Browse Source

chapter 10, add 21 para, 304~324 jp and sc text

PR/S015
pcnick 4 years ago
parent
commit
3366b3d659
  1. 527
      304js.md
  2. 511
      305js.md
  3. 623
      306js.md
  4. 563
      307js.md
  5. 531
      308js.md
  6. 499
      309js.md
  7. 435
      310js.md
  8. 443
      311js.md
  9. 439
      312js.md
  10. 591
      313js.md
  11. 487
      314js.md
  12. 425
      315js.md
  13. 397
      316js.md
  14. 471
      317js.md
  15. 467
      318js.md
  16. 375
      319js.md
  17. 487
      320js.md
  18. 392
      321js.md
  19. 399
      322js.md
  20. 395
      323js.md
  21. 495
      324js.md

527
304js.md

@ -0,0 +1,527 @@
# 304 一時帰還へ (1)
304暂时返回(1)
轟音を立てて岩棚の上に落下する岩塊。
巨响后落在岩架上的岩石。
響くハルカの叫び声。
回响着Haruka的呼喊声。
そして落下していく、ナオとナツキ。
然后落下,娜奥和夏树。
それらがほぼ同時に起こった。
那些几乎同时发生了。
崖の崩落時、岩棚の内側の庇状になっている通路側に避難して、難を逃れたハルカたちだったが、それはナオから、そして落下するナツキから距離を取る事でもあった。
山崖崩塌时,哈尔卡他们在岩架内侧的屋檐状通道边避难,逃过了灾难,但那是从那奥和落下的海枣之间的距离。
「ナ、ナオお兄ちゃんが、落ちちゃったの!」
“娜奥,娜奥哥哥掉下去了!”
「わ、わわ、ど、どうしましょう!?」
“哇,哇,怎么,怎么办呢?”
血の気の引いた青い顔で、あわあわと慌てた様子を見せるメアリたちに、ハルカはフッと息を吐くと、静かに答える。
面对脸色发红、慌慌张张的玛丽们,Haruka呼了一口气,静静地回答。
「落ち着いて。ナオは落ちたわけじゃないわ。自分で跳んだの」
“冷静点。那奥并没有掉下去。是自己跳的”
「……何も考えずに跳んだりはしない?」
“……要不要什么都不想就跳?”
「えぇ。ナオは考え無しじゃない。それぐらいは信頼できるわ」
“诶。娜奥不是没有考虑过吗。这点我可以信赖”
声色こそ落ち着いて聞こえるものの、そんなハルカの顔色は悪く、その手は強く握りしめられている。
虽然声音听起来很平静,但是春香的脸色很差,紧紧地握着她的手。
そして、崩落した岩壁による土煙が晴れると同時に、岩棚の縁に駆け寄ると、下を覗き込んだ。
然后,在崩塌的岩壁上的土烟散开的同时,跑到岩架的边缘,向下看。
だが、そこに見えるのは白い水煙のみ。
但是,那里能看到的只有白水烟。
ナオとナツキの姿はまったく見えない。
根本看不到娜娜和枣的身影。
解っていた事だろうが、改めて現実を見せつけられ、ハルカがより強く拳を握る。
虽然这是已经明白的事情,但再次展现了现实,Haruka更加用力地握着拳头。
そんなハルカの拳を、隣に立ったユキがそっと握り、力を緩めるように撫でると、ハルカは首を軽く振って深呼吸すると、ユキの手を握り返した。
站在旁边的雪轻轻握着春香的拳头,像放松了一样地抚摸着,春香轻轻地摇了摇头,深呼吸后,握回了雪的手。
「落ち着いて、ね?」
“冷静点,对吧?”
「えぇ、解ってるわ。解ってる……」
“啊,我知道。我知道……”
ユキよりもむしろ自分に言い聞かせるように繰り返すハルカに、後ろから声が掛かった。
比起雪,更像是对自己说的那样反复的遥,从后面传来了声音。
「どうだ?」
“怎么样?”
その声にハルカが振り返ると、そこにはいつの間にか降りてきていたトーヤが立っていた。
听到这个声音,春香回头一看,不知什么时候下来的火炬就站在那里。
「トーヤ……早かったわね」
“早啊。”
「そりゃな。あんな状況だからな。即座に降りて来たさ。縄梯子は、あの下だがな」
“那是当然的。因为是那样的状况啊。我马上就下来了。绳梯在那下面”
困ったように背後を指さしたトーヤは、深くため息をつく。
困惑地指向背后的火炬,深深地叹了一口气。
先ほど崩落したのは、縄梯子を固定していた部分であり、そこがそのまま落下すれば、縄梯子がその下敷きになるのは当然だろう。
刚才塌落的是固定绳梯的部分,如果那里就那样落下的话,绳梯就成为其下面的铺垫也是理所当然的吧。
もちろん、一部は見えているのだが、回収するためにはトーヤの身長よりも高い岩塊をどかせる必要がある。
当然,虽然能看到一部分,但是为了回收的话,必须要搬开比Toya的身高还要高的岩石块。
「どうする? 一番長いロープを使って、オレが一気に降りてみようか?」
“怎么办?用最长的绳子,我一口气下来看看吧?”
「それは……」
“那是……”
真剣なトーヤの顔と崖下を見比べ、暫し瞑目したハルカはゆっくりと首を振った。
与认真的TOYA的脸和崖下相比,暂时闭上眼睛的Haruka慢慢地摇了摇头。
「ナオがいない状況で、それはすべきじゃないわね。【索敵】の方はトーヤもできると思うけど、フライング・ガー、それに未知の敵。リスクが高すぎる」
“在娜奥不在的情况下,那是不应该的我想索敌也可以进行TOYA,但是飞行手,还有未知的敌人。风险太高了”
「そうか。――落ち着いているな?」
“这样啊。——冷静吗?”
「それが私の役目と自認してるから。ここで取り乱すようじゃ、ナオにも顔向けできないわ」
“我自认为那是我的职责。如果在这里慌乱的话,我也没脸面对娜奥”
そう言いながら、ハルカは気を落ち着かせるように自分の左手、その薬指のあたりを撫でる。
一边这样说着,春香一边平静地抚摸着自己的左手和无名指。
「あたしとしては、多少は良いと思うけどね。それでハルカ、ナオは考えがあって行動した、と言ってたけど……?」
“对我来说,多少有点好。然后春佳,娜娜说是有想法才行动的……?”
「えぇ。この階層がこんな状況だと解った時点で、私とナオは、かなり力を入れて『空中歩行ウォーク・オン・エア』の練習をしてたの。まだ不完全だけど、落下速度を緩めるぐらいの事はできるはずよ。――私の方が得意だから、本当は私が跳ぶべきだったんだけど」
“诶。在知道这个阶层是这样的情况的时候,我和那奥相当努力地练习了《空中步行》。虽然还不完全,但是应该可以减缓下落速度的。——因为我比较擅长,所以其实我应该跳”
「場所が悪かったよね。それにハルカ、ナツキの二人と、それ以外とに分かれると、バランスが悪いから、ナオが行って正解じゃないかな?」
“地方不好啊。而且,如果分成Haruka、natsuki两个人和除此之外的两个部分的话,因为平衡感不好,所以nao去了不是正解吗?”
「そうだよな。時空魔法使いと光魔法使い、ちょうど二人ずつに分かれたわけだろ? 不幸中の幸いってヤツだろ。ナオの転移魔法ですぐに戻ってこられるんじゃねぇ? 生きていれば」
“是啊。时空魔法使和光魔法使,正好分成了两个人吧?这就是不幸中的幸福吧。娜奥的转移魔法不是马上就能回来吗?如果活着的话”
「トーヤお兄ちゃん!!」
“托亚哥哥
「トーヤさん、酷いです!」
“Toya先生,太过分了!”
「うぐっ!」
“好痛!”
不必要な言葉を付け足したトーヤに、即座に年少組二人から抗議が入った。
在加上了不必要的话的TOYA,立刻遭到了两个年轻组的抗议。
言葉だけじゃなく、物理的にも。
不仅是语言,物理上也。
子供のパンチと言うにはちょっと力強いその威力に、トーヤは少しうめき声を漏らし、腹を押さえる。
对于孩子的拳头有点强大的威力,Toya发出了一点呻吟,压住了肚子。
鎖帷子だけに、衝撃に対してはそこまで強くないのだ。
正因为是锁子,所以对冲击没那么强。
「まぁまぁ、二人とも。トーヤも悪気は無いんだから……無いわよね?」
“嘛,两个人都是。Toya也没有恶意……没有吧?”
ちろり、とハルカから視線を向けられ、トーヤはブンブンと頭を高速で上下に振る。
小罗,小遥把视线投向了小遥,小塔砰的一声,头高速上下摆动。
「まったく。トーヤはタイミングが悪いんだから。……とりあえず、ここに転移ポイントを埋めておこうかな。もしかしたら、入口の方へ戻ってくるかもしれないけど」
“真是的。因为火炬时机不好。……总之,先把转移点埋在这里吧。也许会回到入口”
「そうね。一先ずはここで待ってみましょう」
“是啊。暂且先在这里等一下吧”
「そいじゃ、オレは縄梯子を掘り起こすかぁ。壊れてなければ良いんだが……」
“那我就挖起绳梯来。要是没坏就好了……”
「チェックは必要でしょうね、ワイヤーとは言っても、岩の下敷きになってるわけだし」
“检查是必要的吧,虽说是钢丝,也应该是岩石的垫。”
「トーヤ、頼める? 本当は、あたしの魔法を使うのが良いんだろうけど……」
“托亚,可以拜托你吗?其实,使用我的魔法比较好……”
「任せろ。魔力は温存しないとな。一番デカい岩は厳しいが……砕けなかったらその時は頼む」
“交给我吧。魔力必须保存。最大的岩石虽然很严峻……如果不碎的话就拜托你了”
「了解」
“了解”
「ミーも手伝うの」
“我也帮忙。”
「私も手伝います」
“我也来帮忙。”
「おう。それじゃ、手を詰めたりしないように気を付けてやっていこうな」
“哦。那就注意不要把手塞住了”
崩れてきた大きな岩は幅一メートル、高さ二メートルほどもあるが、大半は一抱えほどの岩。
崩塌的大石头宽一米,高两米左右,大部分是一抱左右的岩石。
そんな岩でも、バランスが崩れて手足の上に落ちれば、骨折は免れない。
即使是那样的岩石,如果失去平衡掉在手脚上的话,也免不了骨折。
まずは全体を見て、どこから手を付けるべきか、と考えるトーヤに、ハルカから声が掛かった。
首先看全体,从哪里开始着手考虑的Toya,从Haruka那里得到了声音。
「トーヤ、間違ってもその岩、下に投げたりしないようにね?」
“Toya,就算弄错了也不要把那块岩石扔下去吧?”
「――おっと、そうだったな。うん。もちろん解っているぞ?」
“——哦,是啊。嗯。当然知道啦?”
そうだった、とか言いながら、解っているも無いと思うが、ハルカはその事にツッコミはせず、腕を組んだままじっと崖の下を見ている。
虽然说是这样,但我想也不是很清楚,Haruka对这件事不吐槽,而是抱着胳膊一直盯着悬崖下看。
そんなハルカの様子に、トーヤとユキは顔を見合わせ、無言で肩をすくめると、メアリたちと手分けして、岩を通路の方へと移動させていく。
面对这样的春香,托亚和小雪面面相觑,默默地耸起肩膀,和玛丽他们分开,让岩石向通道移动。
そして一番大きな岩に関しては、トーヤが蹴り倒した事で二つに割れ、何とか魔法を使わずに対処する事ができた。
而且关于最大的岩石,因为Toya踢倒了,所以分成了两块,总算不用魔法就能对付了。
そうやって回収した縄梯子ではあったが……。
虽然是这样回收的绳梯……。
「少し、怪しいか?」
“有点奇怪吗?”
「うん。これに命を預けるのは、ちょっとだけ不安かも?」
“嗯。把命存在这里,可能有点不安?”
左右のワイヤーが切れていたりはしないのだが、足を乗せる金属製の横木、これが何カ所か曲がり、ワイヤーにも傷が付いているため、安全性に関しては少々疑問がある状態になっていた。
左右的电线虽然不会断开,但是放在脚上的金属横木,有好几处弯曲,电线也有损伤,所以在安全性方面多少有些疑问。
「これは補修――」
“这是修补——”
「しっ!」
“嘘!”
縄梯子を検分していたユキとトーヤの会話を、ハルカが口に指を当て、鋭く制す。
春香用手指指着检查绳梯的雪和TOYA的对话,锐意制止。
ピーーッ、ピーーッ。
皮、皮。
「来た!」
“来了!”
聞こえてきたのは甲高い笛の音。
听到了尖锐的笛声。
「二回。無事みたいだね!」
“两次。好像没事吧!”
ユキがほっと息を吐き、ハルカの険しい顔も少し緩む。
雪舒了一口气,Haruka险峻的脸也稍微松弛了。
「ええ。笛、役に立ったわね」
“是的。笛子,很有用呢”
「ナオが提案した時は、使わねぇと思ったんだけどなぁ……」
“nao提议的时候,我以为不会用……”
ナオの提案によって、万が一にはぐれた場合に備え、各自が持っている笛。
根据直人的提议,为了以防万一,各自拿着笛子。
それを鳴らす数によって、意思疎通が図れるようにハルカたちは事前に合図を決めていたのだ。
根据鸣响的数量,为了能实现意思的沟通,Haruka他们事先决定了信号。
原始的にも思えるが、通信魔法なんて便利な物は無いので、実のところ、笛というのは案外優秀な通信手段である。
虽然也可以认为是原始的,但是没有通信魔法之类便利的东西,实际上,笛子是意想不到的优秀的通信手段。
キロ単位で音が届く上に、きちんとした物を作ればかなり音が響く。
不仅能以千公里为单位听到声音,而且如果能制作出像样的东西的话,声音会很大。
今も滝の轟音が聞こえる中で、しっかりと届いているのだから、その機能性は十分と言える。
现在也能听到瀑布的轰鸣声,能够很好地传达到瀑布,所以可以说其功能性非常好。
ちなみに、彼女たちが決めていた合図は、三回がSOSの要救助、二回が無事を知らせる合図、一回がただの合図。
顺便说一下,她们所决定的信号是三次SOS的要救助,两次是安全通知的信号,一次只是信号。
それ以外、モールス符号のように長短で何種類か決めている合図もあるのだが、それをある程度でも覚えているのはハルカぐらいで、ナツキやユキですら対応表を見なければさっぱり解らないという状態である。
除此之外,虽然也有像摩斯符号那样长短决定了几种的信号,但在某种程度上也能记住的只有Haruka(Haruka),就连枣树和雪(yuki)如果不看对应表的话就完全不明白。
「でも、良かったの!」
“但是,太好了!”
「はい! ――あ、返答しないと!」
“是!——啊,不回答的话!”
「そうね! えっと……トーヤ、お願いできる?」
“是啊!嗯……托亚,可以拜托你吗?”
「おう。二回で良いんだよな?」
“哦。两次就可以了吧?”
「えぇ」
“诶?”
笛を取りだしたトーヤがそれを手に、ハルカに確認を取ると、彼女はすぐに頷いた。
取出笛子的火炬手拿着,向Haruka确认后,她马上点了点头。
「それじゃ……」
“那么……”
トーヤが大きく息を吸い込み、聞こえてきた笛の音と同様、二回大きく吹き鳴らす。
火炬大口吸气,和听到的笛声一样,大吹两次。
「ふぅ……。これでしばらくすれば、戻ってくるか」
“呼……。这样过一会儿,会回来吗?”
「たぶんね! 笛が聞こえる距離なんだから、ナオならナツキを連れて転移できるはずだもん」
“大概吧!因为是能听到笛子的距离,所以如果是直人的话应该可以带着枣树转移的”
力強く言ったユキに、ハルカも少し安心したように息をついたわけだが……。
对强有力地说了的yuki,Haruka也应该稍微放心地呼吸了……。
「来ないじゃない!」
“你不是不来吗!”
「いや、それをあたしに言われても困るんだけど……」
“不,就算我这么说我也不好办……”
最初の一、二分は機嫌良さそうに待っていたハルカだったが、それを過ぎると少し焦燥感を浮かべて足を動かし始め、五分を過ぎてついに我慢が切れた。
最初的一、二分看起来心情很好地等着的Haruka,过了那个之后稍微浮现焦躁感开始动脚,过了五分钟终于忍耐断了。
「どういう事? もしかして、ナオの魔力不足……?」
“怎么回事?难道说,娜奥的魔力不足……?”
「それもあり得るかもね。『空中歩行ウォーク・オン・エア』ってまだ不完全なんでしょ? 魔力消費もバカにならないよね」
“这也是可能的。”空中步行街还不完全吧?魔力消费也不可小看啊”
分不相応の魔法を使うと、しばらく動けなくなるほど魔力を消費してしまう事は、魔法使い組には良く知れた事。
如果使用了与己不相称的魔法,就会暂时无法动弹,消耗了魔力,这在魔法使组里是很清楚的事情。
その事をハルカも思い出す。
我也想起了那件事。
「なら、当分は戻って来られない……?」
“那暂时回不来了……?”
「ハルカさん、笛で二回の合図があったんです。そこまで心配しなくても大丈夫では?」
“Haruka,笛子发出了两次信号。不必那么担心吧?”
「ナオお兄ちゃんとナツキお姉ちゃんなら、きっと大丈夫なの! トーヤお兄ちゃんとは違うの!」
“娜奥哥哥和夏琪姐姐的话,一定没问题的!和Toya哥哥不一样!”
「……そうよね」
“……是啊。”
年少組に諭され、再び落ち着きを取り戻すハルカに対し、トーヤは愕然と顎を落とす。
面对被少年组教诲,再次恢复平静的Haruka,Toya愕然地垂下了下巴。
「何という逆の信頼感! オレってそんな扱い!?」
“真是完全相反的信赖感!我就是那样的待遇
「魔法が使えるかどうかって事でだよ。ね、ミーティア?」
“要看能不能使用魔法。喂,米蒂亚?”
「え? ……う、うん! そうなの!」
“诶……嗯,嗯!是吗!”
ユキに訊ねられ、慌てたようにミーティアが頷く。
被雪问到,米蒂亚慌张地点了点头。
きちんと空気が読める幼女。さすがである。
能很好地察言观色的幼女。不愧是。
「絶対違うし!」
“绝对不对!”
だが、残念ながらトーヤには通じなかったらしい。
但是,很遗憾,好像没有通到Toya。
当たり前である。
理所当然。
「……まぁ、オレが落ちるよりも、確実に生存確率は高いと思うけどよ~」
“……嘛,我觉得比起我的堕落,确实生存概率更高呢~”
少し不満そうながら、冷静さや状況判断に関して、ナツキたちに勝っているとの自信は無いのか、トーヤはぼやきつつも、それ以上は言わず、崖の上を見上げた。
虽然有点不满,但是关于冷静和状况判断,没有自信能战胜夏树他们吗?托亚一边发牢骚,一边不说更多的话,一边仰望着悬崖。
「ナオたち、もしかして、入口の方へ戻ったんじゃないか? これを終えたら、二〇層に戻るって話してただろ?」
“娜奥他们,难道不是回到入口了吗?”?你不是说过结束后会回到二十层吗?”
「その可能性もあるわね。ユキ、お願いできる?」
“也有这种可能性。小雪,可以拜托你吗?”
ハルカは『できる?』と質問の形式を取っているが、その視線はむしろ『できないとは言わせない』である。
Haruka说“可以吗?”虽然采取了这样的提问形式,但其视线反而是“不能说不行”。
そんな視線を向けられたユキは、コクコクと頷き、肯定するのみ。
面对这样的目光,雪只能深深地点头,肯定。
「が、頑張る! 魔力は少ないけど!」
“但是,加油!虽然魔力很少!”
すぐにユキの周りに全員が集まり、ユキが魔法を発動させようと、目を瞑り、意識を集中する。
全体成员马上聚集在雪的周围,雪为了发动魔法,闭上眼睛,集中意识。
だが――。
但是——。
「……あれ?」
“……咦?”
「どうしたの?」
“怎么了?”
目を開けて不思議そうに、そして少し焦ったように小首を傾げたユキに、不安そうに眉を寄せたハルカが訊ねる。
看着睁着眼睛不可思议地,然后有点着急似的微微歪着头的雪,不安地皱起眉头的遥问。
「えっと……転移、できない、かも?」
“嗯……转移,可能不行?”
乾いた笑いを浮かべて、ユキはそう答えた。
浮起干燥的笑容,雪这样回答。

511
305js.md

@ -0,0 +1,511 @@
305 一時帰還へ (2)
305暂时返回(2)
「転移できないって……魔力が足りないって事じゃないのよね?」
“不能转移……不是魔力不足吗?”
「うん。それとの違いは判るから。転移ポイントの位置は認識できるけど、届かないというか……あ、ある意味では魔力が足りないのかも?」
“嗯。我知道和那个的区别。虽然可以识别转移点的位置,但是传达不到……啊,从某种意义上来说可能魔力不足?”
「つまり、どういう事?」
“也就是说,怎么回事?”
少しイライラしたように先を促すハルカに、ユキは少し考えて答えた。
雪稍微思考了一下,回答了似乎有点焦躁的遥。
「えっと、解りやすく言うなら、普段の転移が無風状態とするなら、今転移しようとした時には、向かい風二〇メートルって感じ? 大量の魔力を使えば何とかなるかもだけど、かなりキツい、かな」
“呃,通俗易懂地说,如果平时转移是无风状态,现在转移的时候,感觉是逆风20米?如果使用大量的魔力的话可能会有办法,但是相当厉害吧”
「うーむ、通信のジャミングみたいなものか?」
“嗯,是类似通信的干扰吗?”
「そんな感じかも? 一つ上の岩棚ぐらいなら届きそうだけど、この状況で、転移ポイント無しに跳ぶのは怖いかな。万が一にも数メートルずれたら、真っ逆さまだから」
“可能是这种感觉吧?如果是上面一个岩架的话应该能够到,但是在这种情况下,没有转移点的跳跃会很恐怖吧。万一偏离几米,就会完全颠倒过来”
岩棚部分はある程度の広さがあるが、それ以外の通路部分は二メートルもないわけで。
岩架部分虽然有一定的面积,但是其他的通道部分却不到两米。
ユキの言うとおり、五人を同時に転移させて少しでもずれれば、誰かが落下する確率は決して低いとは言えないだろう。
正如雪所说,如果五个人同时转移,稍微偏离一点的话,谁落下的概率绝对不算低吧。
「確実なのは、岩壁を登っていく事だろうが、その岩壁が崩落したわけだしな……どうする、ハルカ?」
“确实是要登上岩壁的,但是那岩壁崩塌了……怎么办,Haruka?”
「――え?」
“——啊?”
「おいおい、しっかりしてくれよ? お前はオレたちの冷静担当だろ?」
“喂喂,振作点吧?你是我们的冷静负责人吧?”
「えぇ、解ってる。解ってるけど……」
“啊,我知道。我知道……”
そう言いながらも、不安そうに目を泳がせるハルカに、メアリとミーティアが意外そうな表情を浮かべる。
虽然这样说,但是看着不安的眼神游动着的遥,玛丽和米蒂亚露出了意外的表情。
「こんな、ハルカお姉ちゃんは珍しいの……」
“这样啊,Haruka姐姐真少见啊……”
「いつも冷静ですからね」
“因为总是很冷静。”
「あー、うん、ハルカ、地味にナオに依存しているからな」
“啊,嗯,Haruka,我只是单纯地依赖着你。”
「冷静担当の双璧、ナツキもいないしね」
“冷静担当的双璧,也没有枣呢。”
「そうそう。残っているのは、オレたち賑やかし担当」
“对了对了。剩下的是我们热闹的负责人”
「だよねーって、誰が賑やかし担当やねん!」
“说起来,谁来负责热闹啊!”
トーヤのボケに、ビシリッとツッコんだユキに、ハルカも少し頬を緩める。
面对托亚的装傻,小雪咯吱咯吱地吐槽,小春也稍微放松了一下脸。
「そうね。しっかりしないとね。まずは……一度戻りましょう」
“是啊。不好好做的话。首先……先回去一次吧”
少し考えてハルカの出した結論に、ミーティアが目を丸くする。
稍微思考一下,对于Haruka得出的结论,米蒂亚瞪大了眼睛。
「ナオお兄ちゃんたちの方に行かなくても良いのです?」
“不去娜奥哥哥那边也可以吗?”
「元々、ここに降りた後は引き返す予定だった。つまり、先に進める余力が無かったという事。更に二人がいない状態では余計に進めないわ」
“原本,我下到这里后就打算回去。也就是说,没有前进的余力。再加上两个人不在的情况下就更不能进行了”
「冷静に考えればそうなるよな」
“冷静思考的话就会变成这样吧。”
言外に、ナオとナツキの安全を考えなければ、と匂わせるトーヤにハルカは努めて表情を変えずに頷く。
言外之意是,如果不考虑娜奥和夏树的安全的话,哈尔卡努力点头同意。
「二人の持つ食料は、十分にあるわ。間違っても飢え死には無い。ナオがいれば【索敵】と時空魔法による防御ができるし、ナツキの治癒魔法で怪我に関しても不安は少ない。私たちが一度態勢を立て直すだけの余裕はあるわ」
“两个人拿的食物足够了。错了也不会饿死。有娜奥的话可以用【索敌】和时空魔法防御,用枣树的治愈魔法对于受伤也不太担心。我们有足够的时间重整旗鼓”
確証の無い希望的観測なのだが、敢えてそれを指摘する者はいない。
虽然是没有确凿证据的希望性观测,但没有人敢指出。
「ま、二人の頑張りに期待するしかないよな。オレたちはオレたちで、対応が必要な状況だし……どうする? この岩壁を登るのか?」
“嘛,只能期待两个人的努力了。我们是需要我们来应对的状况……怎么办?要爬这个岩壁吗?”
「できそう?」
“可以吗?”
ハルカの問いに、トーヤは頷きつつも、少し顔をしかめて辺りを見回す。
对于Haruka的提问,Toya一边点头,一边皱起眉头环视周围。
「やれと言われればやるが……ちょっと暗くなってきたな」
“如果让我做的话我就做……不过天稍微黑了点。”
「明るさだけなら、『光ライト』で対応できるけど、どう考えても良い的、よね」
“如果只是亮度的话,可以用‘光照’来对应,但是怎么想都可以。”
「うん。暗くなると別の魔物が、という危険性もあるわけだし」
“嗯。暗了的话其他的魔物也有这样的危险性”
冷静に考えて、崩落した後の岩壁を薄暗く手元も不確かな状態で登るのは、かなり危険である。
冷静地思考,以昏暗的手也不确定的状态攀登崩塌后的岩壁是相当危险的。
その事はハルカも理解しているのだろう。
那件事Haruka也理解吧。
すぐに頷いて、別の案を出す。
马上点头,提出别的方案。
「今日の所は野営するしかないでしょうね。幸いと言って良いのかは判らないけど、快適テントは私のマジックバッグに入っているし」
“今天的地方只有露营了吧。虽然不知道该不该说幸运,但是舒适的帐篷在我的魔术包里”
魔道具であるテントの中に入ってしまえば、風や気温、湿度を気にせずに身体を休める事ができる。
如果进入了作为魔道道具的帐篷中,就可以不用在意风、气温、湿度,让身体休息。
難点は外で見張りをする人が、濡れた身体で風を身体に受ける事になり、なかなかにキツい事だが……。
难点是在外面监视的人会用湿了的身体迎风,虽然很辛苦……。
「気休めだけど、ユキ、土壁でも立ててくれる? 多少でも風が防げるでしょうし」
“放心吧,雪,能帮我立个土墙吗?多少也能防风吧”
「はーい。ちょうど、さっき落ちてきて岩が転がっているから、これを使って作っちゃうね」
“好的。正好,刚才掉下来的岩石在滚动,所以就用这个做了”
「トーヤはユキを手伝って。メアリは焚き火を、ミーティアは私とテントを立てましょう」
“Toya帮了小雪。玛丽点燃篝火,米蒂亚和我一起搭帐篷吧”
だいぶ立ち直ったらしく、テキパキと指示を出すハルカにトーヤたちは安堵しつつ、野営の準備を進めていく。
似乎已经恢复了不少,塔亚他们在对发出指示的Haruka放心的同时,开始了野营的准备。
「トーヤ、その岩はこっちに。この線に沿って並べて」
“Toya,那块岩石在这里。沿着这条线排列”
「おう。よいせっ!」
“哦。好吧!”
一定時間で消える『土壁アース・ウォール』に対し、『土操作グランド・コントロール』で変形させた土はそのままの形で残る。
相对于在一定时间内消失的“土墙地线墙”,因“土操作地线控制”而变形的土保持原样。
どちらが良いかは状況次第なのだが、今回ユキが使っているのは後者の方で、トーヤに並べさせた岩を少し変形させて、壁に作り直している。
哪个好要看情况而定,这次雪树使用的是后者,把在火炬上排列的岩石稍微变形,重新制作成了墙壁。
そうしている一番の理由は、魔力の残りが少ないためだろう。
这样做最大的理由是因为魔力的残余很少吧。
一瞬で作れる『土壁』ではあるが、一晩維持するために必要な魔力はかなりのものであり、今回の状況ではなかなかに厳しい。
虽然是一瞬间就能形成的“土墙”,但是维持一夜所需的魔力是相当大的,在这次的状况下相当严峻。
「えっと……ハルカさん、火を付けてもらえますか」
“呃……Haruka,能帮我点火吗?”
「あ、そうね。『着火イグナイト』」
「啊,是啊。『点火骑士”
そんな感じで魔法を活用しつつ、ハルカたちは比較的短時間で野営の準備を整えたのだった。
以这种感觉活用魔法的同时,Haruka他们在相对短的时间内做好了野营的准备。
「炎があって、温かいと、なんだか落ち着くね」
“有火焰,温暖的话,总觉得很平静。”
「そうね。これでお腹が膨らめば……フライング・ガー、焼いてみる?」
“是啊。这样肚子就膨胀了的话……炸牛肉,要不要烤一下?”
「……いいの?」
“……可以吗?”
状況を考えてか、口には出さないものの、魚が気になる様子のミーティアにハルカが訊ねれば、ミーティアは控えめながら、嬉しそうな表情を見える。
也许是考虑到了状况,虽然嘴上没有说出来,但是遥问了在意鱼的米蒂亚,米蒂亚一边控制着,一边露出高兴的表情。
「どうせ食事は必要だから。ユキ、手伝って」
“反正吃饭是必要的。雪,帮帮我。”
「了解~。これは、網が良いかな?」
“明白了。这个网好吗?”
ユキはちょいちょいと石を並べて、そこに熾火を入れると、マジックバッグから取りだした網をその上に載せる。
雪把石头摆好,在那里放上炽火,把从魔术包里取出的网放在上面。
その網の上に内臓を取り出して洗ったフライング・ガーを並べて、塩を振る。
在那个网上放上取出内脏洗过的飞行器,撒盐。
「こうやって見ると、完全にちょっと長めのトビウオよね」
“这样看来,完全是稍长的飞鱼啊。”
「うん……って、ハルカ、トビウオ料理した事あるの?」
“嗯……,Haruka,你做过飞鱼料理吗?”
「ええ。たまに売ってたわよ? 頻繁に見かける魚じゃないけど」
“是的。偶尔会有卖的哦?虽然不是常见的鱼”
普段スーパーで見かける丸身の魚と言えば、アジやサンマなどが一般的だろうが、ハルカの利用していたスーパーでは時折、トビウオやイナダ(小さいブリ)なども売られていたので、比較的料理する系女子高生だったハルカには、それらの魚を捌いて料理した経験も当然あった。
平时在超市看到的圆身鱼,一般都是竹荚鱼和秋刀鱼等,但是在Haruka使用的超市里,偶尔也有卖飞鱼和蝗虫(小鰤鱼),所以对于比较会做菜的女高中生Haruka来说当然也有处理那些鱼做料理的经验。
その時のトビウオと比べると、『若干、身がしっかりしているかも?』という印象こそあったが、その差は『誤差と言われれば誤差かも?』という程度でしかなかった。
和那时的飞鱼相比,“也许身体有点结实?”虽然有这样的印象,但其差别是“说是误差的话可能是误差?”只是这样的程度。
「青魚っぽいよね、どう見ても」
“很像青鱼,怎么看都像。”
「滝から飛んできたけど、捌いた感じは完全にそうよね」
“虽然是从瀑布飞过来的,但是感觉完全是这样。”
焼けていく魚を見ながら、ハルカとユキは首を捻る。
看着烤好的鱼,Haruka和yuki歪着头。
外見は完全に青魚だが、ハルカたちの知る青魚は海の魚であり、普通、川に生息はしていないのだ。
虽然外表完全是青鱼,但是Haruka他们所知道的青鱼是海鱼,一般不会在河里生活。
「でも、美味しそうなの!」
“但是,看起来很好吃!”
「はい。良い匂いです」
“是的。味道很好”
「かなり脂が乗ってるよな。普段食べてる川魚とはまた違う感じで美味そうじゃね?」
“很上油呢。和平时吃的川鱼感觉不一样,应该很好吃吧?”
「美味しければそれで良い、とは思うけどね。――うん、そろそろ良いわね。食べましょうか」
“我觉得只要好吃就好。——嗯,差不多好了。要吃吗?”
炭火で綺麗に焼けた魚をハルカが一人ずつに配ると、待ちきれないように即座に齧りついたのがミーティア。
Haruka一个人一个人地分发用炭火烤得很漂亮的鱼,为了不让它等得太久,她马上咬到了米蒂亚。
「いただきます! はぐっ! お、美味しいの~」
“我开动了!叶!哦,好吃吗~”
「こ、これは、なかなか……」
“这、这个、很……”
「おぉ、味があるな、この魚!」
“哇,真有味道啊,这条鱼!”
中骨すら気にした様子も無く、バリバリと食べる獣人たちに対し、ハルカとユキはマイ箸を取りだして、身を解しながら食べている。
对于连中骨都没有在意的样子,咯吱咯吱地吃的兽人们,Haruka和yuki拿出自己的筷子,一边解着身体一边吃着。
とは言っても、別に彼女たちが上品ぶっているわけでは無く、小骨などを取り分けて食べるには、そちらの方が都合が良いからなのだが。
话虽如此,她们并不是装得很文雅,要把小骨等分开吃的话,那是比较方便的。
「ちょっとだけ臭みがあるから、そこは青魚っぽいね」
“有点臭,那里像青鱼。”
「白身の魚に比べると、どうしてもね」
“和白肉鱼相比,怎么也吃不到。”
冷静に評価する二人に対し、尻尾も残さず丸ごと食べた獣人二人は、単純だった。
对于冷静评价的两人,没有留下尾巴整个吃掉的两个兽人很单纯。
「そうか? オレはそんなに気にならないけど」
“是吗?我倒没那么在意”
「いつものお魚も美味しいけど、これも美味しいの!」
“平时吃的鱼也很好吃,但是这个也很好吃!”
そしてメアリもまた、口から尻尾を飛び出させたまま、コクコクと頷いている。
而且,玛丽也从口中露出了尾巴,深深地点了点头。
「もちろん美味しいよ? でも、あたしとしては、干してみたいかな。丸干しみたいに。あごだしってのがあるんだから、そっちの方が臭みとか無くなりそう」
“当然很好吃哦?但是,作为我来说,还是想晾一下吧。像晒干一样。因为有咬下巴的,所以那边好像不会有臭味了”
「私もトビウオの干物って、食べた事、無いわね。上手く干せるのかしら?」
“我也没吃过飞鱼的干货呢。能晒好吗?”
「昔テレビで、サンマをまるごと干す干物を見た事あるから、大丈夫じゃないかな?」
“以前在电视上看到过把秋刀鱼整个晒干的干货,所以应该没问题吧?”
「まるごとって、そのまま? 開きもせず?」
“就这样吗?也不打开?”
「そう。ちなみに、内臓もそのままだった。それを焼いて食べるんだって」
“是的。顺便说一下,内脏也保持原样。据说是把那个烤着吃的”
ちなみに、あごだしに使う“あご”は、トビウオを焼き乾しにした物であり、そのまま干したりはしない。
顺便说一下,用于下巴的“下巴”是将飞鱼烤干后的东西,不会直接晾干。
“煮干し”もその名の通り、カタクチイワシなどを煮てから干した物。
正如其名,“煮干”是将鳀鱼等煮干后晒干的食物。
塩水に浸けてから干すだけの、アジの開きなどとは作り方が違うので、要注意である。
这和浸入盐水后晾干的竹荚鱼的打开方法不同,需要注意。
テレビでは重要な部分がカットされていたりするので、安易に信じるのは止めておいた方が賢明である。
因为电视上会把重要的部分删掉,所以不要轻易相信比较明智。
「まぁ、そのへんは落ち着いてからよね。今日のところは……後はおにぎりとスープぐらいで良い?」
“嘛,在这方面冷静下来之后。今天的话……还有饭团和汤之类的可以吗?”
「オレはもう一匹欲しい!」
“我还想要一只!”
「ミーも!」
“我也是!”
「わ、私も……」
“哇,我也是……”
「はいはい。ユキは?」
“是的是的。雪呢?”
「あたしはもう良いかな? スープとおにぎりだけちょうだい」
“我已经好了吗?请给我汤和饭团”
「そう。私もそれで良いか」
“是的。我也这样可以吗?”
ハルカはマジックバッグから取りだしたおにぎりを網の上に並べ、魚の処理を始める。
Haruka把从魔术包里取出的饭团放在网上,开始处理鱼。
その横で、ユキがスープを配り、おにぎりに醤油っぽいソースを塗ると、香ばしい匂いが周囲に漂い始める。
在旁边,yuki分发汤,在饭团上涂上酱油味的调味汁,香味开始飘到周围。
「……そのまま食べるのも楽で良いけど、こうして簡単な調理をするのも良いわね」
“……直接吃也很轻松,但是这样简单的烹调也很好呢。”
「うん、気が紛れると言うか、落ち着くと言うか……」
“嗯,说是心不在焉,还是说冷静……”
「ま、ハルカが落ち着いてくれて、オレとしては助かるぜ。こうして美味い料理も食えるしな?」
“嘛,Haruka能冷静下来,对我来说帮了大忙。这样也能吃到美味的料理吗?”
ニヤリと笑うトーヤに、ハルカは苦笑を浮かべ、焼き上がった魚をトーヤたちに差し出した。
面对笑嘻嘻的TOYA,Haruka露出苦笑,把烤好的鱼交给了TOYA他们。
「そうね。幸い、ナオの方にもナツキという料理番がいるから安心ね」
“是啊。幸好,直人也有叫枣的料理师,所以放心吧”
「これで状態が判ればなぁ。……ハルカ、その長い耳で、ナオと通信できたりしねぇ? ピピピって」
“如果这样就能知道状态就好了。……Haruka,用那个长耳朵,能和nao通信吗?皮皮皮”
「私の耳はアンテナじゃないわよ。笛を使って連絡を取り合っても良いけど、時間が掛かりすぎるし、敵を引き寄せる危険性を考えれば、現実的じゃないわよね」
“我的耳朵不是天线。虽然可以用笛子来联系,但是时间太长了,考虑到招引敌人的危险性,就不现实了”
「二回の後、何も聞こえてないから、問題は起きてないって事なんだよね?」
“两次之后什么都没听到,所以没发生什么问题吧?”
「そうね。基本的には各自で対応、って事になってるから」
“是啊。基本上是各自对应的”
まさか本当に必要になるとは思っていなかったハルカたちではあるが、一人はぐれた場合や、何らかの理由で分断された場合などの行動指針についても、話し合いは行っていた。
没想到真的需要Haruka他们,就一个人走散的情况、因某种理由被分割的情况等行动方针进行了协商。
今回のケースで言えば、一人ではぐれたわけではなく、直ちに命の危険がある状況ではない事が判っているため、それぞれが生還のために努力するというのが取り決めた方針。
从这次的情况来看,并不是一个人走散,而是立即判断出不是有生命危险的情况,所以决定各自为了生还而努力。
災害救助ではタイムリミットが四八時間とか、七二時間とか言われるが、彼らの場合、少なくとも動ける状況にあれば、マジックバッグもあるため、それは当てはまらない。
在救灾中,虽然说是限时四十八小时、七十二小时,但他们至少在能动的情况下,也有魔术包,所以不适用。
「ま、水も食料もある。ナツキの魔法で衛生、怪我、病気も心配ない。一年以上経っても生きていそうな安心感はあるよな」
“嘛,还有水和食物。使用枣树的魔法,不必担心卫生、受伤和疾病。即使过了一年以上也会有活着的安心感”
トーヤの言葉通り、そっち方面で『生存が絶望視』という事は無いのだが、ハルカは少し不満げに口を曲げる。
正如Toya所说的那样,虽然在那边没有“生存绝望”的事情,但Haruka多少有些不满地弯着嘴。
「私、そんなに掛けるつもり無いわよ?」
“我没打算挂那么多啊?”
「わーってるって。焦る必要は無いって、だけだよ。それこそ、必要であればレベル上げに励める程度にな」
“我在。没有必要着急,只是这样而已。正因为如此,如果有必要的话,也只能提高水平”
「まぁ……そうね。今は、私たちが無事に戻る方が先決よね。トーヤ、悪いけど最初の見張りお願いできる?」
“嘛……是啊。现在,我们能平安回来才是先决。火炬,不好意思,能请你先监视一下吗?”
「おう。次はハルカで良いんだよな?」
“哦。接下来是Haruka就可以了吧?”
「えぇ。ユキは魔力回復のためにも、休ませたいし」
“诶。雪为了恢复魔力,也想让她休息”
「ゴメンねー。あんまり残ってないから」
“对不起。因为没剩多少”
「気にするな。体力専門。それがオレだからな!」
“别在意。体力专业。那就是我啊!”
申し訳なさそうなユキに、トーヤはそう言って笑うと、サムズアップした。
对看起来很抱歉的小雪,托雅这样笑着,就杀青了。

