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養蜂家の青年は、蜜薬師の娘に出会う 養蜂家の青年は、蜜薬師の娘に出会う
 山を登るのに杖を渡されたが、これはただの杖ではなかった。
 荷棒(にんぼう)と呼ばれ、ひと休みをするときに背負子の下に入れて荷物を支えるのだという。つまり、座らずに立ったまま休憩するようだ。 养蜂家的青年遇到了蜜药师的女儿
山を登るのに杖を渡されたが、これはただの杖ではなかった。
登山时被交给了拐杖,但这不仅仅是一根拐杖。
荷棒(にんぼう)と呼ばれ、ひと休みをするときに背負子の下に入れて荷物を支えるのだという。つまり、座らずに立ったまま休憩するようだ。
据说他被称为“荷棒”,在休息的时候把行李放在背上支撑行李。也就是说,不坐就站着休息。
「背負子を下ろしたら、再び持ち上げるのが困難なときがある。よって、なるべく短い休憩時間のときは、下ろさないようにするのだ」 「背負子を下ろしたら、再び持ち上げるのが困難なときがある。よって、なるべく短い休憩時間のときは、下ろさないようにするのだ」
“有时背下来后,再抬起来会很困难。因此,尽量在休息时间短的时候,不要放下。”
「なるほど」 「なるほど」
 背負子の荷物はズッシリと重たく、疲れた状態ならば背負って立ち上がる行為が困難な状況になるのかもしれない。 “原来如此。”
 山で暮らす者達の知恵なのだろう。
背負子の荷物はズッシリと重たく、疲れた状態ならば背負って立ち上がる行為が困難な状況になるのかもしれない。
背孩子的行李很重,如果处于疲劳的状态,背着站起来的行为可能会变得困难。
山で暮らす者達の知恵なのだろう。
这是在山上生活的人们的智慧吧。
若葉萌ゆる木々の間を、縫うように進んでいく。
在嫩叶萌萌的树木之间,像缝一样前进。
一時間ほどなだらかな坂道だったが、だんだんと険しくなっていく。
虽然是一个小时左右平缓的坡道,但渐渐变得险峻。
全身汗をかくと、途端に傷が痒くなる。汗が染みこんで気持ち悪いので、包帯を取った。
全身出汗的话,伤口马上就会痒。因为汗浸透了很恶心,所以取了绷带。
 若葉萌ゆる木々の間を、縫うように進んでいく。
 一時間ほどなだらかな坂道だったが、だんだんと険しくなっていく。
 全身汗をかくと、途端に傷が痒くなる。汗が染みこんで気持ち悪いので、包帯を取った。
「イヴァン殿、大丈夫か?」 「イヴァン殿、大丈夫か?」
 正直に言うと、大丈夫ではない。 “伊凡大人,没事吧?”
 言葉に出さなかったが、伝わってしまったのだろう。マクシミリニャンはこちらへズンズンやってきて、俺の背負子の荷物を下ろしてくれた。
正直に言うと、大丈夫ではない。
说实话,没关系。
言葉に出さなかったが、伝わってしまったのだろう。マクシミリニャンはこちらへズンズンやってきて、俺の背負子の荷物を下ろしてくれた。
虽然没有用语言表达,但还是传达了吧。马克西米利尼亚来到这里,把我背上的行李拿下来。
「しばし休もう」 「しばし休もう」
 木々が生い茂り、獣しか通らないような道である。休憩するような場所ではない。 “暂时休息吧。”
 しかしながら、膝の力が抜けてその場に頽(くずお)れる。
 すぐにマクシミリニャンが体を支え、何か口に押し込んできた。
 甘い――すぐに、蜂蜜のキャラメルであることに気付く。
木々が生い茂り、獣しか通らないような道である。休憩するような場所ではない。
这是一条树木繁茂,只有野兽才能通过的道路。不是休息的地方。
しかしながら、膝の力が抜けてその場に頽(くずお)れる。
但是,膝盖无力,当场就垮啦。
すぐにマクシミリニャンが体を支え、何か口に押し込んできた。
很快,马克西米利尼亚支撑着身体,把什嚒东西塞进嘴里。
甘い――すぐに、蜂蜜のキャラメルであることに気付く。
甜——马上就发现是蜂蜜的奶糖。
「それを、舌の上でゆっくりとかし、呑み込むのだ」 「それを、舌の上でゆっくりとかし、呑み込むのだ」
 疲れた体に、染み入るような甘さである。続けて、マクシミリニャンは鞄からカップと水、それから蜂蜜の瓶を取り出し、水に溶いたものを飲むようにと差し出してきた。 「把它放在舌头上慢慢地吞下。」
 不思議と、辛い気分が薄くなったような気がした。
疲れた体に、染み入るような甘さである。続けて、マクシミリニャンは鞄からカップと水、それから蜂蜜の瓶を取り出し、水に溶いたものを飲むようにと差し出してきた。
这是渗透到疲惫的身体里的甜味。接着,马克西米利尼亚从包里拿出杯子和水,然后拿出蜂蜜的瓶子,就像喝了溶解在水里的东西一样。
不思議と、辛い気分が薄くなったような気がした。
不可思议的是,我感觉痛苦的心情变淡了。
「山で疲労を感じたときは、これが一番だとアニャが言っていた」 「山で疲労を感じたときは、これが一番だとアニャが言っていた」
“在山上感到疲劳的时候,阿尼亚说这是最好的。”
「そう、なんだ」 「そう、なんだ」
“是,是什么?”
