーティアが回収した場所だから」
“虽然没有毒,但是好像含有很多岩石。吃了的话,大概是刺猬吧,因为大猩猩的感觉牙齿可能会缺。作为处理方法,如果活生生地从岩石上剥下来,扔进水里的话,好像会吐出岩石和泥土……好像是因为工夫和成本不符。最好吃的是现在米蒂亚回收的地方”
貝ではあっても、完全に陸に適応しているのか、水の中に入ると溺れるらしい。
即使是贝壳,也完全适应了陆地,一进入水中就会溺水。
そのため、自重を軽くして水から逃げ出すために、重たい殻を捨て、岩を吐き出すようだ。
因此,为了减轻自身负担,从水里逃出来,就扔掉沉重的壳,把岩石吐出来。
まぁ、それで水から逃れたとしても、殻をなくした貝が生き延びられるとは、到底思えないのだが。
嘛,即使因此而从水里逃出来,也无法想象失去壳的贝壳能幸存下来。
「ちなみに、攻撃手段は?」
“顺便问一下,攻击手段是?”
これまでのパターンからして、絶対なんか厄介な攻撃手段があるに違いないと思ってトーヤに訊いたのだが、返ってきたのは予想外の答えだった。
从至今为止的模式来看,我觉得绝对有什么棘手的攻击手段,于是向TOYA询问,得到的却是出乎意料的回答。
「いや、それが、コイツってほぼ無害らしい。無視しても問題ないんだと」
“不,这家伙基本上是无害的。无视也没问题”
「……え、マジで? この何かと凶悪なこの階層で?」
“……啊,真的吗?在这个和什么凶恶的阶层里?”
「そう。近くにいても、それこそ上に座ってもほぼ動かないらしい」
“是的。即使在附近,坐在上面也几乎不动”
「ホントに? それって、ダンジョンの魔物としてどうなのかな?」
“真的吗?那个作为迷宫的魔物怎么样?”
「だよな? 何で存在するんだ?」
“是吧?为什么存在?”
自然界の普通の動物ならともかく、ダンジョンにいる魔物の生態としては、間違っている気がする。
如果是自然界普通的动物的话那就另当别论了,但我觉得作为地牢里的魔物的生态是错误的。
「でも確か、野営をする前には近くにいないか、確認しないといけないと書いてありましたよね?」
“但是,确实写着在露营之前必须要确认一下附近是否有呢?”
「あぁ、そこだけは気を付けないとダメだな」
“啊,只有这点要注意啊。”
ナツキの注釈に、トーヤは頷いて言葉を続ける。
对于夏树的注释,火炬点了点头继续说道。
「傍で暢気に寝ていると、ジリジリと近づいて来てのし掛かられるらしい。顔とかに」
“如果在旁边悠闲地睡觉的话,就会慢慢地靠近,然后被压在地上。在脸上”
「うっ、これが、ですか?」
“呃,这个是吗?”
「気持ち悪いの……」
“真恶心……”
ミーティアによって捨てられた死体を見て、メアリとミーティアが顔を顰める。
看到被米蒂亚抛弃的尸体,梅阿里和米蒂亚皱起眉头。
食べるのは楽しみでも、それとこれとは別問題なようだ。
虽然很期待吃,但是和这个好像是另外一个问题。
「動きは遅いから、起きていれば問題ないんだが、岩にガッチリと張り付いたり、岩をガリガリと削ったりするようなのが肌に張り付いたらどうなるか……想像はできるよな?」
“动作很慢,醒着的话就没问题了,但是如果在岩石上紧紧贴着,或者把岩石咯吱咯吱地削掉,贴在皮肤上会怎么样呢……可以想象吧?”
「やっぱ凶悪じゃねぇか!」
“果然不是凶恶吗!”
下手に切られたり、噛まれたりするより怖こえぇよ!
比起被拙劣地切,被咬更可怕!
「イメージ的にはそうだけど、実際は起こらないでしょ、誰かが見張りで起きてれば」
“印象上是这样的,但实际上不会发生吧,如果有人监视着起床的话。”
「だよね。ダンジョン内で、見張りも立てずに寝るなんて、あり得ないし」
“是啊。在地牢里,不放哨就睡,这是不可能的”
「だから普通は、居眠りした見張りの足をやられる程度で済むらしい」
“所以一般来说,只是打个盹儿,放哨的脚就可以了。”
「程度っつーか、それでもかなり嫌だな」
“程度嘛,即使这样也很讨厌啊。”
たぶん、足の肉を削り取られるんだろ?
大概会削掉脚上的肉吧?
この傘貝っぽい形状からして。
从这个伞贝壳的形状来看。
治癒魔法がなければ、かなり酷いことになりそうである。
如果没有治愈魔法的话,可能会变得相当残酷。
「でも、事前に注意すれば大丈夫そうなので、そこは安心ですね。周囲にある怪しい岩、叩けば良いですから!」
“但是,事前注意一下的话应该没问题,这点就放心了。因为只要敲击周围可疑的岩石就可以了!”
そう言いながら、手に持ったバスタード・ソードをちょっと持ち上げたのは、メアリである。
一边这样说着,一边举起手里拿着的浴盆剑的是玛丽。
忘れがちだが、俺たちの中でトーヤの次にパワータイプなのは彼女なのだ。
虽然很容易忘记,但是在我们之中,仅次于Toya的力量型的是她。
体格的には下から二番目なのに。
体格上是倒数第二的。
これから彼女がどう成長していくのかは判らないが、俺の希望としては、あまりムキムキのお姉さんにはなって欲しくない。貴重な獣耳なので。
我不知道她今后会如何成长,但是我希望她不要成为我最讨厌的姐姐。因为是贵重的兽耳。
幸いなのは、この世界の場合、見た目上の筋肉がなくても高い膂力が得られることか。
幸运的是,在这个世界上,即使没有外表上的肌肉也能得到高的臂力吗。
「……ま、叩いてみるのは良いけど、その時はそれじゃなく戦槌でな? ガーゴイル用に用意したのがあるから」
“……嘛,敲一下倒是不错,但那时候不是用战锤吗?因为有准备好了纸绳用的”
「はい、解りました。頑張って粉砕しますね!」
“好的,我明白了。我会努力粉碎的!”
そう言って、「ふんすっ!」と鼻息も荒く、可愛く拳を握るメアリだが……言っていることはなかなかに凶暴なのだった。
这样说着,“嗯!”梅莉的鼻息也很粗暴,很可爱地握着拳头……说的话相当凶暴。