623
306js.md

@ -0,0 +1,623 @@
# 306 一時帰還へ (3)
306暂时返回(3)
「敵だ!!」
“我是敌人
響いたトーヤの声に、即座に反応したのはハルカだった。
对回响着的TOYA的声音,立刻做出反应的是Haruka。
「ユキ! 『隔離領域アイソレーション・フィールド』!」
“小雪!”隔离领域隔离领域”
「う、うぇ? あ、『隔離領域アイソレーション・フィールド』」
“嗯,呃?啊,《隔离领域隔离领域隔离领域》
半ば寝ぼけながらではあったが、ユキの魔法はきちんと発動し、ハルカたちのテントを障壁が包み込む。
虽然半睡眼惺忪,但雪的魔法还是很好地发动了,阻挡住了遥他们的帐篷。
その直後、『カッカッ』と何かが当たる音が、テントの中にまで聞こえてきた。
紧接着,帐篷里也听到了“咔”的什么声音。
「出るわよ!」
“我出来了!”
「りょ、了解!」
“好,明白了!”
「「はい(なの)!」」
“是的!”
武器を掴んでテントから飛び出たハルカたちが見たのは、遠くを見据えて、厳しい顔で武器を構えるトーヤの姿。
抓住武器从帐篷里飞出来的Haruka他们看到了注视着远方,用严肃的表情准备武器的Toya。
だが、そんなトーヤも、しばらくすると息をフッと吐いて、身体の力を抜いた。
但是,那样的toya,过了一会儿也吐了一口气,放松了身体的力量。
「大丈夫らしい。反応は無い」
“好像没问题。没有反应”
「そう……というか、なに?」
“是吗……怎么说呢?”
「ほれ、それを見ろ。あとついでに、その壁の向こう側も」
「看,看那个。然后顺便说一下,那堵墙的另一边也是”
トーヤが指さした場所にあったのは、地面の上でビチビチと跳ねているフライング・ガー。
火炬指的地方是在地面上啪嗒啪嗒地跳跃的飞行器。
場所的に、先ほどユキが張った障壁にぶつかり、地面に落下したのだろう。
在地方上,可能是刚才碰上了雪树张开的屏障,掉到了地上吧。
「あ! こっちにもいっぱい刺さってるの!」
“啊!这边也刺了很多!”
驚きと喜びが混ざったような声で、壁の後ろに回ったミーティアが言葉を発する。
米蒂亚用惊讶和喜悦混杂在一起的声音,绕到墙壁后面说话。
「うわっ、ホントだ……。二〇匹以上いるよ……」
“哇,是真的……。有二十只以上呢……”
それに対し、同様に見に行ったユキの方は、『うげげっ』とでもいうような声である。
与此相对,同样去看的雪的声音是“呱呱”。
「これって、トーヤさんが気付かなかったら、かなり危なかったんじゃ……」
“这个,如果托亚没有注意到的话,是相当危险的……”
「ついでに言えば、ハルカの反応が早かったから、だな。良く、即座に対応できたな?」
“顺便说一下,因为Haruka的反应很快。很好,马上就对应好了吗?”
「えぇ、ちょっと眠りが浅かったから……。ユキもすぐに魔法を使ってくれたしね」
“呃,因为睡眠有点浅……。雪也很快就使用魔法了呢”
「そうか。おかげで、高価なテントも守れたわけだな」
「这样啊。多亏了你,才保住了昂贵的帐篷”
何故眠りが浅かったかなど、訊くまでもないことで、トーヤはそれ以上は言わず、ユキの方へと視線を向けた。
不用问为什么睡眠很浅,托亚没有再说下去,而是把视线转向了由纪。
「お前が作った土壁の存在も、かなり助かったぞ。見ての通り」
“你建造的土墙也帮了我很大的忙。正如所见”
「うん……。風よけのつもりだったけど、予想外の効果だったね」
“嗯……。本来是想防风的,但是效果出乎意料啊”
咄嗟の『隔離領域』によって守られたテントに対し、トーヤのいた場所はその範囲外。
与被瞬间的『隔离区域』保护了的帐篷相对,火炬所在的地方在那个范围外。
いくらトーヤが、事前に飛んで来るのを察知できたとしても、薄暗い中で二〇匹以上のフライング・ガーに対処することは難しかっただろう。
即使能察觉到火炬事先飞过来,在昏暗的环境中也很难对付20只以上的飞行器吧。
「死にはしなかったと思うが、怪我はしてたよなぁ、これが無ければ」
“我觉得我没有死,但是我受伤了,如果没有这个的话。”
「まさか、夜に襲撃があるとはね……。いえ、普通の魔物ならおかしくは無いんだけど」
“没想到晚上会有袭击……。不,如果是普通的魔物就不奇怪了”
「かなり悪質だよね~。昼間の経験があるから、通路や岩棚は安全と思っちゃうもん」
“性质相当恶劣呢。因为有白天的经验,所以觉得通道和岩石架是安全的”
「ええ。油断が無かったとは言わないけど、疲れて休んでいるところで、不意打ちとか……」
“是的。虽然不能说没有疏忽大意,但是累了休息的时候,突然打过来……”
壁を上り下りしなければ、空からの襲撃は無いと思わせておいて、夜になったら飛んで来る。
如果不爬下墙壁,让人觉得不会有来自天空的袭击,到了晚上就会飞来。
しかも、多少は羽ばたき音がするアローヘッド・イーグルに比べ、一切羽ばたかないフライング・ガーは、僅かな風切り音がする以外、ほぼ無音。
而且,与多少有点振翅声的Arroheade Eagle相比,完全没有翅膀的飞行·gar,除了有轻微的切风音之外,几乎没有声音。
夜に発見するのは、困難を極める。
晚上发现的话,是极其困难的。
「……こうなったら、しっかりと光を浮かべておいた方が良いかしら?」
“……这样的话,好好地让光浮起来比较好吧?”
「明るかったら、キラキラ光るの!」
“亮光的话,会闪闪发光的!”
テントから飛び出した時、素早くハルカが発動した『光ライト』の魔法。
从帐篷里飞出来的时候,Haruka迅速发动了“光之光”的魔法。
その光を、ミーティアが拾ったフライング・ガーの魚体で反射させる。
米蒂亚捡到的飞行器的鱼身反射了这道光。
凄く目立つわけでは無いが、青魚の事を“光り物”を言うように、それなりにキラリと光り、発見する助けになる事は間違いないだろう。
虽然并不是特别显眼,但是就像把青鱼说成是“发光物”一样,一定会成为闪闪发光、发现的帮助吧。
「そうね。滝の方向、少し離れた場所に『光ライト』を浮かべておきましょう。幸い、飛んで来る方向は固定されているようだし」
“是啊。在瀑布的方向稍微远一点的地方放上“光灯”吧。幸好飞来的方向好像是固定的”
「これで逆方向から飛んできたら、最悪だよな」
“这样从反方向飞过来的话,最糟糕了。”
やや茶化すように言ったトーヤに、ハルカが顔をしかめる。
面对说得稍微有些滑稽的TOYA,Haruka皱起了眉头。
「止めて。本当になりそうだから」
“停下来。因为真的是这样”
「いくら何でも、それは無いよ~。滝の上から飛んできた、ならまだ納得できるけど、反対側って空だよ? 突然、空中に生まれ落ちでもしない限り――」
“不管怎么说,那是不可能的。从瀑布上飞过来的话还可以接受,但是相反的一侧是天空哦?只要不突然从空中掉下来——”
あはは、と笑い、トーヤの言葉を否定したユキだったが、途中で沈黙して考え込んでしまう。
啊哈哈,笑着否定了TOYA的话的雪,中途沉默沉思起来。
「ダンジョン、なんだよね、ここ」
“地牢,这是什么?”
「そこまで理不尽じゃないでしょ。そんな事言ったら、今突然、頭上にダールズ・ベアーが出現する恐怖に怯えないといけないじゃない」
“没有那么不讲理吧。如果说了那样的话,现在突然,必须要害怕头上出现了黑熊的恐怖”
「そんな事があったら、圧死するな、オレたち」
“如果有那样的事,我们就不要压死。”
一般的なダールズ・ベアーの体重でも七トンオーバー。
一般的戴尔兹·贝勒的体重也超过了七吨。
トーヤたちのレベルが上がっていると言っても、そんな重量が、唐突に頭上から降ってくれば、支えられるはずもない。
虽说Toya他们的水平提高了,但是如果突然从头顶上降下来的话,也不会被支撑。
「ま、万が一、逆から飛んできても、土壁を背にしておけば大丈夫でしょ。トーヤ、良いタイミングだし、見張りを交代するわ。明日も大変だから、寝て」
“嘛,万一从反方向飞来的话,背着土墙就没问题了吧。火炬,时机很好,我会换岗的。明天也很辛苦,睡吧”
「そうか? じゃあ頼む」
“是吗?那就拜托了”
「えぇ、任せて。ユキたちもね」
「啊,交给我吧。小雪他们也是啊」
「ミーも――」
“我也是——”
「ミーは寝なさい。お姉ちゃんに任せて」
“我睡了。交给姐姐吧」
パッと手を挙げたミーティアに、メアリがその手を下ろさせながらテントへと背中を押す。
玛丽一边让举起手的米蒂亚把手放下来,一边把背推到帐篷里。
「でも……」
“但是……”
「ミーティア、明日以降も見張りは必要になるわ。だから、今日は寝なさい」
“米蒂亚,明天以后也需要监视。所以,今天就睡吧”
「解ったの……」
“我明白了……”
ハルカに諭され、ミーティアは耳を少ししょんぼりさせながら頷いた。
在Haruka的教诲下,Metia的耳朵稍微有些无精打采地点了点头。
「うん。それじゃ、もう寝て。特にユキは魔力の回復、しないといけないんだから。さっきのでまた使ったでしょ?」
“嗯。那就睡吧。特别是雪,魔力的恢复是必须的。刚才不是又用了吗?”
「なんだよねー。それじゃ、ハルカとメアリ、あとはよろしく~」
“什么啊。那么,Haruka和玛丽,还有请多关照~
そう言い置いてテントの中へ戻っていくユキたちを見送り、ハルカたちは焚き火の横に腰を下ろすと、その中に薪を追加したのだった。
春香等人目送着说完后回到帐篷里的雪,坐在篝火旁,在里面添加了柴火。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
翌日。
第二天。
ハルカたちは平穏な朝を迎えていた。
Haruka他们迎来了平静的早晨。
「結構真面目に警戒してたのに、何も無かったわね」
“明明很认真地戒备着,却什么都没有。”
「良いじゃないですか、ハルカさん。安全だったんですから」
“不是挺好的吗,Haruka。因为很安全”
若干不満そうなハルカに、メアリは苦笑を浮かべるが、悪戯っぽく笑ったハルカの次の台詞に、言葉を詰まらせる。
面对多少有些不满的春香,玛丽露出苦笑,但在恶作剧般笑着的春香的下一句台词中,她却哽咽着。
「でも、メアリは少し残念じゃないの? お魚の追加、無いわけだし?」
“但是,玛丽不是有点遗憾吗?又没有追加鱼?”
「うっ! た、確かにフライング・ガーは美味しかったですけど!」
“唔!确实,油炸食品很好吃!”
少し頬を染めるメアリだったが、その味を思い出したのか、少し沈黙して、チラチラとハルカの顔を窺いながら、遠慮がちに口を開く。
玛丽脸上稍微染上了一点颜色,可能是想起了那种味道,她稍微沉默了一下,一边看着春树的脸,一边客气地开口。
「……朝食もあれにしませんか?」
“……早饭也要那个吗?”
「ぷっ。え、えぇ、別に構わないわよ。焼きましょうか?」
“噗。嗯,呃,没关系的。要烤吗?”
「はい!」
“是的!”
思わず噴き出してそう応えたハルカに、メアリは嬉しそうに頷く。
面对忍不住笑了出来的遥,玛丽很开心地点了点头。
そしてハルカたちが魚を焼き始めてしばらく。
然后Haruka他们开始烤鱼不久。
その匂いに誘われたのか、最初に顔を出したのはトーヤ。
大概是被那种味道吸引了吧,最先露面的是TOYA。
その後にすぐに続いたのがミーティアで、ユキが出てきたのはその数分後。
之后紧接着的是米蒂亚,雪出现在几分钟后。
少々寝足りないのか、あくびをしながら起き出してくる。
可能是睡眠不足,一边打哈欠一边起床。
「おはよぅ~」
“早上好~”
「おはよう。ユキ、魔力は?」
“早上好。雪,魔力是?”
「ん~、何とか?」
“嗯~有什么办法吗?”
腕組みをしたユキは、自分の魔力を測るように首を捻りながら、そう答えた。
抱着胳膊的雪,像是在测量自己的魔力一样歪着头,这样回答。
「そう、良かったわ。ユキには頑張ってもらわないといけないんだから」
“是的,太好了。因为你必须要努力”
「あぁ、やっぱりあたしが頑張る事になるんだ?」
“啊,果然我会努力的?”
「昨夜の事があるからね。『隔離領域アイソレーション・フィールド』で背中を守ってないと、不安じゃない」
“因为有昨晚的事。”如果不在隔离领域隔离领域保护自己的后背的话,就不会感到不安”
「だよねー。そんな気がしてた」
“是啊。我有这种感觉”
少し肩を落としつつも、ユキは納得したように頷く。
虽然稍微垂下了肩膀,雪还是像理解了似的点点头。
上から下に降りる場合、ロープを使って一気に降りる事もできるが、壁を登ろうと思えば、当然その何倍も時間が掛かる。
从上到下的时候,可以用绳子一口气下来,但是要想爬到墙上,当然要花好几倍的时间。
特に今回は、昨夜の襲撃に加えて、岩壁の崩壊も経験しているのだ。
特别是这次,除了昨晚的袭击,还经历了岩壁的崩溃。
場所の選定にも慎重を期さざるを得ない。
选定场所也不得不慎重。
そんな状況でのファーストアタックが誰かと言えば、ユキ以外にはいないだろう。
在这种情况下,要说谁是第一个进攻的话,除了雪以外没有其他人了吧。
ユキが登り切ってしまえば、あとは縄梯子を使って素早く登る事もできるのだから。
如果雪已经爬完了,之后就可以用绳梯快速爬上去了。
「ユキお姉ちゃん! 早く、早く!」
“小雪姐姐!快点,快点!”
「ご飯、できてますよ」
“饭做好了。”
「はいはい、今行くねー」
“好的好的,我现在就去。”
待ちきれない様子のミーティアたちに苦笑しつつ、ユキは焚き火の側に腰を下ろした。
面对迫不及待的美蒂亚们苦笑着,小雪坐在篝火旁。
朝食後、警戒しつつ上へのアタックを開始したユキだったが、幸いな事にフライング・ガーやアローヘッド・イーグルが攻撃を仕掛けてくる事は無かった。
早饭后,yuki一边警戒一边开始了向上的攻击,不过,幸运的是没有飞翔·ger和arout·鹰开始攻击。
だからといって、昨夜の事を考えれば、『隔離領域』を使わず登るというのも危険性が高い。
尽管如此,考虑到昨晚的事情,不使用“隔离区域”而攀登也很危险。
慎重に足場を確保しつつ一つ上の岩棚へと至れば、その時点ですでにユキの魔力はほぼ枯渇。
慎重地确保脚手架的同时到达上面的岩架的话,那时雪的魔力已经几乎枯竭了。
休息を挟まずに先に進む事は難しかった。
不休息地往前走很难。
半日ほど休めば魔力も回復するが、昼夜問わずに行動できるはずもなく、安全性を考えれば一日に登れるのは二段ほど。
休息半天左右魔力就会恢复,但不可能不分昼夜地行动,考虑到安全性,一天就能爬上两级左右。
ハルカたちが二一層を脱出するまでには更に二度の野営を挟む事になる。
在Haruka他们逃出两层之前还要再插两次露营。
その間、夜の襲撃については続いていたが、魔力の余っているハルカが土壁を作っておく事で対処。夜の間に飛んできたフライング・ガーは、翌朝ミーティアによって、『お魚♪ お魚♪』と回収されるだけである。
在这期间,虽然关于夜晚的袭击仍在继续,但由于魔力过剩的Haruka预先筑起了土墙而采取了应对措施。晚上飞来的飞行器,第二天早上被mitia用“鱼♪鱼♪”回收。
そして三日目、ついにハルカたちは二〇層へと続く階段へと辿り着いた。
然后第三天,Haruka他们终于到达了通往20层的楼梯。
「何とか、ここまで戻って来られたな」
“总算回到这里了。”
「えぇ、なんとかね。ロック・スパイダーが復活していたのが、地味に面倒だったわね」
“嗯,怎么说呢。摇滚蜘蛛复活了,太麻烦了”
この一年で、ハルカたちも【索敵】スキルを覚え、トーヤの【索敵】はレベル3にまで上がっていたが、やはりナオに比べると低い。
在这一年里,Haruka他们也学会了【索敌】技能,Toya的【索敌】虽然上升到了等级3,但还是比Nao低。
身を隠しているロック・スパイダーを発見する事はできるものの、やはり気付くのは直前になってしまい、驚かされる事も多かったのだ。
虽然可以发现隐藏着身体的摇滚蜘蛛,但还是在意识到之前,被吓到的事情也很多。
「あたしたちも、少しは鍛えるべきかなぁ?」
“我们也应该稍微锻炼一下吗?”
「ユキはコピーして覚えたのよね? 今は?」
“小雪是复印后记住的吧?现在呢?”
「……レベル2」
“……等级2”
「高くないけど、サボってるとも言い難い、微妙なレベルね」
“虽然不贵,但很难说是偷懒了,真是微妙的水平啊。”
レベル1までであれば、【スキルコピー】で比較的容易に覚えられるユキではあるが、それ以上に上げようと思えば、それなりに努力が必要なのは言うまでも無い。
如果是等级1的话,用【技能复制】比较容易记住的雪,但是如果想提高到那个以上的话,当然需要相应的努力。
ナオやトーヤに任せておけば安心な状況で、一応でもレベルが上がっているのだから、決して怠けていたとは言えないだろう。
只要交给娜奥和托亚就可以放心了,但水平总算提高了,所以绝对不能说是偷懒了吧。
「そんな事言うけど、ハルカはどうなの?」
“我这么说,你觉得Haruka怎么样?”
「私? 私はレベル1」
“我?我是等级1”
「ハルカの方が低いじゃん!」
“Haruka比较矮嘛!”
「コピーの有る無し、解るわよね? 第一、あんまり鍛えたら、ナオの出番が無くなるし? 配慮よ、配慮」
“有没有复印件,你知道吧?第一,如果太锻炼的话,就没有NAO的出场机会了?关怀啊,关怀啊”
「むぅ……」
“呜呜……”
しれっと言うハルカに、ユキは唸るのみ。
对口若悬河的遥,雪只沉吟。
実際の所、動物的感覚のあるトーヤやコピーが可能なユキに比べ、ハルカが【索敵】スキルを得る事は難しい。
实际上,与有动物感觉的火炬和可以复制的雪相比,Haruka很难获得【索敌】技能。
難しいのだが、現状ではナツキも【索敵 Lv.1】を持っているので、真面目に冒険者をしていれば、それなりに得られるスキルではある。
虽然很难,但现状是夏树也有【索敌LV.1】,如果认真地做冒险者的话,就可以获得相应的技能。
「あの……以前から少し気になってたんですが、レベルとかって、何ですか?」
“那个……以前就有点在意,水平是什么?”
「えっと……」
“呃……”
メアリからそう訊ねられたハルカは、トーヤとユキに視線を向け、彼らが頷くのを確認して口を開いた。
被玛丽这样问到的Haruka,把视线转向了toya和yuki,确认了他们点头后开口了。
「私たちって、アドヴァストリス様の加護のおかげで、自分の持っている技術の巧拙が数値として判るのよ」
“我们啊,多亏了阿德瓦斯特里斯先生的保佑,才知道自己所拥有的技术的巧拙是数值。”
ハルカの言葉に、メアリとミーティアは揃って首をかしげる。
面对Haruka的话,玛丽和米蒂亚都歪着头。
「それって……頑張って剣の練習をしたら、レベル1がレベル2になった、と判るって事ですか?」
“那是……努力练习剑的话,就能知道等级1是等级2了吗?”
「まぁ、そういう事ね」
“嘛,就是这么回事。”
実際にはそこまで単純な物では無く、自分の持っている能力すべてを把握できるというメリットもあるわけだが、ハルカは概ね間違っていないと頷いた。
实际上并不是那么简单的东西,也有能掌握自己所有能力的优点,但是Haruka大致上没有错。
だが、ミーティアたちにとっては、それだけでも十分に驚くに値する事だったようだ。
但是,对于米蒂亚他们来说,仅仅是这样就足够值得吃惊了。
「それって、とっても便利なの!」
“那个非常方便!”
「わ、私たちも頑張ってお祈りしたら、加護を頂けるでしょうか!?」
“哇,如果我们也努力祈祷的话,能得到庇护吗?”
目を輝かせる二人に、ユキは視線を逸らして言葉を濁す。
雪把视线转移到目光闪烁的二人身上,含糊其辞。
「あー、それはどうかなぁ? そのへんは、神様の御心次第、かも?」
“啊,那个怎么样?这一点也许要看神的心意了?”
「そ、そうですよね。不純な気持ちがあったら、加護なんてもらえませんよね! 真摯にお祈りしてみます!」
“是的,是这样的吧。如果有不纯的心情的话,是不能得到庇护的吧!我会认真祈祷的!”
あの神様的に、真摯かどうかは関係ないんじゃ、などと思ったユキではあったが、そんな事を言えるはずも無く、曖昧に頷くのみ。
对于那个神来说,与是否真挚无关的雪,却不可能说出那样的话,只是暧昧地点头。
「まぁ、今はそれより、早く戻ろうぜ? しっかり準備して、ナオたちを助けに行かないとな?」
“嘛,现在比起那个,早点回去吧?要好好准备,去帮助娜奥他们吗?”
「あ、そうですよね。すみません、そんな事、気にしている場合じゃなかったです」
“啊,是啊。对不起,我不是在意那种事的时候”
しょんぼりと少し顔を伏せたメアリの頭を、ハルカが微笑みながら撫でた。
春香微笑着抚摸着脸上无精打采的玛丽的头。
「いいえ、気になるのは当然だと思うから。これからも気になった事があれば、気軽に聞いて良いからね?」
“不,我觉得在意是理所当然的。今后如果有在意的事情的话,可以随便问吧?”
「はい、解りました」
“好的,我明白了。”
その立場からか、遠慮がちなところがあるメアリと、あまり遠慮していないようでやはり空気は読むミーティア。
也许是站在这种立场上吧,有着很客气的地方的玛丽,似乎不太客气,但还是会察言观色的米蒂亚。
そんな二人が、素直に疑問を口に出すようになったのは良い変化かも、とハルカたちは頷き合った。
那样的二人,变得坦率地说出疑问说不定是好的变化,Haruka们互相点头。
「それじゃ、20層に戻るか」
“那么,我们回到20层吧。”
「えぇ、そうね」
“啊,是啊。”
トーヤを先頭に、五人は階段を上り始める。
以火炬为首,五个人开始上楼梯。
その最後を歩くハルカは、階段に足を掛けたところで一度振り返り、崖の下に目を向ける。
走在最后一步的Haruka,在登上楼梯的时候回头看了一次,目光转向了悬崖下。
そこにあるのは、霧によって閉ざされ、底すら判らない深い谷。
在那里的是被雾封住,连底都看不清的深谷。
「ナオ、ナツキ、急いで戻ってくるからね……」
“娜奥、夏琪,我会尽快回来的……”
ハルカはそう呟くと、後ろ髪を引かれる思いを振り切るように階段を駆け上がった。
Haruka这样说着,就好像甩开恋慕的头发似的跑上了楼梯。

563
307js.md

@ -0,0 +1,563 @@
307 落下 (1)
307掉落(1)
落下するにつれて濃くなっていく水煙。
随着落下而变浓的水烟。
視界は急激に悪化していた。
视野急剧恶化。
異常に深い谷。
异常深谷。
それが良かったのか、悪かったのか。
那个好还是坏。
だが、それだけの高さがあったおかげで、俺たちは地面に激突する前に、体勢を整えることができていた。
但是,正因为有了这么高,我们才能在与地面激烈碰撞之前调整好姿势。
ナツキが俺の首に手を回し、俺もナツキの腰を引き寄せて支える。
枣把手放在我的脖子上,我也拉着枣的腰支撑着。
「ナオくん! 転移は!?」
“娜奥君!转变是一种腐蚀
「無理!」
“不行!”
色々と便利な転移魔法ではあるが、この魔法、現在地と転移先を把握して発動する必要がある。
虽然是各种各样方便的转移魔法,但是有必要掌握这个魔法,现在所在地和转移目的地来发动。
だが今の俺たちは、秒以下で位置が変化している状態。
但是现在的我们,是在秒以下位置发生变化的状态。
つまり、魔法の準備から発動までの間に現在地が変化してしまい、確定できない状態。
也就是说,从魔法的准备到发动之间现在所在地发生了变化,无法确定的状态。
馬車でゴトゴト移動してるぐらいなら、何とかなるだろうが、この速度ではとても無理なのだ。
如果骑着马车咕嘟咕嘟地移动的话,总会有办法的,但是以这个速度是不行的。
だからといって、俺も考え無しに飛び出したわけではない。
虽说如此,我也不是没有考虑就跑出去了。
「『空中歩行ウォーク・オン・エア』!」
“《空中行走》!”
やってて良かった、魔法の練習。
真是太好了,魔法的练习。
二一層の状況を知って以降、俺はひたすらこの魔法の練習を重ねていた。
知道了进一步的情况之后,我一个劲儿地反复练习这个魔法。
風魔法の、それ以下のレベルの魔法をすべてすっ飛ばして。
将风魔法的、以下等级的魔法全部踢飞。
その結果、無事に使えるようになった――かと言えば、そうじゃないんだよな、うん。
结果,能顺利使用了——这么说来,不是那样的吧,嗯。
世の中そんなに甘くはない。
世界上没有那么甜。
けれど、努力もまた無駄ではない。
但是,努力也不是白费。
足下にグググッと抵抗が生まれ、僅かに落下速度が低下。
脚下产生了一股阻力,下落速度稍有下降。
その直後、その抵抗がフッと失われ、また落下が始まる。
在那之后,电阻突然失去,又开始下落。
「ナツキ、下に『光ライト』を!」
“夏树,下面是‘光之光’!”
「はい!」
“是的!”
応えると同時、ナツキが一定間隔で三つの『光』を、下方に向けて飛ばした。
响应的同时,枣以一定间隔向下方飞出了三道“光”。
「ナイス!」
“好棒!”
濃霧で底は見えないが、光は確認できる。
由于浓雾看不见底部,但可以确认光线。
『光』の魔法は、術者から一定の距離を保って移動させる事ができるため、あの光が消える、もしくは動かなくなれば、そこが地面。
“光”的魔法,因为可以使术者保持一定距离移动,所以如果那光消失或者不动的话,那就是地面。
一〇メートルほどの間隔で光が浮いているため、地面から三〇メートルほどになればそれが判るだろう。
因为光以10米左右的间隔浮起,如果距地面30米左右就能明白那个吧。
「『空中歩行』、『空中歩行』、『空中歩行』!」
“‘空中行走’、‘空中行走’、‘空中行走’!”
不完全な魔法。
不完全的魔法。
効果は半端で、使用魔力は半端ない。
效果是零星的,使用魔力是零星的。
通常、人間が落下した場合、自由落下での加速には限界があり、比較的すぐに終端速度に到達する。
通常,人在下落的情况下,自由落下的加速是有界限的,比较快到达终点速度。
つまり、地面さえ見えているのなら、チマチマと速度を落とすのは非常に効率が悪いのだが、現状では、終端速度――およそ時速二〇〇キロ――から、無事に着地可能な速度にまで減速するための、必要距離が把握できない。
也就是说,如果连地面都能看到的话,那么降低地瓜和速度的话,效率非常低,但是现状是,从终端速度——约时速20公里——减速到可以安全着陆的速度,无法把握必要的距离。
だって、時速二〇〇キロって、一秒で五〇メートル以上落下するんだぜ?
可是,时速200公里,一秒钟就掉下来50米以上了?
一〇〇メートル上空で地面が見えたとしても、魔法を一回使えるかどうか、である。
即使在一百米上空看到地面,也不能使用一次魔法。
故に落下速度を緩め続けるしか、取れる選択肢が無いのだ。
因此,只有继续放缓落下速度,才能选择。
――あぁ、こんな事なら、パラシュートでも用意しておくべきだった。
——啊,这样的话,应该准备降落伞。
不完全な物であっても、多少は足しになっただろうに。
即使是不完整的东西,多少也会有所补充吧。
今更ながらに気付いても、後の祭り。
事到如今才注意到,这也是后来的祭典。
「『空中歩行』……『空中歩行』」
“‘空中行走’……‘空中行走’”
うむ。ちょっとヤバい。
嗯。有点糟糕。
今日は、これまでにも魔力を消費していただけに、残りが心許ない。
今天,正因为到现在为止也消费着魔力,剩下的不能放心。
「『精神回復リカバー・メンタル・ストレングス』。頑張ってください」
“《精神恢复》。请加油”
「おう。『空中歩行』」
“喔。‘空中行走”
ナツキの魔法でちょっと気分が楽になる。
用枣树的魔法使心情变得轻松一些。
だが、さすがにそろそろ――見えたっ!
但是,就要——看见了!
「水面っ!? ナツキ!」
“水底脓包33!?大枣!”
「はい!」
“是的!”
考えてみれば当たり前。
想想看是当然的。
崖下が岸辺ではなく、川である可能性も当然にあった。
悬崖下不是岸边,自然也有河流的可能性。
不幸中の幸いなのは、明らかに深そうに見える川であることか。
不幸中所幸的是,看起来明显很深的河流吗。
逆に不幸なのは、かなり流れが激しそうなところ。
相反,不幸的是,水流非常激烈。
バシャン!!
失败的结局!!
そんな川の湍流に、俺とナツキの身体は落下、深く沈み込む。
我和枣的身体落下,深深地沉入这条河的湍急之中。
こんな事なら、『水中呼吸ブレス・ウォーター』も練習しておくべきだったかもしれない。
如果是这样的话,也许应该预先练习一下“水中呼吸呼吸呼吸呼吸呼吸呼吸水”。
だが、『水中呼吸』の練習に時間を使っていたら、『空中歩行』で減速もできず、溺死以前に墜落死していたかもしれないわけで。
但是,如果在“水中呼吸”的练习中使用时间的话,在“空中步行”中也无法减速,可能在溺死之前就已经坠毁死亡了。
練習時間が無限に有るわけでもなし、それは無い物ねだりというヤツだろう。
练习时间并不是无限的,那是一种没有要求的东西吧。
着水直前に息を吸い込み、水中に深く潜る事になった俺たちだったが、それでも川底に足が付く事も無く、激しい流れに水中を流される。
我们在着水之前吸气,深深潜入水中,但即便如此也没有脚踏到河底,而是被激流冲走。
だが、ナツキの『光』があったのは幸運だった。
但是,有枣的“光”是幸运的。
俺はそれを頼りに、水面に向かって水を蹴る。
我凭借着这个,朝着水面踢水。
「ぷはっ! ナツキ、大丈夫か!?」
“噗哈哈!枣,没问题吗
「え、えぇ、何とか……」
“诶,呃,怎么了……”
抱き締め合った状態では身動きが取れず、かと言って離れれば、はぐれてしまい兼ねない流れの中、俺とナツキは指を絡めた状態で手を握り合う。
在相拥的状态下身体无法动弹,但如果离开的话,在可能会走散的河流中,我和夏树以缠绕着手指的状态互相握手。
「『光』を周囲に飛ばせるか?」
“让‘光’飞到周围吗?”
「はい、ちょっと待ってください」
“好的,请稍等。”
水面に頭だけ出した状態で流されつつ、俺はナツキの放った『光』を頼りに、周囲の状態を確認する。
在只把头伸出水面的状态下被冲走的同时,我依靠着枣放出的“光”,确认周围的状态。
ちなみに、もしもの時に溺れないようにするコツの一つとして、無駄に水上に手を出したりしない、という物がある。
顺便说一下,作为防止在万一的时候溺水的诀窍之一,有一种是不要浪费时间把手伸到水上。
人間の身体は水中にあれば浮力になるが、水上に出すと逆に荷重となる。
人的身体在水中的话会变成浮力,但是放到水上的话反而会变成负荷。
つまり、水上に腕を上げれば、腕一本分の浮力が減少する上に、それが逆に荷重となり、沈みやすくなる。
也就是说,如果将手臂向水上抬起的话,臂一只的浮力就会减少,反之则会成为负荷,容易下沉。
一番良いのは、頭――正確には顔の部分だけ水面に出して救助を待つ事なのだが、それは救助が望める状況、それも海の場合。
最好的是头部——正确地说,只有脸的部分露出水面等待救助,这是希望救助的情况,也是大海的情况。
今の俺たちのように川に流されている状況では、少々当てはまらない。
像现在的我们这样被河流冲走的情况,有点不合适。
先の状況が判っていれば、穏やかな流れになるまで流されるというのも一つの選択肢だが、何があるか判らない状況で、それはかなり怖い。
如果知道前面的情况,到平静的流动为止被冲走也是一个选择,不过,在不知道有什么的状况下,那个相当可怕。
この先に滝があるかもしれないという危険性、更に流れが激しくなって岩に叩きつけられるかもしれないという危険性、フライング・ガーのような魔物が川の中にいるかもしれないという危険性。
在这之前可能会有瀑布的危险性,还有水流变大可能会被岩石砸到的危险性,以及可能会有像飞行器一样的魔物存在于河里的危险性。
考え出すときりが無い。
一想起来就没完没了。
なので今俺にできるのは、頑張って川から這い上がる事である。
所以现在我能做的就是努力从河里爬上去。
どこか上がれそうな場所は無いかと周囲を見回すが――。
看看周围有没有可以上去的地方。
「砂地は……無いか」
“砂地……没有吗?”
俺たちが今流されている場所の川幅は二〇メートルは超えているだろう。
我们现在被冲走的地方的河面超过了20米吧。
その両岸は切り立った崖で、その下にあるのはゴツゴツとした岩場。
那两岸是陡峭的悬崖,下面是坚硬的岩石。
掴める場所も無い崖よりはマシでも、砂地に比べれば怪我をしそうでちょっと危ない。
比起没有抓得住的地方的悬崖要好一些,但是和沙漠相比,好像会受伤,有点危险。
「岩場があるだけマシと思いましょう。ナオくん、あちら側に」
“我觉得有岩石多好啊。娜奥君,在那边”
「ああ」
“啊啊”
上流を向いて左側。俺たちが落ちてきた方の崖へと泳いで近づき、何とか岩を掴む。
面向上游左侧。我们向坠落的那方的悬崖游来游去,走近,设法抓住岩石。
「ナツキ……!」
“海枣……!”
「はい!」
“是的!”
ナツキを岩の上へと押し上げ、俺も彼女の手を借りてその上に。
把枣儿推到岩石上,我也借助她的手在上面。
一先ずは安全な場所に移れた事に対する安堵と、流れの速い川からの脱出に成功した事に、「ふぅ……」と息を吐く。
首先,对于转移到安全场所的安心感和成功逃出水流湍急的河流这件事,他呼出了一口气“呼……”。
そんな俺にシンクロするように、ナツキもまた息をつき、俺たちは顔を見合わせて軽く笑う。
就像和那样的我同步一样,夏树也呼吸了一下,我们相视而笑。
「結構、流されたか……?」
“结构,被冲走了吗……?”
「私も結構必死だったので、良く判りませんが、流れは速かったですね」
“我也相当拼命,所以不太清楚,但是流程很快。”
上を見上げても、見えるのは白い霧に閉ざされた空。
抬头看上面,能看到的是被白雾封闭的天空。
俺たちがどれぐらい落下したかはもちろん、崖の高さすら判らない。
不用说我们掉了多少,就连悬崖的高度也不知道。
また、上流を見ても滝すら見えず、ただ轟々という音が聞こえるのみ。
另外,即使看到上流也看不到瀑布,只能听到轰隆轰隆的声音。
「とりあえず、連絡しておくか」
“总之先联系一下吧。”
「はい。二回で良いですか?」
“是的。两次可以吗?”
そう言いながらナツキが取りだしたのは笛。
这样说着,椰子拿出了笛子。
笛と言っても、呼子とか、ホイッスルとか言うようなタイプの笛で、楽器としての笛ではない。
虽说是笛子,但像哨子、哨子之类的类型的笛子,不是作为乐器的笛子。
この笛は俺たちが各自持っている緊急用の笛で、所謂いわゆる緊急持ち出し袋とかに入っている笛と同じ用途で用意した物である。
这个笛子是我们各自拿着的紧急用的笛子,和所谓的紧急带出袋子里装着的笛子是一样的用途。
ちなみに二回鳴らすのは、無事を知らせる合図。
顺便说一下,敲两次是通知平安的信号。
他にも、光や鏡を使った連絡方法も決めているのだが、現状では役に立たない方法である。
除此之外,虽然也决定了使用光和镜子的联系方法,但这是在现状中不起作用的方法。
まだ完全に安全になったわけでは無いが、俺たちの生死が定かではない状況では、ハルカたちが無理しかねない。
虽然还没有完全安全,但是在我们生死不明的情况下,Haruka等人可能会很勉强。
「うん、それが妥当だろうな」
“嗯,那应该是妥当的吧。”
「それでは、吹きます」
“那我就吹了。”
ナツキが大きく息を吸い込み笛に口を当てると、トミーに頼んで作ってもらった特注の笛が、甲高い音を響かせる。
海枣大口吸气,吹到笛子上,托米点的特制笛子发出尖锐的声音。
滝の轟音、その重低音を切り裂くように、谷に響く高い音が二回。
瀑布的轰鸣声,像是切开沉重的低音一样,在山谷中回响着两次很高的声音。
そしてしばらく耳を澄ませていると、遠くから二度、同じような音が響いてきた。
然后听了一会儿,远处传来了两次同样的声音。
それを聞き、俺とナツキは顔を見合わせて表情を緩め、大きく息を吐いた。
听了这话,我和枣面面相觑,放缓了表情,大吐了一口气。
「向こうも、無事みたいだな」
“对方好像也没事啊。”
「ですね。崩れた時、上にいたトーヤくんが心配でしたが……」
“是啊。崩溃的时候,上面的TOYA君很担心……”
「なんとか落下は回避していたぞ? 地面に剣を突き立てて」
“总算是避免了坠落啊?把剑插在地上”
ナツキが下りたのは最後から二番目。
枣下来是倒数第二。
上に残っていたのはトーヤのみだったのだが、岩が崩れた瞬間、一瞬身体が宙に浮いたように見えたものの、地面に突き立てた剣に掴まってぶら下がっていた。
虽然上面只剩下火炬,但是在岩石崩塌的瞬间,身体仿佛浮在空中,却被插在地上的剑抓住,耷拉着。
やや危なそうではあったが、あの状況での素早い判断は、素直に感心する。
虽然看起来有点危险,但在那种情况下迅速的判断,还是让人佩服。
「しかし、転移で戻るにしても、魔力の回復を待つ必要があるわけだが……ここは狭いな」
“但是,就算转移回来,也需要等待魔力的恢复……这里真狭窄啊。”
「はい、ちょっと落ち着きませんね」
“是的,有点心神不定呢。”
俺たちが這い上がった岩は畳一畳にも満たない広さな上に、四角いブロックというわけでもないので、実質的に座れる場所は、少し斜めになった半畳ほどのスペース。
我们爬上去的岩石不仅没有一块榻榻米大,而且也没有四方形的块,所以实质上可以坐的地方是稍微倾斜的半块榻榻米大的空间。
そこに俺たち二人が身を寄せ合うようにして座っているわけで、ナツキの言うとおり、かなり落ち着かない。
在那里我们两个人相依为命地坐着,就像枣树说的那样,相当不安。
更に俺たちは、川に落ちてずぶ濡れ、周囲は霧に包まれ、気温もやや肌寒いほど。
而且我们掉进河里湿透了,周围被雾包围着,气温也有点冷。
この状態で魔力を回復しろと言われても、無理がある。
即使说要在这种状态下恢复魔力,也是不可能的。
「まずは服を乾かしましょう。私はともかく、ナオくんの方は風邪をひくかもしれませんし」
“首先把衣服吹干吧。我姑且不论,娜奥君可能会感冒”
「【頑強】も過信はできないよなぁ」
“【顽固】也不能过分相信啊。”
高レベルの【頑強】に【病気耐性】まで持つナツキに対し、俺にあるのは【頑強】のみ。
对于拥有高水平的“顽强”和“抗病性”的枣,我只有“顽强”。
幸いな事にこの一年間、俺たちの中に病気になった奴はいないが、それは俺たちが、あまり無理をしないようにしていた事も影響しているはず。
幸运的是,这一年来,我们之中没有生过病的人,这也影响到了我们不太勉强自己的事情。
どんな状況でも病気にならないほど、【頑強】が強力なスキルとも思えない。
我不认为“顽强”是一种在任何情况下都不会生病的强大技能。
「それじゃ、ナツキ、頼む」
「那么,就点酸枣吧」
「はい。『浄化ピュリフィケイト』」
“是的。”净化Pricato”
ナツキの魔法で、下着までぐちょぐちょだった状態が解消され、一気にすっきり。
使用夏树的魔法,消除了连内衣都黏糊糊的状态,一口气变得清爽起来。
まぁ、その状態も僅かな時間で、上に着ている服に関しては、すぐに霧によってジメッとしてしまうのだが。
嘛,这种状态也只是一点点的时间,关于上面穿的衣服,马上就会因为雾而潮湿。
「サンキュ。ナツキがいてくれて、助かった」
“水星。有了枣,得救了”
「いえいえ。ナオくんだって『乾燥ドライ』で乾かす事もできるでしょう?」
“不不不不。娜奥君也可以用“干燥干燥干燥”来晾干吧?”
「できるが、あれは服を脱がないと、厳しいからなぁ」
“可以,但那是因为不脱衣服的话会很严格。”
ハルカが作った水魔法の『乾燥』。
Haruka制作的水魔法的“干燥”。
これを使えば濡れた服を乾かす事はできるのだが、着ている状態で使うには少々危険な魔法なのだ。
使用这个可以弄干湿的衣服,但是在穿着的状态下使用的话是有点危险的魔法。
肌が乾燥する、程度なら笑い話で済むのだが、失敗するとちょっとシャレにならない。
皮肤干燥,如果只是个笑话就可以解决了,但是失败的话就有点干燥了。
まぁ、無生物と生物。
嘛,无生物和生物。
比べれば後者の方が圧倒的に魔法が効きづらいため、よほど変な失敗をしない限り、致命的な事にはならないのだが。
相比之下,后者的魔法压倒性地难以发挥作用,所以只要不经历相当奇怪的失败,就不会成为致命的事情。
かといって、ナツキの前でストリップを披露するのは避けたいし、そもそもこんな狭い場所で素っ裸になるのは、いろんな意味で危険すぎる。
话虽如此,我还是想避免在枣面前表演条形,原本在这么狭小的地方赤身裸体,在各种意义上来说都太危险了。
俺たち、鎖帷子なんかも着ているのだから、もし手を滑らせて川に落としたりなんかしたら……イメージ的には、高級車がどんぶらこっこと流れていくようなもの。
我们还穿着锁帷子什么的,如果手一滑掉到河里的话……印象中高级车好像在缓缓地流动着。
お財布的に致命傷な上に、確実にハルカに怒られる事だろう。
不仅是钱包上的致命伤,而且确实会被Haruka骂的吧。