「どうだ?」 「どうだ?」
“怎么样?”
「うん、だいぶいい」 「うん、だいぶいい」
 怪我が完全に治っていないのに、無理矢理家を出たからだろう。あまりの計画性のなさに、がっくりとうな垂れてしまう。 “嗯,相当好。”
怪我が完全に治っていないのに、無理矢理家を出たからだろう。あまりの計画性のなさに、がっくりとうな垂れてしまう。
大概是因为伤还没完全治好,就强行离开了家吧。因为没有太多的计划性,所以垂头丧气。
「怪我の治療は、アニャに任せよう」 「怪我の治療は、アニャに任せよう」
“受伤的治疗就交给阿尼亚吧。”
「医者からもらった薬があるんだけれど」 「医者からもらった薬があるんだけれど」
“我有医生给我的药。”
「皮膚が酷くただれておるぞ。これは、痛かっただろう。おそらく、薬が合っていないのではないか?」 「皮膚が酷くただれておるぞ。これは、痛かっただろう。おそらく、薬が合っていないのではないか?」
 そういえば、ミハルが「街の医者はヤブだ」なんて言っていたのを思い出す。 “皮肤很烂。这个很痛吧。恐怕药不合适吧?”
 生まれてこの方、ド健康だったので医者にかかることはなかったのだ。
そういえば、ミハルが「街の医者はヤブだ」なんて言っていたのを思い出す。
这么说来,我想起了米哈尔说过“街上的医生是雅伯”。
生まれてこの方、ド健康だったので医者にかかることはなかったのだ。
出生以来这个人很健康,所以没有去看医生。
「なんで、ただれたんだろう。今まで、薬を飲むような病気にかかったことがなかったから、相性が悪かったのかな」 「なんで、ただれたんだろう。今まで、薬を飲むような病気にかかったことがなかったから、相性が悪かったのかな」
 傷口をかかないほうがいいというが、ついついバリバリと爪で引っ掻いてしまう。その瞬間、痛みに襲われるのだ。 “为什么会糜烂呢?以前没有得过吃药之类的病,是不是不投缘呢?”
 なんだろうか、この、痒みを訴える傷をかくと痛いという現象は。人体の謎である。
傷口をかかないほうがいいというが、ついついバリバリと爪で引っ掻いてしまう。その瞬間、痛みに襲われるのだ。
虽然说最好不要抱伤口,但不知不觉就用指甲挠了一下。那一瞬间,被疼痛袭击了。
なんだろうか、この、痒みを訴える傷をかくと痛いという現象は。人体の謎である。
不知是什么原因,这种挠痒痒的伤口就会痛的现象。这是人体之谜。
「暇を見つけて、リブチェフ・ラズの医者にかかったほうがいいのかな?」 「暇を見つけて、リブチェフ・ラズの医者にかかったほうがいいのかな?」
“找个时间,去看利布切夫·拉兹的医生比较好吗?”
「リブチェフ・ラズには、医者はおらぬ」 「リブチェフ・ラズには、医者はおらぬ」
「え、そうなの!? このまま治りが遅かったら、どうしよう」
“里布切夫·拉兹没有医生。”
「え、そうなの!? このまま治りが遅かったら、どうしよう」
“啊,是吗!?如果就这样治晚了,怎么办?”
「安心せい。アニャは、“蜜薬師(みつくすし)”である」 「安心せい。アニャは、“蜜薬師(みつくすし)”である」
“放心吧。Ania是‘蜜药师’。”
「蜜薬師?」 「蜜薬師?」
 初めて聞く言葉だったので、思わず聞き返してしまう。 “蜜药师?”
 蜜薬師――それは、豊富な蜂蜜の知識を持ち、蜂蜜を薬のように処方する存在だという。
初めて聞く言葉だったので、思わず聞き返してしまう。
因为是第一次听到的话,所以不由得反问了。
蜜薬師――それは、豊富な蜂蜜の知識を持ち、蜂蜜を薬のように処方する存在だという。
蜜药师——据说他拥有丰富的蜂蜜知识,是将蜂蜜如药般处方的存在。
「蜂蜜は、万能薬とも言われておる。症状ごとに蜂蜜を選び、体調をよい方向へと導いてくれるのだ」 「蜂蜜は、万能薬とも言われておる。症状ごとに蜂蜜を選び、体調をよい方向へと導いてくれるのだ」
“蜂蜜也被称为万能药。每个症状都会选择蜂蜜,引导身体走向好的方向。”
「へえ」 「へえ」
 もみの木の蜂蜜は、イライラと不眠症緩和に。 「咦?」
 タイムの蜂蜜は、咳止めに。
 リンゴの蜂蜜は、便秘の解消に。
もみの木の蜂蜜は、イライラと不眠症緩和に。
枞树蜂蜜可以缓解烦躁和失眠。
タイムの蜂蜜は、咳止めに。
时间的蜂蜜可以止咳。
リンゴの蜂蜜は、便秘の解消に。
苹果蜂蜜可以消除便秘。
一言に蜂蜜といっても、種類ごとにさまざまな効果があるようだ。
一言以蔽之,蜂蜜的种类也有各种各样的效果。
 一言に蜂蜜といっても、種類ごとにさまざまな効果があるようだ。
「イヴァン殿は、毎日蜂蜜を食べていたから、今まで健康だったのだろう」 「イヴァン殿は、毎日蜂蜜を食べていたから、今まで健康だったのだろう」
“伊凡大人每天都吃蜂蜜,所以至今为止都很健康吧。”
「そう、なのかな?」 「そう、なのかな?」
“是吗?”
