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養蜂家の青年は、蜜薬師の花嫁と山を下る
养蜂家的青年和蜜药师的新娘下山
朝食を食べたら、すぐに出かける。
吃完早饭后马上出门。
マクシミリニャンが見送りに来てくれた。
马克西米莉娜来送我了。
「イヴァン殿、気を付けて、行くのだぞ」
“伊凡大人,你要小心,走了。”
眉尻を下げ、心配そうに見下ろしている。まるで小さな子どもが行く、初めてのお使いを見送る親のようだ。
低下眉尾,忧心忡忡地俯视着。简直就像小孩子去,目送第一次使用的父母一样。
「お義父様、大丈夫だから。アニャのことは、守るし」
“公公,没关系,我会保护你的。”
「う、うむ。そうだな」
“嗯,嗯。是啊。”
アニャが元気よく家から飛び出してくる。
阿尼亚精神饱满地从家里跑出来。
「お父様、行ってくるわね」
“爸爸,我走了。”
「ああ」
“啊。”
アニャは心配ないようだ。力強く返事をして、見送っている。
阿尼亚似乎不担心。用力地回答,目送着。
手を振って家を出た。
我挥手离开了家。
「イヴァン、辛かったら、声をかけてね」
“伊凡,如果辛苦的话,请跟我打招呼。”
「わかった」
「明白了。」
登りもかなり辛かったが、下りも同じくらい辛いらしい。
虽然登山也很辛苦,但是下坡好像也一样辛苦。
アニャのその言葉を、すぐに実感する。
我马上感受到阿尼亚的那句话。
マクシミリニャンと共に登ってきた岩場は、上から見るとかなり恐ろしい。ごつごつトゲトゲした岩に向かって、下りなければいけないのだ。
和马克西米利尼一起攀登的岩场,从上面看相当可怕。必须朝着凹凸不平的岩石下去。
足を踏み外したら、岩場に真っ逆さまである。
失足后,正倒向岩场。
アニャは小リスのように、慣れた様子でするすると岩場を下っていく。
阿尼亚像小松鼠一样,习惯了的样子就从岩场下去。
上目遣いで俺が下りてくるのを待っている様子は、震えるほど可愛い。あんなに可愛い娘(こ)が待っているのに、膝が生まれたての子鹿のようになっていて思うように下りられないのだ。
用眼神等着我下来的样子,可爱得发抖。明明有那么可爱的女儿在等着,膝盖却像刚出生的小鹿一样,不能像想象的那样下去。
「イヴァン、大丈夫。ゆっくりでいいのよ」
“伊凡,没关系,慢慢来就好。”
「ありがとう。アニャ、優しい」
“谢谢。阿尼亚,很温柔。”
少し下っただけで、ぐったり疲れてしまった。
只下了一点,就筋疲力尽了。
岩場を下りたあとは、苔が生えて足場が最悪な川辺を下り、アニャが「ここ、よく熊を見かけるの」と説明してくれた恐怖の熊さんロードをびくつきながら通り抜け、途中にあった湧き水のある場所でひと休み。
下了岩场之后,从长着苔藓、脚手架最差的河边走下来,一边穿过阿尼亚说明“这里经常看到熊”的恐怖熊先生的道路,在途中有泉水的地方休息一下。
まずは、冷たい水で顔を洗った。
首先,用冷水洗脸。
「気持ちいい」
“好舒服”
「水も、おいしいわよ」
“水也很好喝。”
山に降った雨が濾過されて、湧いて出るのだという。手で掬って飲んでみたら、驚くほどおいしかった。
据说山上下的雨被过滤后涌出。用手舀着喝了一下,非常好吃。
「え、これ、すごい……!」
“啊,这个,好厉害……!”
「でしょう?」
“是吧?”
そろそろお昼だというので、昼食の時間にするようだ。
快到中午了,好像是午饭时间。
なんと、アニャはお弁当を作ってきてくれたらしい。
阿尼亚竟然给我做了便当。
「お弁当、嬉しい!」
“便当,好开心!”
てっきり、その辺に生えている渋そうな木の実を摘まむものだと覚悟していたから……。素直にそう答えると、「リスじゃないんだから、お昼に木の実は食べないわよ」と言われてしまった。
因为我已经做好了一定要摘那附近长着的看起来很涩的树的果实的觉悟……。坦率地这样回答的话,被说了「因为不是松鼠,中午树的果实不吃哟」。
アニャがリスみたいだと思ったことは、黙っておこう。
认为阿尼亚像松鼠一样的事情,就不要说了。
お弁当は蕎麦粉の生地に、レーズンを練り込んだパンだった。これに、レモンカードという、レモンにバターを混ぜたものを塗るらしい。
便当是在荞麦粉的面团里加入葡萄干的面包。在这上面,好像要涂一种叫做柠檬卡的柠檬和黄油混合的东西。
鞄の中から、どでかい丸パンが出てきたので驚いた。確実に、マクシミリニャンの顔より大きいだろう。
从包里出来了一个很大的圆面包,吓了一跳。确实比马克西米利尼亚的脸大吧。
そんなパンを、アニャがサクサクカットしていた。ふかふか系の、やわらかいパンらしい。
阿尼亚把那样的面包切得脆脆的。好像是松软系的柔软的面包。
アニャがカットした蕎麦レーズンパンに、レモンカードをたっぷり塗ってくれる。
在阿尼亚切好的荞麦葡萄干面包上涂满柠檬卡。
「はい、召し上がれ」
“好的,吃吧。”
「いただきます」
“我开动了。”
パンは驚くほどふっくら焼けている。蕎麦の風味が、口いっぱいに広がった。それに、レーズンの甘さがジュワッと溶け込んでいて、レモンカードの濃厚で酸味のある味わいが舌の上で混ざりあう。
面包烤得令人吃惊。荞麦面的风味充满了嘴。再加上葡萄干的甜味融入了杜瓦里,柠檬卡浓厚而酸味的味道在舌头上混合在一起。
「え、何これ……とんでもなくおいしい!」
“啊,这是什么……真好吃!”