531
308js.md

@ -0,0 +1,531 @@
308 落下 (2)
308掉落(2)
「さて、どこか落ち着ける場所を探さないといけないわけだが……ナツキ、上流と下流、どちらに向かうべきだと思う?」
“那么,应该找个能让人平静下来的地方……枣、上游和下游,你觉得应该去哪里?”
「難しいところですね……。ハルカたちのいる場所に近づくのなら、当然上流ですが、落ち着ける場所となると、下流に向かった方が可能性があるんですよね」
“很难呢……。如果要接近Haruka他们所在的地方的话,当然是上游,但是如果是可以安静下来的地方的话,还是往下游走比较有可能”
「川、だからなぁ……」
“因为是河啊……”
一般的に川は下流に向かうほど流れが緩やかになり、岩が石になって、砂になる。
一般来说,河流越往下游流越慢,岩石变成石头,形成沙子。
身体を休められる場所と考えれば、『下流に向かった方が』というナツキの言葉には一理ある。
如果考虑到能让身体休息的地方的话,“还是去下游比较好”这句枣树的话是有道理的。
「それに、上流に向かうと、このまま切り立った崖が続きそうですし、鉄砲水が流れてきたら、危険ですよね? そんな罠、無いとも言えませんし」
“而且,往上游走的话,这样陡峭的山崖好像会持续下去,如果洪水流过来的话,会很危险吧?那种圈套,也不能说没有”
「……うん、それは死ねるな。ただでさえ、かなりの急流なのに」
“……嗯,那可不能死啊。本来就很急流啊」
以前、渓谷で有名な、とある観光地に行った時に聞いた話だが、その渓谷では大雨が降ると、一〇メートル以上も水嵩が増し、深い谷が水面下に沈むのだとか。
以前,我去以溪谷闻名的某个观光地的时候听说过,那个溪谷一下雨,水量就增加了100米以上,深谷沉入了水面。
そしてその話通り、下から見上げるような位置に、しっかりと増水の跡が残っていた。
正如所说的那样,从下往上看的位置上,还留下了很好的涨水痕迹。
渓谷という物は、それだけ水を集めてしまうのだ。
所谓溪谷,就是收集了那么多水。
それを考えれば多少雨が降っただけでも、俺たちが今いるような岩など、簡単に水没してしまうだろう。
如果考虑到这一点,哪怕只是下了一点雨,我们现在所处的岩石也会很容易被水淹没吧。
そんな川で水泳とか、避けたい経験である。
在那样的河里游泳之类的,是想避开的经验。
もっとも、ダンジョン内で雨が降るのかは不明なのだが。
不过,地下城内会不会下雨还不清楚。
だが、雨が降らなくても、罠の方は十分にあり得る危険性である。
但是,即使不下雨,陷阱也是十分有可能存在的危险性。
「さっき崖が崩れたのも、今思えば罠だったんじゃないかとも思うんですよね。気付くことはできませんでしたが……」
“刚才悬崖坍塌了,现在想起来可能是陷阱吧。虽然没有注意到……”
「だよなぁ。問題無さそうに見えたんだが……」
“是啊。看起来没什么问题……”
地面に杭を打ってロープを垂らす以上、毎回、大丈夫そうかはきちんと確認していたし、先ほども同様。
既然是在地面上打个桩子垂下绳子,每次都会好好确认是否没事,刚才也一样。
間違っても罅なんて入っていなかったし、簡単に崩落するほど脆い地面でもなかった。
错误的是没有裂痕,也没有脆弱到容易崩塌的地面。
しかし、罠を仕掛けるという点に於いては、如何にも『下に降りられますよ』というような岩棚の上というのは、ベストポイントであったことは間違いない。
但是,在设陷阱这一点上,完全可以说是在“可以下去哦”这样的岩石架上,这无疑是最重要的一点。
しかも、数回無事に降りることができていたのだから、警戒も緩む。
而且,因为能安全下车几次,所以警戒也放宽了。
俺たちの警戒が緩んでいたとは思いたくないが、現実にこの状況になっているわけで……う~む。
我不想认为我们的警戒有所松懈,但现实中却变成了这种状况……嗯~。
「……下流、向かうか」
“……下游,要去吗?”
「はい。どちらが安全かと考えれば、そうなりますよね」
“是的。如果考虑到哪一个更安全的话,就会变成这样吧”
川の中州にテントを張る事があり得ないように、こんな場所で一晩過ごす事なんて、更にあり得ない。
为了不可能在河中州搭帐篷,更不可能在这样的地方住一晚。
俺とナツキは岩を飛び移りながら、下流へ向かって移動を始める。
我和夏树在岩石上飞来飞去,开始向下游移动。
少々神経は使うが、バランス感覚も跳躍力も大幅に上がっている俺たちからすれば、困難と言うほどではない。
虽然稍微有些神经过敏,但是对于平衡感和跳跃力都大幅提高的我们来说,并不是什么困难的事情。
そして、一時間ほどは移動を続けただろうか。
然后,大概持续移动了一个小时左右吧。
俺のちょっぴり高性能な耳に、何やら気になる音が聞こえてきた。
在我稍微高性能的耳朵里,听到了在意的声音。
何というか、腹に響くような重低音。
怎么说呢,是震撼人心的重低音。
滝からの落水が響かせる音はずっと聞こえていたのだが、それ以上に激しさを感じさせ、それはだんだんと近づいているようにも思える。
虽然一直能听到瀑布的流水声,但更能让人感受到它的激烈,让人觉得它渐渐靠近了。
その原因はあまり考えたくないが、無視できるはずもない。
我不太想考虑那个原因,但也不可能忽视。
「……なぁ、ナツキ。なんだか、不穏な音が聞こえてくるんだが、俺の気のせいか?」
「……啊,枣。总觉得,听到了不稳的声音,是我的错觉吗?”
「奇遇ですね。私も先ほどから、足元が気になっていたんです。微妙に、水量が増えていませんか?」
“真是奇遇啊。我从刚才开始就很在意脚下。微妙的是水量没有增加吗?”
「やっぱ、そう思うか?」
“果然是这样想的吗?”
踏み石としている岩。
石块。
最初の頃は俺たち二人が十分に立てるスペースがある岩も多かったのだが、段々と小ぶりな物、そして岩と岩の間隔も広がってきた気がする。
刚开始的时候,我们两个人有足够的空间站着的岩石也很多,但是渐渐地,小小的东西,还有岩石和岩石的间隔也扩大了。
これって、良い感じの岩が減ってきた、わけでは無く、水没しているって事だよな、やっぱり。
这不是因为感觉好的岩石减少了,而是因为被水淹没了吧,果然。
「ナツキ、一応、互いをロープで結んでおくか? これが正解なのかは判らないが」
“枣,先用绳子把它们扎起来吧?虽然不知道这是不是正确答案”
「はぐれるよりは良い、と考えましょう。ロープはできるだけ短くして」
“比起走散更好,请这么想吧。绳子要尽量短一些”
流された時、ロープが長ければ首に絡んでしまうと言う危険性もあるし、変な場所に引っかかってしまえば、水面に浮上することができず、溺死という事すら考えられる。
被冲走的时候,如果绳子长的话,有可能会缠绕到脖子上,如果碰到奇怪的地方,就不能浮到水面上,甚至会溺死。
かといって、一人はぐれてしまうのも危険なわけで。
但是,一个人走散也很危险。
俺とナツキは、少し広い岩の上で足を止めると、ロープを取りだして互いを結ぶように――。
我和夏树,在稍微大一点的岩石上停下脚步,取出绳子互相连接。
「――っ! ナオくん! 急いでください!!」
“——!娜奥君!请快点
「げっ!?」
“我的恋爱经历是……”
ナツキの視線を追えば、そこにあったのは、水の壁。
追着夏树的视线,水之壁就在那里。
水煙を押しのけるようにして迫っていた。
逼得水烟四溅。
「ヤバい、ヤバい!」
“糟糕,糟糕!”
ある程度の余裕を持って、なんて言っていられる状況では無かった。
并不是说要有一定程度的富余。
俺は慌ててナツキを抱き寄せると、俺とナツキの胴をまとめてグルグルとロープを回す。
我慌张张地抱住了枣,把我和枣的身体集中起来,咕噜咕噜地转动绳子。
そして、力を込めてギュッと結ぶと、ナツキが「ぐぅっ」と息を漏らしたが、そんな事を言っていられる状況では無い。
然后,用力系紧后,夏树“呼呼”地叹了一口气,但现在不是说这种话的时候。
「き、来ます!」
“来,我来!”
「『隔離領域アイソレーション・フィールド』!」
“《隔离领域隔离领域隔离领域》!”
俺にできたのは、僅かに回復した魔力を使い、何とか補助になりそうな魔法を唱えることだけ。
我能做的,只有使用稍微恢复了的魔力,唱出能成为辅助的魔法。
もちろん、それで濁流を止めるなんて事は期待していない。
当然,我并不期待因此而停止浊流。
僅かでも生存確率が上がることを望む、ただそれだけ。
只希望生存概率能稍微提高。
球状の障壁を発生させるように魔法が発動したその直後、弾き飛ばされるように水面に叩きつけられた俺たちは、その一瞬後には大量の水に飲み込まれたのだった。
为了产生球状的障碍,魔法发动了之后,像被弹飞一样被打到水面上的我们,在那一瞬间之后被大量的水吞噬了。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「ぶはっ! ゲホッ、エホッ! ……ふぅ、ふぅ。ナ、ナツキ、大丈夫か?」
“噗哈哈!哇,嗨……呼、呼。娜娜、枣,没事吧?”
「は、はい。何とか。コホッ、コホッ……!」
「哈,是的。想办法。霍霍,霍霍……!”
俺たちを押し流した濁流は一気に川を流れ下った。
把我们冲走的浊流一下子沿河而下。
その流れに翻弄された俺の『隔離領域』は、水中にある岩や左右の岩壁にガンガンとぶつかり、俺の精神と魔力はガリガリと削られた。
被这股潮流玩弄的我的“隔离领域”,与水底的岩石和左右的岩壁碰撞,使我的精神和魔力嘎吱嘎吱地被削弱了。
だが、水流が速かったことが幸いだったと言うべきなのか、比較的短時間で水量は元に戻っていた。
但是,或许是因为水流快的缘故而感到幸运吧,在相对短的时间内水量恢复了原状。
しかし、それでも川の流れがかなり速いことに違いはない。
但是,即便如此,河流的流动也一定很快。
かなりギリギリまで頑張っていた俺も、魔力の使いすぎで気分が悪くなる前に障壁を解除。
一直努力到极限的我,在魔力过度使心情变差之前也解除了障碍。
ナツキと抱き合ったまま水に流され続け、やがて左右の岩壁が無くなり、砂地の岸辺が見えてきたところで、からくも川から這い上がることに成功していた。
和海枣拥抱在一起被水冲走,不久左右的岩壁就消失了,即使能看见沙地的岸边,也成功地从河里爬起来。
「あ~、気持ち悪い」
“啊~真恶心。”
「お疲れ様でした。でも、ナオくんの魔法のおかげで、怪我をせずに済みましたね」
“辛苦了。但是,多亏了nao君的魔法,我才没有受伤呢”
「なんとかな」
“想办法啊。”
「服、乾かしますね」
“衣服要干了呢。”
水流に揺さぶられたことと、魔力消費のダブルパンチでかなりグロッキーになった俺だったが、ナツキの魔法で多少回復、膝に手を置いて立ち上がり、周囲を見回した。
我被水流摇动了,魔力消费的双重打击变得相当棘手,但是因为枣的魔法多少恢复了一些,把手放在膝盖上站了起来,环视了一下周围。
「森……か。今更、ダンジョン内なのに、なんて言うつもりは無いが……」
“森……吗。事到如今,明明在地下城里,我也没打算说什么……”
「はい。あちらから流れてきたみたいですね」
“是的。好像是从那边流过来的呢”
川の上流を見れば、巨大な岩山がそびえ立ち、そこに鉈を振り下ろしたかのような裂け目が見える。
一看河流的上游,就可以看到巨大的岩山耸立着,像是砍下了砍下的裂缝。
俺たちが流されてきたのは、その裂け目から流れ出ている川。
我们被冲走的是从裂缝中流出的河。
目視でも、そこまでかなりの距離がある事が判る。
即使是目视,也能判断到那里有相当的距离。
「……まぁ、今は生きていることを喜ぶか」
“……嘛,现在活着开心吗?”
「ですね。正直、ナオくんの『隔離領域アイソレーション・フィールド』が無ければ、かなり危なかったと思います」
“是啊。说实话,如果没有nao君的《隔离领域隔离领域》的话,我觉得相当危险”
「再び、魔力は空になったわけだがな」
“魔力又变成了天空”
体感的にはかなりの時間、川を流されたように感じたが、冷静に考えればせいぜい数分と言ったところだろう。
从身体感觉上来说,相当长的时间,就像是被河流冲走了一样,但是冷静地考虑的话,最多也就几分钟吧。
本来は場所固定で使う『隔離領域』を、自分の場所を基点に全周に発動させた上に、川に流されながらもその状態をキープするのは、大量の魔力を消費する。
本来是以场所固定使用的“隔离区域”,以自己的场所为基点在整周发动的基础上,一边被河流冲走一边保持那个状态,消耗大量的魔力。
一時間ほどで回復した魔力で発動可能な時間など、高が知れているのだ。
用1小时左右恢复了的魔力可以发动的时间等,知道的很高。
「まずは、野営をできる場所を探しましょう。川の傍は色々と危ない気もしますし。かと言って、森に入るのも、それはそれで不安はありますが……どうですか?」
“首先,先找个能野营的地方吧。我觉得河的旁边有很多危险。话虽如此,进入森林也会感到不安……怎么样?”
「近くには、【索敵】に反応する物はいないな。動物などを除いて」
“附近没有人会对‘索敌’做出反应。除了动物以外”
一部の動物は襲いかかってくることもあるが、基本的には無害。
有些动物会袭击过来,但基本上是无害的。
一年前ならともかく、今となっては脅威と言うほどではない。
如果是一年前的话那就另当别论了,现在已经不至于说是威胁了。
もちろん、『俺たちが知る動物であれば』であるし、それらに関しても、寝込みを襲われれば危険なので、対処が不要というわけでは無いのだが。
当然,“如果是我们知道的动物的话”,关于这些,如果被袭击入室的话是很危险的,所以并不是不需要处理。
「では、森ですね。野営に適した場所を探しましょう」
“那么,是森林吧。寻找适合野营的地方吧”
ナツキの言葉に俺も頷き、川岸を離れて森の中へ。
我也点了点头,离开河岸来到森林里。
そこは一見するとごく普通の森――俺たちが普段入っている森と比較するなら、サールスタットの上流の森と似た感じだった。
那里乍一看是非常普通的森林——和我们平时进入的森林比较的话,感觉和撒尔斯塔特上流的森林很相似。
もっとも、森の植生に大して詳しくない俺が感じるだけなので、実際にどうなのかは判らないのだが。
不过,我只是对森林里的植被不是很了解,所以不知道实际情况如何。
「早めに休んでおきたいところだが……この辺りで良いか?」
“我想早点休息……这附近可以吗?”
「そうですね。安全かどうかなんて、判りませんしね。初めての場所ですから」
“是啊。不知道是否安全。因为是第一次来的地方”
川岸や崖の傍など、明確に危ない場所を避ける事ぐらいは出来るが、そもそもどんな敵が出るかも判らないのだ。
虽然可以避开河岸和悬崖边等明显危险的地方,但是根本不知道会出现什么样的敌人。
何時までも歩き回っていたところで、疲れが溜まるだけ。
无论走到什么时候,都只会积累疲劳。
俺たちはある程度で区切りを付けると、やや大きめの木の根元を野営場所と定めた。
我们在某种程度上告一段落,就把稍大一点的树的根部定为露营地。
そこで焚き火を熾すと、折りたたみの寝台を一つ取り出し、二人でそこに腰を下ろす。
于是燃起篝火,取出一张折叠的卧铺,两个人坐在那里。
「はぁ~」
“哈~”
「ふぅ……」
“呼……”
揃って大きく息を吐いた俺たちは顔を見合わせると、少し頬を緩めた。
一起大喘气的我们面面相觑,稍微放松了一下脸颊。
「さすがに疲れましたね……?」
“果然很累啊……?”
「だなぁ。崖から落ちて、川に流され……」
“是啊。从悬崖上掉下来,被冲走……”
「無事に上がったと思ったら、また流され、ですからね」
“以为顺利上去了,结果又被冲走了。”
うん、良く無事だったものだ。
嗯,很顺利。
今更ながら、ではあるが、この階層には、もう少し鍛えてから来るべきだったかもしれない。
事到如今,虽说如此,但在这个阶层里,或许应该再稍微锻炼一下再过来。
見方によっては、現時点で大きな怪我もせずに生きているのだから、適正レベルからそう外れていないとも考えられるが……う~む。
根据不同的看法,现在活着的时候并没有受什么大的伤,所以也可以认为没有偏离适当的水平……嗯~嗯。
楽に戦える場所にしか行かないのであれば、冒険者としての成長が無いとも考えられるしなぁ。
如果只去能轻松战斗的地方的话,也可以认为没有作为冒险者的成长。
「ナオくん。今日は食事をして、早めに休みましょう。出来合いの物で良いですよね?」
“娜奥君。今天吃饭,早点休息吧。现成的就可以了吧?”
「あぁ、もちろん。ただ、温かい物が食べたいな。今日は二回も水泳をする事になったし」
“啊,当然。只是,想吃热的东西。今天要游两次泳”
「ですね。私もそれは同じです。豚汁にしましょう」
“是啊。我也一样。就要猪肉汤吧”
豚汁とは言っても、豚ではなくボアの肉なのだが、それは問題ではない。
虽说是猪肉汤,但不是猪肉而是波亚肉,这不是问题。
野菜とお肉たっぷりの熱々のお汁で身体を温め、おにぎりでお腹を満たせば、ピリピリしていた神経も、少し安らぐ。
用富含蔬菜和肉的热汤温暖身体,用饭团填饱肚子的话,紧张的神经也会稍微平静一些。
豚汁にはご飯。
猪肉汤配米饭。
そして、温かい食事はやはり重要だな。
而且,热饭还是很重要的。
「それでは、ナオくん、先に寝てください。私が警戒しておきますから」
“那么,娜奥君,请先睡吧。我会警戒的”
「良いのか?」
“可以吗?”
「魔力、回復してもらわないといけませんから。……魔力を移すような魔法、あれば良かったんですけど」
“因为魔力必须恢复。……要是有魔力转移的魔法就好了”
「あぁ、それは仕方ないよなぁ……」
“啊,那也没办法啊……”
光魔法には『精神回復リカバー・メンタル・ストレングス』の様な、回復の補助をする魔法があるが、直接的に魔力を譲渡するような魔法は存在していない。
光魔法中有像《精神恢复恢复·心理·string》那样的辅助恢复的魔法,但是没有直接将魔力转让的魔法。
魔力が回復するポーションは存在するのだが、こちらはこちらで、今の俺たちが入手できるような、そして作れるようなレベルの物では、焼け石に水――とまでは言わないが、少々効力に乏しい。
虽然存在魔力恢复的化妆水,但是这边是这边,现在的我们能得到的,并且能做的程度的东西,烧石水——虽然不说,但是稍微缺乏效果。
少なくとも、転移魔法のような大量の魔力を消費する魔法を使うためには、回復量がまったく足りないのだ。
至少,为了使用像转移魔法一样消耗大量魔力的魔法,恢复量完全不够。
「それじゃ、ナツキ、頼んだ」
“那我就点了酸枣。”
「はい、お任せください」
“好的,交给我吧。”
俺は、寝台の上に敷き布団と毛布、掛け布団を敷くと、その中に潜り込む。
我只要在床上铺上褥子、毛毯和被子,就会钻进里面。
俺たちの野営では、これが最近の標準スタイル。
在我们的露营中,这是最近的标准样式。
雰囲気はぶち壊しだが、それよりも快適さ優先。
虽然破坏了气氛,但是比起那个,舒适度优先。
敢えて寝袋にはしていない。
并不一定是睡袋。
万が一の際、飛び起きられないからな、寝袋だと。
万一的时候,因为跳不起来,所以说是睡袋。
その点、布団なら跳ね飛ばして即座に対応が可能。
在这一点上,如果是被子的话,可以立即跳过来应对。
難点は汚れることだが、俺たちには『浄化』があるので、問題は無い。
难点是脏,但是我们有‘净化’,所以没有问题。
「それじゃ、おやすみ」
“那么,晚安。”
「はい、ゆっくり休んでください。『精神回復』」
“好的,请好好休息。”精神恢复”
微笑んで魔法を掛けてくれたナツキに、俺は「ありがとう」と口にして、目を閉じた。
对着微笑着施魔法的枣,我说了声“谢谢”,闭上了眼睛。

499
309js.md

@ -0,0 +1,499 @@
# 309 休息と探索 (1)
309休息和探索(1)
「……ナオくん、ナオくん、起きてください」
“……娜奥,娜奥,请起来。”
「……あ、あぁ、交代の時間か?」
“……啊,啊,是交换的时间吗?”
「はい。大丈夫ですか? もし回復が足りないようなら、もう少し寝てもらっても……」
“是的。没关系吗?如果恢复得不够的话,再睡一会儿也……”
「いや、問題ない。結構な時間、寝たみたいだしな」
“不,没问题。好像睡了相当长的时间呢”
俺が眠りに就く前は、周囲にまだ多少明るさが残っていたが、今は完全に真っ暗。
在我入睡之前,周围还多少留有点明亮,但现在完全一片黑暗。
時間的には真夜中、で良いのだろうか?
时间上是半夜,可以吗?
ダンジョンだけにそのあたり、良く判らない部分はあるのだが、少なくとも俺の感覚としては、十分な睡眠が取れていた。
正因为是地牢,所以有不太清楚的地方,但至少我的感觉是睡眠充足。
俺が布団から這い出すと、すぐにナツキは、いそいそとその布団の中に潜り込んでしまった。
我从被子里爬出来,立刻枣就飞快地钻进了被子里。
「ふぅ、温かいです」
“呼,很暖和。”
「……いや、自分の布団、あるだろ?」
“……不,有自己的被子吧?”
ホッと息をつくナツキに、思わずツッコむ。
对着舒一口气的枣,不由得吐槽。
「良いじゃないですか。せっかくナオくんが温めてくれているんですから。それに、匂いを嗅ぐわけでも無いですし?」
“不是挺好的吗。难得nao君给我加热了。而且,也不是要闻味道吗?”
「いや、止めてくれよ!? それはなんか恥ずかしいから!」
“不,给我住手吧!?那是因为有点害羞!”
まぁ、実際のところ、誰が使った布団でも、毎回『浄化ピュリフィケイト』をかけているので、大して気にする必要は無いのだが……何となくの、気分である。
实际上,无论是谁用过的被褥,每次都会用“净化Prificato”,所以没必要太在意……总觉得有种心情。
「それじゃ、ナオくん、よろしくお願いしますね。おやすみなさい」
“那么,娜奥君,请多关照。晚安”
「あぁ、おやすみ」
“啊,晚安。”
すでに寝る体勢に入ったナツキに俺は挨拶を返し、焚き火の側に腰を下ろす。
我向已经进入睡眠状态的枣回礼,坐在篝火旁边。
そして【索敵】の反応にしっかりと意識を向けてみれば、夜になったからか、小さな反応がポツポツと確認できる。
然后,如果好好注意【索敌】的反应,也许是因为到了晚上,小小的反应就会一点点确认。
まだ距離はあるし、危機感を覚えるほどの脅威でも無いのだが、暢気に構えていられるほど、俺はこの森のことを知らない。
虽然还有距离,也没有感到危机感那样的威胁,但是我不知道这个森林的事情,可以从容不迫的准备着。
とりあえずの用心として、『聖域サンクチュアリ』で周囲を囲んでおく。
总之要注意,用“圣域圣殿”把周围围起来。
ちなみに、『隔離領域アイソレーション・フィールド』と『聖域』の違いを簡単に言うなら、物理的な壁と魔法的な壁だろうか。
顺便说一下,如果简单地说“隔离领域隔离领域隔离领域”和“圣域”的区别的话,应该是物理性的墙和魔法性的墙吧。
いや、どちらも魔法で作った壁ではあるんだが、『効果として』な。
不,两个都是用魔法做成的墙壁,“作为效果”。
前者は空気も含めてすべての物を遮断するが、後者は術者に対して害のある物を遮断する。
前者将包括空气在内的所有物体阻断,而后者将对术者有害的物体阻断。
とは言っても、そのあたりは結構曖昧で、術者の認識と技量にも影響される。
话虽如此,但这一点还很暧昧,也会影响到术者的认识和技能。
例えば自然現象として落石があった場合に『聖域』で防げるかと言えば、普通は無理。
例如,如果说自然现象中有落石的情况下,可以用“圣域”来防御的话,一般是不行的。
その事を考えれば、『隔離領域』の方が安心度は高いのだが、消費魔力や酸欠の危険性なども考えれば、必ずしもそちらの方が優れているとも言い難く。
考虑到这一点,虽然“隔离领域”的安全度更高,但是考虑到消费魔力和缺氧的危险性,很难说那个领域的安全度一定更高。
状況に応じて使い分けが必要ってところだろう。
需要根据情况区分使用吧。
「しかし……こうして見ていると、ダンジョン内だと思えないな……」
“但是……这样看的话,就不觉得是在迷宫里……”
一五層から二〇層までは、自然っぽく見えてもどこか不自然な部分があったのだが、この階層の場合、言われなければダンジョン内だとは気付けないだろう。
从十五层到二十层,虽然看起来很自然,但也有一些不自然的地方,但是在这个阶层的情况下,如果不说的话,就不会发现是地牢内。
耳を澄ませば、僅かながら虫の声も聞こえ、風も吹いている。
侧耳倾听,能听到些许的虫鸣,也能吹风。
注意して観察を続ければ、どこか不自然なところも見つかるのかもしれないが、今のところ、俺に判るようなものはない。
如果注意继续观察的话,也许会发现一些不自然的地方,但是现在没有我能明白的地方。
焚き火を見つめながら、【索敵】の反応に意識を集中して静かに時間を過ごす。
一边凝视着篝火,一边集中意识观察【索敌】的反应,静静地消磨时间。
そして、ナツキと見張りを交代して三時間ほどは経っただろうか。
然后,夏树和监视交替了三个小时左右吧。
【索敵】の反応に、気になる物が見え始めていた。
【索敌】的反应开始让人在意。
そこまで強い反応ではないのだが、何らかの意図を持って動いていると思われる物が八個ほど。
虽然没有那么强烈的反应,但是有八个左右的人认为是抱着某种意图在行动。
俺たちのいる場所を半円形に囲むようにして近づいてきていた。
我们所在的地方围成半圆形接近了。
「ナツキ」
“海枣”
眠るナツキの隣に行き、軽く肩を叩きながら小さく声を掛けると、ナツキはすぐに目を開け、軽く目を擦りながら身体を起こした。
走到熟睡的枣旁边,轻轻拍着肩膀小声地打了招呼,枣立刻睁开眼睛,轻轻地揉着眼睛起身来。
「……何か、ありましたか?」
“……有什么事吗?”
「敵が来ている、かもしれない」
“也许敌人来了。”
「私には……まだ感じられませんが、ナオくんがそう言うなら、警戒が必要ですね」
“我还感觉不到,如果娜奥君这么说的话,就需要警戒了。”
ナツキが布団から出たところで、俺は布団と寝台をマジックバッグの中へ片付ける。
枣刚从被子里出来,我就把被子和床收拾到了魔术包里。
あとは、武器さえ持てば準備は完了。
然后,只要持有武器,准备就完成了。
さすがに何時襲われるか判らない状況で、鎖帷子を脱いだりはしていないので、目さえ覚めれば、すぐに対応は可能なのだ。
在不知道什么时候会被袭击的情况下,因为没有脱下锁帷子,所以只要记住眼睛,马上就能应对。
ちょっと寝づらいのが難点だが、さすがにもう慣れてしまった。プレート・メイルなんかに比べれば、よほどマシだと思うしな。
虽然有点难睡,但已经习惯了。和金属板相比,我觉得相当好。
「何だと思いますか?」
“你觉得是什么?”
「判らないな。少なくとも、これまで出会ったことが無い魔物だとは思うが……」
“我不知道。至少,我觉得这是至今为止从未见过的魔物……”
【索敵】の反応的には、かなり近くまで来ているはずなのだが、姿は疎か、音すら聞こえない。
从【索敌】的反应来看,应该已经接近了,但是身影稀疏,连声音都听不见。
「ナツキ、見えるか? あの辺りにいるはずなんだが」
「能看见海枣吗?应该在那附近”
俺が指さす場所にナツキが目を凝らす。
枣在我指的地方目不转睛。
「いえ……あっ、いました! 猫です!」
“没有……啊,有!我是猫!”
その言葉とほぼ同時に、暗闇の中から影が分離するように、いくつも飛び出した。
和那句话几乎同时,影子从黑暗中分离出来,飞出了好几个。
真っ黒いその姿は正に猫。
那乌黑的身姿正是猫。
普通のイエネコよりも一回りほどは大きいが、尻尾を入れても五〇センチほどだろうか。
比普通的家猫大一圈左右,不过,放入尾巴也只有50厘米左右吧。
そんな魔物が木の上や茂みの中から、一斉に飛びかかってくる。
那样的魔物从树上和树丛中一齐飞来。
しかし、使ってて良かった『聖域サンクチュアリ』。
但是,可以使用的“圣域圣殿”。
跳ね返すまではいかないが、その障壁の部分で何かに引っかかるように勢いが殺され、俺たちの所までは届かない。
虽然还没到反弹的地步,但是在那个屏障的部分好像被什么东西卡住了一样,气势被杀了,达不到我们的地方。
そして、空中で一瞬動きが止められる状況というのは、長物を使う俺たちからすれば良い的である。
而且,在空中一瞬间能够停止动作的状况,对于使用长物的我们来说就好了。
この時点で飛びかかってきた八匹のうち四匹は、首を切り裂かれて地面で藻掻くだけになっていた。
这时飞来的八只中有四只,被割开了头,只能在地面上抓海藻。
「シャドウ・マーゲイ、【隠密】持ちだ」
“阴影•玛盖伊,有‘隐秘’。”
「真っ黒で【隠密】持ち。暗闇で襲われると、かなり危険ですね」
“漆黑的【隐秘】持久性。在黑暗中被袭击的话,相当危险呢”
「あぁ。少なくとも夜、この森は歩きたくないな」
“啊。至少晚上,我不想走这片森林”
などと話しながら、槍を突き出している俺だが、敵はなかなかに素早い上に、的も小さく、攻撃も当たりにくい。
一边说着,一边伸出了枪的我,敌人非常敏捷,而且靶子也很小,攻击也很难打中。
だが、やはり『聖域』は便利である。
但是,“圣域”还是很方便的。
ナツキと共に死角をフォローしつつ、攻撃を加えていけば、『聖域』の範囲で逃げられる場所など限られている。
和夏树一起关注死角,再加上攻击的话,在“圣域”的范围内可以逃跑的地方是有限的。
それで障壁部分に触れてしまえばしめたもの。
因此,接触到壁垒部分就可以了。
動きが鈍った瞬間にサックリと処理。
动作迟缓的瞬间麻利地处理。
全部のシャドウ・マーゲイが動かなくなるまでに、大した時間は必要なかった。
在所有的眼影•玛盖伊都动不了之前,没必要花很多时间。
「ふぅ。思ったよりも素早かったな?」
“呼。比想象中还要敏捷吧?”
「はい。『聖域』が無ければ、ちょっと面倒だったと思います」
“是的。”如果没有圣域的话,我觉得有点麻烦”
「あぁ、防衛戦には想像以上に便利だよな、『聖域』って」
“啊,防卫战比想象中方便多了,所谓‘圣域’。”
これが『隔離領域』の場合、自分の攻撃も障壁にぶつかってしまうのだが、『聖域』にはそれがない。
如果这是“隔离领域”的话,自己的攻击也会碰到障碍,但是“圣域”没有。
それでいて、魔物の行動を一瞬でも阻害するのだから、戦いやすさは段違いである。
尽管如此,因为在一瞬间也会阻碍魔物的行动,所以容易战斗是不一样的。
最初、木の上から跳びかかってきた物もいたように、茂みの中や木の上などに隠れつつ、攻撃をされていればもう少し苦戦しただろう。
一开始,也有从树上跳过来的东西,躲在树丛中或树上,如果被攻击的话会更加苦战吧。
逆に言えば、それを阻害する『聖域』との相性は、俺たちからすればとても良く、シャドウ・マーゲイからすれば最悪だ。
反过来说,和阻碍这一现象的“圣域”相性,在我们看来是非常好的,在阴影·玛盖伊看来是最糟糕的。
「わぁ……見てください。この爪、凄く鋭いですよ? これで顔や首を狙われたら、致命的ですね」
“哇……请看。这个指甲很锋利哦?这样的话,要是被脸和脖子盯上的话,是致命的”
「げっ。不釣り合いすぎるな、この爪……」
“木屐。太不般配了,这个指甲……”
見た目は少し大きめの猫なのに、その手足に付いている爪は、二センチほどもあり、かなり鋭い。
看起来是只稍微大一点的猫,但手脚上的指甲却有两厘米左右,非常锋利。
こんなのが突然、暗闇に紛れて木の上から襲ってきたら……頸動脈でも切られたら、死ぬ危険性はかなり高いだろう。
突然间,如果混进黑暗中从树上袭击过来的话……颈动脉被切断的话,死亡的危险性会很高吧。
「よし、夜の移動は絶対に止めよう。万が一、【索敵】で見落としでもしたら、シャレにならん」
“好吧,晚上一定不要移动。万一,因为【索敌】而看漏了的话,就没用了”
「はい。正面から戦えばさほどでも無いですが、不意打ちは危険ですね」
“是的。从正面战斗的话也没什么,但是突然攻击是很危险的”
その後もしばらくの間、警戒していた俺たちだったが、第二波が来る様子は無く、ナツキには寝てもらう事にした。
在那之后的一段时间里,我们一直在警戒着,但是第二波没有来的迹象,所以决定让枣睡觉。
当然俺は、そのまま見張りを続け……結局、何事も無く朝を迎えるのだった。
当然,我还是继续监视着……结果,什么都没发生就迎来了早晨。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「ナオくん、どうですか?」
“娜奥,怎么样?”
「ん~、二人なら、何とか、いけるか? しばらく動けなくなるかもしれないが」
“嗯~两个人的话,能想想办法吗?”?可能会暂时动弹不得”
翌朝、朝食を食べて野営場所を引き払った俺たちは、転移で戻るべく、ハルカたちが設置しているであろう転移ポイントを探っていた。
第二天早上,吃完早饭离开营地的我们,为了转移回来,正在寻找Haruka等人所设置的转移点。
確認できたのは二つ。
确认的有两个。
遠い方が二一層の入口、少し近い方がハルカたちが新たに設置した転移ポイントだろう。
远一点是两层入口,近一点是Haruka等人新设置的转移点。
距離的には結構ギリギリだが、今回転移するのは俺とナツキだけ。
虽然距离上很近,但是这次转移的只有我和夏树。
少し近い方なら、なんとかなりそうな気はするのだが、魔力消費は厳しそうな感じ。
如果是稍微近一点的人的话,总觉得好像相当厉害,但是魔力消费好像很严格。
「……止めておきましょう。そこにいるのがハルカたちなら安心ですが、もし移動していた場合、そして逆に魔物がいた場合、とても危険です」
“……停下来吧。在那里的是Haruka他们的话就放心了,但是如果移动的话,相反如果有魔物的话,就非常危险了”
「たぶん、転移ポイントの所で待っていると思うが……確実とは言えないか」
“我想大概在转移点等着……不能说是确实的吗?”
ハルカたちが俺たちを見捨てるとは思わないが、魔物に襲われてやむなく転移ポイントの場所を離れている可能性など、想定外も考慮すべきだろう。
我不认为Haruka他们会抛弃我们,但也应该考虑到被魔物袭击而不得已离开转移点的可能性。
「幸い、ナオくんのおかげで方向は判るわけですし、歩ける範囲は歩いて近づきましょう。それでどうですか?」
“幸运的是,多亏了直人才能知道方向,能走的范围就走着去吧。那怎么样?”
「あぁ、問題ない。昨日のシャドウ・マーゲイも、この時間帯なら、そう怖くないしな」
“啊,没问题。昨天的眼影•玛盖伊在这个时间段也不会那么害怕”
もちろん、別の魔物が出てくる事も考える必要はあるが、今のところ、【索敵】に引っかかる対象はいない。
当然,也有必要考虑其他魔物的出现,但是现在没有被【索敌】吸引的对象。
フルメンバーなら、多少の魔物ぐらい出てきてもお金になる、とか思えるのだが、二人だけの現状では、できれば出てきて欲しくないところである。
如果是全部成员的话,即使出现多少魔物也会变成钱,但是在只有两个人的现状下,如果可能的话,是不希望他们出来的。
「方向は……こっちだな」
“方向……是这边吧。”
転移ポイントの場所を頼りに、俺たちは歩き出す。
依靠转移点的地方,我们开始走。
考えてみれば転移ポイント、地味に便利だよな。
想想看是转移点,朴素方便。
見通しが利かないこんな森の中でも、不安を感じずに歩く事ができるわけだから。
即使在这片前景暗淡的森林里,也能不感到不安地行走。
上手く配置していけば、道に迷う心配も減るし、ユキの【マッピング】スキルと組み合わせれば更に有用。
如果配置好的话,迷路的担心也会减少,如果和雪的【映射】技能相结合的话更有用。
まぁ、どの転移ポイントか区別がつくわけではないので、配置しすぎればわけが判らなくなるだろうが。
嘛,因为并不能区分是哪个转移点,所以如果配置太多的话就无法判断原因了。
「――っ! ちょっとストップ!」
“——!稍微停一下!”
なんだか嫌な予感がして、俺は慌ててナツキを呼び止めた。
总觉得有种不好的预感,我急忙叫住了枣。
「どうかしましたか?」
“怎么了?”
「なーんか、その木のあたり、俺の【索敵】に引っかかるものが……。敵の反応とも言えないんだが、ほんのりと……何かいるようにも見えないんだが」
“怎么说呢,那棵树的附近,有人挂在我的【索敌】身上……。虽然也不能说是敌人的反应,但是稍微有点……看不出有什么在”
喩えるならば、無害な動物に近いと言えば良いのだろうか。
如果比喻的话,可以说接近无害动物就好了吗。
だが、その木の周辺に何か小動物がいるようにも見えないし、そもそも反応はもっと体積が大きい物に感じられて――。
但是,在那棵树的周围也看不出有什么小动物,反应原本就是体积更大的东西。
「良く判らん。透明な魔物? ゴースト的な」
“我不太清楚。透明的魔物?幽灵般的”
「以前出会ったシャドウ・ゴーストは目視できましたが……しかし、無視するのは避けたいですね。初めての場所だけに。適当に攻撃してみますか? 木の上から何か降ってくるかもしれませんし」
“以前遇到的眼影•鬼魂是可以目视的……但是,要避免无视。因为是第一次去的地方。要适当攻击一下吗?可能会从树上下来什么”
「だな。こういうのは、トーヤ向きなんだが……」
“是啊。这样的话,是适合火炬的……”
ガンガン、というタイプの攻撃ができるのは、俺たちの中ではトーヤとメアリ。
能进行GANGAN这种类型的攻击的,在我们心中是TOYA和玛丽。
俺やナツキの武器は突き刺したり、切り裂いたり。
我和枣的武器有时刺穿,有时切开。
とりあえず、『石弾ストーン・ミサイル』をぶつけてみるが……。
总之,试着撞上“石弹石·导弹”……。
「反応、無いな?」
“没有反应吧?”
「はい。何か落ちてきた様子もありません」
“是的。没有什么掉下来的样子”
拳大の石が木にぶつかり、軽く幹を揺すったが、それだけ。
拳大的石头撞到树上,轻轻地摇晃了一下树干,仅此而已。
何の変化も見られない。
看不到任何变化。
「……気のせい、なのか?」
“……是心理作用吗?”
それでも一応と、俺は枝を落とす時などに使っている斧をマジックバッグから取り出し、それを持って木の方へと近づく。
尽管如此,我还是暂且把树枝掉落时使用的斧头从魔术包中取出,拿着它向树靠近。
「これで叩けば、何か落ちてくるかも――」
“这样打下去的话,可能会掉下来什么东西——”
「ナオくん! 上です!!」
“娜奥君!上面的一段感情