「自信を持て」 「自信を持て」
 言われてみれば、同じように蜂蜜を食べている家族も、滅多に風邪を引いたり、腹を壊したりしない。蜂蜜の効果だったのだろうか。 “要有自信。”
言われてみれば、同じように蜂蜜を食べている家族も、滅多に風邪を引いたり、腹を壊したりしない。蜂蜜の効果だったのだろうか。
说起来,同样吃蜂蜜的家庭也很少感冒,也不会闹肚子。是蜂蜜的效果吗。
「リブチェフ・ラズの村人も具合が悪くなれば、アニャを尋ねてやってくる」 「リブチェフ・ラズの村人も具合が悪くなれば、アニャを尋ねてやってくる」
“里布切夫·拉兹的村民如果身体不舒服,也会来找阿尼亚。”
「八時間かけて?」 「八時間かけて?」
 マクシミリニャンはコクリと頷いた。 “花了八个小时?”
 患者本人でなくても、家族が相談にやってくる場合もあるらしい。
マクシミリニャンはコクリと頷いた。
马克西米利尼亚点了点头。
患者本人でなくても、家族が相談にやってくる場合もあるらしい。
即使不是患者本人,家人也会来咨询。
「ブレッド湖まで馬車で飛ばしたら二時間なのに、わざわざ八時間かけてやってくるんだ」 「ブレッド湖まで馬車で飛ばしたら二時間なのに、わざわざ八時間かけてやってくるんだ」
“坐马车飞到布莱德湖的话只有两个小时,特意花了八个小时来。”
「ここの者達は、それだけ蜜薬師を信頼しているのだ」 「ここの者達は、それだけ蜜薬師を信頼しているのだ」
“这里的人们就这么信赖蜜药师。”
「なるほど」 「なるほど」
 ヤブ医者にかかるよりは、蜜薬師を頼ったほうがいいというわけか。 “原来如此。”
ヤブ医者にかかるよりは、蜜薬師を頼ったほうがいいというわけか。
与其去看雅布医生,还不如依靠蜜药师好吗。
「どれ、水で、顔を洗おうか」 「どれ、水で、顔を洗おうか」
“喂,用水洗脸吧。”
「え、いいよ」 「え、いいよ」
“啊,好啊。”
「しかし、肌に合わない薬を塗った状態では、余計に傷が悪くなるだろう」 「しかし、肌に合わない薬を塗った状態では、余計に傷が悪くなるだろう」
 まずは、肌に合わない薬を水で流したほうがいいと言われた。 “但是,在涂了不适合皮肤的药的状态下,伤口会变得更差吧。”
 マクシミリニャンは容赦なく、頭の上から水をかけてくれた。おかげで、上半身までびしょびしょだ。
 しかし、汗をかいていたので、ついでだと思って着替える。
 さっぱりしたところで、登山を再開した。
まずは、肌に合わない薬を水で流したほうがいいと言われた。
首先,被告知最好用水冲掉不适合皮肤的药。
マクシミリニャンは容赦なく、頭の上から水をかけてくれた。おかげで、上半身までびしょびしょだ。
马克西米利尼亚毫不留情地从头顶上给我浇水。托您的福,上半身都湿透了。
しかし、汗をかいていたので、ついでだと思って着替える。
但是,因为出汗了,所以以为是顺便换衣服。
さっぱりしたところで、登山を再開した。
在清爽的地方重新开始登山了。
サラサラと、水のせせらぎが聞こえる。山には大きな川があり、生活水として使っているらしい。
沙沙作响,能听到水的潺潺流水。山上有一条大河,好像是作为生活水使用的。
美しい川だが、感動なんてしている場合ではなかった。
虽然是一条美丽的河,但不是感动的时候。
川を沿うように上がっていくと、だんだん岩場になっていく。そこを、昇っていくのだ。
沿着河往上走,渐渐变成了岩场。从那里升起。
着替えたのに、すぐに汗だくになる。
换了衣服,马上就汗流浃背。
かと思えば、滝のある場所はキンとした冷気が漂っていた。汗が一気に引いて、ガクブルと震えてしまう。
原以为是这样,瀑布所在的地方弥漫着凉爽的冷气。汗一下子退了,咯咯地发抖。
街で買った外套では、寒さなんて耐えきれない。
在街上买的大衣,冷得受不了。
 サラサラと、水のせせらぎが聞こえる。山には大きな川があり、生活水として使っているらしい。
 美しい川だが、感動なんてしている場合ではなかった。
 川を沿うように上がっていくと、だんだん岩場になっていく。そこを、昇っていくのだ。
 着替えたのに、すぐに汗だくになる。
 かと思えば、滝のある場所はキンとした冷気が漂っていた。汗が一気に引いて、ガクブルと震えてしまう。
 街で買った外套では、寒さなんて耐えきれない。
「これを、着られよ」 「これを、着られよ」
 マクシミリニャンが肩にかけてくれたのは、光沢のある毛糸の外套だ。 「穿上这个吧。」
マクシミリニャンが肩にかけてくれたのは、光沢のある毛糸の外套だ。
马克西米利尼亚给我披在肩上的是一件有光泽的毛线外套。
「これは?」 「これは?」
“这是?”