アニャは「そうでしょう?」と言わんばかりに、にっこり微笑んでいる。
阿尼亚微笑着,好像在说“是吧?”。
俺ばかり食べていた。囓ったパンはその辺で引っこ抜いた葉っぱの上に置いて、アニャの分のパンにレモンカードを塗ってあげた。
只吃了我。说着的面包放在那一带拔出的叶子上,给阿尼亚的面包涂上柠檬卡。
「はい」
“是的。”
「え、私に?」
「咦?是我吗?」
「うん」
“嗯。”
「あ、ありがとう」
“啊,谢谢。”
アニャは小さな口でパンを囓って、「おいし」と言っていた。
阿尼亚用小嘴说面包,说“好吃”。
アニャはよく、俺が食べているところを見つめているときがある。どうしてかと思っていたが、おいしそうに食べている様子は、飽きずにいつまでも見ていられるのだと気づいた。
阿尼亚经常盯着我吃的地方看。我还以为是为什么呢,发现吃得津津有味的样子,不厌其烦地一直能看到。
「あー、可愛い」
“啊,好可爱。”
「な、何が可愛いの!?」
“什么,有什么可爱的!?”
「おいしそうにパンを頬張っているアニャが」
“看起来很好吃地大口吃着面包的阿尼亚”
「み、見ないでよ」
“美,别看。”
怒られてしまった。ひとまず、食べるのに集中する。
我被骂啦。暂且集中精力吃。
アニャはパンの他に、ゆで卵と串焼き肉を作ってくれていた。串焼き肉は、先日マクシミリニャンが狩ったウサギである。
阿尼亚除了面包之外,还给我做了煮鸡蛋和串烤肉。串烤肉是前几天马克西米利尼亚狩猎的兔子。
「っていうか、お弁当、重たかったでしょう? 俺が持ったのに」
“话说回来,便当很重吧?明明是我带的。”
「イヴァンは、商品を持っているでしょう? いつもは、商品とお弁当、両方自分で持って行っていたし、大丈夫よ」
“伊凡有商品吧?平时,商品和便当都是自己带去的,没关系的。”
「そっか」
“是吗?”
アニャがカットしてくれたパンをすべて食べていたら、お腹がパンパンになってしまう。
如果把阿尼亚切好的面包全部吃掉的话,肚子就会变成面包面包。
「ちょっとごめん。動けなくなるほど、食べちゃった」
“对不起,我吃得动不了啦。”
「いいわよ。ちょっと、横になっていたら?」
“好啊。稍微躺下怎么样?”
アニャはそう言って、自らの膝をポンポンと叩く。
阿尼亚这样说着,啪嗒啪嗒地敲着自己的膝盖。
「もしかして、膝を貸してくれるってこと?」
“难道你要把膝盖借给我?”
「ええ」
“是的。”
本当にきついので、お言葉に甘えて膝を借りた。
真的很辛苦,恭敬不如从命地借了膝盖。
アニャは遠慮なく、俺の顔を覗き込む。
阿尼亚毫不客气地窥视着我的脸。
「ねえ、イヴァン」
「喂,伊凡。」
「何?」
“什么?”
「街にいたとき、モテていたでしょう?」
“在街上的时候很受欢迎吧?”
「な、なんで?」
“为什么?”
「きれいな顔立ちをしているから」
“因为长得很漂亮。”
なんて質問をするのか。心臓が口から飛び出るのではないかと思った。
你问什么问题。我怕心脏会从嘴里跳出来。
「双子の兄のサシャはモテていたけれど、俺はぜんぜんだよ」
“双胞胎哥哥萨沙很受欢迎,但我完全没有。”
「嘘だー!」
“骗人的!”
「本当だって」
“说真的。”
だから、ロマナが本当は俺のほうが好きだったと聞いて、驚いたものだ。
所以,听说罗曼娜其实更喜欢我,我很吃惊。
彼女に関しては、刷り込みみたいなものなのだろう。
关于她,就像印刷一样吧。
ふいに、突き刺さるような視線を感じる。野生の熊かと思いきや、アニャだった。
突然,感觉到了刺痛的视线。原以为是野生的熊,没想到却是阿尼亚。
「何?」
“什么?”
「思い当たる節が、あったんじゃないの?」
“不是有想到的时候吗?”
「ないない、ないってば」
“没有,没有。”
「ふうん」
“嗯。”
やっぱり、アニャは鋭い。変なことは考えないようにしなくてはと、改めて思ったのだった。
果然,阿尼亚很敏锐。我再次想到了必须不要想奇怪的事情。