435
310js.md

@ -0,0 +1,435 @@
# 310 休息と探索 (2)
310休息和探索(2)
ナツキの言葉に、上を見上げれば、そこに見えたのは、ぐにゃりと曲がった木の枝だった。
听了枣的话,抬头一看,看到的是弯曲的树枝。
「なっ――!?」
「什―――⇔63;」
あり得ない光景に一瞬、唖然としてしまったが、これでも一応、それなりの経験は積んでいる。
对于不可能有的情景,一瞬间哑然了,但即便如此,也积累了一定的经验。
即座に大きく後ろに飛べば、直前まで俺のいた場所に、バサリと木の枝が叩きつけられた。
如果立刻飞到大后面的话,到紧接之前我在的地方,啪的一声树枝被砍了。
「うわっ……」
“哇……”
「動いてます、ね」
“在动呢。”
まるで泥の中から足を引き抜くように、木の根っこをうねうねと動かし、その木が動き出していた。
就像是从泥里拔出脚一样,在树根上蜿蜒地移动,那棵树开始动了起来。
そして、さすがにこの状態であれば、【索敵】に明確な反応がある。
而且,如果是这种状态的话,【索敌】也会有明确的反应。
「言うまでもない気はするが、トレント。スキルは【擬態】だと。他に情報はあるか?」
“我觉得没必要说,不过是徒步旅行。技能是“拟态”。还有其他信息吗?”
「パッとは出てきませんが、木材としては、私たちが伐採している木よりも価値があるみたいですよ?」
“虽然不能一下子出来,但是作为木材,好像比我们砍伐的树木更有价值呢?”
「持ち帰ると喜ばれるか」
“带回去会高兴吗?”
言われてみれば、魔物事典にそんな事が書いてあったような気もする。
这么说来,感觉魔物事典上写着这样的事情。
ある意味、ラファンの町では人気の出そうな魔物だが……。
从某种意义上来说,这是在拉风镇上很有人气的魔物……。
「どうやって斃せば良い?」
“怎么去死才好?”
「一定以上破壊するか、魔石を破壊するか、ですね。どうするべきかは、難しいところですが」
“一定程度以上破坏,还是破坏魔石,对吧。应该怎么做是很难的”
あまり木を傷つけてしまえば木材としての価値がなくなるし、魔石を破壊すれば、魔石を売ることができなくなる、って事か。
如果太伤树的话,作为木材的价值就会消失,如果破坏魔石的话,就不能卖魔石了,是这样吗。
マジックバッグで持ち帰りが可能な俺たちなら、魔石を狙うべきなんだろうが……。
如果是可以用魔术包打包的我们,应该瞄准魔石吧……。
「厄介な……魔石がどこにあるか判るか?」
“真麻烦……你知道魔石在哪里吗?”
「根元の中心部分にあるらしいですよ。妥当と言えば妥当でしょうか。一番、太いわけですし」
“好像在根部的中心部分。如果说妥当的话是妥当的吗。因为是最粗的”
「確かにな」
“确实。”
普通の木が一番太い場所と言えば、やはり根元の部分。
要说普通的树最粗的地方,还是根的部分。
その中心に魔石を配置すれば、最も防御力は高いだろう。
如果在那个中心配置魔石,防御力最高吧。
「そこまで一気に貫けるような攻撃手段は……無いよなぁ」
“没有能一口气贯彻到那种地步的攻击手段……”
「ちょっとずつ削っていくか、燃やしてしまうか。それも生木ですから難しいですか」
“是一点一点地削,还是燃烧。因为那也是生木,所以很难吗?”
ホント、トーヤがいないのが悔やまれる。
真的很后悔没有托雅。
そして、ついでにハルカも。『鎌風エア・カッター』があれば、ちょっとずつ枝を落としていく方法も取れるのだが、俺、風魔法はあまり得意じゃないからなぁ。
然后,顺便Haruka也如果有镰刀风空气切割机的话,可以一点一点地把树枝砍下来,但是我不太擅长风魔法。
槍と薙刀という俺とナツキのペアには、なかなかに相性が悪い敵である。
我和夏树这对枪和剃刀是非常不投缘的敌人。
ちなみに、俺とナツキが比較的ゆっくりと話し合えているのは、トレントの移動速度が遅いからである。
顺便说一下,我和夏树比较慢地交谈是因为Trant的移动速度慢。
うねうねとした根っこの動きは少々気持ち悪いが、あまり移動には向いていないようで、逃げること自体は難しくなさそうである。
蜿蜒起伏的根的运动稍微有点恶心,但是好像不太适合移动,逃跑本身似乎并不难。
もっとも、その逃げる道中に別のトレントがいたりすれば、不意打ちを受ける危険性が高いのだが。
不过,如果在逃跑的路上有其他的Trant的话,受到突然袭击的危险性很高。
「……いや、マジでどうやって斃すべ?」
“……不,真的应该怎样去死?”
後のことを考えないのであれば、俺の得意な『火矢ファイア・アロー』を連発すれば、なんとかなりそうな気もするんだが、せっかくなら木材を確保しておきたい。
如果不考虑后果的话,如果连发我擅长的《火箭火·箭》的话,感觉会很不错,但是好不容易来一次的话,还是想确保木材。
ラファンに持ち帰り、今後、トレントを狩る価値があるかどうかを判断するためにも。
带回家拉风,为了判断今后是否有狩猎托莱特的价值。
「地道に、斧であの根っこを切断して――あ、そう言えば、時空魔法で『空間分断プレーン・シフト』ってありませんでした?」
“踏踏实实地,用斧子把树根切断——啊,这么说来,难道不是时空魔法中的‘空间分割平面移动’吗?”
「――おぉ! あれか!」
“——哇!那个啊!”
レベル5の時空魔法、『空間分断』。
等级5的时空魔法“空间分割”。
名前の通り、空間を分断して対象を切断することができる、それだけ聞くととんでもなく強力そうな攻撃魔法なのだが、そうは問屋が卸さない。
正如名字所示,可以分割空间来切断对象,光听就觉得是一种非常强大的攻击魔法,但批发商却不批发。
まずなにより、発動に時間が掛かる。
首先,发动要花时间。
『火矢』などであれば、発動してから敵にぶつけるという形になるのだが、『空間分断』の場合は、発動場所の指定、意識の集中、魔法の発動というプロセスを辿る。
如果是《火矢》等的话,发动后会变成撞向敌人的形式,但是在《空间分割》的情况下,要追溯发动场所的指定、意识的集中、魔法的发动这一过程。
つまり、場所の指定から発動までには若干のタイムラグがあり、普通の敵であればその間に対象場所から移動してしまっている。
也就是说,从指定场所到发动有若干时间轴,如果是普通的敌人的话就会在这期间从对象场所移动。
訓練によりそのタイムラグを縮小したり、移動場所を予測したりすることで、それに対処したとしても、もう一つの問題は、消費魔力。
通过训练缩小那个时间轴,预测移动场所的事,即使处理了那个,另一个问题也是消费魔力。
オークなどを斃すためであれば、圧倒的に『火矢』の方がコスパが良い。
如果是为了杀死奥克等,压倒性的“火箭”性价比高。
使いづらい上に、コスパも悪い。
不仅不好用,而且性价比也不好。
つまり、使うメリットが無いのだ。
也就是说,没有使用的好处。
それ故、攻撃手段としてはすっかり忘れていたのだが、この場面ではちょうど良いんじゃないだろうか?
因此,作为攻击手段完全忘记了,不过,这个场面不是正好吗?
トレントの動きも遅いし。
徒步旅行的动作也很慢。
「では早速……魔石は、一番太い場所、だよな?」
“那么马上……魔石是最粗的地方吧?”
「はい。根っこではなく、幹の部分で一番太い場所、です」
“是的。不是根,而是树干部分最粗的地方”
「それはまた微妙な……」
“那又微妙了……”
地面から這いだしてしまった関係で、どこまでが幹で、どこからが根っこなのかちょっと判りづらい。
因为是从地面爬起来的关系,所以很难判断到底树干有多高,到底是从哪里开始的。
魔石のサイズからして、数センチぐらいの誤差なら何とかなりそうだが――。
从魔石的尺寸来看,如果有几厘米左右的误差的话,倒是挺严重的。
「『空間分断プレーン・シフト』!」
“‘空间分割平面移动’!”
じっくりと狙いを定め、魔法を発動。
踏踏实实地定下目标,发动魔法。
見た目には何の変化も無い、とても地味な魔法だが、トレントの変化は明確だった。
虽然外表没有任何变化,是非常朴素的魔法,但是truct的变化是很明确的。
うねうねと動いていた木の根っこが、ピタリと止まる。
蜿蜒移动的树根突然停了下来。
そして、その直後、重さに耐えかねるかのようにその根っこがバキバキと折れ始め、上に乗っていた幹がこちらに向かって――。
然后,紧接着,好像难以承受重量似的,根开始咔嚓咔嚓地折断,上面的树干朝这边―。
「おっと!」
“哎呀!”
「わっ!」
“哇!”
俺とナツキが慌てて避けると、大きな木がズシンと地面に横たわり、根元で切断された切り株が、ゴロリと転がった。
我和枣慌张张张地避开,大树一棵一棵地横躺在地上,在树根上被切断的树桩咕噜咕噜地滚动着。
「……おぉ、あっさり」
“……哇,很清淡。”
どうやら上手く魔石の場所をカットできたらしい。
好像能很好地切割魔石的地方。
根元の部分で直径六〇センチほどはありそうな木なのだが、何の抵抗も無く切れるとか……凄くない? この魔法。
根部直径大约有60厘米左右的树,没有任何抵抗就断了……很厉害吧?这个魔法。
「先日の銘木の伐採、これを使えば良かったな」
“前几天砍伐名牌树,用这个就好了。”
「ですが、この魔法、そう何度もは使えないんじゃないですか?」
“但是,这个魔法不是不能多次使用吗?”
「まぁ、な。だが、俺とユキ、二人で使えば、半分ぐらいはこの魔法で切り倒せたような気はする」
“嘛,是吧。但是,我和雪,如果两个人使用的话,我觉得一半左右都是用这个魔法来打倒的”
手作業での伐採作業は、結構時間が掛かるので、休む時間はあるんだよな。
手工采伐工作需要很长时间,所以有休息的时间。
切り倒した後で、枝打ちをするのにも時間はかかるし。
砍倒之后,打树枝也要花时间。
もっとも、しばらくの間は伐採に行くことも無いだろうし、何よりも今は、帰ることが優先なのだが。
不过,这段时间也不会去采伐了,最重要的是现在回去是优先的。
俺は槍を手に、転がった切り株の方を突いてみるが、反応は無い。【索敵】の方でも反応は無くなっているし、死んだ(?)と思っても良さそうである。
我拿起长矛,向摔倒的树桩方向刺去,但是没有反应索敌”方面也没有反应,死了(?)可以这么想。
「斃してしまうと、あの妙なしなやかさはなくなるんですね」
“一旦死了,那个奇怪的柔软就会消失。”
ナツキは折れた根っこや、どう見ても普通の木にしか見えない枝を検分しながら頷いている。
夏树一边对断了的根和怎么看都像普通树一样的树枝进行检查一边点着头。
俺も触ってみるが、どう見ても木。
我也摸了一下,怎么看都是树。
これだけ見ると、先ほどまでは根っこが触手の様に動いていた事や、枝がゴムの様にしなやかだったことなど、想像もできない。
只看这些的话,无法想象刚才的树根像触手一样活动,树枝像橡胶一样柔软。
これがトレントだったことを窺わせるのは、切り株の切り口に見えている切断された魔石のみである。
让我们窥见这是truct的,只有在树桩的切口处看到的被切断的魔石。
「……回収するか。魔石はダメになったわけだし」
“……要回收吗?”。魔石也就不行了”
「はい。せっかくですからね」
“是的。因为很难得啊”
俺たちも木の伐採には慣れたもの。
我们也习惯了砍伐树木。
二人して手際よく枝を落とし、マジックバッグの中に収納。
两个人手很好地掉落树枝,收纳在魔术包中。
切り株に使い道があるのかは判らなかったが、こちらもとりあえず回収して、先に進んだわけだが――それ以降も、思い出したようにトレントは出現した。
虽然不知道残株有没有用途,但我们也先回收,先前进了——在那之后,正如想起来的那样,特莱特出现了。
二度目以降は動き出す前に『空間分断』で伐採しているのだが、魔石の位置を外してしまうと、ちょっと面倒くさい。
第二次以后在开始行动之前,先用“空间分割”来采伐,如果偏离魔石的位置的话,有点麻烦。
切り株だけで襲いかかってくるのだ。
只靠树桩就来袭。
しかも、頭が軽くなったからか、妙に素早くなるし。
而且,不知道是不是因为头脑变轻了,反而变得格外敏捷。
まぁ、一〇メートル以上の木を倒さないように移動する事を考えれば、それも必然か?
嘛,考虑到为了不让十米以上的树倒下而移动的话,那也是必然的吗?
「しかし、一定以上破壊すれば斃せるって話じゃ?」
“可是,不是说如果破坏一定程度以上就会致死吗?”
「私に言われても……本にそう書いてあっただけですし」
“就算我这么说……也只是书上这么写而已。”
切り株だけなんて、身体の九割以上を失っている状態だと思うのだが、著者には文句を言いたいところ。
我觉得只有残株之类的,已经失去了九成以上的身体状态,但是我想对作者说点什么。
もっとも、根っこを避けて切り株の中央部分に斧を叩き込めば、大抵は一撃で斃せるので、大した脅威でもないのだが。
不过,如果避开树根,在树桩的中央部分砍入斧头的话,大部分都会一击致死,所以也不是什么大威胁。
それでもそれなりに素早いし、万が一、ナツキが絡め取られるとR18になってしまいそうなので、対処は主に俺が行っている。
尽管如此,还是相当迅速,万一被枣缠绕在一起的话,可能会变成R18,所以主要由我来处理。
「でも、この森、本当に夜は歩けませんね。危険すぎます」
“但是,这片森林,晚上真的走不动。太危险了”
「だなぁ。暗闇から首を襲ってくるシャドウ・マーゲイ。トレントだって、突然頭上から棍棒で殴りつけられるようなものだろ? 地味に殺意、高いよな」
“是啊。从黑暗中袭击头部的阴影·玛盖伊。即使是徒步旅行,也会突然从头顶用棍棒殴打吧?太朴素了,杀意很高啊”
スキルも【隠密】と【擬態】。
技能也是【隐秘】和【拟态】。
正に待ち伏せ、不意打ち上等って感じである。
感觉正是埋伏在地上,突然袭击上等。
「もしかして、他にも似たタイプの魔物がいるんでしょうか?」
“难道还有其他类似类型的魔物吗?”
「いない、とも言いきれないよなぁ……。気を付けて進もう」
“也不能说没有啊……。小心点前进吧”
「はい」
“是的。”
まさかそれがフラグになったわけでも無いだろうが、それ以降も、きっちりとそれに類する魔物が出現した。
不会是那个成为了标志吧,不过,此后,恰好那个类似的魔物也出现了。
一種類目は、スタブ・バローズ。
第一种是星巴克。
こちらはダンジョンの入口周辺でも出現した魔物だけに、『お久しぶりです!』という感じで、槍の錆にしてやったのだが、もう一つは少し厄介だった。
这是在迷宫入口周边也出现的魔物,“好久不见!”这样的感觉,就把矛生锈了,但是另一个有点麻烦。
それは、シャドウ・バイパー。
那是眼影刮刀。
バインド・バイパーの親戚のような名前だが、生態もそれに酷似していた。
虽然名字像是收银员的亲戚,但生态也酷似它。
違いと言えば、【隠密】持ちである事と、全長が五メートルほどと長く、やや細めな事、そして全身が真っ黒である事だろう。
要说不同的话,那就是【隐秘】持之以恒,全长5米左右,稍细一些,然后全身都是漆黑的吧。
そして、この違いが地味に厄介。
而且,这种区别很朴素很麻烦。
【索敵】で発見しにくい上に、木のかなり高い位置から枝の間をすり抜けて、一気に身体を伸ばしてくるのだ。
在【索敌】很难发现的基础上,从树的相当高的位置穿过树枝之间,一口气伸展身体。
それでいて、皮の固さはバインド・バイパー以上で、力もそれ以上。
尽管如此,皮的硬度在接线刀以上,力也在以上。
暗闇で襲われたら、この体色の黒さはマジでシャレにならない。
如果在黑暗中被袭击的话,这个身体颜色的黑色真的不会变得干巴巴的。
蛇だけにピット器官とか持ってそうだし、相手は暗さなんて関係ないだろう。
正因为是蛇,所以才拥有坑器官,对方和黑暗没有关系吧。
――まぁ、ナツキはそれでも、薙刀であっさりと首を切り飛ばしていたのだが。
——嘛,即使是这样,夏树还是用剃刀一下子把头砍飞了。
『細いので、バインド・バイパーよりも斬りやすいですね』などと言いながら。
一边说着“因为很细,所以比起绑定的振动器更容易剪呢”之类的话。

443
311js.md

@ -0,0 +1,443 @@
# 311 休息と探索 (3)
311休息和探索(3)
そんな感じで森を進んでいた俺たちだったが、やがて昼を迎えた頃、ついに森が途切れ、俺たちの目の前に現れたのは、切り立った岩山だった。
就这样在森林里前进的我们,终于在迎来白昼的时候,森林终于中断了,出现在我们眼前的是陡峭的岩山。
「やっと、不意打ちエリアは終わりか……結構疲れたな」
“终于,冷不防区域结束了啊……真是太累了。”
「お疲れ様です。魔力は大丈夫ですか?」
“辛苦了。魔力没问题吗?”
「正直に言えば、しばらく休みたいな」
“老实说,我想暂时休息一下。”
トレントによってかなりの魔力を消費させられたこともあるが、それ以外にも精神的にかなり疲れた。
虽然根据Trant消耗了相当大的魔力,但除此之外精神上也相当疲劳。
シャドウ・バイパーやトレントなど、いずれも感知が難しい敵。
阴影、振动和Trant等,都是感知困难的敌人。
それが何時襲ってくるか判らない状況で、【索敵】に注意を向け続けているのは、なかなかにしんどいのだ。
在不知道那个什么时候会袭击的情况下,持续注意【索敌】,真的很辛苦。
トーヤがいれば、ある程度分担できる部分があるのだが、二人だけだからなぁ。
有TOYA在的话,虽然有一定程度的分担,但是只有两个人啊。
「一先ずは、お昼ご飯を食べて休みましょう。『聖域サンクチュアリ』を使っておけば、多少は気が抜けますよね?」
“首先,先吃午饭休息吧。”使用圣域圣殿的话,多少会有些泄气吧?”
「だな」
“是吗?”
俺たちは森から出ると、崖から少し離れた場所に腰を下ろし、『聖域』を使ってから昼食の準備を始めた。
我们从森林里出来,坐在离悬崖有点远的地方,使用“圣域”开始准备午饭。
周囲に怪しげな木は無いし、トレントもシャドウ・バイパーも気にする必要は無いが、用心するに越したことはない。
周围没有可疑的树,山沟和阴影·振动都不需要在意,不过最好小心。
一応、崖にロック・スパイダーが張り付いていたりしないことは確認しているのだが……思えばこの階層、森に限らず不意打ち狙いの敵ばっかだな?
大体上,我已经确认过悬崖上不会贴着摇滚蜘蛛……仔细一想,这个阶层不仅仅是森林,全是突然袭击的敌人吧?
って事は、不意打ちエリアは終わりじゃなく、今後も続くのか?
也就是说,突然袭击区域不是结束,今后也会继续吗?
嫌だなぁ。疲れそう。
真讨厌啊。看起来很累。
「さて、ナオくん、何を食べますか? やはり、温かい物が良いですよね」
“那么,娜奥,吃什么呢?果然还是热的东西好”
「あー、とりあえず、何か甘い物が食べたい。ディンドルでも食べるか?」
“啊,总之,想吃点甜的东西。要不要吃点丁元?”
「ディンドルですね。――はい、どうぞ」
“是丁元吧。——好的,请。”
疲れた時には甘い物。
累的时候吃甜食。
庶民から見れば『何と贅沢な!』とか言われそうだが、俺とナツキは一つずつ、ディンドルを平らげる。
在老百姓看来“多么奢侈啊!”我和枣各吃一个,就能平定一美元。
まぁ、この実一個で、ちょっと良いお店のランチ一食分よりも高いのだから、贅沢と言えば贅沢である。
嘛,这一个果实比一个稍微好点的店的午餐贵,所以说奢侈就是奢侈。
だからといって、節約するつもりは毛頭無いが。
虽然这么说,但我丝毫没有节约的打算。
大した娯楽も無いのだから、美味い物ぐらい自由に食べたい。
因为没有什么大不了的娱乐活动,所以想吃点好吃的东西之类的。
それが買った物ではなく、自分で採った物ならなおさらである。
如果不是那个买的东西,而是自己采的东西的话就更不用说了。
「ケーキも残ってますけど、食べますか?」
“蛋糕也剩下了,要吃吗?”
「ケーキか……」
“蛋糕吗……”
ストライク・オックスのミルクが手に入るようになって以降、ナツキたちはバターや生クリームも作るようになっていた。
自从好球·牛克斯的牛奶到手以后,枣树们也开始制作黄油和鲜奶油了。
それらがあるおかげで、お菓子も色々と食べられるようにはなったのだが、さすがに菓子を昼食代わりにするのはちょっと厳しい。
多亏有了这些,点心也能吃很多了,但是把点心作为午饭的替代品还是有点严格。
「……いや、普通のご飯にしよう。肉でも食べるか」
“……不,就吃普通的饭吧。要不要吃肉?”
「解りました」
“我明白了。”
再びナツキが出してくれたパンと肉でお昼を終え、俺は寝台を取りだしてそこにゆったりと横になった。
吃完午饭后,我又拿出了海枣给我端来的面包和肉,拿出床悠闲地躺在那里。
ナツキの方は、軽く火を熾し、そこにお茶っ葉と水を入れたヤカンを掛けている。
枣的话,要轻轻地把火加热,在那里挂上茶叶和水的水壶。
完全に休息モード。
完全处于休息模式。
このまま夕方ぐらいまでは、魔力の回復に専念したいところである。
就这样到傍晚为止,我想专心恢复魔力。
「そう言えばさ、ナツキ。バターとかは作っているのに、チーズは作らないんだな?」
「这么说来,就是枣。明明做了黄油什么的,却不做奶酪吗?”
「チーズ、ですか? 私たちも食べたいとは思っているんですが、フレッシュチーズならともかく、本格的なチーズは、少しハードルが高いんですよね」
“芝士吗?我们也想吃,新鲜芝士就不说了,真正的芝士难度有点高呢”
少し気になっていたことを聞いてみれば、そんな答えが返ってきた。
问了一下有点在意的事情,得到了这样的回答。
「あぁ、やっぱ難しいのか。作り方は知っているのか?」
“啊,果然很难啊。知道做法吗?”
「大まかには、ですが。でも、それで上手くできるほど、簡単ではないでしょうね。【調理】スキルがあったとしても」
“大概是这样。但是,并不是那么容易就能做好的烹饪:即使有技巧”
「時間も掛かるだろうしなぁ。――クレヴィリーには売ってたんじゃないか? 買わなかったのか?」
“也需要时间啊。——在克里维里不是有卖的吗?没有买吗?”
俺とユキが入った食堂では、チーズが使われた料理があったわけで。
在我和雪树进去的食堂里,有用芝士做的料理。
俺のイメージするチーズとは少し違ったが、あれはあれでなかなかに美味かった。
虽然和我印象中的芝士有点不同,但是那个很好吃。
ほぼ液体だっただけに、どのような形で売られているのかは解らないが、店で出ている以上、存在はしているはずである。
因为几乎都是液体,所以不知道是以怎样的形式出售的,但是既然在店里出现了,就应该存在。
だが、俺の疑問に対してナツキから返ってきたのは、苦笑だった。
但是,对于我的疑问,从枣那里得到的却是苦笑。
「売ってはいましたが、それが私たちの口に合うかどうかは別問題でして。大半の物は、トーヤくん、メアリちゃん、ミーティアちゃんが無理という事で、買わなかったんです。匂いがきつすぎて」
“虽然有卖,但是那个合不合我们的口味是另一个问题。大部分的东西都是因为Toya君、meari酱、mitia酱不行,所以没有买。味道太重了”
「……あぁ、外国の物とか、匂いがきついって聞くもんな。そんな感じか?」
“……啊,听说外国的东西之类的味道很重。是那种感觉吗?”
「大半の物はそれ以上ですね、私の感想としては。一部、食べられそうな物は買ってきましたが……」
“大部分的东西就这些了,作为我的感想。我买了一部分能吃的东西……”
俺も、あまり匂いのきついチーズはダメだし、鼻が良い獣人だともっと厳しいだろう。
我也不能吃味道太重的芝士,如果是鼻子好的兽人的话会更严格吧。
考えてみればチーズって、カビと一緒に食べる物もあるわけで、なかなかにリスキーな食べ物である。
仔细想想,芝士也有和霉一起吃的东西,是相当有风险的食物。
「今のところ、隠し味的に入れるだけですね。少しだけなら、美味しく食べられますから。あまり気になりませんよね?」
“现在只是放进佐料里而已。只要一点点,就能吃得很好吃。不太在意吧?”
「入ってたのか。ナツキたちの作る料理はいつも美味しいぞ? 感謝してる」
“进去了吗?”。海枣们做的菜总是很好吃哦?非常感谢”
「いえいえ。そう言って頂けると、頑張ってる甲斐もあります。――さ、お茶が入りましたよ」
“不不不不。这样说的话,也有努力的价值。——来,茶沏好了」
差し出されたお茶を受け取り、一口。
接过递过来的茶,吃一口。
温かいお茶に癒やされつつ、ナツキに「ありがとう」と礼を言う。
在热茶的治愈下,对海枣说声“谢谢”。
そしてその後も、俺はナツキと雑談をしながら、のんびりと休息を取り、魔力の回復に努めたのだった。
在那之后,我一边和夏树闲谈,一边悠闲地休息,努力恢复魔力。
夕方、概ね俺の魔力が回復したところで、俺たちは焚き火や寝台などを片付け、転移する準備を始めた。
傍晚,我的魔力大致恢复了,我们开始收拾篝火和床等,准备转移。
完全回復とはいかないが、ここからなら余裕を持って転移もできる――。
虽然不能完全恢复,但如果从这里开始的话,可以从容转移。
「ん? 転移ポイントが増えている……?」
“嗯?转移点增加了……?”
意識を集中して転移ポイントを探った俺は、朝とは違う反応に眉をひそめる。
集中意识寻找转移点的我,对和早上不同的反应皱眉。
「どうかしたんですか?」
“怎么了?”
「いや、今朝の段階で、転移ポイントは二つだったんだが、それが増えているんだよ。普通なら、増やすほどの距離でもないんだが……」
“不,在今天早上的阶段,转移点是两个,但是那个增加了。一般来说,也不是增加的距离……”
二一層の入口に設置した物に加え、もう一つ設置された転移ポイントは、俺たちの帰還の目印のためと思っていたのだが、更に増えた転移ポイントに関しては意味が解らない。
除了设置在两层入口的东西之外,还设置了另一个转移点,本以为是为了我们的归来的标志,但对于增加的转移点却不明白其意义。
敢えて置く意味が無いほど、二つ目の転移ポイントと距離が近すぎるのだ。
没有特意放置的意义,和第二个转移点距离太近了。
「何故……?」
“为什么……?”
転移ポイントを作るのにだってお金は掛かるのだ。
即使制作转移点也要花钱。
必要以上に設置することは完全な無駄遣いである。
设置在必要以上是完全的浪费。
ハルカがそんな無駄なことをするとは思えないので、何かしらの意味があるのだろうが……。
我不认为Haruka会做那样徒劳的事,所以有什么意义……。
「それも戻ってみれば解りますよ。まずは合流を急ぎましょう」
“那个也回来看看就知道了。首先赶紧汇合吧”
「おっと、そうだな。それじゃナツキ」
“哦,是啊。那就是海枣”
「はい」
“是的。”
俺はナツキの手を握り、転移ポイントを探る。
我握着枣的手,寻找转移点。
大して距離は違わないし、新しく設置された方が良いよな。
距离也没什么差别,还是新设置的好。
ハルカたちもそちらにいる可能性が高いわけだし。
Haruka他们在那里的可能性也很高。
「『領域転移エリア・テレポーテーション』。…………おや?」
“《区域转移区域·电传》。…………哎呀?”
いつも通りに発動した魔法。
和往常一样发动的魔法。
……いや、正確には発動しようとしたのに、発動しなかった魔法。
……不对,明明想正确发动,却没有发动的魔法。
その事に俺は首を傾げる。
我会歪着头去做那件事。
「どうかした……んですよね、転移できていませんし」
“怎么了……是吧,还没有转移。”
「あぁ、なんか、転移が使えない? 途中で阻害されるような……。すまん、原因は良く判らん」
“啊,怎么说呢,转移不能使用吗?在途中会被阻碍……。对不起,我不太清楚原因”
転移ポイントの位置は把握できるのに、そこまでラインが繋がらないというか……ん? もしかして、転移ポイントの数が増えているのは、これが原因か?
明明能把握转移点的位置,却连不到那个地步……嗯?难道转移点的数量增加是因为这个吗?
遠くまで転移できないから、数を増やして対処している?
因为不能转移到很远的地方,所以会增加数量来处理吗?
「――ナオくんが転移できないなら、当然、ユキも無理ですよね。その予想、間違ってないかもしれません。近場なら、転移可能なんですか?」
“——如果娜奥君不能转移的话,当然小雪也不行。那个预想可能没有错。近场的话,可以转移吗?”
「たぶん、問題ない」
“大概没问题。”
一応は実験と、一〇メートルほど離れた場所に転移してみるが……。
暂且试着转移到距离实验100米左右的地方……。
「ヤバい……微妙にずれてる」
“糟糕……微妙地偏离了。”
転移の目標としていた、ひょろりと生えていた草。
作为转移目标,长着细长的草。
本来であれば、その真上に転移するはずだったのだが、実際に転移したのはそのすぐ隣。
本来应该转移到正上方,但实际转移到的是它的旁边。
ズレとしては二〇センチにも満たないが、最初の頃ならいざ知らず、最近の転移でズレることなんて無かったわけで……。
虽然偏差还不到20厘米,但是刚开始的时候还不知道,最近的转移并没有发生偏差……。
「これ、下手に使うと危ないかもしれない。ユキ、失敗して崖から真っ逆さま、とかなってなければ良いんだが……」
“这个如果不熟练地使用的话可能会很危险。雪,要是失败后从悬崖上完全倒过来就好了……”
「そこは……大丈夫だと、期待しましょう。ユキだって、普段通りに使えないと解れば、警戒するでしょうし」
“那是……我们期待着吧。即使是雪,如果知道不能像平时那样使用的话,也会警戒的”
「だよな?」
“是吧?”
朝から今までの間で、転移ポイント設置数が増えている以上、生存している事に間違いが無いのは、安心材料か。
从早上到现在,转移点设置数增加了,生存的事没有错的,是放心材料吗。
「問題は私たちの方です。転移ができないとなれば、なんとか自力で戻る必要があるわけですが……」
“问题是我们这边。如果不能转移的话,就需要靠自己的力量回去了……”
そう言いながらちょっと困ったようにナツキが見上げるのは、目の前に聳そびえる岩山。
虽然这么说,但是有点为难的是,枣抬头仰望的是耸立在眼前的岩山。
九〇度とは言わないが、八〇度ぐらいはありそうな斜面は、山登りではなくロッククライミングである。
虽然不说是九十度,但八十度左右的斜坡不是登山而是攀岩。
一応、【登攀】のスキルは得たわけだし、天辺が見えているのなら登るのもありなのだろうが、上を見上げて見えるのは雲。
姑且来说,“攀登”的技能已经掌握了,如果能看到天边的话,也有可以攀登的吧,但是抬头看到的却是云彩。
どれぐらいの高さがあるのか、さっぱり判らない。
完全不知道有多高。
どうやっても、一日じゃ登れないだろうし、体力が保つはずもない。
不管怎么做,一天是爬不上去的,也不可能保持体力。
ロッククライマーが岩壁にテントを張って、キャンプをしているのは見た事あるが、もちろん俺たちにできるようなことではないわけで。
我见过攀岩手在岩壁上搭帐篷露营,当然不是我们能做到的事情。
宙ぶらりんの状態で寝るとか、どんな罰ゲームなのかと。
像是在半空的状态下睡觉之类的,是怎样的惩罚游戏呢。
そもそも魔物が飛んで来かねないこの場所で、そんな事をできるとは思えないしな。
原本我就不认为在这个魔物可能会飞过来的地方能做那样的事。
「この岩山、登るのはちょっとなぁ……」
“这座岩山,爬起来有点……”
「はい。危険すぎます。登れそうな場所でもないか探すべきでしょうが……」
“是的。太危险了。应该找个能不能上去的地方……”
ナツキは言葉を濁し、辺りを見回すと空を見てため息をついた。
夏树含糊其辞,环顾四周,望着天空叹了一口气。
「今日のところはここまで、でしょうか。これまでに襲ってきた魔物のことを考えると、薄暗くなってから行動するのは――」
“今天就到这里吧。想到至今为止袭击过的魔物,天黑后再行动——”
「無しだな。確実に怪我をする」
“没有啊。确实会受伤”
昼間でも【隠密】や【擬態】を見破るのには神経を使うのだ。
即使在白天,要识破【隐秘】和【拟态】也要花心思。
夜にそんな事をするなんて、考えたくもない。
我不想考虑晚上做那种事。
「では、片付けたところですが、再び、野営の準備、しましょうか」
“那么,虽然已经收拾好了,但还是再准备一下野营吧。”
俺とナツキは顔を見合わせ、揃ってため息をついた。
我和枣面面相觑,一起叹了一口气。