「我が家で飼育している山羊から作った、カシミアの外套である」 「我が家で飼育している山羊から作った、カシミアの外套である」
 異国産の山羊を皇家から贈られ、代々大切に育てているのだという。 “这是我家饲养的山羊做的卡西米亚大衣。”
異国産の山羊を皇家から贈られ、代々大切に育てているのだという。
据说皇家赠送了异国产的山羊,世世代代精心培育。
「カシミアって、確か高級品だと言われていたような」 「カシミアって、確か高級品だと言われていたような」
“据说卡西米亚确实是高级品。”
「そうだな。その外套は売れ残りだから、気にせずに着ておくとよい」 「そうだな。その外套は売れ残りだから、気にせずに着ておくとよい」
 お言葉に甘えて、少しの間借りておく。先ほどまで全身鳥肌が立っていたが、カシミアの外套は冷たい風を通さず、動く度に体が温まるような気がする。 “是啊,那件外套卖不出去,你别介意,穿上就好了。”
 やはり、動物の毛はあたたかいのだ。
お言葉に甘えて、少しの間借りておく。先ほどまで全身鳥肌が立っていたが、カシミアの外套は冷たい風を通さず、動く度に体が温まるような気がする。
恭敬不如从命,借一点时间。刚才全身起鸡皮疙瘩,开司米的外套不透冷风,每次一动都觉得身体暖和。
やはり、動物の毛はあたたかいのだ。
果然,动物的毛是温暖的。
それから、針葉樹林の木々の間を通り抜け、崖のような角度の斜面を登り、ゴツゴツした岩場を這うように登っていく。
然后,穿过针叶树林的树木之间,爬上悬崖般角度的斜坡,爬上凹凸不平的岩石场。
太陽が傾きかけるような時間帯に、ようやくマクシミリニャンの家に到着した。
在太阳快要倾斜的时间段,终于到达了马克西米利尼亚的家。
 それから、針葉樹林の木々の間を通り抜け、崖のような角度の斜面を登り、ゴツゴツした岩場を這うように登っていく。
 太陽が傾きかけるような時間帯に、ようやくマクシミリニャンの家に到着した。
「ここが、家?」 「ここが、家?」
“这里是家?”
「ああ、そうだ」 「ああ、そうだ」
 山を切り開き、人が住めるよう更地にしていた。 “啊,对了。”
 大きな平屋建ての母屋と、下屋、それから離れが二つほどある。その背後にあるのは、山羊小屋か。他、炭焼き小屋や納屋、石窯に畑や、花壇、果樹などもあるようだ。驚くべきことに、ガラス張りの温室まであった。その向こう側にあるのは、湧き水だろうか。澄んだ透明の水が、サラサラと流れている。
 家の背後にある斜面は、土砂崩れが起きないよう石垣で固めている。思っていた以上に、しっかりした造りの家である。
山を切り開き、人が住めるよう更地にしていた。
把山切开,为了让人居住而改成了空地。
大きな平屋建ての母屋と、下屋、それから離れが二つほどある。その背後にあるのは、山羊小屋か。他、炭焼き小屋や納屋、石窯に畑や、花壇、果樹などもあるようだ。驚くべきことに、ガラス張りの温室まであった。その向こう側にあるのは、湧き水だろうか。澄んだ透明の水が、サラサラと流れている。
有两个大的平房的主屋和下屋,还有两个距离。背后的是山羊小屋吗。另外,烧炭小屋、谷仓、石窑里还有田地、花坛、果树等。令人吃惊的是,甚至还有镶着玻璃的温室。在那对面的是泉水吗。清澈透明的水潺潺流淌着。
家の背後にある斜面は、土砂崩れが起きないよう石垣で固めている。思っていた以上に、しっかりした造りの家である。
房子背后的斜坡,为了不发生泥石流,用石墙加固。这是一座比想象中还要坚固的房子。
「我は普段、離れで暮らしておる。イヴァン殿は、アニャと母屋で暮らすとよい」 「我は普段、離れで暮らしておる。イヴァン殿は、アニャと母屋で暮らすとよい」
“我平时都是分开生活的。伊凡大人最好和阿尼亚住在正房里。”
「いやいや、普通、逆でしょう」 「いやいや、普通、逆でしょう」
 家長であるマクシミリニャンを差し置いて母屋に住むなんて。俺が離れに住んで、母屋に親子が住めばいいのではないか。そう思ったが、事情があるらしい。 “不,不,一般都是相反的吧。”
家長であるマクシミリニャンを差し置いて母屋に住むなんて。俺が離れに住んで、母屋に親子が住めばいいのではないか。そう思ったが、事情があるらしい。
竟然把家长马克西米莉娜丢下住在正房里。我分开住,父母和孩子住在母屋不就好了吗。虽然这么想,但好像有情况。
「娘に世話をかけるわけにはいかないからな。十五の春には一人前だったゆえ、話し合って、我は離れに、アニャは母屋に住むことになったのだ。食事は当番制にして、日替わりで作っておった」 「娘に世話をかけるわけにはいかないからな。十五の春には一人前だったゆえ、話し合って、我は離れに、アニャは母屋に住むことになったのだ。食事は当番制にして、日替わりで作っておった」
“因为我不能让女儿照顾我。十五岁那年春天我已经是独当一面的人了,所以商量之后,我就离开了,安妮娅就住在正房里。吃饭是值班制,每天轮流做的。”
「なるほど」 「なるほど」
 ここでは、親の世話は子がするもの、という概念はないようだ。 “原来如此。”
ここでは、親の世話は子がするもの、という概念はないようだ。
在这里,似乎没有父母的照顾是孩子做的概念。
「ところで、アニャは?」 「ところで、アニャは?」
“话说,阿尼亚呢?”