439
312js.md

@ -0,0 +1,439 @@
# 312 休息と探索 (4)
312休息和探索(4)
翌日は朝早くから起き出し、俺たちは岩山の調査を始めた。
第二天一大早就起床了,我们开始了岩山的调查。
まずは山沿いに、川のあった方向へと向かう。
首先沿着山,朝着有河的方向前进。
そして、岩山の裂け目から川が流れ出している場所まで到達したのだが、残念ながらそこまでの間に、登れそうな場所も、気になる場所も存在しなかった。
然后,虽然到达了从岩山的裂缝中河流流出的地方,但是遗憾的是,在那之前,既没有可以攀登的地方,也没有值得在意的地方。
仕方なしに戻って、今度は反対側へ。
没办法回去,这次去对面。
やや湾曲している山裾を、野営した場所から一時間ほど歩いた頃、それは現れた。
在稍稍弯曲的山麓上,从露营地走了一个小时左右的时候,那个出现了。
岩肌にポッカリと空いた穴。
岩石表面有一个空洞。
洞窟と言うには綺麗な作り。
山洞的构造很漂亮。
ちょうどここのダンジョンの入口にも似ているが、床や天井、それに壁面に関しても更に滑らかで、人工的な物を感じさせる。
正好和这个地牢的入口也很相似,但是地板、天花板和墙壁也更加光滑,让人感觉到人工的东西。
「ダンジョンの入口、ってわけじゃないよな。すでにここ、ダンジョン内だし」
“并不是说地牢的入口吧。这里已经在迷宫内了”
「はい。周囲は自然の森のように見えますけどね。これはダンジョンの作った通路、みたいな物でしょうね、やはり」
“是的。周围看起来像自然的森林。这是像地牢建造的通道一样的东西吧,果然”
一〇層までがこんな感じだったので、そう不思議というわけではないが……。
因为到十层为止都是这样的感觉,所以并不是那么不可思议……。
「これ、入ってみるしか無いよな? たぶん、上に続いている道だよな?」
“这个只能进去看看了吧?大概是一直往上走吧?”
「そう、だと思いますが……。方向的には、二一層の入口がこの先ですから」
“我想是的,但是……。方向上,前面有两层入口”
ナツキが指さしたのは岩山の上。
枣树指的是岩山上。
そこからここへ至る、正規ルートがあるはずである。
从那里到这里应该有正规路线。
ダンジョンなのだから。
因为是地牢。
まさか、あの高さの崖をひたすら降り、川を下ってここに至るのが正規ルート、この入口は更に下へ続いている……なんて事は、無いと思いたい。
不会吧,一个劲地从那个高度的悬崖上下来,顺河来到这里是正规路线,这个入口再往下继续……我想没有这样的事。
「入る……か?」
“进去……吗?”
「しかないでしょう。コンディションとしても、悪くない状態ですし」
“只有吧。就算是状态也不坏”
幸いなことに、岩山沿いに魔物は出現しなかったので、魔力消費は無し。
幸运的是,岩山沿岸没有魔物出现,所以没有魔力消费。
体力に関しても、単に一、二時間ほど歩いただけ。
关于体力,也只是走了一两个小时左右。
この状態で先に進めないのであれば、もうどうしようも無い。詰みである。
如果在这种状态下无法前进的话,那就没有办法了。将死。
俺とナツキは顔を見合わせ、軽く頷いてその通路へと侵入する。
我和夏树面面相觑,轻轻点头进入那条通路。
高さ、幅共に二メートルほどの、あまり広くは無い通路。
两米左右的高度和宽度都不大的通道。
そこを慎重に進むこと数分。
在那里慎重地前进几分钟。
その先にあったのは、どこか既視感のある小部屋だった。
在那前面的是一个有着某种既视感的小房间。
正面に扉、右側に宝箱、左側には恐らく転移陣――。
正面是门,右边是宝箱,左边恐怕是转移阵。
「って、これ、ボス部屋……の先にある部屋じゃないか?」
“呃,这个是BOSS房间……不是前面的房间吗?”
「え、えぇ、そんな気がします……?」
“诶,呃,我有这种感觉……?”
この状況、普通なら喜ぶべきところなのだが、あまりにも予想外だったため、ナツキの顔に浮かんでいるのは喜びよりも困惑の方が大きい。
在这种情况下,一般来说应该是高兴的,但是因为太出乎意料了,所以在枣的脸上浮现的比喜悦更困惑。
そしてそれは、俺も同じだろう。
而且,我也一样吧。
「う、う~む、これで帰還の心配は無くなったわけだが……なんか、拍子抜け?」
“嗯,嗯~嗯,这样一来就不用担心回去了……怎么这么泄气?”
「考えてみれば、ルートを遡ればこういう状況もあり得るわけですが、これまでは階層の区切りにありましたからね」
“仔细想想,追溯路线的话应该也有这样的情况,但是到现在为止都是划分阶层的。”
一層のスケルトン・キング、二層のタイラント・ピッカウという例外はあったが、それ以降は連続してボスが出ることは無かったし、一層のスケルトン・キングをボスと呼んで良いのかには疑問がある。
虽然有进一步的滑板王、两层的泰兰特·皮卡欧这样的例外,但之后就没有连续出现BOSS了,对于进一步的滑板王是否可以称为BOSS有疑问。
その上、今回は下の階層に降りる階段も無いわけで。
而且,这次也没有下到下层的楼梯。
同じ階層内のエリアを、ボス部屋で区切っているような感じなのだろうか?
是不是感觉把同一阶层内的区域用BOSS房间隔开了呢?
「何はともあれ、宝箱は回収しておくか」
“不管怎么说,宝箱要回收吗?”
「ですね。えっと……これは、戦槌ウォー・ハンマーですか」
“是啊。嗯……这是战槌战锤锤吗?”
ナツキが宝箱から取りだしたのは、柄の長さがナツキの顎の辺りまであるハンマー。
枣从宝箱里取出的是柄长到枣下巴附近的锤子。
頭の部分は俺の握りこぶし二つ分ほどで、その形からしても彼女の言うとおり、武器としてのハンマー、所謂戦槌だろう。
头上的部分是我握的拳头两分钟左右,就其形状来说也和她说的一样,是作为武器的锤子,也就是所谓的战锤吧。
「ちょっと貸してくれ。ふむ……思ったよりも使いやすそうな武器だな」
“借我一下。嗯……是比想象中更容易使用的武器啊”
試しに軽く素振りしてみると、重量バランスがちょうど良いのか、パーティーの中では非力な方の俺でも、それなりに振り回せる。
试着轻挥一下,是不是重量平衡刚刚好,在聚会中无力的我,也能相应地挥动。
もちろん、『それなりに』であり、何の訓練もしていない俺が、この武器でこの辺の魔物と戦えば、怪我では済まないとは思うが。
当然,“相应的”,没有任何训练的我,如果用这个武器和这附近的魔物战斗的话,我想就不会受伤了。
逆にトーヤぐらいの膂力があれば、スキル無しでも何とかなるかもしれない。
相反,如果有Toya那样的臂力的话,就算没有技能也没关系。
「これまでのパターンからすれば、何らかの特殊な効果を持つ可能性もありますし、これは持ち帰って鑑定が必要ですね」
“从以往的模式来看,可能会有某种特殊效果,所以需要带回去鉴定。”
「あぁ。とりあえずは、仕舞っておこう」
“啊。总之先收拾一下吧”
戦槌をマジックバッグに収納すれば、あと気になるのは一つの扉。
如果将战锤收纳在魔术包里,之后在意的是一扇门。
こちらも、これまでのパターンから言えば――。
这也是,从至今为止的模式来说——。
「あの向こう、ボスがいるよな、たぶん」
“那个对面,大概有老板吧。”
「えぇ、おそらくは。……確認、してみますか?」
“呃,恐怕。……要确认一下吗?”
俺の顔を窺うように見るナツキに、俺はしばらく「う~ん」と唸った後、渋々ながら頷く。
我对着仿佛在窥视着我的脸的枣,念了一会儿“嗯~”之后,勉强点头。
「戦うかどうかは別にして、見ないわけにはいかないだろうな」
“先不说战斗与否,我们也不能不看吧。”
今後、このダンジョンの探索を止めるというのなら、あんな扉は見なかったことにして転移陣で逃げ帰るのも一つの選択肢。
今后,如果要停止对这个迷宫的探索的话,就算没看到那样的门,也可以选择在转移阵中逃走。
だが俺たち、限界を決めてしまうには、さすがに若すぎるだろう。
但是,我们要决定界限,还是太年轻了吧。
それにここで確認しておけば、あまりにもヤバい物がいた場合には、探索を一時中断して、レベルアップに励む事もできるわけで。
而且在这里确认一下的话,如果有太过危险的东西的话,可以暂停搜索,努力提高水平。
「危なくなったら、転移陣に飛び込む。それで良いよな?」
“危险的话,就跳进转移阵。这样也可以吧?”
「はい」
“是的。”
俺とナツキは扉の前にスタンバイして、二人して隙間からのぞき込める様な位置を取った。
我和夏树在门前待机,两个人从缝隙里窥探到的位置。
「……それじゃ、開けるぞ?」
“……那么,打开吧?”
極力音がしないよう、ゆっくりと扉を開けて数センチほどの隙間を作り、そこに顔を寄せる。
尽量不要发出声音,慢慢打开门,留出几厘米左右的间隙,把脸贴在那里。
そこから見えたのは、いつものボス部屋と同じ様な広い部屋。
从那里看到的是和往常的老板房间一样大的房间。
すぐに目に付くのは、その部屋の内周部分に並んでいる六つの台座。
马上映入眼帘的是房间内周排列的六个台座。
扉のすぐ傍に一つ、正面に見える本来の入口部分に一つ、そして左右の壁際に二つずつ。
门的旁边有一个,正面看到的本来的入口部分有一个,然后左右的墙角各两个。
高さ五〇センチほどのその台座の上には、直径三〇センチほどの透明な玉が置かれていて、その玉を抱える様に石像が作られていた。
在高约五十厘米的台座上,放置着直径约三十厘米的透明的玉石,像抱着那个玉石一样制作石像。
石像の大きさは、座った状態で一メートルほど。
石像的大小,在坐着的状态下大概有一米左右。
翼と二本の角があり、長い尻尾も付いている。
有翅膀和两个角,还有长长的尾巴。
一見するとガーゴイルっぽいが、なかなかにマッシブで、俺の印象的には、どちらかと言えば悪魔みたいな姿。
乍看之下很有少女风格,但却很有男子气概,在我印象中,总的来说是恶魔般的姿态。
部屋の中にあるのはそれらだけで、魔物の姿は見えない。
房间里只有这些,看不到魔物的身影。
これまでのボスは大きい魔物ばかりだったので、いるならば見落とすはずも無いのだが……。
到现在为止的BOSS都是大魔物,如果有的话应该不会看漏的……。
「なーんか、嫌な感じだな」
“怎么说呢,感觉很讨厌啊。”
「私もです。ここから攻撃してみますか? あの石像。どう見ても怪しいですし」
“我也是。要从这里攻击一下吗?那个石像。怎么看都很可疑”
「うん。あれが敵じゃなければ、そちらの方が驚く――いや、この怪しげな配置。部屋に入った途端、中心部分から何か出現するって事も?」
“嗯。如果那个不是敌人的话,那边会很吃惊——不,这个奇怪的配置。一进入房间,从中心部分会出现什么?”
あの玉、その不思議な力で召喚されるとか……?
那个球,用那个不可思议的力量召唤之类的……?
「つまり、どちらにしても、破壊して損は無いって事ですね」
“也就是说,不管怎么说,破坏了就没有损失了。”
「……いや、まぁ、そうなんだが」
“……不,嘛,是这样的。”
何というか、変身ヒーローの変身中に攻撃を仕掛けるような気分である。
怎么说呢,感觉就像是变身英雄变身中开始攻击一样。
だが、ロマンよりも実利。
但是,比起浪漫更现实。
天秤の片方に、自分たちの命が載っているなら躊躇はしない。
如果天平的一边有自己的生命的话,就不会犹豫。
「このパターンなら、『空間分断プレーン・シフト』が良いか……?」
“这种模式的话,‘空间分割平面移动’好吗……?”
敵(推定)が動いていないのなら、最大威力の魔法を使う良い機会である。
如果敌人(估计)不动,那就是使用最大威力魔法的好机会。
俺は一番近くの台座、その上にある石像の胴体を狙い、魔法の準備に入る。
我瞄准最近的台座,上面的石像的躯体,开始准备魔法。
「……あ、う、動いてます!」
“……啊,嗯,在动!”
俺が攻撃しようとしていること感知したのか、ナツキの言うとおり、すべての石像が動き始めていた。
也许是察觉到了我要攻击他,正如夏树所说,所有的石像都开始动了。
だがその動きは未だ遅く――。
但是这个动作还很慢——。
「『空間分断プレーン・シフト』!」
“‘空间分割平面移动’!”
魔法が発動する、その瞬間。
魔法发动的那一瞬间。
すべての石像が一斉に飛び上がった。
所有的石像一齐飞了起来。
「くっ!」
“哇!”
魔法の発動は一瞬遅かったが、狙った石像の膝から下と尻尾の先の切断に成功する。
魔法的发动虽然晚了一瞬间,但是成功切断了目标石像的膝盖以下和尾巴的前端。
しかし、それによるダメージがどの程度なのか。
但是,由此产生的伤害有多大呢。
その石像も他の五体と同じように、翼をはためかせて空中に浮いたまま。
那个石像和其他五尊一样,翅膀拍打在空中漂浮着。
動き出したことで【看破】できたのだが、やはり対象はガーゴイルだったようだ。
虽然因为开始行动而“看破”了,但果然对象是少女风格。
【飛行】というスキルに加え、【爪撃】や【尾撃】というスキルも見える。
除了【飞行】这个技能之外,还能看到【爪击】和【尾击】这样的技能。
前者はともかく、後者は尻尾による攻撃だろうか……?
前者暂且不论,后者是尾巴攻击吗……?
「――っ! 速――」
“——!快——”
ガーゴイルが空中に滞空していたのは僅かな時間だった。
钢缆在空中停留的时间很短。
一斉に俺たちの方へ視線を向けると、一気に滑空――。
一起朝着我们的方向看的话,一下子滑翔了——。
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
加油!加油!加油!
攻撃が到達する前に、素早く扉を閉めたのはナツキだった。
攻击到达之前,迅速关门的是夏树。
そのまま扉を押さえるナツキに助力して俺も扉を押さえると、扉に何かがぶつかる重い音が三回。鈍い振動が伝わってくる。
帮助就那样按住门的naruki我也按住门的话,什么撞到门的沉重的声音三次。传来微弱的振动。
ここの扉の素材は、石のような、コンクリのような、硬そうな素材。
这个门的材料是像石头一样,像混凝土一样硬的材料。
だが、このまま攻撃を受け止め続けられるかと言えば、正直心許ない。
但是,要说能不能就这样继续接受攻击的话,老实说我是不放心的。
そもそも一番の問題は、俺たちの筋力。
说起来最大的问题就是我们的肌肉力量。
二人で押さえていても、攻撃が加えられる度に扉が僅かに開くのだから、六体全部での力押しになれば支えきれないだろう。
即使两个人一起按住,每次攻击时门也会稍微打开,所以如果六个身体全部用力推的话,就无法支撑了吧。
「ナツキ! 逃げるぞ!!」
「海枣!我要逃走了
「はい! カウントします! ――三、二、一!」
“是的!计数!——三、二、一!”
ゼロのタイミングで、俺たちは扉から離れ、転移陣へ走る。
在零的时机,我们离开了门,向转移阵跑去。
そこに飛び込んだ途端、バンッと開かれる扉、激突するように地面に着地するガーゴイル。
刚一跳进那里,一扇打开的门,像激烈冲突一样地着地的少女风格。
だが次の瞬間、俺たちの姿はその部屋から消えたのだった。
但是下一个瞬间,我们的身影从那个房间消失了。

591
313js.md

@ -0,0 +1,591 @@
# 313 待ちの日々 (1)
313等待的日子(1)
刺すような太陽の光。
刺眼的阳光。
それを感じた俺は、すぐ隣にナツキがいることを確認し、安堵の息を吐いた。
我感觉到了这一点,马上确认了旁边有枣,吐出了放心的气息。
「無事に戻れたか」
“你平安回来了吗?”
「はい。あのガーゴイル、思ったよりも強そうな感じでしたね?」
“是的。那个小妖精,感觉比想象中还要坚强吧?”
「あぁ、かなり素早かったな」
“啊,真是相当敏捷啊。”
飛ぶ速度自体は、恐らくアローヘッド・イーグルの方が速いと思うのだが、ユキよりも大きく、ガッシリとした石の塊が飛んで来るのだ。
飞行的速度本身,我想大概是AROWhead Eagle更快,但是比雪还要大,硬朗的石块会飞过来。
その迫力はアローヘッド・イーグルの比ではない。
其魄力与箭头鹰无法比拟。
重量が石のままなら、体当たりされるだけで軽く死ねるだろう。
如果重量是石头的话,只要碰在身上就会轻死的吧。
「ま、ガーゴイルの対策はハルカたちも交えて考えるとして、だ。今回はちょっと焦ったなぁ……」
“嘛,关于Gigole的对策,Haruka等人也会考虑的。这次有点着急啊……”
なかなかにスリリングな体験。
非常惊险的体验。
正にゴム無しバンジージャンプ。
正是无橡胶蹦极。
俺の人生の中で、自分から崖を飛び降りるなんて事を経験するとは、想像もしていなかった。
在我的人生中,从未想过自己会从悬崖上跳下来。
「そうですね。私も落下した時は、一瞬、ダメかと思いましたから。ナオくん、本当に助かりました」
“是啊。我也在坠落的时候,一瞬间觉得不行。娜奥君,真的帮了我大忙了”
それでもナツキなら、何とか生き残りそうな気はするが、無傷とはいかなかっただろう。
尽管如此,如果是枣的话,总觉得还能幸存下来,但也不能说没有伤吧。
「次に行く時は、せめてパラシュートもどきでも準備して行くべきか?」
“下次去的时候,至少要准备降落伞吗?”
「もしくは、ハルカとナオくんに、『空中歩行ウォーク・オン・エア』をしっかりと使えるようになって貰うか、ですね」
“或者,请Haruka和nao君好好地使用‘空中步行Walk on Air’吧。”
「ハルカはともかく、俺は厳しいなぁ……。俺の【風魔法】、表記自体はまだレベル2だし」
“不管Haruka如何,我都很严格……。我的【风魔法】,表记本身还只是等级2而已”
色々すっ飛ばして、レベル8の『空中歩行』を練習していたのだから、なかなか物にならないのも当然。
因为练习了各种各样的快速飞行、等级8的“空中行走”,所以很难成为物体也是理所当然的。
もっとも、魔力の操作などに関しては、他の種類の魔法と同じわけだから、そのレベル差ほどに隔絶した違いがあるわけじゃないのだが。
不过,关于魔力的操作等,因为和其他种类的魔法是一样的,所以并没有像那个等级差那样有隔绝的区别。
風魔法の基礎がないので苦労しているが、恐らく難易度的には、時空魔法のレベル6とか7の方が難しい。
因为没有风魔法的基础所以很辛苦,但是恐怕难易度的话,时空魔法的等级6或者7比较难。
同じ時間を費やせば十分に使えるようになるとは思うが、その時間がなぁ……。
虽然我觉得花同样的时间就可以充分使用了,但是那个时间啊……。
「ガーゴイル、いただろう? できればあれに効果がありそうな『爆炎エクスプロージョン』を使えるようになっておきたいんだよなぁ」
“有女生吧?如果可以的话,我想尽量使用有效果的《爆炎扩展》”
こちらもレベル8の魔法だが、火魔法は順調にレベルを上げているので、『空中歩行』よりは物になりやすいだろう。
虽然这也是等级8的魔法,但是火魔法在顺利地提高了等级,比起“空中行走”更容易变成物体。
「確かに効果はありそうですが、爆発系の魔法を閉鎖空間で使っても大丈夫でしょうか……?」
“确实有效果,但是在封闭空间使用爆炸系魔法也没关系吗……?”
「む……そう言われると……ヤバそうにも思えるな?」
“嗯……这么说的话……会觉得很糟糕吧?”
ゲームとは違って、味方の魔法でも普通にダメージは喰らうので、そのあたり気を付けておかないと色々と危ない。
和游戏不同,即使是我方的魔法也能吃到普通的伤害,如果不注意到这点的话会有很多危险。
同じ部屋の中で爆発が起きたら、下手したら鼓膜とか破れそうである。
如果在同一个房间里发生爆炸的话,弄不好的话,鼓膜之类的都快破了。
対してガーゴイルは鼓膜なんて無さそうだし……。
相对的,少女风格好像没有鼓膜……。
「使うとしても、最初のみ、部屋の中に放り込んで扉を閉めて、でしょうか」
“即使要用,也只有一开始,放进房间里关上门,是吗?”
「もしくは、しっかりと実験を重ねて、だな。自分の魔法で全滅の危機とか、怖すぎる」
“或者,好好地反复实验,是吧。用自己的魔法来消灭一切的危机,太可怕了”
スタングレネードなんて物があるように、爆音というのはバカにできない。
就像斯坦格兰德有什么东西一样,爆炸声是不能小看的。
『爆炎』の場合、閃光はさほどでもないかもしれないが、使ったことがないので判らない。使うならしっかりと実験してから。間違っても、ぶっつけ本番はなしだな。
“爆炎”的情况下,闪光可能并不多,但因为没有使用过所以不知道。要用的话,要好好试验一下。就算错了,也没有正式表演。
「さて。それはそれとして、ハルカたちは……先に戻ってしまったって事は無いですよね」
「那么。那也就算了,Haruka他们……也没有先回去过吧”
「俺たちより早く戻って来られる可能性は……低いと思うが」
“能比我们早回来的可能性……我觉得很低。”
一応周囲を見回してみるが、辺りの様子は俺たちがダンジョンに入った時のまま。
我姑且环视了一下周围,周围的情况和我们进入地下城时一样。
当然、ハルカたちの姿は見えないし、何らかの目印が置いてあったりもしない。
当然,看不到Haruka他们的身影,也没有留下任何标记。
もしハルカたちが先にラファンへ戻ったのであれば、ここに何かしらのメッセージぐらいは残しておいたと思われる。
如果Haruka他们先回到了拉斐尔的话,应该会在这里留下一些信息吧。
そもそも、俺とナツキが転落して一日半程度。
说起来,我和枣掉下来一天半左右。
あの位置から二〇層の転移陣まで、何も無ければ十分に登れる距離かもしれないが、背後からの襲撃を警戒しつつ、魔法で防御しながらロッククライミングする事を考えれば、なかなかに厳しいだろう。
从那个位置到20层的转移阵,如果什么都没有的话,也许可以充分攀登的距离,但是如果一边警戒着从背后的袭击,一边用魔法防御一边攀岩的话,是相当严峻的吧。
ユキの魔力量的にも、体力的にも。
雪的魔力量也好,体力也好。
「では、二、三日、ここで待ってみましょう。それでもハルカたちが戻って来ないようであれば、メッセージを残して、ラファンに戻りましょう。――大丈夫、ですよね?」
“那就在这儿等两三天吧。即便如此,如果Haruka他们还没有回来的话,就留下信息,回到拉斐尔吧。——没关系吧?”
「あぁ。ナツキと二人だけなら、転移でそれなりの場所まで行ける。そこからなら、問題なく帰れるだろう」
“啊。如果只和夏树两个人的话,转移到一个地方就可以了。”
ここのダンジョン、かなり深い場所まで潜ってはいるが、実のところ、俺たちがこれまで冒険してきた中で最も強い魔物が出るエリアは、このダンジョン周辺なのだ。
这里的地下城,虽然潜藏在相当深的地方,但实际上,我们至今为止冒险过的最强魔物出现的区域是这个地下城周边。
昨日の森でスタブ・バローズが出てきたことを考えれば、あの辺りでやっと、この周辺の敵に近づいてきた、という感じ。
考虑到昨天森林里出现了星巴克・巴罗斯,感觉在那附近终于接近了这附近的敌人。
まだまだ脅威度は、この辺りの方が高い。
威胁度还是这一带高。
これまでで最強だったダールズ・ベアーは、あれ以降遭遇していないが、それでも二人で歩くには少し不安。
至今为止最强的戴尔兹·贝勒,从那以后就没有遇到过,尽管如此,两个人一起走路还是有点不安。
そこの部分を転移でショートカットすれば、たぶん俺たちだけでも、無事に町に戻れるはずである。
如果把那个部分转移后剪短的话,大概只有我们一个人也能平安返回城镇。
もちろん、ハルカたちと合流できるのが一番なんだけどな。
当然,能和Haruka他们合流是最好的。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
ハルカたちを待つ間、俺が最初に取り組んだのは簡易的な砦……とまで言うと大げさかもしれないが、シェルター的な物を作ることだった。
在等Haruka他们的时候,我最先着手做的是简易的城堡……这么说可能有点夸张,其实是制作避难所式的东西。
今回、ダンジョンに入る前に、広場部分は簡単な柵で囲んでいたが、所詮は簡単な柵。強力な魔物を止められるような物ではない。
这次,在进入地下城之前,广场部分用简单的栅栏围起来,但终究只是简单的栅栏。并不是能阻止强力魔物的东西。
その上、今の俺たちは二人だけ。
而且,现在的我们只有两个人。
身を守るための物は必須だった。
为了保护自己的东西是必须的。
「転移陣で戻ってくるポイント、そこを囲む様に壁を作ろうと思うんだが、どう思う?」
“转移阵回来的关键点,我想把墙壁围起来,你觉得怎么样?”
「そうですね、今後のことも考えると、有益かもしれませんね。戻ってきて、即魔物と遭遇という危険も避けられますし」
“是啊,考虑到今后的事情,也许会有好处。回来后,也能避开遭遇魔物的危险”
「だよな」
“是啊。”
これまでのところ、転移陣で戻ってきた際にそこに魔物がいた、という経験はしていないが、あり得ない話では無い。
到目前为止,虽然没有经历过转移阵回来的时候那里有魔物,但并不是不可能的事。
この周辺、普通に魔物が跋扈しているのだから。
因为这附近一般都有魔物横行。
「まぁ、今現在の危険性に関して言えば、ダンジョン内で過ごすという方法も取れますけど。一層の敵は弱いですからね」
“嘛,就现在的危险性来说,也可以采取在地下城内度过的方法。因为进一步的敌人很弱”
「……なるほど。ここで野営するよりも、ダンジョンに入っていた方が安全なのか」
“……原来如此。比起在这里露营,进地下城更安全吗?”
そいつは盲点だった。
那是个盲点。
基本的に、ダンジョンの魔物は外に出ないし、外の魔物もダンジョンに入らない。
基本上,地牢的魔物不外露,外面的魔物也不进入地牢。
つまり、ダンジョンの一階層であれば雑魚しかいないということ。
也就是说,地牢的一层只有小鱼。
それこそ、『聖域サンクチュアリ』でも使っておけば侵入を防げる程度の魔物ばかり。
正因为如此,即使是在《圣域圣殿》中使用也能防止侵入的魔物。
安全性を考えるなら、ナツキの言うとおりなのだが……。
要考虑安全性的话,正如枣树所说的那样……。
「いや、やはり壁は作ろう。今後の安全性向上のためにも。あと、明るい方が嬉しい」
「不,还是做墙壁吧。为了今后的安全性提高。还有,开朗的人会很开心”
「私もそれは同じですね。――雨が降らない限りは」
“我也一样呢。——只要不下雨”
テントはハルカたちが持ってるからな。
因为Haruka他们有帐篷。
一応、タープ的な物は持っているが、それを使うぐらいなら、ダンジョンに入る方がマシだろう。
我姑且有涡轮的,但与其用那个,不如进地下城吧。
「えーっと、壁は崖を背にして、コの字型で良いか」
“呃,墙壁背对着悬崖,这个字形可以吗?”
ダンジョンの入口がある崖。その近くに転移陣の帰還ポイントはある。
迷宫入口的悬崖。在那附近有转移阵的返回点。
その帰還ポイントを含めるように(ただし、ダンジョンの入口は含めないように)、崖を背にして一辺六メートルほどのコの字を描く。
为了包含返回点(但是,不包括迷宫的入口),描绘了背对着悬崖一边六米左右的コ字。
大きさとしては、学校の教室よりも一回りほど小さい感じだろうか?
从大小来说,感觉比学校的教室小一圈左右吧?
このぐらいのスペースがあれば、俺たちのパーティー七人が野営するにしても十分だろう。
如果有这样的空间,我们的聚会七个人露营也足够了吧。
「防衛のことを考えたら、壁の上に登れる方が良いよな。厚みは一メートルほど、高さは……二・五メートルほどで良いか」
“考虑到防卫的话,还是爬到墙上比较好。厚度有一米左右,高度……二・五米左右可以吗?”
「入口はどうしますか?」
“入口怎么办?”
「アーチ型に穴を開けて……いや、扉を作ることを考えれば、四角の方が良いか」
“在拱形上开个洞……不,考虑到制作门的话,还是四角形比较好吧。”
今後どうするかはまた考えるとして、とりあえずは人一人が何とか通り抜けられる程度の隙間――トーヤだと少しキツいぐらいの隙間を空けておくことにする。
今后该怎么办还得再考虑一下,总之先把每个人都能通过的间隙——如果是火炬的话,稍微有点吃力的间隙空出来。
扉が手に入ったら、その時に大きさを調整すれば良いだろう。
如果门到手了,那时调整大小就可以了吧。
魔法で作ると、改修が簡単なのが大きなメリットだよな。
用魔法做的话,修改简单是最大的优点。
今回は速度優先という事で、素材は奇をてらわない普通の土。
这次由于速度优先,素材是不在乎奇的普通的土。
『土操作グランド・コントロール』で最も簡単に操作できるその辺の土を使って、壁を立ち上げていく。
使用“土操作接地控制”中最简单操作的那块土,将墙壁竖立起来。
壁に土を使った分、外側の土が減って堀のようになるのだが、それもまた良し。
墙用土的量,外侧的土减少变成护城河,不过,那个也可以。
強度には劣るが、魔力の節約と速度優先。
虽然强度较差,但是魔力的节约和速度优先。
それでも壁を作り終わる頃には魔力も枯渇し、その日はそのまま就寝。
尽管如此,制作完墙壁的时候魔力也枯竭了,那天就那样就寝了。
翌日からは、広場を囲む様に作っていた木の柵を置き換えるように、土壁作りに励む。
从第二天开始,为了替换围着广场的木栅,努力筑堤。
こちらはダンジョンの入口を含むコの字型。
这是包含迷宫入口的コ字形。
高さを三メートルほどにする代わりに、厚みは五〇センチほどに抑えて、魔力を節約。
把高度控制在3米左右,而厚度控制在50厘米左右,节省魔力。
上に登るのは厳しいので、砦としてはやや問題なのだが、対処方法はある。
因为登顶很困难,所以作为要塞来说有点问题,但是有处理方法。
それが、ナツキの作っている物見台二つ。
这是两个枣树做的东西架。
俺が壁を作っていた間、する事が無かったナツキはそのへんの木を切りだして、『【木工】スキルが身につくかもしれませんし……』などと言いながら、キャンプ場にある様なテーブルや椅子を作っていたのだが、所詮は簡単な造作物。
我在做墙壁的时候,没有做过的枣树把那边的树砍掉,一边说着‘木工’也许能掌握技能……’,一边做野营地的桌子和椅子,但终究是简单的造作。
椅子なんて、丸太を輪切りにして並べただけなので、一日目にして作業は終了していた。
椅子之类的,只是把圆木切成圆片摆在一起,所以第一天工作就结束了。
そんなナツキが二日目以降に作り始めたのが、その物見台。
这样的海枣在第二天以后开始制作,就是它的了望台。
丸太を組み合わせただけの比較的簡単な代物なのだが、人が立つ場所は四メートル近い高さにあるし、二、三人程度なら立てるだけの広さもある。
虽然只是把圆木组合起来比较简单的东西,但是人站的地方有近4米的高度,也有两、三个人站着的大小。
周辺の監視や弓、魔法などによる攻撃には十分に使える。
可以充分用于周围的监视、弓、魔法等攻击。
ちなみに、これの作製は俺も手伝っている。
顺便说一下,我也在帮忙做这个。
さすがにこの範囲の壁を一気に作れるほどの魔力は無いので、適度に休んで魔力の回復をしつつ、ナツキを手伝ったり、昼寝をしたり、ご飯を食べたり。
因为没有一口气能制作这个范围的墙的那样的魔力,适度休息一边恢复魔力,一边帮助枣,午睡,吃饭。
ナツキと二人して、結構のんびりと一日半ほど。
和夏树两个人在一起,过了相当悠闲的一天半左右。
とりあえずの防衛設備が完成した。
总之防卫设备完成了。
強度自体はそこまでではないので、ダールズ・ベアーが攻めてきたら危ないが、この辺で普通に出てくるキラーゲーターや、スタブ・バローズあたりでは侵入もできないだろう。
因为强度本身还没到这个程度,所以如果戴尔兹·贝利攻击过来的话会很危险,但是在这附近普通出现的杀手玩家和星巴克·巴罗斯等也不能侵入吧。
フォレスト・ハイド・スパイダーは……侵入は可能かもしれないが、基本的に木の上にいる魔物なので、木の生えていないこちら側に入ってくることは、たぶん無いだろう。
森林·海德·蜘蛛……可能可以侵入,但基本上是树上的魔物,所以不会进入没有树的这边吧。
「これで安心して、ハルカたちの帰りを待てるな」
“这样就放心了,别等着Haruka他们回来了。”
「ですね。とは言え、さすがにそろそろ戻ってきても良いと思いますが……」
“是啊。话虽如此,但我觉得差不多该回来了……”
今日は、俺たちがダンジョンから出てきて二日目。
今天是我们从地下城出来的第二天。
俺とナツキは、帰還ポイントの傍に作ったテーブルを使って、昼食を摂っていた。
我和夏树,用归还点旁边做的桌子,吃了午饭。
暇に厭かせて作った、バーベキューコンロで肉を焼きながら。
空闲的时候,一边用烤肉炉烤肉一边做。
材料は工事中に何度か襲ってきたスタブ・バローズである。
材料是施工中几次袭击的宿雾。
「うーむ、まだ時間が掛かるようなら、小屋でも作るか? ログハウス的な」
“嗯,如果还需要时间的话,可以在小屋里做吗?像loghouse一样的”
「ログハウスですか。作り方が判りませんから、上手くできるかどうか……」
“是loghouse吗。因为不知道做法,所以能不能做好……”
「うん、俺も知らないな」
“嗯,我也不知道。”
俺の持っている知識なんて、木の皮はきちんと剥がないとダメという事と、幹を削って組み合わせていくという事ぐらいである。
我所拥有的知识,就是必须要好好剥下树皮,和削树干组合起来。
これでは、壁はできても屋根も扉も、作れるはずがない。
这样的话,即使墙可以做,屋顶和门也不可能做出来。
「やはり、シモンさんにでも手解きを受けるか?」
“果然,西蒙先生也要接受解答吗?”
「もしくは、組み立てるだけで作れるような小屋を作ってもらうか……あ、ユキに習わせましょうか? 【大工】とか【木工】のスキル、コピーできるかも?」
“或者,能不能给我建一个只需要组装就能做的小屋……啊,让雪树学习一下?”木匠”或者“木工”的技能,也许可以复印?”
「おぉ、それは良いな。簡単な小屋ぐらいなら、レベル1のスキルでも作れそうだし」
“哇,那太好了。简单的小屋的话,等级1的技能也能做出来”
考えてみれば、ユキの【スキルコピー】って、知り合いが増えれば増えるだけ、地味に有効だよな。
试想一下,YUKI的【技能复制】,只是随着认识的人增加而增加,对质朴有效。
手解きを受けられるほど仲良くなるのは、簡単では無いだろうが、冒険者に必要なスキル以外でも、覚えられるわけで。
关系好到可以接受解答的程度,虽然不是很简单,但是除了冒险者需要的技能以外,也能记住。
長期的に見れば、一番潰しが効くのはユキなのかもしれない。
从长期来看,最有效果的可能是雪。
いや、ハルカやナツキも【裁縫】や【調理】みたいなスキルを持っているし、トーヤには一応、【鍛冶】がある。
不,Haruka和枣也有【缝纫】和【烹饪】这样的技能,toya姑且有【锻冶】。
……おや? 冒険者を引退して一番役立たずになるのって、もしかして俺?
……咦?从冒险者引退后成为最没用的人,难道是我?
ハルカのヒモ確定……?
确定Haruka的himo……?
――あ、いやいや、俺には魔法があった!
——啊,不,我有魔法!
氷を作れるだけでもお仕事になるのだ。
仅仅是制作冰块就可以成为工作。
セーーフ! ダメ人間、回避。
蓝精灵!废柴人,回避。
将来家庭を持った時、『お父さんのお仕事ってなに?』と子供に訊かれても、空気が凍るような事態は避けられた! ふぅ。
将来有家庭的时候,“爸爸的工作是什么?”即使孩子这么问,也能避免空气结冰的事态!呼。
「ナオくん、食後のデザート、何を食べますか? ケーキでも出しましょうか? テーブルもある事ですし」
“娜奥君,饭后甜点吃什么?要给你蛋糕吗?还有桌子”
「お、良いな。じゃあ、それで」
“哦,真好啊。那就这样吧」
「では、紅茶も一緒に淹れますね」
“那么,红茶也一起泡吧。”
簡単につまめるクッキーや果物に対し、やはりケーキはテーブルとお皿、それにフォークがないと食べづらい。
与简单的饼干、水果相比,蛋糕如果没有桌子、盘子和叉子的话就很难吃了。
ナツキは切り分けたケーキをお皿に載せると、ティーカップに紅茶を注いで俺の前に並べてくれた。
枣把切好的蛋糕放在盘子里,把红茶倒进茶杯里摆在我面前。
ちなみにこの紅茶は自家製。
顺便说一下,这个红茶是自家制的。
高級茶葉と比べてどうかは知らないが、それなりに飲めるので問題は無い。
虽然不知道和高级茶叶相比怎么样,但因为能喝到相应的程度,所以没有问题。
端から見れば、森の中で優雅にお茶をしている二人。
从侧面看,两个人在森林里优雅地喝茶。
何してるんだって感じだが、人目がないので問題ない。
虽然感觉好像在做什么,但是因为没人看见所以没问题。
俺はケーキをフォークで切り分けると、一口パクリ。
我把蛋糕用叉子切开,然后一口咬下去。
「うん、美味い」
“嗯,很好吃。”
「ありがとうございます。お代わりもありますよ」
“谢谢。还有要添的哦”
「うーん、食べ過ぎたら、太らないか?」
“嗯,吃多了不会胖吗?”
「そんな事、気にする必要も無いほど、動いていると思いますけど、私たち」
“那种事,我想我们已经动得不必在意了。”
「ナツキたちも体重は――」
“夏树他们的体重是——”
「ナオくん、何か言いましたか?」
“娜奥,你说什么了吗?”
「いえっ! 何でもありません!」
“不不!没什么!”
ニッコリと笑ったナツキに、俺は即座に首を振る。
对着微笑着的枣,我立刻摇头。
危ない。
危险。
まったく気にする必要が無くても気にするのが女性だった。
完全不需要在意的是女性。
今はただ、このケーキを味わうことに専念しよう。
现在就专心品尝这个蛋糕吧。
そんなことを思って、再度パクリとフォークを咥えた俺の視界の片隅で、光が生まれた。
想到这些,我又一次叼着叉子,在我视线的角落里,产生了光芒。

487
314js.md

@ -0,0 +1,487 @@
# 314 待ちの日々 (2)
314等待的日子(2)
その光の源は、帰還ポイントの場所。
那个光的来源是归还点的地方。
俺が『あー、帰還する時って、外から見ているとこんな感じなのかー』などと思っている間にも光は収まり、そこに現れたのはハルカたち一行だった。
我想着“啊,要回去的时候,从外面看就是这样的感觉啊”,光也停了下来,出现在那里的是Haruka一行人。
人数は五人。一人の欠けもない事に俺が安堵していると、ハルカたちは周囲を囲む壁に一瞬唖然とした後、慌てたように武器を構え、その直後、俺たちの姿に気付く。
人数是五个人。当我为一个人的不足而放心的时候,Haruka他们在周围的墙壁上一瞬间目瞪口呆,然后慌慌张张地拿起武器,紧接着,注意到了我们的身影。
「おかえりー」
“我回来了。”
「ただいま……?」
“我回来了……?”
手を上げて軽く声を掛けた俺に、ハルカは律儀に返事をしつつ、暫し沈黙。
对于举起手轻轻打招呼的我,Haruka一边诚实地回答,一边沉默了一会儿。
ハッとしたように俺に詰め寄ってきた。
突然向我逼近。
「え? いや、なに? 待って、どういうこと?」
“啊?不,什么?等等,怎么回事?”
「全員無事みたいだな。良かった、良かった」
“好像所有人都没事啊。太好了,太好了”
「いや、それはあたしたちの台詞だよ!? ナオとナツキ、落ちちゃったよね? 二人とも、幽霊とかじゃないよね!? どーして、先に戻って、ケーキなんて食べてるの? そもそもこの周囲の様相は何!」
“不,那是我们的台词!?娜奥和枣掉下去了吧?两个人都不是幽灵吧!?怎么,先回去,吃蛋糕什么的?这周围到底是什么样子!”
ユキもまた、俺の身体をペタペタと触りながら、混乱した様子を見せる。
雪也再次摸着我的身体,表现出混乱的样子。
「安心しろ。生身だ。怪我も無い」
“放心吧。我是活人。没有受伤”
「幸い、二日ほど前に戻ってこられました」
“幸好两天前回来了。”
顔を見合わせてそう応えた俺とナツキの様子に、最初に笑みを浮かべたのはトーヤ。
看着我和枣的脸,最先浮现出笑容的是TOYA。
メアリとミーティアも、驚いた様子を見せながらも、笑顔になった。
玛丽和米蒂亚也露出吃惊的样子,脸上露出了笑容。
「さすがはナオお兄ちゃんなの!」
“不愧是娜奥哥哥!”
「ナオさんたちなら大丈夫だとは思っていましたが、それでも安心しました」
“我觉得娜奥他们应该没问题,但我还是放心了。”
「危ない部分が無かったとは言わないが……まぁ、こうして無事だな」
“虽然不能说没有危险的地方……不过,这样就没事了。”
「うー、できるだけ早くナオたちを助けに行かないと、って意気込んでいたのに」
“嗯,明明很有干劲地说要尽快去救那奥他们。”
ハルカたちもやっと落ち着いたのか、不満そうな、それでいて安堵したような、そんな複雑そうな表情で、ハルカが俺のことをポカポカと叩く。
Haruka他们也终于平静下来了吗,看起来很不满,但还是很安心的表情,Haruka啪嗒啪嗒地敲着我。
「あー、それは、すまん?」
“啊,那很抱歉吗?”
「はぁ……良いんだけどね。無事に戻ってきてくれたんだから」
“哈……虽然很好。因为他平安回来了”
「ナオとナツキなら、もしかすると自力で戻ってくるかも、と思わなくも無かったけど、まさかあたしたちより先に、とはねぇ」
“我也不是不想,如果是娜娜和枣的话,也许会靠自己的力量回来,但没想到会比我们先回来。”
「まぁ、運が良かっただけだな。想像は付いていると思うが、俺たちも転移陣で戻ってきたんだぞ?」
“嘛,只是运气好而已。我想应该有想象,但是我们也是从转移阵回来的吧?”
「やっぱ、そうだよね。じゃないと、追い越せるわけないよね」
“果然是这样啊。不这样的话,是不能超过的吧”
俺の言葉に、ユキとハルカも納得したように頷く。
对于我的话,yuki和Haruka也认同地点头。
馬鹿正直に岩壁を登ったり、ガーゴイルを斃してダンジョンを逆行なんてしていたら、恐らく数ヶ月単位で時間が掛かったはずである。
如果老实说傻傻地爬上岩壁,或是死了少女哥尔而在地牢逆行的话,恐怕要花几个月的时间。
まずはレベルアップから始めないと、どうしようも無かっただろうから。
如果不先从提升水平开始,那就没办法了。
「それよりも、オレとしてはこの周りの壁の方が気になってるんだが? あと、そこのテーブルとかもな」
“比起那个,我更在意这周围的墙壁吗?还有就是那边的桌子吧”
「壁はあれだ。安全のためだ。俺とナツキの二人だけじゃ危ないだろ? この周辺の魔物」
“墙壁就是那个。为了安全。只有我和枣两个人的话很危险吧?这附近的魔物”
「テーブルなどは時間があったから、ですね。ハルカたちはお昼、まだですか? 食べますか? 私たちのお昼は、スタブ・バローズの焼肉でしたが」
“因为桌子等有时间,所以呢。Haruka他们还没吃午饭吗?吃吗?我们的午饭是星巴克•巴罗斯的烤肉”
「食べたいの!」
“我想吃!”
「お、良いな。そこのコンロでやるんだろ? 火を熾すな」
“哦,真好啊。在那里的大厅里做吧?不要生火”
ナツキが言うが早いか、ミーティアが即座に手を上げ、トーヤもすぐに動き出した。
夏奇一说,米蒂亚立刻举起手来,火炬也马上动了起来。
コンロの中ではまだ炭が燻っているので、準備はすぐに整うだろう。
炉灶里炭还冒着烟,所以马上准备好了吧。
「はぁ。私たちが神経を磨り減らしていた間に、二人は仲良く焼肉パーティーだったのね。――デザートまで食べてるし」
“哈。在我们磨炼神经的过程中,两个人很要好地开了烤肉派对呢。——还吃了甜点”
「あっ!」
“啊!”
俺の手からフォークを奪ったハルカが、半分以上残っていたケーキにそれをぶっ刺し、やけになったかのように一口で食べてしまう。
从我手里抢了叉子的Haruka,把它刺到了剩下一半以上的蛋糕上,像烧了一样一口吃掉了。
「うん、美味しいわね」
“嗯,很好吃呢。”
「ハルカ、お行儀が悪いですよ。食べたいなら出しますから」
“Haruka,你太没礼貌了。想吃的话就拿出来”
「それは食後に頼むわね。これは、ナオへの八つ当たりだから」
“那就饭后再点吧。这是对娜奥的八发脾气”
「………」
「………」
少し咎めるように言うナツキに、ハルカは軽く応えて手を振る。
对于夏树说要责备她一点,春香轻轻回应并挥手致意。
意識しているならやるなと言いたいが、心配掛けたのは間違いないので、俺は口を噤んだのだった。
如果有意识的话,我想说不要做,但我绝对不会让你担心,所以我闭上了嘴。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「ダメ押しに鉄砲水まで……なかなかに殺意が高いわねぇ、二一層は」
“一意孤行,再加上炮水……杀意真高啊,再加一层。”
「ハルカたちの方は?」
“Haruka他们呢?”
「私たちも、真夜中にフライング・ガーが飛んで来たわね、突然。トーヤのおかげで、被害は無かったけど」
“我们也是,半夜飞来了飞碟,突然。多亏了火炬,才没有受灾”
ハルカたちが昼食を終えるのを待ち、俺たちは食後のお茶を飲みながら、互いの状況を報告し合っていた。
我们等着Haruka他们吃完午饭,一边喝着饭后的茶,一边互相报告着情况。
俺たちも夜中にシャドウ・マーゲイが襲ってきたが、ハルカたちの方も、テントで寝ているところにフライング・ガーが突っ込んできたらしい。
我们也在半夜里受到了阴影·玛盖伊的袭击,不过Haruka他们好像也是在帐篷里睡觉的时候飞来了飞人。
革鎧すら貫くあれが、暗闇の中から突然飛んで来るとか、超怖い。
连皮铠甲都能穿的那个,突然从黑暗中飞过来,超恐怖。
「テントの方は大丈夫だったのか?」
“帐篷那边没问题吗?”
「えぇ、そちらも問題なく。二日目以降は、きちんと対策してから寝るようにしたしね」
“啊,那边也没问题。第二天以后,要好好对策后再睡”
せっかく手に入れた便利な魔道具だけに、それが無事だったのは朗報だ。
正因为是好不容易得到的便利魔道道具,所以才平安无事,这是个好消息。
二一層も、ガーゴイルのボス部屋を抜けた後では活躍しそうだし。
第二层,在穿过少女风格的BOSS房间后也会更加活跃。
もちろん、ハルカたちの無事の方が大切な事は、言うまでも無いのだが。
当然,Haruka他们的平安更重要的事,不用说。
「なかなかに油断できない感じですね。岩壁の方はどうでしたか? あれ以降、崩れたりは……」
“感觉很难掉以轻心。岩壁那边怎么样?那之后,崩溃了……”
「それは無かったよ。あたしもかなり注意して登ったんだけど」
“那是没有的。我也非常小心地爬上去了”
「それは幸いです。問題は、あの時崩れたのが偶然なのか、ダンジョンの罠なのか不明な事ですが……判りませんよね?」
“那太好了。问题是,那个时候崩溃的是偶然,还是地下城的陷阱,还不清楚……不知道吧?”
そう言ってナツキが目を向けたのは、あの時一人上に残っていたトーヤ。
夏树这样说着,目光转向了那个时候一个人上面残留着的火炬。
トーヤ以外は数十メートル下から見上げていただけで、判るとするなら彼だけなのだが、問題はトーヤが罠関連のスキルを持っていないことか。
除了Toya以外,他只是从几十米以下抬头看,如果能判断的话只有他,问题是Toya没有陷阱相关的技能吗。
それでもトーヤは、あの時のことを思い出すようにしばらく考えてから、口を開いた。
尽管如此,TOYA还是想了想,想了一会儿就开口了。
「んー、オレとしては、唐突に崩れたって印象だな。自然に崩れたなら、もう少し予兆がありそうだし、罠じゃねぇか? 本当に単なる印象に過ぎねぇけど」
“嗯,对我来说,印象是突然崩溃了。如果自然崩溃的话,好像还有一些预兆,不是陷阱吗?真的只是单纯的印象而已”
「そう思いますか……。う~ん、私たちが二一層を進むには、もう少し準備が必要かもしれないですね」
“你这样想吗……。嗯,我们要进一步推进,也许还需要再做一些准备呢”
「それは私も思ったわ。せめて落下対策は、もう少し必要よね」
“我也这么想。至少还需要一些防止坠落的对策吧”
「ナオとハルカは自前で何とかなるにしても、あたしたちはねぇ……」
“娜奥和Haruka就算自己想办法解决,我们也不会……”
「俺としては、簡易的なパラシュートでもあれば、と思っているんだが。多少でも速度が緩められれば、俺かハルカが捕まえることもできるだろ?」
“我觉得如果有简单的降落伞就好了。如果速度稍微慢一点的话,我或者Haruka也能抓住吧?”
今回、俺がナツキを捕まえることができたのは、ナツキが上から落ちてきたからこそ。
这次我能抓住枣,是因为枣从上面掉下来了。
もしナツキが落下した時に、俺がトーヤの位置にいたとすれば、上手く確保できたかは、かなり怪しい。
如果枣掉下来的时候,我在火炬的位置上的话,能不能很好地确保下来,相当可疑。
だが、パラシュートがあれば、俺かハルカが『空中歩行ウォーク・オン・エア』で捕まえるだけの余裕が生まれる、かもしれない。
但是,如果有降落伞的话,也许我或者Haruka就有足够的时间来用“空中步行walk on Air”抓住它了。
断言はできないが、無いよりはマシだろう。
虽然不能断言,但总比没有强吧。
「パラシュート……作れなくはないけど、実験できないのが難点……いえ、もしかして、私が実験することになるのかしら?」
“降落伞……虽然不是不能做,但是不能做实验是难点……不,难道是我要做实验吗?”
はて? と言うように小首を傾げるハルカだが……。
咦?像这样微微歪着头的Haruka……。
「他にいないよな。高所から落下して無事なのは。少なくとも俺よりも『空中歩行ウォーク・オン・エア』を上手く使えるだろ?」
“没有其他人吧。从高处落下平安无事。至少能比我更好地使用“空中步行街·空气”吧?”
「そう、かもしれないけど、できれば避けたい事態ね、それは」
“是的,虽然可能,但如果可能的话,还是想避免的事态。”
「ガンバレ。俺も練習して『空中歩行』が上手く使えるようになれば、分担するから」
“加油。我也练习一下,如果能熟练地使用“空中行走”的话,就分担费用了”
顔を引きつらせ、冷や汗を垂らすハルカに、俺は苦笑してフォローの言葉を掛ける。
我苦笑着对拉着脸、流着冷汗的Haruka说了跟踪的话。
とは言え、パラシュートの実験ができそうな場所を探す事も、また難しそうではあるが。
话虽如此,寻找能够进行降落伞实验的地方似乎也很难。
「ま、それはとりあえず措いておくとして。収穫の方は?」
“嘛,那暂且不提。收获的方面呢?”
「トレントを多少手に入れたのは話したよな? 後は、宝箱から手に入った戦槌ウォー・ハンマーだな。ハルカたちは……大して無いよな?」
“我说你多少拿到了一点多伦多吧?还有就是从宝箱里得到的战锤。Haruka他们……没什么大不了的吧?”
「来た道を戻っただけだからね。むしろ、転移ポイントを大量に消費したから、赤字ね」
“因为我只是回到了来的路上。倒不如说,因为大量消费了转移点,所以出现了赤字”
俺が確認した時には一つ増えただけだったが、崖を一段上る度に、転移ポイントを設置してきたらしい。
我确认的时候只增加了一个,但是每次爬上悬崖的时候,好像都设置了转移点。
確かにそれは赤字。
确实那个是赤字。
だが、それに異を唱えたのはユキだった。
但是,对此提出异议的是雪。
「でも、寝ているだけで、フライング・ガーが手に入ったよ?」
“但是,光是睡觉,就买到了飞碟?”
「たっくさん、捕まえたの!」
“嗯,抓住了!”
「捕まえたというか、壁に突き刺さっているのを、朝に回収するだけでしたが……かなりの量、確保できました」
“说是抓到了,其实只是早上回收扎在墙上的东西……能确保相当多的量。”
ミーティアとメアリもニコニコと嬉しそうに、マジックバッグから取りだした袋を見せてくれる。
米蒂亚和玛丽也笑嘻嘻地看起来很开心,给我们看从魔术包里取出来的袋子。
覗いてみれば……おぉぅ、メッチャ入ってるやんけ。
看了看……哦,里面装着呢。
「これなら、たくさんの干物が作れそうですね」
“这样的话,好像可以做很多鱼呢。”
「焼いても美味しかったの!」
“烤了也很好吃!”
「あぁ、食べたんだ?」
“啊,吃了吗?”
野営の時に魚を焼く程度の余裕はあったらしい。
野营的时候好像有烤鱼的余裕。
ま、それは俺たちも同じか。
那我们也一样吗。
あの時、森で狩ったスタブ・バローズを焼いて食ってるし。
那个时候,我在森林里烤着狩猎的星巴克白玫瑰吃。
仲間とはぐれても平常心を忘れない。
即使和伙伴走散也不会忘记平常心。
パーティー名の“明鏡止水”に恥じない行動。良いんじゃない?
不辱派对名“明镜止水”的行动。不是很好吗?
平常心を忘れ、パニックになった人から死んでいく。
忘记平常心,从恐慌中死去。
それは、パニックムービーやホラー映画の定番故に。
那是因为恐慌电影和恐怖电影的经典。
「――でも、さすがに、テーブルや椅子まで作って、のんびりとケーキでティータイムはちょっとやりすぎかと思う」
“——但是,果然还是做了桌子和椅子,悠闲地吃蛋糕,喝茶时间有点过了。”
「おっと、ブーメランが飛んで来たぞ? ささっ、ナツキさん、ハルカさんにケーキの追加を」
“哎呀,飞镖飞过来了?小指,夏树,请给Haruka追加蛋糕”
「はいはい」
“是是是是”
ジト目を向けるハルカに、そして、物欲しそうなミーティアたちにもケーキを提供。
给盯着吉特的Haruka,还有,看起来很想要的Metier们也提供了蛋糕。
「私はケーキ程度じゃ誤魔化されないんだけど」
“我只是蛋糕的程度是不会被欺骗的。”
「まぁまぁ。ほら、あーん」
“嘛。看,啊”
「もう……」
“已经……”
俺がフォークで突き刺したケーキを差し出すと、ハルカは少し頬を膨らませ、不満そうな表情を浮かべつつも、パクリと食べる。
我拿出用叉子扎起来的蛋糕,Haruka的脸稍微鼓了起来,脸上浮现出不满的表情,但还是大口地吃。
そんなハルカを見て、ナツキは少し微笑みながら、口を開く。
看着这样的春香,夏树微微微笑着开口。
「もちろん、私たちも心配はしていたんですよ? でもそれ以上に、ハルカたちに対する信頼感の方が上回っていただけで」
“当然,我们也很担心呢?但是比起这个,只是对Haruka他们的信赖感更高而已”
「そうそう。ハルカたちは落ちたわけじゃないし、十分に戻って来られると」
“对了对了。Haruka他们并没有掉下去,希望能充分回来”
「……まぁ、そういう事にしておいてあげるわ。ひとまず、ラファンに戻るとして……今日はここで一泊しましょうか。せっかくナオがしっかりした場所を作ってくれたことだし?」
“……嘛,我就这么办吧。暂且回到拉斐尔……今天就在这里住一晚吧。好不容易娜奥为我们营造了一个坚实的地方?”
「賛成~。あたしもちょっと疲れた。ここなら安全そう」
“赞成~。我也有点累了。这里应该很安全”
そう言いながら、ユキが視線を向けたのはメアリとミーティアの方。
一边这样说着,雪把视线转向了玛丽和米蒂亚。
昼食とデザートを食べ終え、一見すれば元気そうな二人ではあるが、よく見ればその表情には少し疲れが見える。
吃完午饭和甜品,乍看之下两人似乎很有精神,但仔细一看,他们的表情多少有些疲惫。
ここ数日、のんびりとしていた俺たちとは異なり、ハルカたちはロッククライミングに明け暮れていたのだ。
这几天,和悠闲的我们不同,Haruka他们整天埋头于攀岩。
まだ子供である二人にとって、体力的にも、精神的にもかなりの負担だったことは、想像に難くない。
对于还只是孩子的两个人来说,无论是体力上还是精神上都是相当大的负担,这一点不难想象。
――なるほど、そっちが主目的か。それであれば反対する理由も無い。
——原来如此,那是主要目的吗。那样的话也没有反对的理由。
「了解。それじゃ、出発は明日な。それまではのんびり休んでくれ。この壁の中なら、ほぼ安全だからな」
“明白。那么,明天出发吧。在那之前请好好休息。在这堵墙里,基本上是安全的”
ナツキと二人だけでも問題が無かったのだ。
只有夏树和两个人也没有问题。
それが七人になればどうかなど、言うまでもない。
那要是变成七个人的话,就不必说了。
その後、俺たちは適当に見張りを立てつつ、翌朝まで休息し、ラファンの町へと帰還したのだった。
在那之后,我们一边适当地监视着,一边休息到第二天早上,回到了拉风的镇上。

425
315js.md

@ -0,0 +1,425 @@
# 315 仕込みと休息 (1) 训练和休息(1)
ラファンへ戻った俺たちは、一日ほど休息した後、二一層の攻略に向けて準備を始めた。
回到拉风的我们,休息了一天之后,开始为进一步的攻略做准备。
俺とハルカ、それにユキは魔法の練習、ナツキはパラシュートの試作、メアリとミーティアはロープの調達、そしてトーヤはトミーの所へ、縄梯子の補修やフライング・ガーを防ぐための戸板の相談に行っていたのだが……。
我和春佳,还有雪是魔法的练习,夏树是降落伞的试制,玛丽和米蒂亚是索道的采购,然后托雅去了托米那里,商量了一下为了修复绳梯和防止飞翔者的门板……。
「トミーやガンツさんが、『酒はまだか!』だと」
“汤米和GANTZ说‘酒还没好吗!’但是”
「……そう言えば、そんな話もあったな」
“……这么说来,也有这种事啊。”
戻って来るなり、トーヤから伝えられた言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
一回来,我们就对TOYA说的话面面相觑。
パーティーの際に、日本酒を造るという話が出ていたのだが、それには俺たちの提供する米と麹菌が必要なわけで。
聚会的时候,听说要制造日本酒,但是我们提供的米和曲子菌是必要的。
トミーたちはそれなりに期待して待っていたようだ。
汤姆他们好像是抱着期待在等着。
「麹菌を分離するには、ある程度の時間は必要ですが……」
“要分离曲子菌,需要一定的时间……”
「う~ん、二一層の攻略は急がず、準備と息抜き、半々ぐらいで進めていく? 今は涼しい時期だし」
“嗯~,二层攻略不急,准备和休息,一半左右进行?现在是凉爽的时期”
「オレはそちらに関してできる事が無いからな。ハルカたちに任せる」
“因为我没有能做的事。交给Haruka他们”
ハルカの提案にすぐに応えたのはトーヤだった。
马上回应Haruka的提案的是Toya。
彼の場合、基本的にやるべき事は自身の身体を鍛えることだけ。
对于他来说,基本上应该做的事情就是锻炼自己的身体。
魔法の練習が必要な俺たちとは違うし、パラシュート作りにも関われない。
和需要魔法练习的我们不同,制作降落伞也没有关系。
それ故の結論なのだろう。
所以才会得出结论吧。
「あたしは賛成かな? 考えてみれば、護衛依頼を請けて以降、あんまり休んでなかったしね」
“我赞成吗?仔细想想,自从接受了护卫委托之后,就没怎么休息过”
「確かに、今ならお金の心配もありませんね。時季的にもお味噌を仕込むのに適しています」
“确实,现在也不用担心钱了。季节性的味增也很适合用来做”
銘木の伐採によって、クレヴィリーで散財した分ぐらいは十分に稼げている。
通过砍伐铭木,在克里维里花了多少钱都能挣到。
真夏であれば、避暑も兼ねてダンジョンに潜るのも悪くないのだが、今の時季は比較的過ごしやすいわけで。
如果是盛夏的话,一边避暑一边潜入地下城也不错,但是现在这个季节比较好过。
少し肌寒い時もあるが、ある意味、レジャーに向いた季節とも言える。
虽然也有稍微有点冷的时候,但从某种意义上来说,可以说是适合休闲的季节。
「俺も反対する理由は無いが……メアリとミーティアは?」
“我也没有反对的理由……玛丽和米蒂亚呢?”
「わ、私はどちらでも……」
“我、我都……”
「美味しい物が食べられるなら、嬉しいの!」
“如果能吃到好吃的东西,我会很开心的!”
メアリはいつも通りに控えめ。
玛丽和往常一样控制着。
ミーティアも安定の食いしん坊である。
米蒂亚也是安定的贪吃者。
「ただ、ロープの調達はなかなか難しそうです。在庫が無いみたいで」
“只是,索道的采购好像很难。好像没有库存”
「あぁ、それがあるのか」
“啊,有那个吗?”
工業製品じゃないから、簡単に増産することもできないし、他所からすぐに運んでくることも難しい。
因为不是工业产品,所以不能简单增产,而且很难马上从其他地方运过来。
だからといって、無理して作らせたりしたら、品質の方が心配。
虽说如此,但如果硬要做的话,还是担心质量。
俺たちの命が懸かっているのだから。
因为我们的生命是悬而未决的。
これは、安全のためにも時間を掛けた方が良いか。
这个为了安全也要花时间吗。
「うん、それじゃ、しばらくの間は比較的自由に、各々レベルアップに励むという事で」
“嗯,那就是说,在一段时间内,我们会比较自由地努力提高水平。”
俺が簡単にそう纏めると、全員が揃って頷く。
我简单地总结了一下,全体人员一齐点头。
さて。俺は何をしようかな……?
那么。我要做什么呢……?
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「できました!」
“做好了!”
ナツキがシャーレを持って現れたのは、それから十日ほど後のことだった。
在那之后十天左右,枣树拿着果子露出现了。
まずは麹菌が無ければ始まらないと、ナツキを主体として分離に挑んでいたのだが――。
首先如果没有曲子菌的话就无法开始,以枣为主体挑战分离。
「案外、早かったな?」
“没想到这么快啊?”
「私、これでも【薬学】スキルを持ってますしね」
“我,即使这样也有【药学】技能。”
少し自慢げに胸を張るナツキに、俺は思わずポンと手を叩く。
我不由得扑通一声拍着有点骄傲的枣的手。
そう言えばそんなスキル、あったな。
那样说的话,有那样的技能啊。
俺たちの場合、高レベルの光魔法があるから、ほとんど出番が無い不遇スキルなんだが。
我们有高水平的光魔法,所以是几乎没有出场机会的不走运的技能。
ちょいちょいと実践を重ねて、色々と作れる薬も増えているようなんだが、それらはすべて万が一のためのストック。
稍微反复实践,能做各种各样的药也增加了,不过,那些全都是为了万一的存货。
そして幸いなことに、これまでに万が一が起こったことは無い。
而且幸运的是,到现在为止没有发生过万一。
そもそも、ナツキ自身が光魔法を使えるのだから、薬に頼る状態なんて、本当にかなりヤバい状況だもんなぁ。
说起来,枣本身能使用光魔法,所以依赖药物的状态,真的是非常糟糕的状况啊。
一応、普段使いできる物として、栄養ドリンク的な物も見せてくれたことはあるのだが、俺たち、まだ若いし、そんな物が必要なほど疲れていたら、普通に休む。
作为平时可以使用的东西,也给我们看了营养饮料之类的东西,但是我们还年轻,如果累到需要那样的东西的话,一般就休息一下。
そんなわけで、これまではあまり役に立つことが無かったスキルなのだが、こんな場面で使える事になろうとは……ある意味俺たちらしい。
因此,虽然这是至今为止没有什么用处的技能,但是在这种场合能使用的话……某种意义上来说是我们的风格。
「あとはナオくんたちが作ってくれた加速庫、あれのおかげでもあります」
“还有就是nao君们制作的加速库,多亏了那个。”
「おぉ、なら良かった。結構大変だったから、あれを作るの」
“哦,那太好了。因为相当辛苦,所以要做那个”
加速庫とは、その名の通り、その中の時間を加速させる魔道具である。
加速库正如其名,是加速其中时间的魔道具。
基本的には、時間を圧倒的に遅らせる保存庫と同じ構造なのだが、製作難易度はこちらの方が圧倒的に高い。
基本上,虽然和压倒性地延缓时间的保存库构造相同,但是制作难易度这边压倒性地高。
何故って?
为什么?
需要が無いから、錬金術の本に載ってないんだよ、この魔道具の作り方が。
因为没有需求,所以炼金术的书上没有记载,这个魔道具的制作方法。
使い方次第では便利だとは思うのだが、同じコストを掛けるのならマジックバッグの方が使い勝手が良いわけで。
虽然根据使用方法的不同会很方便,但是如果要花同样的成本的话,还是用魔术包比较方便。
マジックバッグを差し置いて、加速庫を作ってくれという人がいるはずもない。
应该没有人会把魔术包放在一旁,然后给我做加速箱。
それに、長期間かけて洗練されてきたマジックバッグに対し、加速庫の方は効率化がされていないので、加速されるレベルがせいぜい三、四倍程度。マジックバッグの様に劇的ではない。
而且,相对于长时间被洗练的魔术包,加速库没有效率化,所以被加速的程度最多是三四倍左右。不像魔术包那样戏剧性。
まぁ、実用面を考えれば、この程度が妥当だと思うけどな。
嘛,从实用方面考虑的话,我觉得这个程度是妥当的。
マジックバッグの時間遅延と同じ様な倍率で時間加速したら、中に入れた物が一瞬でとんでもないことになりかねないから。
如果以和魔术包的时间延迟一样的倍率加速时间的话,放在里面的东西一瞬间可能会变得不可思议。
「後は、『暖房ワームス』や『殺菌ディスインファクト』、更には『毒治癒キュア・ポイズン』や『治療トリートメント』があったおかげでもあります。やっぱり便利ですね、魔法って」
“还有,多亏了有‘暖房虫’、‘杀菌Diswin factor’、还有‘毒治愈剂’和‘治疗护理’。果然很方便啊,魔法”
「『毒治癒』や『治療』って……」
“所谓‘毒医愈’和‘治疗’……”
「ユキとハルカの協力に感謝ですね」
“感谢小雪和Haruka的合作。”
身体張ってるなぁ、おい。
身体好撑啊,喂。
ハルカやユキに視線を向ければ、困ったような苦笑を浮かべている。
视线转向Haruka和yuki,脸上浮现出为难的苦笑。
魔法と試食(?)、どちらに協力したのかは判らないが、きっとそれなりに苦労したのだろう。
魔法和试吃(?)、虽然不知道是协助了哪一方,但一定是相当辛苦了吧。
「ちなみに、どうやって麹菌を分離したんだ?」
“顺便问一下,你是怎么把曲子菌分离出来的?”
「えっとですね。麹菌ってアルカリ性でも育成が可能なんです。ですから、米に発生するカビを分離して、アルカリ状態の寒天培地で増やしたり、コロニー毎に別のシャーレに移したり――」
“嗯。曲霉菌是碱性也可以培养的。因此,将米中产生的霉菌分离出来,在呈碱性状态的寒天培养地中增加,或者按殖民地转移到其他的培养皿中——”
「あぁ、うん、ありがとう。解った」
“啊,嗯,谢谢。我明白了”
解らないことが。
不明白的事。
「ま、それで米麹が作れるんだよな? ……なんか、黄色っぽいけど、麹ってこんな感じなのか?」
“嘛,这样就可以做出米曲了吧……总觉得有点黄色,曲子就是这种感觉吗?”
「色々ですね。うちで使っていたのはもう少し白い物でしたが、今回は一番強そうな物を選んでみました。麹によって味噌や醤油、お酒の味も変わりますから、合わないようなら別の物を分離するしかないですね」
“各种各样呢。我们家使用的是白色的,这次我们选择了看起来最强的。根据曲子的不同,味增、酱油、酒的味道也不同,如果不合适的话,只能把别的东西分开了”
「な、なるほど……」
“啊,原来如此……”
結構面倒なんだな、麹って。
曲子真是麻烦啊。
これを使えば、麹関連のなんやかやは全部作れる、って話じゃないのか。
用这个的话,曲子相关的所有东西都能做出来,不是吗。
「実際、かなり強力なのよね、その麹菌って。私は標準的な麹菌を知らないけど、蒸した直後のお米に混ぜても生存してるし、丼どんぶり一杯のお米にパラリと振り掛けるだけで、常温でも一時間ほどで米麹ができるのよ。加速庫を使って、だけど」
“实际上,曲子菌相当强大呢。我虽然不知道标准的曲霉菌,但是和刚蒸好的米饭混在一起也能生存,只要在一碗大碗里撒上米饭,常温下一个小时左右就可以产生米曲子了。使用了加速库,但是”
「使わなくても数時間、だよねぇ。その米麹をお粥に混ぜたら、これまた一時間ほどで甘酒ができたの。味の方は――」
“不用也要几个小时,对吧。把米曲子和粥混在一起,一个小时左右就又酿出了甜酒。味道方面——”
「甘くて美味しかったの!」
“又甜又好吃!”
「はい。飲んだことがない物でしたが、お砂糖とは違う優しい甘さでした」
“是的。虽然没有喝过,但是和砂糖不同,是温柔的甜味”
俺とトーヤには回ってこなかったようだが、メアリとミーティアは味見していたようだ。
虽然好像没有和我一起去toya转,但是玛莉和米蒂亚好像在品尝。
ちなみに、メアリの言うお砂糖とは黒砂糖のことなので、かなりねっとり感の強い甘さである。
顺便说一下,玛丽所说的砂糖是黑砂糖,所以有很强的粘糯感。
あれと比べれば麹甘酒の甘さは、サラリとした感じの甘さと言えるだろう。
与之相比,曲子甘酒的甜味可以说是清爽的甜味。
「インスピール・ソースもそうだけど、この世界の菌って、地味に驚異的だよね」
“虽然胰岛素调味汁也是如此,但是这个世界的细菌,实在是太令人惊异了。”
「有用な菌ってのが救いだよなぁ。人食いバクテ――」
“有用的细菌真是救赎啊。食人夜总会——”
「ちょっと黙ろうか!? トーヤ!」
“沉默一下吧!?火炬!”
危ないことを言い出したトーヤの口を慌てて塞ぐ。
急忙堵住了说出危险话的火炬的嘴。
フラグになったらどうしてくれる。
成为标志的话怎么办。
活動速度が何倍にアップしたそんな怖い細菌、出てきたらシャレにならん。
活动速度提高了几倍的那种可怕的细菌,出来了就变成了沙暴。
……いや、『殺菌ディスインファクト』が効くなら、対処はできるのか?
……不,如果《杀菌Diswin factor》有效的话,能处理吗?
だが、もしそうだとしても、怖すぎである。
但是,即使是那样,也太可怕了。
うん、確率を下げるためにも、アドヴァストリス様に祈っておこう。
嗯,为了降低概率,请向艾德瓦斯特里斯先生祈祷吧。
俺の【ラッキー!】、仕事してくれるよね?
我的【幸运!】、会工作的吧?
「ま、ナツキが頑張ってくれたおかげで、たくさんの胞子が採れたから、トミーに連絡しましょ。……たくさん採れたから」
“嘛,多亏了夏树的努力,我采到了很多孢子,所以联系汤米吧。……因为收获了很多”
「二回言うほど!?」
“我说了两遍
「えぇ、言うほど」
“呃,说得对。”
聞き返した俺に、ハルカは真面目な表情で頷く。
面对反问的我,Haruka用认真的表情点了点头。
この麹菌、好適な環境で育成すると、その発生速度は更にドン! って感じらしい。
这个曲子菌,在适合的环境培育的话,那个发生速度更加咚!的感觉。
麹菌の必要量から計算すると、すでにトン単位で米麹が作れそうなほど胞子が得られているらしい。
从曲子菌的必要量计算的话,好像已经以吨为单位可以制作米曲子那样得到孢子。
「なるほどな。それじゃ、オレがひとっ走り行ってくる」
“原来如此。那我就跑过来”
「いや、そこまで急がなくても良いんだけど……」
“不,不用那么急……”
早速立ち上がったトーヤに、少し戸惑った表情を見せるハルカだったが、トーヤは首を振る。
对于立刻站起来的TOYA,春香露出有些困惑的表情,但是TOYA摇了摇头。
「いや、正直なところ、トミーに加え、ガンツさんもかなり焦れていたみたいだったからな。早いに越したことは無いだろ。それにオレも、酒には少し興味があるし。じゃ、行ってくる!」
“不,说实话,除了汤米之外,GANTZ先生好像也相当着急。越早越好吧。而且我对酒也有点兴趣。那我走了!”
そう言うが早いか、トーヤは家を走って出て行った。
这么一说,火炬就从家里跑出去了。
「忙しないわね」
“真不忙啊。”
「まぁ、良いんじゃないか? 酒造りに関しては、丸投げなんだし。――ちなみに、この麹菌があれば酒ってできるんだよな?」
“嘛,不是挺好的吗?关于造酒的事,是圆扔的。——顺便说一下,如果有这个曲霉素的话,酒是可以的吧?”
俺、酒の造り方なんて、よく知らないけど。
我不太知道怎么酿酒。
「できるとも言えますし、できないとも言えます」
“可以说会,也可以说不会。”
訊ねた俺にナツキが返した答えは、少々微妙だった。
夏树问我的答案有点微妙。

397
316js.md

@ -0,0 +1,397 @@
# 316 仕込みと休息 (2) 训练和休息(2)
「……ん? できないのか?」
“……嗯?你不会吗?”
日本酒と言えば麹! というイメージだったんだが。
说到日本酒就是曲子!这样的印象。
「ナオくんは、日本酒の造り方を知っていますか?」
“你知道日本酒的制作方法吗?”
「えっと……、米麹を作って、水を入れて、かき混ぜて放置?」
“呃……制作米曲,加入水,搅拌后放置?”
俺の乏しい知識で答えた言葉に、ユキが同意するように頷き、ナツキは苦笑を浮かべる。
对于用我缺乏的知识回答的话,雪赞同地点头,夏树苦笑着。
「あー、あたしもそんなイメージだった。ナツキに教えてもらうまでは」
“啊,我也有这样的印象。在向枣请教之前」
「大まかには間違っていません。ですが……そうですね、簡単にお酒ができる仕組みを説明しましょうか」
“大体上没有错。但是……是啊,我来说明一下能简单喝酒的机制吧”
酒造りは大まかに分けて二つの工程がある。
造酒大致分为两个工序。
デンプンを糖に変える工程、そして糖をアルコールに変える工程。
把淀粉变成糖的工序,然后把糖变成酒精的工序。
前者の工程で使われるのが麹菌で、後者の工程で使われるのは、別の酵母。
前者工程中使用的是曲霉菌,后者工程中使用的是别的酵母。
「アルコール発酵する酵母は自然界にも存在していますし、昔なら酒蔵に付いていた菌で発酵させていたわけですが、これだと味が安定しませんし、失敗することもあります。なので最近は、特定の酵母を培養して使っています」
“在自然界中也存在着酒精发酵的酵母菌,以前是用酒窖里的细菌发酵的,但是这样味道就不稳定,也有失败的情况。所以最近,我在培养和使用特定的酵母”
水と米麹、蒸米を混ぜて酵母を投入、培養した物が酒母と呼ばれるらしい。
水和米曲子、蒸米混合后投入酵母,培养出来的东西好像被称为酒母。
この酒母に水、米麹、蒸米を数回に分けて入れて発酵させれば、醪ができる。
把水、米曲子、蒸米分成几次放入酒母中发酵,就可以发酵。
「後は、醪を搾って、水を加えたり火入れをしたりすれば、普通の日本酒の完成ですね」
“之后,榨一下发酵液,加水或加热的话,普通的日本酒就完成了。”
「け、結構面倒なんだな。俺的には、『甘酒ができたんだから、それを寝かしておけば良いんじゃね?』ぐらいの感じだったんだが」
“呃,真是麻烦啊。对我来说,“因为有了甜酒,所以把它放在一边不就好了吗?”就是这样的感觉”
「それでも運が良ければお酒になるかもしれませんが、かなりの賭けですね。腐敗することもありますから」
“即便如此,如果运气好的话可能会喝酒,但这是相当大的赌注。也有腐败的时候”
酒母を作るのは、乳酸菌を作らせることで酸性環境にして、他の腐敗菌が発生するのを抑制する意味もあるらしい。
据说制作酒母是为了抑制乳酸菌在酸性环境下产生其他腐败菌。
「最近は別途、乳酸を入れたりするみたいですが……。水や米麹などを数回に分けて投入するのも、薄まりすぎないようにですね」
“最近好像要另外加入乳酸……。将水和米曲子等分成几次投入,也不会太薄”
「ちなみに、ナツキのところは?」
“顺便问一下,枣的地方是?”
「うちは昔ながらの造り方ですよ。味にばらつきは出ますけど、商品じゃなくて宗教儀式ですから」
“我们家是自古以来的建筑方法。虽然味道会有偏差,但是不是商品而是宗教仪式”
「なるほどなぁ……麹菌があれば、勝つる! とか思ってたら、そう簡単じゃなかった、と」
“原来如此……如果有曲霉菌的话,就赢了!”
「麹菌が重要なのは間違いないですけどね。お味噌とお醤油は問題なく作れますし」
“曲子菌确实很重要。味增和酱油可以做得很好”
「まぁ、俺としてはその二つがあれば、酒の方は後回しでも……ん? すでにトーヤがトミーたちを呼びに行ったわけだが、その酵母って無いんだよな?」
“嘛,对我来说,如果有这两种酒的话,酒的话可以推迟……嗯?已经有托雅去叫托米他们了,但是没有那个酵母吧?”
酒蔵に付いていると言っても、俺たち、まだその酒蔵が無いわけだし、新しく酒蔵を作ったところで、そこに突然発生するはずも無い。
虽说是装在酒窖里,但我们还没有那个酒窖,就算是新做了酒窖,也不会突然在那里发生。
「えぇ、まだ無いですね」
“诶,还没有呢。”
「いや、良いのか? トーヤのあの口調、かなり面倒くさそうな感じなんだが?」
“不,可以吗?”?Toya的那种语气,感觉很麻烦吗?”
酒に関して貪欲な彼ら。
他们对于酒很贪心。
呼びつけておいて、今更『できません』なんて言うと、色々とうるさそうである。
叫他过来,现在再说“我做不到”之类的话,好像有很多麻烦的样子。
そんな俺の懸念に、ハルカたちは肩をすくめてあっさりと首を振った。
对于这样的我的担心,Haruka他们耸耸肩膀轻轻地摇了摇头。
「別に良いでしょ。お酒を造るには、酒蔵が必要なんだし、それを作る時間も必要でしょ?」
“没关系吧。造酒需要酒库,制作酒的时间也需要吧?”
「わたしたちが全部の準備を整えるのも、違うと思いますし」
“我觉得我们做好全部的准备也不一样。”
「トミーたちにも苦労はしてもらわないとね~」
“要让汤米他们也辛苦啊~”
フフフと笑うその表情を見るに、ハルカたち、麹菌の分離にはそれなりに苦労したのかもしれない。
看着他那呵呵地笑着的表情,也许春香他们为了分离曲霉菌而付出了相应的努力。
いや、苦労してるよな、絶対。
不,一定很辛苦吧。
じゃなきゃ、『毒治癒』とかの出番は無かったはずだし。
如果不是这样的话,应该就没有《毒医愈》之类的出场机会了。
「ま、一回、お酒ができるまでよ。成功すれば、そこから酵母を分離できると思うし。ねぇ?」
“嘛,到能喝酒为止。我觉得如果成功的话,就能从那里分离酵母菌。喂?”
「はい。後はその酵母を使って作り続けるか、別の酵母も分離できるよう色々試すか、ですね」
“是的。之后是使用那个酵母继续制作,还是为了能分离其他的酵母而进行各种各样的尝试呢?”
「そのへんは、お酒が好きな人が頑張れば良いよねぇ」
“在这一点上,喜欢喝酒的人努力就好了。”
ハルカたちとしては、とりあえずは料理酒があれば良いだけなので、飲んで美味しいかどうかはそこまで気にしていないらしい。
对于Haruka他们来说,总之只要有料理酒就可以了,所以好像并没有那么在意喝起来是否好吃。
「ミーは、甘酒がもっと飲みたいの!」
“我想再喝点甜酒!”
「私もお酒よりは、あれの方が……」
“比起酒,我更喜欢那个……”
「そうね、甘酒は飲む点滴と言われるほどに栄養価が高いみたいだし、作っておいても良いかもしれないわね。夏バテ防止にはちょっと遅いけど」
“是啊,甜酒被说是喝的点滴,营养价值好像很高,做起来也不错呢。虽然防止夏日倦怠症有点晚了”
「甘い物は貴重だからねぇ」
“甜的东西很贵重呢。”
などと、俺たちが話していると、トミーのところへ行っていたトーヤが戻ってきた。
等我们这么说着,去了TOMY的TOYA回来了。
何故か、むすりとしたシモンさんを連れて。
不知道为什么,带着结里的西蒙先生。
「えっと……何故に、シモンさんが?」
“呃……为什么西蒙先生?”
「酒造りには酒蔵が必要だろうが! 何時声が掛かるかと待ってるっつぅのに、一向に声が掛からねぇ!」
“造酒需要酒藏吧!虽然在等什么时候有声音,但是一直没有声音!”
俺の素朴な疑問に、怒鳴るような声が返ってきた。
对于我单纯的疑问,我发出了怒吼般的声音。
「で、まぁ、ガンツさんの所に行ったら、まずはシモンさんの所に行け、と言われたんだよ」
“然后,他说,去了GANT的地方,先去西蒙先生那里。”
腕を組み、不満そうな表情のシモンさんの隣で、トーヤが苦笑して、肩をすくめる。
在抱着胳膊,表情不满的西蒙先生的旁边,托亚苦笑着耸肩。
そう言えば、ウチの庭の一角に、酒造り用の建物を作るという話だったな。
说起来,在我们院子的一角,据说要建造造酒用的建筑物。
うーむ。確かに、麹菌をどうこうする前に、建物作りの方を優先するべきだったか?
嗯。确实,在产生曲霉素之前,应该优先建造建筑物吗?
それなりに時間もかかるだろうし。
也要花相应的时间。
「すみませんでした。ダンジョンの方が忙しかったので……。それで、いつから作業を始めますか?」
“对不起。因为地牢比较忙……。那么,什么时候开始工作呢?”
「今からだ!」
“现在开始!”
シモンさんが「ドンッ」と足を踏み鳴らし、宣言する。
西蒙先生“咚咚”地跺着脚宣言。
「えぇっ!? そこまで急がなくても――」
“啊,我的直觉!”!?不必那么急——”
「バカヤロウ! 新しい酒なんだぞ!? 急ぐに決まっとるだろう! 代官も期待してんだぞ!」
“混蛋!才是新酒呢!?定会着急的吧!代官也很期待啊!”
「え? いや、なんで、代官が……」
“啊?不,为什么,代官……”
ラファンの町の代官。
拉斐尔镇的代官。
名前は確か……ジョセフ・フェイダーだったか?
名字确实是……约瑟夫·费德吗?
家具で成り立っていると言っても過言ではないこの町故に、家具工房の中でもそれなりに大きく、ベテランであるシモンさんと代官とは、ある程度の繋がりがあるらしい。
因为这个城市可以说是由家具构成的,所以在家具工房中也有很大的联系,作为老手的西蒙和代官似乎有一定的联系。
その関係で顔を合わせる機会も多く、その中でお酒の事が話題になったようなのだが……。
因为这个关系见面的机会也很多,其中关于酒的事情成为了话题……。
「シモンさん、お酒を造るのには米が必要なんですが、そこは? このあたりでは作ってないみたいですし」
“西蒙先生,酿酒需要大米,那里呢?这附近好像没有做”
「そんな事、儂は知らん。それを考えるのはあいつらの仕事だ! つーか、あいつらに取り寄せさせる!」
「那种事,我不知道。考虑那个是他们的工作!话说,让他们去拿!”
「えぇ……」
“诶……”
いや、まぁ、それはそうなのかもしれないが……良いのかそれで?
不,嘛,那可能是那样的……好吗?
と言うか、あの時言っていた“伝つて”って、代官の事だったのか?
话说回来,当时说的“传说”是代官的事吗?
代官が関わってくるとか、ちょっと不安があるんだが……。
和代官有关系之类的,有点不安……。
だが、そんな俺の心情など関係無いとばかりに、シモンさんは俺の背中をバシン! と叩く。
但是,就好像和我的心情没有关系一样,Simon桑在我的背上啪!敲击。
「ほれ、どこに作るんだ? 早く案内しろ!」
「看,在哪里做?快带我去!”
「わ、解りました」
“我明白了。”
追い立てられるように家を出た俺たちがシモンさんを案内したのは、敷地の門を入ってすぐ左側のエリア。
为了被赶出家门,我们带着西蒙先生去的是,一进了地皮的大门就在左边的区域。
この辺りは使っていない場所なので、今は草木が生い茂ったままになっている。
因为这附近是没有使用的地方,所以现在草木繁茂。
どのぐらいの酒蔵を作るつもりかは知らないが、普通の家が十分に建てられるだけのスペースがあるので、広さとしては十分だろう。
虽然不知道准备制作多少酒窖,但是有足够的空间建造普通的房子,所以足够大了吧。
「どうです? この辺りで」
“怎么样?在这附近”
「ふむ。悪くねぇな。ユキ、それにナオは土魔法が使えるんだよな? チョイと手伝え」
“嗯。不错啊。雪,而且娜奥能使用土魔法吧?稍微帮一下忙”
「え? あたしたち? 土台作りぐらいなら、別に良いけど、大工仕事はできないよ?」
“啊?我们?如果只是打地基的话,那倒没什么关系,但是木匠工作做不到啊?”
「そんな事は期待してねぇ! 地下室を作るんだよ」
“我不期待那种事!要造地下室哦”
「は、はぁ……」
“哈,哈……”
シモンさんは担いでいた袋からロープを取り出すと、俺が示した部分を検分し、ちゃっちゃと手早く縄張りを終える。
西蒙从扛着的袋子里取出绳子,检查了我指示的部分,很快就结束了领地。
広さ的には五メートル×一〇メートルぐらいだろうか?
宽五米×大概十米左右吧?
これだと、平屋でも小さな家ぐらいの広さはある。
这样的话,平房也有小房子那么大。
その上で地下室を作ると言うのだから、床面積はかなり広くなりそうだ。
而且据说还要建造地下室,所以地板面积好像会变得相当大。
「よし。こっからこの部分、掘り下げていけ」
「好的。从这里把这个部分挖下去”
シモンさんが地面を指さすのを見て、これは時間が掛かると理解したのか、ハルカたちは顔を見合わせて口を開いた。
看到西蒙先生用手指着地面,也许是理解了这需要时间,Haruka他们面面相觑地张开了嘴。
「あー、それじゃ、私たちは戻るわね。ナオ、ユキ、頑張って」
“啊,那我们回去吧。娜奥,小雪,加油!”
「疲れたら休憩を入れてくださいね? 何か用意しますから」
“累了的话请休息吧?我会准备点什么的”
「頑張ってください、ナオさん」
“请加油,娜奥。”
「ユキお姉ちゃんも頑張って!」
“小雪姐姐也要加油!”
「ガンバレ~。力仕事が必要になったら、呼んでくれ」
“加油~。如果需要力气活的话,请叫我”
そんな応援の言葉を笑顔で残し、去って行こうとするハルカたち。
春香等人带着笑容留下了这样的应援话语,打算离开。
メアリたちやトーヤ、それにナツキは別に良いのだが――。
梅阿里、托亚和海枣倒是不错——。
「あ、おい、ハルカも――」
“啊,喂,Haruka也——”
「ほれ! さっさとやれ!」
“爱上我!快干!”
多少はハルカも、土魔法で手伝えるよな? と俺が口にする前に、シモンさんに背中をドヤされる。
多少Haruka也会用土魔法来帮你的吧?在我这样说之前,被西蒙先生弄得后背干巴的。
そしてその隙にフェードアウトするハルカ。
然后在那个间隙淡出的Haruka。
くそう。曲がりなりにも恋人の俺を見捨てるとは。
可恶。竟然还是抛弃了身为恋人的我。
俺の魔力が切れたら、引っ張り出してやるっ!
我的魔力用尽了的话,就把你拽出来!