「ふむ。いつもならば、帰ってきたのと同時に出迎えるのだがな。アニャ、アニャー!」 「ふむ。いつもならば、帰ってきたのと同時に出迎えるのだがな。アニャ、アニャー!」
“嗯。如果是平常的话,在回来的同时迎接。阿尼亚,阿尼亚!”
「はーい」 「はーい」
 石垣のあるほうから、元気な返事が聞こえた。 “嗯。”
 夕日を背に、大きな何かが接近してくる。
 逆光になり、姿がよく見えない。
 けれど、彼女が何かに騎乗してやってきたことはわかった。
石垣のあるほうから、元気な返事が聞こえた。
从有石墙的人那里听到了精神饱满的回答。
夕日を背に、大きな何かが接近してくる。
背着夕阳,有什么大的东西接近了。
逆光になり、姿がよく見えない。
逆光,看不清身影。
けれど、彼女が何かに騎乗してやってきたことはわかった。
但是,我知道她是骑着什么来的。
「クリーロ、止まって!」 「クリーロ、止まって!」
“克里洛,停下!”
「うわっ!!」 「うわっ!!」
 急停止による砂埃を浴びながら、はっきりとその姿を確認する。 “哇!!”
 まず、目に飛び込んできたのは、大きな山羊である。これが、マクシミリニャンが言っていた騎乗用の山羊なのか。
 ロバよりも大きく、美しい純白の毛並みに、見事な二本の角が生えていた。
 そして、その大山羊に跨がるのは――金髪碧眼の美少女だった。
急停止による砂埃を浴びながら、はっきりとその姿を確認する。
一边沐浴着突然停止的沙尘,一边清楚地确认其身影。
まず、目に飛び込んできたのは、大きな山羊である。これが、マクシミリニャンが言っていた騎乗用の山羊なのか。
首先,映入眼帘的是一只大山羊。这就是麦克西米利尼亚所说的骑乘用山羊吗。
ロバよりも大きく、美しい純白の毛並みに、見事な二本の角が生えていた。
比驴子还大,美丽的纯白的毛色,长着漂亮的两根角。
そして、その大山羊に跨がるのは――金髪碧眼の美少女だった。
然后,跨过大山羊的是——金发碧眼的美少女。

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養蜂家の青年は、蜜薬師の娘から治療を受ける 養蜂家の青年は、蜜薬師の娘から治療を受ける
 アニャと呼ばれて飛び出してきた女性は、驚くほど美しかった。
 夕日を浴びた金の髪は、蜂蜜みたいにキラキラ輝いている。山の冷気を含んだ風に、サラサラとなびいていた。三つ編みをクラウンのように巻いている髪型は、どこか貴族令嬢のような華と気品がある。
 青い瞳は、子どものときに見た少女人形のサファイアと同じくらい輝いていた。
 陶器のように白くなめらかな肌はうっとりするほど綺麗で、猫を思わせるアーモンド型の目は好奇心旺盛な子猫を思わせた。
 服はこの辺りの民族衣装なのか。
 袖なしのワンピースの下にシャツを着て、腰回りは華やかな花帯で締めている。シャツの衿や袖、スカートの裾には、精緻な刺繍が刺されていた。靴は獣の革で作ったもので、靴底に滑らないよう金具が打ってある。
 大山羊に跨がり、手綱を片手で握って、もう片方の腕には山羊の赤ちゃんを抱いていた。 养蜂青年接受蜜药师女儿的治疗
 その姿はさながら、物語の中から飛び出してきたような妖精のごとく。
アニャと呼ばれて飛び出してきた女性は、驚くほど美しかった。
被称为阿尼亚而跑出来的女性,美得惊人。
夕日を浴びた金の髪は、蜂蜜みたいにキラキラ輝いている。山の冷気を含んだ風に、サラサラとなびいていた。三つ編みをクラウンのように巻いている髪型は、どこか貴族令嬢のような華と気品がある。
沐浴在夕阳下的金发,像蜂蜜一样闪闪发光。在山上含有冷气的风中,沙沙作响。把编辫像皇冠一样卷起来的发型,有着贵族千金般的华丽和气质。
青い瞳は、子どものときに見た少女人形のサファイアと同じくらい輝いていた。
蓝色的眼睛和小时候看到的少女人偶蓝宝石一样闪耀。
陶器のように白くなめらかな肌はうっとりするほど綺麗で、猫を思わせるアーモンド型の目は好奇心旺盛な子猫を思わせた。
像陶器一样洁白光滑的皮肤漂亮得令人陶醉,让人联想到猫的杏仁型眼睛让人联想到好奇心旺盛的小猫。
服はこの辺りの民族衣装なのか。
衣服是这附近的民族服装吗。
袖なしのワンピースの下にシャツを着て、腰回りは華やかな花帯で締めている。シャツの衿や袖、スカートの裾には、精緻な刺繍が刺されていた。靴は獣の革で作ったもので、靴底に滑らないよう金具が打ってある。
无袖连衣裙下穿衬衫,腰间系着华丽的花带。衬衫的领子、袖子、裙子的下摆上都扎着精致的刺绣。鞋子是用兽皮做的,为了不滑到鞋底打着金属零件。
大山羊に跨がり、手綱を片手で握って、もう片方の腕には山羊の赤ちゃんを抱いていた。
跨过大山羊,一只手握住缰绳,另一只手抱着山羊宝宝。
その姿はさながら、物語の中から飛び出してきたような妖精のごとく。
那个身姿宛如从故事中飞出的妖精。
マクシミリニャンの娘とは思えない、美しい娘である。だが、気になることがあって、問いかけてみた。
不认为是马克西米莉娜的女儿,是个美丽的女儿。但是,有在意的事情,试着问了一下。
 マクシミリニャンの娘とは思えない、美しい娘である。だが、気になることがあって、問いかけてみた。
「あの、彼女が、“アニャ”?」 「あの、彼女が、“アニャ”?」
“那个,她是‘Ania’?”
「そうである」 「そうである」
“是的。”
「十九歳?」 「十九歳?」
“十九岁?”
「そうである」 「そうである」
 嘘だーー! と叫びたかったが、ごくんと呑み込む。 “是的。”
嘘だーー! と叫びたかったが、ごくんと呑み込む。
骗人的!虽然想喊,但是一下子就吞了进去。
アニャは十九歳と言うが、見た目は十三歳から十四歳くらいにしか見えなかった。
阿尼亚说是十九岁,但看上去只有十三岁到十四岁左右。
すさまじい童顔である。年齢詐称しているのでは? と疑いたくなるほどだった。
可怕的童颜。是不是在虚报年龄?甚至想怀疑。
 アニャは十九歳と言うが、見た目は十三歳から十四歳くらいにしか見えなかった。
 すさまじい童顔である。年齢詐称しているのでは? と疑いたくなるほどだった。
「やだ、患者さん!?」 「やだ、患者さん!?」
 アニャは大山羊から飛び降り、抱いていた山羊の子はマクシミリニャンに託す。 “讨厌,患者!?”
 目の前で見ると、さらに幼く見えた。身長なんて、俺の肩よりも低いし。
 そんなアニャは、思いがけない行動に出る。
アニャは大山羊から飛び降り、抱いていた山羊の子はマクシミリニャンに託す。
阿尼亚从大山羊跳下,抱着的山羊的孩子托付给麦克西米利尼亚。
目の前で見ると、さらに幼く見えた。身長なんて、俺の肩よりも低いし。
在眼前看,看起来更年幼了。身高什么的,比我的肩膀还低。
そんなアニャは、思いがけない行動に出る。
那样的阿尼亚,采取了意想不到的行动。
「あなた、こっちへ来て。すぐに、治療してあげるわ」 「あなた、こっちへ来て。すぐに、治療してあげるわ」
 アニャは俺の手を握り、母屋のほうへと誘う。 “你过来,我马上给你治疗。”
アニャは俺の手を握り、母屋のほうへと誘う。
阿尼亚握着我的手,邀请我去主屋。
「ちょっ、俺、患者じゃ――!」 「ちょっ、俺、患者じゃ――!」
“喂,我是患者——!”
「ほら、早く来て!」 「ほら、早く来て!」
 妖精のような儚い見た目に反し、アニャは力が強かった。ぐいぐい引っ張られ、あっという間に母屋へとたどり着く。 “看,快来!”