471
317js.md

@ -0,0 +1,471 @@
# 317 仕込みと休息 (3)
317训练和休息(3)
「はぁ……。それでシモンさん、どんな感じに掘れば良いんだ? 単に掘るだけなら、簡単ではあるんだが……」
“哈……。那么西蒙先生,该怎么挖呢?如果只是单纯地挖掘的话,倒是很简单……”
それで簡単に地下室ができるほど、単純では無いだろう。
所以并不是那么简单就能形成地下室的。
壁面の処理や一階の床を支えるための柱なんかも必要だし、土台や基礎なんかのことも考えないといけない。
墙壁的处理和支撑一楼地板的柱子是必要的,基础和基础也必须要考虑。
「ふむ。お前たちの魔法でどれだけの事ができるかなんだが……壁面をきっちりと固める事はできるか?」
“嗯。你们的魔法到底能做多少……能把墙面固定住吗?”
顎に手を当てて首を捻り、少し考えていったシモンさんの言葉に、ユキが気軽に頷く。
手贴着下巴歪着头,稍微思考了一下西蒙先生的话,雪轻松地点头。
「問題ないよ~。ね、ナオ」
“没问题。呐,娜奥”
「……まぁ、硬さによるが、普通のブロックぐらいならな」
“……嘛,虽然取决于硬度,但如果只是普通的块的话。”
風呂釜のようなガラス質にするのは魔力的にも厳しいが、この辺りの土を普通に硬く固めて石のようにするだけであれば、そこまで魔力は必要ない。
要做成像浴釜一样的玻璃质,虽然在魔力上也很严格,但是如果只是把这附近的土普通地凝固成石头一样的话,就不需要那么大的魔力了。
ダンジョン前の土壁の事を思えば、よほど楽な仕事である。
一想到地牢前的土墙,工作就相当轻松。
「まぁ、それも深さ次第なんだが……シモンさん、どれぐらいの深さにするんですか?」
“嘛,这也要看深度了……西蒙先生,要多深?”
「そうだな。最初は地下一階を考えとったんだが、できるなら地下二階、いや、三階にできたらありがてぇな」
“是啊。一开始我想的是地下一楼,如果可以的话地下二楼,不,三楼能做的话就太好了”
なかなかに無茶を言う。
蛮不讲理。
「いや、三階って、シモンさん、それって、滅茶苦茶深いよ? 何メートルいるの?」
“不,三楼的西蒙先生,这真是乱七八糟的深奥啊?有多少米?”
「なに、一二メートルほども掘ってくれれば、十分だな」
“什么,挖一两米就足够了。”
「一二メートルって……」
“一二米……”
それで三階って、天井高くないですか?
所以三楼的天花板不高吗?
床と天井の厚みを考えても、三・五メートルを超えるだろうし、かなりの高さである。
考虑到地板和天花板的厚度,也会超过3・5米,相当高。
普通の部屋ではなく、酒蔵だからなのかもしれないが、そこまで深く掘ると、さすがに俺たちの魔力も厳しい。
也许不是普通的房间,而是酒窖,但是挖得那么深的话,我们的魔力也很厉害。
「そもそも、シモンさん。そんなに深く掘ったら、出る事もできなくなるんですが?」
“说起来,西蒙先生。挖得那么深的话,就出不去了?”
「足場を組むに決まってるじゃねぇか。儂らがどうやって作業すると思っとるんだ?」
“肯定是要搭脚手架的吧。你觉得你们怎么工作?”
シモンさんに少し呆れたように言われ、俺とユキは顔を見合わせて頷いた。
西蒙先生说我有点吃惊,我和小雪面面相觑地点了点头。
「あ、そうだよね。穴掘って壁を固めたら終わりじゃないよね?」
“啊,是啊。挖个洞把墙固定住的话就不会结束了吧?”
「それならできるか。あとは……地下水とかは?」
“这样的话可以吗?”。还有……地下水之类的呢?”
「この辺なら問題はねぇよ。幸い、昔の村があった辺りだからな。水の出る深さは把握してる。ほれ、お前らの家の裏にある井戸、あれも深いだろう?」
“这样的话没问题。幸好是在以前的村子附近。我掌握了出水的深度。看,你们家后面的那口井,也很深吧?”
「あー、確かに……?」
“啊,确实……?”
俺たちの場合、魔法で水が出せるので、あまり井戸を覗き込む機会も無いのだが、確かにかなり深かったように思う。
我们的情况下,因为可以用魔法出水,所以很少有机会去看井,但是确实感觉很深。
「そのへんの事は儂ら、プロに任せときゃ良いんだよ。お前らは、穴さえ掘ってくれればな」
「那一点的事,交给专业人士就好了。你们只要挖个洞就好了」
「ですか。わかりました」
“是吗。我明白了”
「さて。そろそろ、他の奴らも道具や木材を持って来るはずだ。門の前で待つぞ」
「那么。差不多,其他的家伙也该拿道具和木材来了。在门前等你」
シモンさんに促され、門の前で待つこと暫し。
在西蒙先生的催促下,我在门前等了一会儿。
荷車を引いた集・団・がやって来た。
拉着车的集团来了。
ちょっとした小屋を作る程度のつもりだったのに、予想以上の大人数。
本来打算建个小房子的,但是比预想的要多。
訊いてみれば、地上部分も二階建てにするつもりらしく、工事もかなり大がかりになりそうなんだが……これって酒造りに失敗したらどうするんだろうか?
问了一下,地上部分好像也打算建二层楼,工程好像也会变得很大……如果造酒失败了怎么办呢?
絶対に大赤字だよな?
绝对是大赤字吧?
ま、まぁ、俺たちが頼んだわけじゃないから、大丈夫、だよな?
嘛,不是我们拜托的,所以没关系吧?
「親方! 揃えてきました!」
“师傅!准备好了!”
門の前に荷車を止め、進み出てきたのはシモンさんの工房の若者。
停在门前的是西蒙先生工房的年轻人。
他の人たちも若い人が多いのだが、これは最初に行うのが力仕事が多いから、なのか?
其他的人也有很多年轻人,这是因为最初做的力气工作很多吗?
「おう。運び込め! ――良いよな?」
“哦。搬进来!——好吧?”
「うん、構わないよ。でも、壁とかに派手にぶつかったりはしないようにね? 防犯設備、備えてるから、ちょっと危ないかも?」
“嗯,没关系。但是,不要华丽地撞到墙壁上哦?因为有防盗设备,可能有点危险?”
「お、おう。お前ら、聞いたな!?」
「哦,哦。你们听了吗
「は、はい! 気を付けます!」
“是,是!我会小心的!”
家の外壁を指さしながら答えたユキに、シモンさんと若者たちがちょっと鼻白みながらも頷く。
面对指着房子外墙回答的雪,西蒙和年轻人稍微有点鼻白的点点头。
だが実際、壁を乗り越えようとしたり、破壊したりしようとすると防犯装置が作動するので、ちょっとじゃなく危ない。
但是实际上,如果想要越过墙壁或者破坏墙壁的话,防盗装置就会启动,所以有点危险。
もっとも、この辺りの治安は思ったよりも悪くないようで、これまでにその装置が活躍した事は無いのだが。
不过,这一带的治安好像没有想象的那么坏,到现在为止那个装置还没有活跃过。
「死ぬ事は無いから大丈夫だよ~。……たぶん」
“不会死的,所以没关系的。……大概”
安心させるようにニッコリと笑って言うユキではあったが、それは逆効果である。
为了让她安心,yuki笑着说,但是那个是反效果。
事実、若干ビクビクしながら門を通った彼らは、荷車を引きながら、できるだけ壁に近づかないように歩いているのだから。
事实上,他们有些战战兢兢地通过大门,一边拉着车,一边尽量不要靠近墙壁。
「それじゃ、頼むぞ」
“那就拜托你了。”
「解りました……が、どんな感じにやりましょうか? 全面、ごっそりと?」
“我明白了……要怎么做呢?全面、彻底?”
「魔力が保つならやってくれ。だが、できんのか、そんな事?」
“如果魔力保持的话就做吧。但是,做不到吗?”
「あー、無理、だよね? ナオ」
“啊,不行吧?”?那奥”
「少なくとも一日では無理だな」
“至少一天是不行的。”
「だろうな。とりあえず、壁面沿いを削って固めてくれ。内側は儂らが掘って土を運び出す。そもそも、その予定だったからな」
“是吧。总之,请削墙面边固定。里面是你们挖出来的土。因为本来就是那个计划”
人力でこれだけの穴を掘るとか、ちょっとシャレにならない気もするが、重機が無いこの世界、それが普通と言えば普通なのだろう。
用人力挖这么多的洞,感觉有点不干净,但是在这个没有重型机械的世界,说普通的话应该是很普通的吧。
そもそもこちらの人って、俺たちの世界の人よりも体力があるし、俺が想像するよりはまだマシなのかもしれない。
本来这边的人比我们世界的人更有体力,也许比我想象的还要好。
「それじゃ、やっていくか」
“那么,继续干下去吧。”
最初に幅一メートル、長さ三メートルほどの溝を一気に一二メートルまで掘り下げる。
首先一口气把宽1米、长3米左右的沟挖到12米。
そこに足場を組んでもらい、その深さでじわじわと左右に溝の長さを広げていく。
在那里搭好脚手架,用它的深度一点一点地向左右伸展沟槽的长度。
右を掘り進めたら、次は左に、という感じに、足場の作製と穴掘り、効率よく交互に作業を進め、たまに休憩。
如果挖到右边的话,接下来就向左走,像这样,制作脚手架和挖洞,高效率地交互作业,偶尔休息一下。
その間、真ん中部分では他の作業員たちがショベルを使って土を掘り出し、畚もっこで運び出しているのだが……うん、なかなかに大変そうだ。
在这期间,中间部分其他的工作人员用挖掘机挖出土,用网篮抱着运出去……嗯,好像很辛苦。
ちなみに、完全な力仕事なので、トーヤも呼んできて参加させている。
顺便说一下,因为是完全的体力工作,所以也叫了TOYA来参加。
「シモンさん、これってどのくらい掛かるんですか?」
“西蒙先生,这个要花多长时间?”
単純に、五×一〇×一二メートルと考えれば、六〇〇立方メートル。
单纯地×十〇×考虑到一二米的话,是六十立方米。
仮に比重一でも六〇万キロ。
假设比重一也要六十万公里。
畚一つが三〇キロと考えても、二万回も穴の中を往復しないといけない。
即使一个网篮30公里,也要在洞里来回2万次。
しかも、掘れば掘るほど移動距離も増えるわけで……。
而且,越挖移动距离也越增加……。
「そうだな……このペースだと、数日はかかるか。もうちょい、人を増やすべきかもしれねぇな」
“是啊……按这个速度的话,需要几天吗?”。也许应该再增加一点人呢”
作業している人たちを見て、シモンさんは首をかしげるが――。
看到工作的人们,西蒙先生歪着头。
いや、数日って……どんだけ酷使するのかと。
不,几天……要用多少呢。
人数を倍に増やしても、とても終わりそうに無いんですけど?
就算人数增加一倍,也不会结束的?
「大丈夫なんですか? その……資金とかは?」
“没关系吗?那个……资金是什么?”
本当は『そんなブラックで、従業員は逃げませんか?』と言いたいところだけど、職場から逃げ出したりすると、人生が半分ぐらい終わってしまうこの世界、俺は言葉を濁す。
真的是“这么黑,工作人员不逃走吗?”虽然我想这么说,但是如果从职场逃走的话,人生就会结束一半左右的这个世界,我会含糊其辞。
「気にする必要はねぇよ。お前たちのおかげで、儂もかなり儲けたからな。還元だな」
“没必要在意。多亏了你们,我也赚了很多钱。是还原吧”
昨年来、俺たちが持ち込んだ銘木はシモンさんを経由して、この町の他の工房へと流れている。
去年以来,我们带来的铭木通过西蒙先生流向了这个城市的其他工房。
シモンさんは決して暴利をむさぼったわけではないようだが、元々が高級木材な上に、数も多く、かなりの利益が積み上がったらしい。
西蒙先生似乎并不是贪图暴利,但原本是高级木材,而且数量众多,似乎积累了相当多的利益。
聞けば、今働いている若者たちの多くは、他の工房の若手たちで、シモンさんが吸い上げた利益をそれらの工房に還元する意味もあるようだ。
听说,现在工作的年轻人中有很多是其他工房的年轻人,西蒙先生吸取的利益也有还原到这些工房的意思。
支払う賃金も、相場よりも高めにしているらしく、彼らの頑張りはそれの影響もあるようだ。
支付的工资似乎也比市场价格要高,他们的努力似乎也有影响。
「ふぅ~。けど、もうちょっと効率化はしたいところだぜ」
「呼~。但是,我想再提高一点效率”
息を吐きながら、俺とシモンさんが話しているところにやって来たのは、ショベルを担いだトーヤ。その格好、とても似合っている。
一边吐气,一边来到我和西蒙说话的地方的是扛着挖掘机的Toya。那个样子很适合你。
働きも人一倍。さすが獣人である。
工作也比别人加倍。不愧是兽人。
「そのショベルのおかげで、だいぶ効率化してんだぞ? 作ったのはお前なんだよな?」
“多亏了那个挖掘机,提高了很多效率?做出来的是你吧?”
「まぁな。けど……そうだな、あの畚、あれが良くねぇな。……猫車でも作るか?」
「啊啊啊。但是……是啊,那个网篮,那个不好。……要不要做猫车?”
「あぁん? なんだ、それは?」
“啊?那是什么?”
「土砂を効率よく運搬する道具なんだが……」
“虽然是高效搬运沙土的工具……”
猫車とは一輪の手押し車の事で、工事現場でよく見かけるあれである。
猫车是指一辆手推车,在施工现场经常能看到。
基本的に二人で運搬する畚に比べ、一人でより多くの土砂が運べ、持ち上げる必要も無いので疲れにくい。
基本上,与两个人搬运的网篮相比,一个人搬运更多的砂土,没有拿起来的必要,所以不容易疲劳。
土砂運搬の手段としては、かなり有効な道具である。
作为砂土运输的手段,是相当有效的工具。
欠点を上げるとするなら、スロープを作らなければ使えないところだろうか。
如果要提高缺点的话,不做斜面就不能用了吧。
「よしっ! トミーに作らせよう! なんか、商売のアイデアが欲しいつってたし!」
“好!让汤姆来做吧!总觉得他想要做生意的点子!”
「あ、おいっ!」
“啊,喂!”
言うが早いか、トーヤはショベルをそのへんの地面に突き刺すと、そのまま走り去っていった。
说起来,火炬把挖掘机插在了那块地面上,就这样跑了过去。
間違いなくトミーの所に行ったんだろうが、今から発注したところで、この工事には間に合わないと思うぞ?
肯定是去了汤米那里,但是现在订购的话,我想也赶不上这个工程了?
「あれ? トーヤ、どうしたの?」
“咦?火炬,怎么了?”
ちょうど穴の下から上がってきたユキが、走り去るトーヤの背中を見て、小首を傾げた。
正好从洞下面上来的雪,看着跑过去的火炬的后背,微微歪着头。
「トミーに猫車を作ってもらうんだと」
“我让汤姆给我做一辆猫车。”
「あー、確かにあったら便利かもね。でも、今から行っても……」
“啊,确实有的话可能会很方便。但是,现在去也……”
「うん、だよな? シモンさん、すみません」
“嗯,是吧?”?西蒙先生,对不起”
「猫車は判らんが、かまわねぇよ。そもそも儂らが作ると言ったんだからな。あやつが抜けても問題はねぇ」
“我不知道猫车,但是没关系。说起来是你们做的。就算去除了那个也没问题”
「……それだと、俺たちは?」
“……这样的话,我们呢?”
「お前らは代替がきかねぇだろうが! 魔法は便利だよな。……お前たち、仕事に困ったら雇ってやるからこい」
“你们是无法替代的吧!魔法很方便啊。……你们工作有困难的话,就雇佣你们吧」
「えぇっ!? あたしたち、冒険者なんだけど? シモンさん」
“啊,我的直觉!”!?我们是冒险者吗?西蒙先生”
「何時までも続けられる仕事じゃねぇだろう? 特にユキ、お前は結婚して子供を産まねぇといけねぇだろうが」
“这不是可以一直做下去的工作吧?特别是小雪,你应该结婚生子吧”
「あ、あはは……」
“啊,啊哈哈……”
シモンさんの言葉に、ユキは苦笑を浮かべて、俺の方をチラリと見る。
面对西蒙先生的话,雪露出苦笑,瞥了我一眼。
う、うーむ……。
嗯,嗯……。
現代日本であれば即座に『セクハラだ!』と言われそうなシモンさんの言葉であるが、この世界では至極真っ当な発言だったりする。
在现代日本,马上就有“性骚扰!”西蒙先生的话,在这个世界上是非常认真的发言。
冒険者がちょっと特殊なだけで、一般的にはユキぐらいの年齢であれば、普通に結婚して、家庭を持っている。
冒险者只是有点特殊,一般情况下只要到了小雪的年龄,一般都会结婚组建家庭。
そして結婚したなら、家を残すため、子供を産む事を求められるのが当然。
而且结婚的话,为了留下家,当然会被要求生孩子。
昔の日本でも、子供を産めないと石女うまずめなどと言われて離縁されたらしいが、そんな時代なのである。
在以前的日本,如果不生孩子的话,就会被说成是石女生人,然后就被离婚了。
まぁ、現実問題として子供がいなければ、農家なら農地が、職人なら工房が維持できなくなるし、老後の事を考えれば、それも必然なのだろう。
嘛,现实问题是如果没有孩子的话,农家的农地就无法维持,工匠的话就无法维持工房,考虑到晚年的事情,这也是必然的吧。
そういえば、ヤスエは結婚したんだよなぁ。
这么说来,ヤスエ结婚了啊。
子供とか、できたんだろうか?
有孩子了吗?
なんだか、同級生に子供がいるかも、とか、なんか不思議な気分である。
总觉得同学里可能有孩子之类的,感觉很不可思议。
「ん? なんだ。ユキはナオと良い仲なのか? てっきり、ナオはハルカとくっついているのかと思ってたんだが」
“嗯?什么。小雪和娜奥关系好吗?我还以为娜奥一定和Haruka在一起呢”
「えぇ。俺はハルカと――」
“诶。我和Haruka——”
「あたしとナツキ、纏めて面倒を見てくれる予定なんだよね?」
“我和枣,计划一起照顾我吧?”

467
318js.md

@ -0,0 +1,467 @@
# 318 仕込みと休息 (4)
318训练和休息(4)
「あ、おい――!」
“啊,喂——!”
俺の言葉を遮って言った、ユキのとんでもない言葉。
你打断了我的话,我说的话太荒唐了。
だが、それを聞いたシモンさんは、予想外にも平然と頷いた。
然而,听到这一消息的西蒙先生却出乎意料地坦然地点了点头。
「なんだ。なら心配する必要もねぇか。なら、子供ができた後、冒険に行けない期間のバイト程度でもかまわねぇぞ?」
“什么啊。那就没必要担心了。那么,有了孩子之后,不能去冒险期间的打工也没关系吧?”
「……いや、おかしいでしょ、シモンさん」
“……不,很奇怪吧,西蒙先生。”
「ん? なにがだ?」
“嗯?什么?”
「なにって、結婚相手が三人とか」
“怎么说呢,有三个结婚对象?”
「そうか? お前らぐらい稼いでいれば、普通だろう? 儂ら職人でも、稼げる奴は複数の嫁がいるからな。儂も二人いるぞ?」
“是吗?像你们这样赚钱的话,很普通吧?就算是工匠,能赚钱的人也有很多妻子。也有两个人哦?”
「………」
「………」
初耳である。
第一次听说。
……いや、そもそもシモンさんの家庭事情なんて、聞いた事はなかったのだが。
……不,我本来就没听说过西蒙先生的家庭情况。
しかし、貴族じゃなくても複数の嫁がいるとか……一般的な話なのか?
但是,即使不是贵族,也有多个媳妇……这是一般的说法吗?
「シモンさん、複数人と結婚するのって、普通なのか?」
“西蒙先生,和多个人结婚是正常的吗?”
「稼げる奴はそうじゃねぇか? 結婚できる男はなかなか少ないからな」
“能赚钱的人不是这样吗?因为能结婚的男人很少”
「だよね? やっぱり、甲斐性がある男は頑張らないとね!」
“是吧?果然,有出息的男人不努力不行啊!”
シモンさんの言葉を聞いて、ユキは嬉しそうに笑う。
听了西蒙先生的话,雪高兴地笑了。
結婚できる男が少ない――簡単に言えば、家族を養えるだけの稼ぎがある男が少ない、と言う事らしい。
能结婚的男人很少——简单说来,能养活家人的男人很少。
例えば農家。
例如农家。
農地をもらえるのは長子だけで、次男以降はその下働きだったり、家から放逐されたり。
只有长子才能获得农地,次子以后会做农活,或从家里放逐。
職人に関しても、それはほぼ同じ。
关于手艺人,那个也大致相同。
放逐された子供たちは、運が良ければ街で安定した仕事にありつけるのだが、大半は冒険者になって日雇いの仕事をしたり、俺たちのような本当の意味での“冒険者”になったり。
被放逐的孩子们,如果运气好的话,就可以在街上找到稳定的工作,但是大半都是冒险者做临时工,成为像我们这样真正意义上的“冒险者”。
つまり、長子以外がまともな仕事に就く事は、なかなかに難しいという事である。
也就是说,除了长子以外,从事正经工作是很难的。
そして、まともな仕事に就いていなければ、結婚は難しいわけで……。
而且,如果没有正经工作的话,结婚就很难了……。
男女が一対一の割合で生まれるとするならば、婚活競争、なかなかに激しそうである。
如果男女以一对一的比例出生的话,婚活竞争会非常激烈。
男に比べ、女が一人で生きて行くには厳しい社会だけに。
与男人相比,女人一个人生活是一个严峻的社会。
差別とかそういう話では無く、簡単にありつける仕事の多くは肉体労働が多いだけに、体力的に劣る女の方が稼ぎにくいのだ。
不是歧视之类的话,简单能做的工作大多是体力劳动,体力差的女人更难赚钱。
もちろん、女だからこそできる仕事もあるのだが……それはまぁ、別枠で良いだろう。
当然,也有只有女性才能做的工作……这嘛,可以分开来做吧。
「まぁ、女冒険者の中には、若い男を複数囲うようなのもいるが――」
“嘛,女冒险者中也有围着几个年轻男人的——”
なるほど。稼げるなら、逆もありなのか。
原来如此。如果能赚钱的话,反过来也有吗。
「ユキはそういうタイプじゃねぇよな」
“小雪不是那种类型吧。”
シモンさんはそう言いながらユキを見て、首を振る。
西蒙一边这样说着,一边看着雪,摇头。
そしてユキの方も、すぐにキッパリと首を振って否定した。
而小雪也立刻斩钉截铁地摇头否定了。
「うん、それは無いね」
“嗯,没有。”
「だろうな。まぁ、そのタイプは子供は産めねぇしな」
“是吧。嘛,这种类型的人是不能生孩子的”
「そうなんですか?」
“是吗?”
「冒険者なんぞ、子供ができたら稼げねぇだろう? そうなれば破綻する関係だ。男が稼ぐのとは違うからな」
“什么冒险家,有了孩子就赚不到钱了吧?如果那样的话,关系就会破裂。这和男人赚的不一样”
「ですよね。ヒモですもんね」
“是啊。是绳子吧”
妊娠期間中、収入ゼロはなぁ……。
怀孕期间没有收入啊……。
産休制度などがしっかりしていて社会福祉がある社会であれば、男女逆もありなのだろうが、この社会では、働くのも出産も全部女性ってのは無理があるか。
如果是产假制度等严格而有社会福利的社会,也许会出现男女逆转的情况,但是在这个社会里,工作和生孩子都是女性是不可能的吧。
そもそも、お産なんて文字通りに命懸けの行為なのだ。
说起来,分娩就是字面上赌上性命的行为。
特に冒険者なんて、子供を産んですぐに働けるわけもない。
特别是冒险者,生了孩子也不可能马上工作。
『保育園に落ちた!』とか言う以前に、保育園が無いし、粉ミルクなんて売ってないので、母乳も必要。当然、お手軽な紙おむつとかも存在しない。
“掉进保育园了!”之前没有托儿所,也没有奶粉卖,所以需要母乳。当然,也不存在简单的纸尿裤。
これで男女逆というのはなかなかに厳しいだろう。
这样一来,男女逆转就相当严峻了吧。
俺がそんな事を考えていると、シモンさんが少し同情するような笑みを浮かべ、ポンポンと俺の背中を叩いた。
我一想到这件事,西蒙露出同情的笑容,啪嗒啪嗒地拍着我的背。
「ま、そういう事なら、儂が言う必要はねぇな。ナオ、三人はなかなかに大変だぞ? 金だけの問題じゃねぇからな。頑張るんだぞ!」
「嘛,这样的话,没必要你说了。娜奥,三个人很辛苦哦?因为这不仅仅是钱的问题。要加油哦!”
「え……」
“啊……”
「困ったら相談に来い。儂もそれなりに経験を積んでっからな!」
“有困难的话来找我商量。我也积累了相应的经验!”
「――あっ!」
“——啊!”
一瞬何のことか判らず、俺が戸惑っている間に、シモンさんは作業員に指示を出すために離れて行く。
一瞬间不知道发生了什么事,在我不知所措的时候,西蒙先生为了向工作人员发出指示而离开了。
それを見送った俺を、ユキがにんまりと笑みを浮かべて見上げる。
雪带着微笑抬头看了目送着这一切的我。
「頑張ってね、ナオ」
“加油,娜奥”
「……ユキ、地味に外堀を埋めていってないか?」
“……小雪,有没有朴素地填埋外沟?”
何か機会がある度に。
每次有什么机会。
そう指摘した俺に、ユキはとんでもないとばかりに首を振る。
对于这样指出的我,雪一脸不可思议地摇头。
「そんな事、無いよ?」
“没有那样的事吗?”
「そうか?」
“是吗?”
「うん。ガッツリと、派手に埋めているから。内堀も含めて」
“嗯。因为紧紧地、华丽地填满了。包括内堀”
「おい!」
“喂!”
「はっはっは。気が付いた時には、ナオ城は丸裸なのだ!」
「哈哈哈。注意到的时候,娜奥城是全裸的!”
ばーん、と手を突き出して、そんな事を宣言するユキ。
“嗯,”yuki伸出手,宣布了这样的事。
マジ、油断ならない。
真的,不能大意。
「さあさあ、十分休んだでしょ。作業を続けよう!」
“喂,已经充分休息了吧。继续工作吧!”
「いや、俺としては何が内堀で、何が外堀なのかも気になるんだが?」
“不,对我来说什么是内堀,什么是外堀呢?”
「気にしない、気にしない。判らないって事は、まだ効果が無いって事なんだよ。効果が無いって事は、気にしても意味が無い事なんだよ、うん」
“不在意,不在意。不明白的话,就是还没有效果。没有效果的话,即使在意也没有意义,嗯”
「そ、そういうものか……?」
“那,是这样吗……?”
なんか誤魔化されている気がするが、すでにユキは足場を伝い、穴の中へ降りてしまっていた。
虽然感觉好像被欺骗了,但是雪已经沿着脚手架走下去了。
俺は首を捻りつつもユキの後に続いて、作業を再開したのだった。
我一边歪着头一边继续着小雪之后,重新开始了工作。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「まさか、代官まで関わってくるとはね」
“难道连代官都有关系吗?”
作業を始めたナオたちと別れ、家の中へと戻ったハルカたちは、居間に集まって一息つきつつ、先ほどの事を話し合っていた。
和开始工作的娜奥他们分开后,回到家里的Haruka他们聚集在起居室里喘着气,谈论着刚才的事情。
「ですね。と言うか、ハルカ、ナオくんを放置して良かったんですか? ハルカだって少しは手伝えますよね?」
“是啊。或者说,春香、nao君放任不管真是太好了吗?Haruka也能帮你一点吧?”
ナツキは頷きつつも、窓から見えるナオたちに目をやりながら、ハルカに訊ねる。
夏树一边点头,一边看着从窗户看到的娜奥他们,一边问Haruka。
ハルカの方も少しばつが悪そうな表情を浮かべつつも、首を振る。
Haruka的表情也有些尴尬,但还是摇头。
「そりゃ少しはね。でも、私は土魔法、得意じゃないし、相談したい事があったからね」
“那是一点。但是,我不擅长土魔法,有想和你商量的事情”
「代官の事ですか?」
“你是说代官吗?”
「そう、それ」
“对,就是那个。”
「オレとしては、ちょっと晩酌するために、趣味で酒を造るぐらいの想像だったんだが……なんかでっかい建物を建てそうな感じだよな」
“对我来说,我只是为了稍微喝点晚酒,以兴趣来制造酒而已……感觉好像要建一座很大的建筑。”
トーヤたちが見たのは、シモンが縄張りをしているところだけだが、それだけでも建坪は判るわけで、ちょっとした小屋なんかではない事は一目瞭然だった。
Toya他们看到的只是西蒙势力范围内的地方,光是这样就可以知道建筑面积,而不是一个小小屋之类的事情就一目了然了。
「お酒造り、失敗すると……ちょっと不安ね」
“造酒,失败的话……有点不安。”
「はい。あの代官なら、おそらく無茶は言わないと思いますが。私たちとネーナス子爵家の関係も、把握していると思いますし」
“是的。如果是那个代官的话,恐怕不会乱说。我想我们和纳纳斯子爵家的关系也掌握了”
ハルカたちが代官に対して酒に関してプレゼンをし、資金を出してもらったとかいうならともかく、現状、ハルカたちと代官の間には何の関係も無く、シモンが酒の事を話したというだけのこと。
如果说Haruka他们向代官做了关于酒的发表,并拿出了资金的话那就另当别论了,现状是Haruka他们和代官之间没有任何关系,西蒙只是说了酒的事情。
それだけで彼女たちに不利益がもたらされるなど、普通はあり得ないが、酒に関する利権は決して小さい物ではない。
仅仅这样就给她们带来了不利之处,这在一般情况下是不可能的,但与酒有关的特权绝对不小。
酒に掛かる税金や販売の許認可権。
有关酒的税金和销售的许可权。
事業としてこの町で酒造りが出来るようになれば、それはかなり大きな利益を生むわけで、それに目がくらんだ代官が、ハルカたちに対して無茶を言わないとは言い切れないだろう。
作为事业,如果能在这个城市里造酒的话,那会产生相当大的利益,而且目瞪口呆的代官也不能不对Haruka他们乱说吧。
「ハルカお姉ちゃん、イリアス様が困ったら頼って良いって言ってたの!」
“Haruka姐姐说过,伊利亚斯大人有困难的话可以依赖她!”
「あ、はい! 何時でも連絡して構わないって、おっしゃってました」
“啊,是!他说什么时候都可以联系我,没关系”
胸を張って、笑顔でそんな事を言うミーティアたちに、ハルカたちは苦笑を浮かべる。
面对挺起胸膛、面带笑容说出这些话的Metier们,Haruka等人露出苦笑。
「それはありがたい申し出だけど、できれば頼らずに済ませたいところよね」
“这是一个令人感激的提议,但如果可能的话,还是不依赖别人的好。”
「ですね。ミーティアちゃんとイリアス様の間で収まる事ならともかく、ネーナス子爵が関わってくると、どうしても貸し借りの問題になりますし」
“是啊。先不说米蒂亚和伊利亚斯之间能解决的事情,如果和尼纳斯子爵有关系的话,无论如何都会成为借贷问题”
現状、ハルカたちとネーナス子爵の関係は、ハルカたちが誘拐事件の解決に尽力した見返りに、ネーナス子爵が面倒な貴族からの干渉を防ぐというもの。
现状是,Haruka他们和内那斯子爵的关系,作为Haruka他们努力解决绑架事件的回报,防止了内那斯子爵对麻烦的贵族的干涉。
その関係性を崩すようなことは、ハルカたちとしてもあまり嬉しい事ではない。
破坏这种关系性的事情,对Haruka他们来说也不是很开心的事。
「お酒造りが上手くいけば良いんだけど……いや、上手くいっても困るのかな? お米が無いんだから」
“如果能很好地酿酒就好了……不,做得好也会很困扰吧?因为没有米”
「シモンさんは、代官が考える事って言ってたが……」
“西蒙先生说是代官思考的事情……”
「私たちにとって最も都合が良いのは、この周辺で米が作られるようになる事ですが、どうでしょうね?」
“对我们来说最方便的是,在这附近可以种大米,怎么样?”
「農地自体が少ないからね。川も傍に無いから、水田を作るなら溜め池か、川から水を引いてくるか、かなりの工事が必要よね」
“因为农地本身就很少。因为河也不在旁边,所以要修水田的话,要么是蓄池,要么是从河里引水过来,需要相当大的工程”
「ですがハルカ、もしかすると私たちの購入したお米、陸稲という可能性もありますよ?」
“但是Haruka,也许我们买的米是旱稻?”
「……そっか、水稲とは限らないのか。それなら水の心配は無いけど……逆に連作障害の問題は発生するわね」
“……这样啊,不一定是水稻吗?”。那样的话就不用担心水了……相反会发生连作障碍的问题”
一般的に農作物の多くは、同じ場所で続けて栽培すると、連作障害で育成不良が発生する。
一般来说,很多农作物在同一个地方连续栽培的话,会因连作障碍而发生培养不良。
その点、水稲は水を流す事でその連作障害を回避し、ノーフォーク農法なんて事をしなくても、毎年同じ場所で栽培する事を可能にしている。
在这一点上,水稻通过冲水来避免连作障碍,即使不采用无叉农法,每年都可以在同一个地方栽培。
実は水田とは、かなり優秀な農法なのだ。
其实水田是相当优秀的农法。
もちろん、豊富な水があってこそ可能という欠点もあるのだが。
当然,也有只有丰富的水才有可能的缺点。
「ま、米の輸入、栽培に関しては私たちがどうこうできる事じゃないわね。……美味しいお酒ができたら、それを餌にして、米の栽培を唆すぐらいで」
“嘛,关于大米的进口、栽培,我们怎么能做到呢。……如果能喝到好喝的酒,就以它为诱饵,唆使大米的栽培”
「言い方は悪いですが、それは良いアイデアですね。安定してお米が食べられるようになりますし」
“说话方式不好,但这是个好主意。可以稳定地吃米饭”
ハルカたちが買ってきた米は、それこそ年単位で食べられるだけの量があるのだが、それだけと言えばそれだけ。食べきってしまえば、また買いに行かなければいけないし、酒造りに使うのであれば、その量は一気に減少するだろう。
Haruka他们买来的大米,有足够的量可以以年为单位食用,但仅此而已。吃完了的话,又不得不去买,如果是用来造酒的话,量会一下子减少吧。
もっとも、仮に代官が米作りを決断したとしても、その結果が出るのは早くても数年後。
不过,即使代官决定要种大米,其结果最早也要数年后才能出来。
どちらにしても、米が無くなるのはほぼ確実である。
无论哪一种,米都几乎没有了。
「でも……そうね、せっかく麹菌が手に入ったんだし、日本酒に限らず、私たちで新しいお酒を作ってみるのもありなのかしら?」
“但是……是啊,好不容易得到了曲霉菌,不仅是日本酒,我们也可以试着做新酒吗?”
「いやいや、ハルカ、新しいお酒なんか、そう簡単に作れないだろ?」
“不不不不,Haruka,你不会那么容易做新酒的吧?”
意外な事を言い出したハルカを見て、トーヤが少し呆れたように言うが、ハルカは首を振る。
看到说出了意外的话的遥,托亚好像有点吃惊似的说,但遥摇了摇头。
「そうでもないわよ? お酒なんて、極論すればデンプンか、糖があれば作れるんだから。結構意外な物から造られているお酒ってあるしね。例えば……トーヤ、テキーラって知ってる?」
“不是那样的?酒这种东西,极端地说就是淀粉,有糖的话就可以做。也有由相当意外的东西制成的酒。比如……托雅,你知道龙舌兰吗?”
「あぁ、確かメキシコの酒だったよな?」
“啊,好像是墨西哥的酒吧?”
「えぇ。あれって、何から作られるか知ってる?」
“诶。你知道那个是由什么做成的吗?”
「……ん? あのあたりだと……ジャガイモとか?」
“……嗯?那附近……土豆之类的?”
南米に近いということからのイメージなのだろうが、メキシコの農産物と言えばタコスの原料にもなるトウモロコシである。
这大概是因为接近南美的印象吧,墨西哥的农产品是玉米,也是玉米的原料。
そして当然、テキーラの原材料はジャガイモでは無い。
当然,龙舌兰的原材料不是马铃薯。
「いいえ。リュウゼツランよ」
“没有。柳泽兰哟”