妖精のような儚い見た目に反し、アニャは力が強かった。ぐいぐい引っ張られ、あっという間に母屋へとたどり着く。
与妖精般虚幻的外表相反,阿尼亚的力量很强。被紧紧地拉着,一眨眼就到了主屋。
患者ではないという訴えは、綺麗さっぱり無視された。この見た目では、患者ではないと言っても説得力がないのだろう。
不是患者的申诉,完全被无视了。从这个外表来看,即使说不是患者也没有说服力吧。
母屋は木のぬくもりと匂いがする、心地よさを感じるような空間だった。大きな出窓からは、豊かな自然が覗いていた。
主屋是一个能感受到树木的温暖和味道,感觉很舒服的空间。从大的出窗可以看到丰富的自然景色。
いくつかの小窓がある天井は高く、開放感がある。柱を支える梁には、束ねた薬草ハーブが、ぶら下がっていた。
有几个小窗户的天花板很高,有开放感。支撑柱子的横梁上挂着捆好的药草香草。
入ってすぐに居間となっており、奥に扉がある。おそらく、寝室なのだろう。
一进去就成了起居室,里面有门。恐怕是卧室吧。
台所や風呂などの水回りは、下屋にあるのかもしれない。
厨房和浴室等的水圈,可能在下屋。
下屋があるほうにも、扉がある。外に出ずとも、部屋の中から行き来できるような構造にしているのだろう。
有下屋的一方也有门。即使不出门,也能从房间里来往吧。
 患者ではないという訴えは、綺麗さっぱり無視された。この見た目では、患者ではないと言っても説得力がないのだろう。 煙突が繋がった暖炉に、木々の木目を活かした机や椅子などの家具、照明代わりのランタンなども置かれていた
 母屋は木のぬくもりと匂いがする、心地よさを感じるような空間だった。大きな出窓からは、豊かな自然が覗いていた。 在烟囱相连的壁炉里,还放着利用树木木纹的桌子、椅子等家具、代替照明的灯笼等。
 いくつかの小窓がある天井は高く、開放感がある。柱を支える梁には、束ねた薬草ハーブが、ぶら下がっていた。
 入ってすぐに居間となっており、奥に扉がある。おそらく、寝室なのだろう。
 台所や風呂などの水回りは、下屋にあるのかもしれない。
 下屋があるほうにも、扉がある。外に出ずとも、部屋の中から行き来できるような構造にしているのだろう。
 煙突が繋がった暖炉に、木々の木目を活かした机や椅子などの家具、照明代わりのランタンなども置かれていた。
 なんといっても壮観なのは、棚にびっしりと並べられた蜂蜜の瓶だろう。いったい、何種類あるものか。
 アニャは椅子を引き、ここに座るよう勧めてくれた。 なんといっても壮観なのは、棚にびっしりと並べられた蜂蜜の瓶だろう。いったい、何種類あるものか。
 椅子には、見事な刺繍のクッションが置かれている。これに座るのは、申し訳ないと思うくらい精緻で美しい花模様が描かれている。
不管怎么说,壮观的应该是架子上密密麻麻排列的蜂蜜瓶吧。到底有几种呢。
アニャは椅子を引き、ここに座るよう勧めてくれた。
阿尼亚拉着椅子,劝我坐在这里。
椅子には、見事な刺繍のクッションが置かれている。これに座るのは、申し訳ないと思うくらい精緻で美しい花模様が描かれている。
椅子上放着漂亮的刺绣靠垫。坐在这里,画着精致而美丽的花纹,让人觉得很抱歉。
「どうしたの? 早く座って」
“怎么了?快坐下。”
「どうしたの? 早く座って」
「いや、俺、山を登ってきて汗だくだし、服も靴も汚れているから、家に入ることすら悪いなと」 「いや、俺、山を登ってきて汗だくだし、服も靴も汚れているから、家に入ることすら悪いなと」
“不,我爬上山来汗流浃背,衣服和鞋子都脏了,连进家门都不好。”
「気にしないで。あなたは、患者様でしょう?」 「気にしないで。あなたは、患者様でしょう?」
“别在意。你是患者吧?”
「あ、いや――」 「あ、いや――」
 否定しようとしたものの、アニャは奥の部屋に走って行く。マクシミリニャンは母屋に入って来る気配はない。玄関から外を覗き込んだが、山羊の一匹すらいなかった。 “啊,不——”
否定しようとしたものの、アニャは奥の部屋に走って行く。マクシミリニャンは母屋に入って来る気配はない。玄関から外を覗き込んだが、山羊の一匹すらいなかった。
虽然想否定,但是阿尼亚跑到了里面的房间。马克西米利尼亚没有进入主屋的迹象。从门口往外看,连一只山羊都没有。
「ちょっと! そこに座っていなさいと言ったでしょう!」
“喂!我不是叫你坐在那里吗!”
戻ってきたアニャは怒りの形相でズンズン接近し、腕を掴んで椅子へと誘う。やはり、力は強かった。
回来的阿尼亚带着愤怒的表情接近铁城,抓住手臂邀请他去椅子上。果然,力量很强。
「ちょっと! そこに座っていなさいと言ったでしょう!」
 戻ってきたアニャは怒りの形相でズンズン接近し、腕を掴んで椅子へと誘う。やはり、力は強かった。
「傷に菌が入って、ただれているようね。まずは、顔を綺麗に洗ってちょうだい」 「傷に菌が入って、ただれているようね。まずは、顔を綺麗に洗ってちょうだい」
 テーブルに置かれた桶の水で、顔を洗えと。汗もかいているので、しっかり洗った。 “伤口里有细菌,好像肿了。首先,请把脸洗干净。”
 顔を上げると、アニャがガーゼ生地で優しく拭いてくれる。
テーブルに置かれた桶の水で、顔を洗えと。汗もかいているので、しっかり洗った。
用放在桌子上的桶里的水洗脸。因为出汗了,所以洗得很好。
顔を上げると、アニャがガーゼ生地で優しく拭いてくれる。
抬起头,阿尼亚用纱布轻轻地擦了一下。
「こんなものかしら。あとは、蜂蜜を塗るから」 「こんなものかしら。あとは、蜂蜜を塗るから」
“是这样的吗?还有,我要涂蜂蜜。”
「は?」 「は?」
“什么?”
「これは、アカシアの蜂蜜よ」 「これは、アカシアの蜂蜜よ」
「いや、蜂蜜の種類を聞いているのではなくて」 
“这是刺槐蜂蜜。”
「いや、蜂蜜の種類を聞いているのではなくて」
“不,我不是在问蜂蜜的种类。”
「いろんな蜂蜜で試してみたんだけれど、アカシアが一番、傷の治りが早かったわ」 「いろんな蜂蜜で試してみたんだけれど、アカシアが一番、傷の治りが早かったわ」
 問答無用で、顔面の腫れとただれにアカシアの蜂蜜が塗られた。 “我试过各种蜂蜜,洋槐的伤口治得最快。”
問答無用で、顔面の腫れとただれにアカシアの蜂蜜が塗られた。
无需问答,脸上肿了的谁涂上了洋槐蜂蜜。
目の前に、美少女の顔が迫る。彼女は一生懸命、指先で俺の顔に蜂蜜を塗ってくれた。
美少女的脸逼近眼前。她拼命地用指尖在我脸上涂蜂蜜。
このまま外に出たら熊に襲われるのではと思うくらい、たっぷり塗られる。
这样出去的话会被熊袭击的,涂得很充分。
戸惑いを感じ取られたのか、アニャは優しく微笑みながら言った。
也许是感到困惑了吧,阿尼亚温柔地微笑着说。
 目の前に、美少女の顔が迫る。彼女は一生懸命、指先で俺の顔に蜂蜜を塗ってくれた。
 このまま外に出たら熊に襲われるのではと思うくらい、たっぷり塗られる。
 戸惑いを感じ取られたのか、アニャは優しく微笑みながら言った。
「信じられないかもしれないけれど、蜂蜜には傷を治す力があるのよ。ナイフでうっかり切ったときも、蜂蜜を塗ったらすぐに治るの」 「信じられないかもしれないけれど、蜂蜜には傷を治す力があるのよ。ナイフでうっかり切ったときも、蜂蜜を塗ったらすぐに治るの」
 そんな話など聞いたこともないが、彼女は“蜜薬師”としてリブチェフ・ラズの村人からも信頼されているとマクシミリニャンが話していた。 “也许你不会相信,蜂蜜有治愈伤口的力量。即使是用小刀不小心切到的时候,涂上蜂蜜也能马上痊愈。”
 今は、アニャの治療を信じるしかないのだろう。
そんな話など聞いたこともないが、彼女は“蜜薬師”としてリブチェフ・ラズの村人からも信頼されているとマクシミリニャンが話していた。
虽然没听说过这样的话,但马克西米利尼亚说她作为“蜜药师”受到了里布切夫·拉兹村民的信赖。
今は、アニャの治療を信じるしかないのだろう。
现在只能相信阿尼亚的治疗了吧。
それにしてもアニャが十九歳だと聞いて驚いたが、こうして近くにいると大人の女性だということが確認できた。
尽管如此,听说阿尼亚已经十九岁了,我很吃惊,但就这样在附近的话,可以确认是成年女性。
十代前半の子どもは寸胴だが、彼女の体には確かな凹凸があったのだ。
虽然十几岁的孩子身材短小,但她的身体确实有凹凸。
意識して見たわけではなかったが、頬の傷に蜂蜜を塗る際にぐっと接近したのだ。そのさいに、胸が押しつけられる。はっきり見たわけではないけれど、かなりあるように思えた。
虽然并没有意识到,但在脸颊的伤口上涂蜂蜜的时候,一下子就接近了。那个时候,胸口被压住了。虽然没有看清楚,但我觉得有很多。
もちろん、あまり近づかないほうがいいと言ったが、治療中に話しかけるなと怒られてしまった。
当然,我说了不要太靠近,但是在治疗中被骂了不要搭话。
そんなわけで、アニャは見た目こそ幼いものの、しっかり大人の女性だったというわけだ。
 それにしてもアニャが十九歳だと聞いて驚いたが、こうして近くにいると大人の女性だということが確認できた。 因此,阿尼亚虽然看起来很小,但却是个成熟的女性。
 十代前半の子どもは寸胴だが、彼女の体には確かな凹凸があったのだ。
 意識して見たわけではなかったが、頬の傷に蜂蜜を塗る際にぐっと接近したのだ。そのさいに、胸が押しつけられる。はっきり見たわけではないけれど、かなりあるように思えた。 年齢詐称と疑ってしまった件について、心から謝罪した。
 もちろん、あまり近づかないほうがいいと言ったが、治療中に話しかけるなと怒られてしまった。
 そんなわけで、アニャは見た目こそ幼いものの、しっかり大人の女性だったというわけだ。 对于怀疑是虚报年龄的事情,我发自内心地道歉了。
 年齢詐称と疑ってしまった件について、心から謝罪した。
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