375
319js.md

@ -0,0 +1,375 @@
# 319 醸す (1)
319酿造(1)
「え? リュウゼツランって、あの滅茶苦茶でっかくなって、十数年とかに一度しか花が咲かないという?」
“啊?据说柳泽兰花是那种乱七八糟的大花茶,十几年才开一次花?”
「そう、それ」
“对,就是那个。”
ちなみに、花が咲くまでの期間は成長具合に比例するので、本来の自生地で十数年、日本などでは二〇年から三〇年と言われている。
顺便说一下,因为到花开为止的时间是与成长情况成比例的,所以本来的野生地是十几年,在日本等地是从20年到30年。
そして、一度花を咲かせただけで枯れてしまうのだ。
然后,花只开了一次就枯萎了。
テキーラに用いられるのは、花が咲く前、栄養がしっかりと蓄えられた状態の物である。
龙舌兰花使用的是在开花前营养充足的状态。
「あれの茎の部分……でいいのかしら? まぁ、そんな感じの部分を使って造るのよ」
“那个茎的部分……可以吗?嘛,就是使用这种感觉的部分来制造的”
「あ、あれを農産物として栽培するのか……なんか想像できないな……」
“啊,那是作为农产品来栽培的吗……真是难以想象……”
トーヤの想像するリュウゼツランは、植物園で見るような巨大なリュウゼツラン。
Toya想象中的Rurzetlan,是在植物园里看到的巨大的Rurzetlan。
だが、実際、その想像はほぼ間違っていない。
但是,实际上,那个想象几乎没有错。
花が咲く前に収穫するため、稀にニュースになるような巨大な花茎こそ無いが、放射状に生える葉は両腕を伸ばしたよりも大きく広がり、収穫までに掛かる期間も十年以上。
因为是在开花前收获的,所以很少有成为新闻的巨大花茎,不过,放射状生长的叶比伸出双臂的叶要大,到收获为止要花费十年以上。
どう考えても、日本の小さな畑にはマッチしない。
怎么想都不适合日本的小田地。
「ジャガイモで造るお酒も、別にあった気がするけど……何だったかしら?」
“我觉得用土豆做的酒也有别的……是什么呢?”
「アクアビットですね。アルコールを造るだけなら、結構、いろんな物で造れますからね。それこそ、食品廃棄物みたいな物でも。美味しいかどうかは知りませんが」
“是AQUA比特呢。如果只是制造酒精的话,可以用各种各样的东西制造出来。这才是食品废弃物之类的东西。不知道好吃不好吃”
廃棄物由来でメジャーなところでは、廃糖蜜だろうか。
在主要来源于废弃物的地方,大概是废糖蜜吧。
砂糖を作った後の廃棄物だが、これを使って焼酎などが造られる。
虽然是制作砂糖后的废弃物,但是用这个制作烧酒等。
もっとも、これを“廃棄物”と言うべきか、“副産物”と言うべきかは微妙なところだが。
不过,到底该称之为“废弃物”还是“副产品”还有些微妙。
「いや、美味しくなけりゃ意味がねぇじゃん? 何のために作るんだって話だろ」
“不,不好吃就没意义了吧?”?说是为了什么而做的吧”
「大丈夫よ。大抵の物は蒸留すれば飲めるから。……たぶん」
“没关系。大部分的东西只要蒸馏就可以喝。……大概”
「たぶんって……おい」
“什么叫たぶ……喂”
「だって、私、お酒の味なんて解らないもの。適当に作って、トミーやシモンさんたちに飲ませてみましょ」
“因为,我不知道酒的味道。随便做一下,让汤米和西蒙他们喝一杯吧”
「そ、それで良いのか……? いや、そもそもオレたちが酒を造る意味ってあるのか?」
“那,这样可以吗……?不,本来我们制造酒就有意义吗?”
「経営の多角化。冒険者一本槍だと不安じゃない? 引退後の事とか」
“经营多样化。冒险者一支枪的话不是不安吗?引退后的事情之类的”
トーヤのもっともな言い分に対し、ハルカの答えはそんな物だった。
对于TOYA最有道理的说法,Haruka的回答是这样的。
ナツキはそれを聞き、少し考えると、真面目な表情で口を開いた。
夏树听了之后,稍微一想,表情认真地开口了。
「……もしかして、ハルカ、私が崖から落ちた事が影響してますか?」
“……难道是我从悬崖上掉下来的影响?”
「うん、それが無いとは言わない。収益源が多ければ、焦る必要も無いしね」
“嗯,我不说没有。收益源多的话,就没有必要着急了”
今のところ、ハルカたちの間では、できる範囲では冒険者を続けようというコンセンサスが取れているが、実際にどれだけの資金を貯めるかなどの目標に関しては、どうしてもばらつきが出る。
目前,在Haruka他们之间,虽然取得了在力所能及范围内继续冒险者的一致意见,但实际上关于能存多少资金等目标,无论如何都会出现偏差。
エルフであるハルカとナオに比べ、寿命の短いトーヤたちは、冒険者として活動できる期間も短くなるし、今後、結婚などによるライフステージの変化にも違いは出てくる。
与作为精灵的Haruka和nao相比,寿命短的Toya们作为冒险者活动的时间也变短了,今后,由于结婚等的生活阶段的变化也会出现差异。
それらを考えると、冒険者の引退を決める段階が、必ずしも全員が同じになるとは限らないし、それ以外に収益源が無ければ、辞めたくても辞められないという事も起こりうるだろう。
考虑到这些,决定冒险者引退的阶段未必所有人都是一样的,除此之外如果没有收益来源的话,即使想辞职也有可能辞职。
「まぁ、確かに、冒険者を引退すると仕事が無いって話は聞くなぁ。まともな仕事にも就けねぇし、不味い屋台を始めたりとか――いや、ハルカたちの場合、普通に飯屋で成功しねぇ?」
“嘛,的确,听说冒险者退休后就没有工作了。也找不到像样的工作,开始做难吃的摊子之类的——不,Haruka他们的话,一般在饭店成功吧?”
「私たちはともかく、トーヤは? 魔法を使えるナオはまだしも、トーヤは体力が衰えたらどうするの? 蓄え、あるの?」
“我们姑且不论,火炬呢?能使用魔法的娜奥还好,但托亚要是体力衰退了怎么办?有积蓄吗?”
「ぐはっ! い、痛いところを!?」
“哈哈!好、好痛的地方
現状、一番潰しが効かないのが誰かと言えば、確実にトーヤだろう。
现状,最不起作用的是谁,确实是Toya吧。
トーヤ以外は、体力が衰えても魔法で稼げる上に、女性陣はそれ以外にも平時に使える色々なスキルを持っている。
除了TOYA以外,即使体力衰退也能用魔法赚钱,女性阵营除此之外还拥有平时能使用的各种技能。
対してトーヤの持つスキルは、せいぜいが【鍛冶】ぐらい。
与之相对,火炬所拥有的技能最多也就是“锻造”。
ガンツさんやトミーという知り合いがいるので、そこで下働きぐらいはできるだろうが、稼ぎとしてはかなり寂しい物になる。
因为有GANTZ和TOMY这样的熟人,所以在那里能打下手,但是作为挣钱来说会很寂寞。
「それまでに十分なお金を貯めて、引退後は働かないって方法もあるとは思うけど……できれば働ける方が良いわよね? 人間としても、そして父親としても」
“我觉得在那之前存足够的钱,退休后不工作的方法也是有的……可以的话还是工作比较好吧?无论是作为人,还是作为父亲”
「ですよね。子供が生まれたら、『お父さん、お仕事しないの?』とか言われるかも……」
“是啊。孩子出生后,“爸爸,不工作吗?”也许会被这么说……”
「げふっ! そ、それは確かにキツい!」
“噗哼!那、那的确很难受!”
その事を想像したのか、トーヤがその顔に焦りを浮かべる。
大概是想象到了那件事吧,托亚脸上浮现出焦虑的表情。
彼の目標は、獣耳の可愛いお嫁さんをもらうというもの。
他的目标是娶一个兽耳可爱的新娘。
そして当然その先には、子供をもうける事も視野に入っているわけで。
当然,在这之前,我也考虑了生孩子。
自分の子供から『お父さんのお仕事は?』と聞かれた時、『お父さんは若い頃にたくさん働いたから、もう働かないんだよ』と言えるかどうか。
自己的孩子问“爸爸的工作是什么?”被问到“爸爸年轻的时候工作了很多,所以已经不工作了”的时候,是否能说出口呢。
言ったとして、そんな父親、尊敬されるのかどうか。
说了之后,那样的父亲会不会受到尊敬呢。
結構深刻な問題である。
是相当严重的问题。
いや、普通に考えて、働きもせずに嫁とイチャイチャしているだけの父親。
不,只是普通地考虑,不工作只是和妻子亲热的父亲。
かなりダメだろう。
相当不行吧。
子供が分別が付く年齢になれば別かもしれないが、それまでの間、どう見られるか……。
孩子到了有辨别能力的年龄也许就另当别论了,在那之前,怎么看呢……。
ついでに言えば、彼、お金を貯めるという目標も、微妙に滞っていたりする。
顺便说一下,他存钱的目标也微妙地停滞不前了。
理由はもちろん、アレである。
理由当然是那个。
回数は少ないのだが、青楼が高級娼館と言われるのは伊達では無いのだ。
虽然次数很少,但青楼被称为高级娼馆并不是为了装饰。
「ち、ちなみに、メアリ、ミーティア。過去冒険者だった人ってどんな感じか知ってるか?」
“智,顺便说一下,玛丽,米蒂亚。你知道过去冒险家是什么感觉吗?”
現地代表って事も無いのだろうが、そう訊ねたトーヤに、彼女たちが返した答えは非情な物だった。
虽然没有当过当地代表吧,但是她们对托亚这样问,回答是无情的。
「う~ん、あんまり知らないの。でも、大抵の人は結婚もできず、酒場で飲んだくれているの」
“嗯,我不太清楚。但是,大部分人都没能结婚,他们都在酒馆喝酒”
「その……私の知っている狭い範囲ですけど、あまりまともな人は……あ、いえ、きっとまともな人は私たちの生活範囲にはいなかっただけだと思います!」
“那个……虽然是我所知道的范围很小,但是有太正经的人……啊,不,我想一定只有真正的人不在我们的生活范围内而已!”
実際には、メアリたちの生活圏を離れたところで、そんな“まともな人”はほぼいない。
实际上,在远离玛丽们生活圈的地方,几乎没有这样“正派人”。
マズい屋台をやっている冒険者だって、ある意味では成功者なのだ。
即使是开着粗劣摊子的冒险者,在某种意义上也是成功者。
「……うん、必要だな、経営の多角化。頑張る。できる事は何でも言ってくれ!」
“……嗯,需要啊,经营的多样化。加油。能做的事尽管说!”
自分の将来を想像したのか、力強く宣言するトーヤだったが、そんなトーヤのやる気に水を差したのはハルカ。
是不是想象了自己的将来,强有力地宣言的toya,给那样的toya的干劲泼了水的是Haruka。
「それより、味噌と醤油造りの方が先だけどね」
“比起那个,味增和酱油的做法更先进。”
「ですね。お酒の方は、シモンさんたちの方の結果が出てからで良いかもしれません」
“是啊。喝酒的人在西蒙先生他们的结果出来之后可能会更好”
「それまでは……お酒になりそうな物を探すぐらいかな? トーヤ、森で何か探してくるとかどう? 【鑑定】があるし、向いているんじゃない?」
“在那之前……至少要找能喝酒的东西吧?Toya,要不要在森林里找点什么有鉴定”,不是很适合吗?”
「むっ、確かに。それじゃ、やる事もないし、早速――」
「嗯,确实。那样的话,也没有要做的事,马上——”
と、トーヤが言ったところで、タイミング良く部屋に入ってきたのはナオだった。
就在TOYA这么说的时候,按时进入房间的是娜奥。
「トーヤ、喜べ。力仕事だぞ」
“Toya,很高兴。这可是力气活啊」
「――おっと、そっちもあったか。了解した」
“——哦,那边也有吗?”。明白了”
ナオの言葉に頷き、立ち上がったトーヤに続き、メアリたちも手を上げる。
对娜奥的话点点头,跟着站起来的TOYA,玛丽们也举起了手。
「ナオさん、私とミーもお手伝いしましょうか?」
“娜奥,我和我也帮你吧?”
「うん、ミーもできるの!」
“嗯,我也会。”
する事も無く暇だったためか、ピョンという感じで立ち上がった二人だったが、ナオは少し考えてから首を振った。
也许是因为没做什么事情就很闲的缘故,两个人一起站了起来,但是娜奥想了想,摇了摇头。
「あー、いや、メアリとミーティアが大人顔負けなのは知っているが、今日のところは良いだろ。大人たちに交じって仕事するには、体格的にな」
“啊,不,我知道玛丽和米蒂亚都输给大人了,不过今天这样也挺好的。和大人们一起工作的话,要注意体格啊”
「そうなんですか?」
“是吗?”
「あぁ。ちょっと危ないしな」
“啊。有点危险啊」
実際、工事の作業に使う足場など、大人の体格に合わせて作られているため、メアリたち――特にミーティアがそこで作業するのは危険が伴う。
实际上,施工时使用的脚手架等,都是根据大人的体格来制作的,所以玛丽们——特别是米蒂亚在那里工作的话会有危险。
それでも、作業内容を限定すれば十分に役には立つのだろうが、酒蔵作りはナオたちの希望ではなく、シモンやトミーたちの希望。
尽管如此,如果限定工作内容的话,也能起到十分大的作用,但制作酒藏并不是娜奥他们的希望,而是西蒙和汤米们的希望。
その事を考えれば、敢えて子供たちを働かせるような事でもない。
考虑到这件事,也不是特意让孩子们工作。
極論、ナオたちが魔法を使ってまで協力する必要性も無いのだが、そこは義理や人情、人付き合いの範疇である。
当然,娜奥他们没有必要使用魔法来协助他们,但这是义理、人情、人际交往的范畴。
「ナオくん、ハルカは良いんですか? お疲れじゃありません?」
“娜奥君,Haruka可以吗?你不累吗?”
「ん? あぁ、まあ、少し疲れてはいるが、問題ない。……ハルカが来ても、今日一日では終わりそうにないからなぁ」
“嗯?啊,虽然有点累,但是没问题。……就算Haruka来了,今天一天也不会结束啊”
窓から見える工事現場の方を見て、ナオは少し苦笑しながら肩をすくめた。
看着从窗户看到的施工现场,直人苦笑着耸了耸肩。
ハルカの魔力量を考えれば、かなりの助けになる事は間違いないのだが、普段は必要性が無い事もあり、彼女の【土魔法】はレベル1。
考虑到Haruka的魔力量,无疑会有相当大的帮助,但是平时没有必要,她的【土魔法】是等级1。
壁面をナオやユキと同等レベルで固めるには、少々不足している。
墙面要和直人、小雪同等水平的凝固,稍微有点不足。
かと言って、手作業でもどうにかなる土の運び出しなどをやらせる気にはならない、そういう事なのだろう。
话虽如此,但就算是手工作业,也不想让他做一些有办法的搬土之类的事情。
「そうなの? それじゃ、私たちは味噌造りに励むわね」
“是吗?那我们就努力做味增汤了”
「おう。そっちの方が嬉しいな。美味いのを頼む」
“哦。我更喜欢那个。点好吃的”
「それは努力する、としか言いようが無いわね。メインはナツキだし」
“那只能说是要努力了。主菜是海枣”
「一先ずは同じ手順でやってみますが、米も豆も、そして麹菌も違いますから、どうなるかは……」
“首先要按照同样的步骤来做,但是米、豆、还有曲子菌都不一样,所以会怎么样呢……”
実際、日本で使われている麹菌にも多くの種類があり、味噌造りに使う物、日本酒造りに使う物、焼酎造りに使う物、それぞれ違うし、日本酒に使う麹だけでも何種類もある。
实际上,在日本使用的曲霉菌也有很多种类,制作味增的东西、日本酒用的东西、制作烧酒用的东西,各不相同,仅用于日本酒的曲子就有好几种。
麹菌の種類が違っても造れないわけではないのだが、そのあたりは味に反映されるわけで、“何々用の麹菌”とは、それが美味しく造れる麹菌という事になる。
虽然曲子菌的种类不同也不是不能制造出来,但是这一部分在味道上有所反映,所谓“什么用的曲子菌”,就是能够制造出美味的曲子菌。
「ふむ、そんなものか。ま、上手くいったら御の字って感じでよろしく」
「嗯,就是那样吗。嘛,进展顺利的话,就用‘御の字’的感觉来拜托你了”
「はい。メアリちゃんたちは、私たちの方を手伝ってください」
“是的。小玛丽们,请帮助我们”
「はい」
“是的。”
「美味しいの、造るの!」
“好吃的,要做!”

487
320js.md

@ -0,0 +1,487 @@
# 320 醸す (2)
320酿造(2)
トーヤたちが庭に出たところで、ナツキたちは揃って台所へと移動、味噌造りに取りかかった。
在松鼠们来到庭院里的时候,枣树们一起移动到厨房,开始做味增汤。
「ハルカは、お味噌の種類って、知ってますか?」
“你知道Haruka酱的种类吗?”
「種類って、白味噌とか赤味噌とか?」
“种类有白味增和红味增吗?”
「あ、そっちじゃ無くて、米味噌、麦味噌、豆味噌の事です」
“啊,不是那个,是米味增、大麦味增、豆味增。”
「あ、聞いた事ある。原料が違うのよね? 米味噌は米と大豆、麦味噌は麦と大豆、豆味噌は……大豆だけ?」
“啊,听说过。原料不一样吧?米酱是米和大豆,大麦酱是麦和大豆,豆酱是……只有大豆吗?”
「はい、基本的にはその通りです」
“是的,基本上就是这样。”
実際には、これに加えて麹菌と塩が必要となる。
实际上,除此之外还需要曲子菌和盐。
「……あれ? 待って。なら、お米を手に入れなくても、麦味噌と豆味噌は造れた?」
“……咦?等一下。那么,就算不买米,也能做大麦味增和豆酱吗?”
もしかして、もっと早くお味噌が食べられたかもと言うハルカに、ナツキは曖昧な笑みを浮かべる。
也许,对于更早吃到味增的春香,夏树浮现出暧昧的笑容。
「どうでしょうか? 麦や豆から麹菌が培養できたかどうかは……」
“怎么样?麦豆是否能培养出曲霉素……”
「あ、そうよね。麹菌が必要だものね」
“啊,是啊。曲子菌是必要的”
「頑張れば何とかなったかもしれませんが、インスピール・ソースがありましたからね」
“努力的话可能会有办法,但是有刺激性的酱汁。”
本物には及ばないが、それなりに似たような味が出せたインスピール・ソース。
虽然不及真货,但却能做出与之相似味道的刺激酱汁。
それが無ければ、ハルカたちも食への不満から努力したのだろうが、それなりに満足できていただけに、コストと時間を浪費しかねない麹の研究は、棚上げになっていたのだ。
如果没有这一点的话,春佳他们也会从对食物的不满中努力吧,正因为满足于此,曲子的研究可能会浪费成本和时间,所以搁置了下来。
「だよね。今回造るのは米味噌?」
“是啊。这次制作的是米酱?”
「でも良いですが、今回は当家の味噌をベースにしようと思っています」
“但是也可以,这次想以我们家的味增为基础。”
「ナツキの所は違うの?」
“枣的地方不一样吗?”
「はい。当家は米と麦を同量使って麹を造ります。大豆は米や麦の半量ですね。ちょっと少なめです」
“是的。我们家用大米和小麦等量制作曲子。大豆是大米和麦子的一半。稍微有点少”
「へー、そうなんだ? 普通がどうなのかは、良く知らないけど」
“啊,是吗?虽然不知道一般情况如何”
「麹の半分以上は入れる事が多いと思いますよ? それによって味が変わってきますので、少量ずつ、何種類か仕込んでみましょう」
“我觉得曲子的一半以上放进去的情况比较多?这样味道就会变,一点点地,试着准备几种吧”
「どれくらい造るの?」
“要造多久?”
「とりあえず、米と麦は二〇キロずつ水に浸して準備してあります。麦の方はハルカとミーティアちゃん、お願いできますか?」
“总之,米和麦各泡20公斤准备好了。麦子的话,可以拜托Haruka和Metia吗?”
「解ったの」
“我明白了。”
「お米の方は私とメアリちゃんでやりますから……お手伝い、お願いします」
“大米的话我和玛丽会做的……请帮忙。”
「はい。えっと……普通に蒸し器で蒸せば良いんですよね?」
“是的。呃……一般用蒸笼蒸就可以了吧?”
四人で手分けしても一人一〇キロ。
即使四人分开,每人也要一百公里。
一度に蒸せるはずも無く、それぞれが蒸し器を用意して、鍋に入るぐらいの量――おおよそ二キロぐらいを入れて蒸し始める。
不会一次蒸,而是各自准备蒸锅,放入锅中的量——大概两公斤左右开始蒸。
「ナツキ、蒸し時間は?」
“枣,蒸的时间是?”
「そのへんは感覚ですね。食べてみて、芯が無いぐらいまで蒸してください」
“这一点是感觉。请尝尝,蒸到没有芯的程度”
「了解。そうよね、大きさも違うものね」
“明白。是啊,大小也不一样呢”
麦の方はナツキの知る物と大差無いが、米の方はそのままでは大きすぎるため、四つ割りにした物。過去の経験はあまり役に立たない。
麦子和枣树知道的没什么大差别,但是大米就那样太大了,所以分成四份。过去的经验不太有用。
時々味見をしつつ、待つ事暫し。
有时一边品尝,一边等待。
「これぐらいで問題ないでしょう。この木箱の中に広げてください」
“这样就没问题了吧。请展开到这个木箱里”
そう言いながらマジックバッグからナツキが取りだしたのは、大きめのお盆ぐらいの薄い木箱。
一边这样说着,一边从魔术包里拿出了大枣,是一个大盘子左右的薄木箱。
一〇個以上がテーブルの上に積み上げられる。
十个以上可以堆在桌子上。
「……ナツキ、いつの間に作ってもらったの?」
“……枣是什么时候做的?”
「お米が手に入った後、ラファンに戻ってからですよ? 必要になるのは判ってましたからね」
“拿到米后,回到拉斐尔之后呢?因为我知道有必要”
少し驚いた様子を見せたハルカに、ナツキは平然と応える。
夏树坦然地回应了小遥的惊讶。
なかなかに用意周到である。
准备得很周到。
「木箱の上に広げたら、次のを蒸している間に、麹菌を混ぜておきます。普通ならきちんと温度を測るんですが……この麹菌なら、手で問題なく触れる温度になれば大丈夫です。ひとつまみぐらい振り掛けて、良くかき混ぜてください」
“摊开在木箱上后,在蒸下一道菜的期间,事先混入曲霉素菌。一般情况下是好好测量温度的……如果是这种曲霉素的话,用手没有问题地接触温度就可以了。撒上一撮左右,请好好搅拌”
「まぜまぜ~、美味しいご飯、楽しみなの~♪」
“混合吧~美味的米饭,享受吧~”
尻尾をフリフリ楽しそうにかき混ぜるミーティアの様子を、ハルカとナツキは微笑ましそうに眺めているが、姉はそんな彼女に苦言を呈する。
Haruka和枣微笑着看着米蒂亚快乐地搅拌着尾巴的样子,但姐姐却对这样的她提出了忠告。
「ミー、しっかりと混ぜないとダメですよ。大事なご飯、失敗して無駄になったら、大変です」
“米,不好好搅拌是不行的。重要的饭,如果失败了就没用了,那就糟糕了”
「大丈夫なの。ミーは、ちゃんとできてるの!」
“没关系的。我已经做好了!”
だがそんな姉の苦言にも、ミーティアは胸を張ってそう応えた。
但是对于姐姐的忠告,米蒂亚也挺起胸膛回应了。
そして事実、ミーティアはナツキの手さばきをしっかりと観察して、やや拙いながらも同じように混ぜている。
而且事实上,米蒂亚仔细观察了枣的做法,虽然稍显笨拙,但也同样地搅拌着。
「メアリちゃん、あまり気にしなくても大丈夫ですよ。少し多いぐらいに麹菌を混ぜていますから、失敗する事はほぼ無いと思います」
“玛丽,不用太在意。因为含有少量的霉菌,所以基本上不会失败”
「むぅ……そうですか? でも、ナツキさんたちはちょっと優しすぎです。ミーの事、もっと厳しく叱っても良いんですよ?」
“呜……是吗?但是,夏树他们太温柔了。可以更加严厉地批评我吗?”
宥なだめるように言ったナツキに、メアリは少し不満そうにそんな事を言うが、ナツキとハルカは顔を見合わせて困ったように笑う。
枣说了些安慰的话,玛丽好像有点不满似的说了那样的话,但是枣和春香却相视而笑。
「正直、メアリはもちろん、ミーティアも叱るような事が無いのよね」
“老实说,玛丽就不用说了,连米蒂亚也没有骂过。”
「ですね。二人に困らせられた事はありませんし」
“是啊。我没有被两个人困扰过”
ハルカたちの言葉を聞き、ミーティアは「ふふんっ!」と鼻息も荒く胸を張る。
听了Haruka他们的话,米蒂亚说气喘吁吁地挺起胸膛。
「そうなの! ミーは良い子なの」
“是吗!我是个好孩子”
「こらっ! ミー! そういう所がダメなの!」
“喂!美!这种地方不行!”
手では麹を混ぜているからか、メアリの尻尾がぴゅんと動いて、叱るようにミーティアの背中を叩く。
也许是因为用手搅拌曲子的缘故吧,玛丽的尾巴嗖嗖地动了一下,像是斥责似的敲打着米蒂亚的背。
「ふふ、大丈夫ですよ。ミーティアちゃんも、メアリちゃんも良い子ですから」
“呵呵,没关系。米蒂亚和玛丽都是好孩子”
「私たちからすれば、もう少し我が儘を言っても良いと思っているぐらいだしね。メアリも含めて」
“在我们看来,我觉得再任性一点也没关系。包括玛丽”
「私たち、すでに十分に良くして頂いてますから、これ以上は……」
“我们已经做得很好了,所以再也……”
「そうなの。良い子だから我が儘はダメなの。与えられるのが当たり前と思って、感謝の心を忘れた時点で、人としてクズなの!」
“是的。因为是好孩子所以不能任性。觉得被给予是理所当然的,忘记了感谢之心的时候,才是作为一个人的垃圾!”
「「「………」」」
「「「………」」」
間違ってはいないが、なかなかに過激なミーティアの物言いに、揃って無言になる年長組。
虽然没有错,但是对于相当过激的米蒂亚的说法,一个年纪大的人都沉默了。
「……え~と、ミー? どこでそういう事覚えてくるの?」
“……嗯,我?你在哪里能记住这件事?”
「お父さんが言ってたの」
“爸爸说的。”
「お父さん……」
“爸爸……”
平然と応えたミーティアに、メアリが疲れたようにそう呟く。
面对坦然回应的米蒂亚,玛丽仿佛很累似的嘟囔着。
「そう言えば、『お金を持ってる良い人がいたら、養ってもらえ』というのも……」
“这么说来,‘如果有有钱的好人的话,请养我’也是……”
「えっと……他所のご家庭の教育方針に口を出すのはどうかと思いますが、もう少し言葉を選んだほうが……」
“呃……我觉得对其他家庭的教育方针说三道四不合适,但还是多选择点语言比较好……”
「い、いえ、私は聞いてないので、たぶんお父さんも、ミーティアが覚えているのは予想外なんじゃないかと……」
“不,不,因为我没听,大概爸爸也会觉得米蒂亚记的很意外吧……”
「ミーティアはイリアス様の授業でも、物覚えが良かったわね……物心が付く前の話なのかしら?」
“米蒂亚在伊利亚斯老师的课上,记性也很好……是在懂事之前的事吗?”
焦った様に手を振るメアリに、ハルカは小首を傾げる。
面对焦急地挥手的玛丽,Haruka微微歪着头。
メアリたちの父親からすれば、酒の席でポロリと漏らした程度の事だったのかもしれないが、記憶力が良いミーティアは、そんな言葉でもしっかりと覚えているのだろう。
在玛丽他们的父亲看来,可能只是在酒席上一溜烟地泄露了而已,但是记忆力好的米蒂亚,即使是这样的话也能牢牢记住吧。
幸いなのは、そこまでおかしな事は言っていないという事か。
幸运的是,没有说那么奇怪的话吗。
「子供は、親が思う以上に小さい時の事も覚えていたりしますからね」
“孩子会比父母想象的还要记得小时候的事情。”
「そう、かしら?」
“是吗?”
「えぇ。私だと、二歳ぐらいの事はある程度覚えていますからね。時系列はともかく、イベントとしては」
“诶。我在一定程度上还记得2岁左右的事情。时间序列暂且不论,作为活动”
「私は……三歳ぐらいからしか覚えてない、かな? でも……うん、赤ん坊でも子供の前では変な事を言わないようにしないと」
“我……大概只有三岁左右才记得吧?但是……嗯,即使是婴儿,在孩子面前也要注意不要说奇怪的话”
「おや、ハルカ。ご予定が?」
「哎呀,Haruka。有什么安排吗?”
悪戯っぽい笑みを浮かべて言うナツキに、ハルカが慌てて首を振る。
夏树带着恶作剧般的笑容说,春香慌忙摇头。
「無いけど! た、たぶん。うん、大丈夫、よ?」
“虽然没有!大概。嗯,没关系吧?”
と言いつつも、少し自信なさげなハルカに、ナツキはニコニコと微笑みながら頷く。
夏树微笑着点点头,对着稍微没有自信的春香。
「へぇ、そうですか? でも、必要ならサポートしますから、ご安心を」
“啊,是吗?但是,需要的话我会支持的,请放心”
「そ、それは……う、うん。――って、そうじゃなく。麹菌はもう十分に混ざったんじゃないかなっ!?」
“那、那是……嗯。——不是那样的。曲子菌不是已经充分混合了吗
「ふふっ。ええ、そうですね。後はこれを加速庫の中に入れておきます。私の知っている麹菌なら、一日、二日掛けて醸かもすんですが、これは常識が通用しませんからね……。しかも、加速庫までありますから、こちらも様子を見ながらですね」
“呵呵。是的,是这样。然后把这个放到加速箱里。如果是我所知道的曲子菌的话,会花一天两天酿制,但这是常识行不通的……。而且,还有加速库,这边也要看情况啊”
そんな感じに同じ作業を五度ほど繰り返すナツキたち。
在这种感觉下,夏树他们重复了五次同样的工作。
そして、最後の作業を終えたところで、最初に加速庫に入れた麹を取りだしたナツキだったが……。
然后,在最后的工作结束后,第一个取出放在加速箱里的曲子的枣……。
「……なんか、見た目はすでに良い感じ、ですね?」
“……怎么说呢,外表看起来已经很好了呢?”
「な、なんだか……すごいですね」
“啊,总觉得……好厉害啊。”
「カビちゃってるの……」
“你发霉了……”
知らなければ、見た目は完全にカビただけの食べ物。
如果不知道的话,看起来完全是霉菌的食物。
少し不安そうなメアリたちの様子も当然だろう。
看起来有点不安的玛丽们的样子也是理所当然的吧。
「こんな感じで良いの?」
“这种感觉可以吗?”
「はい、大体こんな感じだと思います」
“是的,大概就是这种感觉。”
全体的に薄黄色の綿のような物がわっさりとまぶされ、米同士が引っ付き、もろもろとした塊ができている。
整体上像淡黄色的棉花一样的东西被大大地包裹着,米之间互相吸引,形成了各种各样的块状。
ナツキはそれを適当に手で解ほぐしながら、その硬さや匂い、更に味を確認して頷く。
枣适当地用手解开,确认其硬度、味道和味道后点个头。
「問題無さそうです。早速味噌にしていきましょう」
“好像没问题。我们赶紧来做味增吧”
「えっと……豆を煮るんだっけ?」
“呃……是煮豆子吗?”
「はい。煮た豆を潰して使います。普通の煮豆よりも柔らかく、指でぐにゅっと潰れるぐらいまで軟らかく煮ます」
“是的。把煮好的豆子捣碎使用。比普通的煮豆还要软,煮到用手指捏破为止”
すでに下準備はしていたようで、ナツキは保存庫の中から水に浸かった豆を取り出した。
好像已经预先准备好了,枣从保存库里取出泡在水里的豆子。
これは『できるだけ大豆に近い物を』と、ナツキたちが市場で探してきた豆で、見た目は色が少し濃い以外は大豆とほぼ同じ。味の方も、ナツキたちが食べた感想としては『品種の違い程度?』というもので、かなり大豆に近い。
这是“尽可能接近大豆的东西”,是枣树们在市场上寻找的豆子,除了颜色稍浓之外和大豆几乎一样。味道方面,作为枣们吃了的感想也有“品种的不同程度?”因为是这样的东西,所以相当接近大豆。
それを大鍋に移し、軟らかくなったところで登場したのはミンサー。
将其移至大锅,变软后登场的是薄荷。
「手作業でも良いですが、せっかく便利な物があるのでこれを使います。上から注いでいきますので、出てきた物を受け止めてください」
“手工作业也可以,但是难得有方便的东西,就用这个。我会从上面倒进去的,请收下拿出来的东西”
肉屋が使っている物と違い、ハルカたちのミンサーは全自動。
和肉店使用的不同,Haruka等薄荷是全自动的。
上から入れるだけで、自動的に磨り潰された物が出てくる仕組み。
只要从上面放进去,就会自动磨坏的东西出来。
「なんか、このうにょうにょと出てくるのって――」
“怎么会这样出来呢——”
「おっと、それ以上はダメよ、ミーティア」
“哎呀,不能再这样了,米蒂亚。”
「むぐむぐっ」
“呼呼”
何かを口にしようとしたミーティアの口をハルカが素早く塞ぎ、唇に人差し指を当ててニッコリと笑った。
春香迅速地堵住了想吃什么的米蒂亚的嘴,用食指贴在嘴唇上,微笑着。
いつもよりも迫力のあるその笑顔に、ミーティアも口を押さえられたまま、コクコクと頷き、口を噤んだので、彼女が何を言おうとしたのかは謎である。
比平时更有魄力的笑容,让米蒂亚也捂着嘴,深深地点了点头,闭上嘴,她到底想说什么,这是个谜。
「これが美味しい食べ物になるなんて、不思議です」
“这个能成为好吃的食物,真是不可思议。”
「それは私も同じね」
“那我也一样呢。”
「ハルカさんもですか?」
“Haruka先生也是吗?”
「えぇ。でも大丈夫よ。ナツキがしっかりと美味しい物を作ってくれるから」
“诶。但是没关系。因为大枣能做出好吃的东西”
「いえ、原料が違うので、私も少し不安なんですが……。とりあえず、割合を変えて色々作ってみますけど」
“不,原料不同,我也有点不安……。总之,先换个比例试着做了各种各样的东西”
なかなかに他人任せなことを言うハルカにナツキは苦笑しつつ、机の上に壺をたくさん並べる。
夏树一边苦笑着,一边在桌上摆了很多壶。
大きさとしては二リットルほど。
大小大约两升。
これは風呂桶同様に、すべてユキとナオが魔法で作った物である。
这和洗澡桶一样,都是由雪和娜娜用魔法做的东西。
更にその横には塩の山。
而且旁边还有盐山。
味噌造りには材料の一割ぐらいの塩が必要なので、これも結構な量がある。
因为制作味增的材料需要一成左右的盐,所以这个也有很多量。
「私が計量していきますので、メアリとミーティアはそれらをよく混ぜて、隙間無く壷に詰めてください。ハルカは壷に分量を書いて、メアリたちに渡してください」
“我来量一下,玛丽和米蒂亚把它们充分混合,请毫无间隙地装进壶里。请在壶里写上分量,交给玛丽们”
そうやって何十種類もの味噌を仕込んだナツキたちだったが、それではまだ半分。
虽然是这样制作了几十种味增的海枣们,但那还只有一半。
更にほぼ同様の工程を辿って、同じぐらいの量、醤油も仕込み、やっとその日の作業は終わったのだった。
再沿着大致相同的工序,同样的量,酱油也准备,终于当天的工作结束了。

392
321js.md

@ -0,0 +1,392 @@
# 321 醸す (3)
321酿造(3)
酒蔵作り、二日目。
酿酒,第二天。
地下室の壁面は八割方、作り終わっていたが、中心部分の土の運び出しは、一階部分が終わったかどうか。
地下室的墙面打8折,虽然制作完成了,但是中心部分的土的搬出,一楼部分是否结束了。
ただ、昨日の二倍以上に作業員が増員されたため、順調にいけば、今日中に終わりそうなのが怖い。
只是,因为昨天增加了两倍以上的工作人员,如果顺利的话,恐怕今天就要结束了。
どんだけ酒造りに力を入れているのかと。
到底在造酒方面投入了多少力量呢。
トーヤの方は、『今日こそ完成させる!』と、朝早くからトミーの所に向かってしまった。
“今天一定要完成!”一大早就去了汤姆那里。
作業効率のアップが目的だったはずだが……猫車ができる前に、工事が終わらないか?
虽然目的应该是提高工作效率……但是在猫车完工之前,工程还没结束吗?
むしろ、トーヤの体力をここで発揮してくれた方が、効率が上がりそうなのだが。
倒不如说,在这里发挥Toya的体力,效率会提高。
「工事、順調ですね。普段から、こんな感じなんですか?」
“工程很顺利啊。平时就是这种感觉吗?”
「バカヤロウ。おめぇらがいるから、滅茶苦茶早ぇぞ?」
“笨蛋。因为有你们在,所以请快点喝吧?”
穴を掘るだけなら人を増やせばいいだけだが、壁面の処理に関してはそう単純ではない。
如果只是挖洞的话,增加人就可以了,但是关于墙面的处理却不是那么简单。
普通はブロックを積み上げて、しっかりと固めてと、そちらにかなりの時間が取られてしまうらしい。
一般来说,把积木堆积起来,好好固定的话,那边会花很多时间。
今回はそれを全て俺とユキの魔法で処理しているので、効率が全く違うようだ。
这次全部用我和雪的魔法来处理,所以效率好像完全不同。
「やはり魔法は凄すげぇよなぁ……何時でも待ってっからな?」
“果然魔法很厉害啊……什么时候都等着呢?”
「はは……できればその状況にはなりたくないですね。せいぜい、バイトぐらいで」
“哈哈……如果可能的话,我不想变成那种状况。最多也就打工吧”
再度誘ってくるシモンさんに、俺は苦笑を返す。
对于再次邀请我的西蒙,我苦笑着回答。
本格的に雇われるって事は、冒険者ができない状態になってるって事だからなぁ。
真正被雇佣是因为处于冒险者无法胜任的状态。
「儂としては、バイトでもかまわねぇよ。けど、お前ら、金には困ってねぇよな」
“作为我来说,打工也没关系。但是,你们对金钱没什么困扰吧”
「ま、そうですね、今のところ」
“嗯,对了,就是现在。”
「やるとしても、よほど暇な時か、妊娠期間か」
“即使要做,也是相当闲的时候,还是妊娠期?”
「……その話、まだ続けます?」
“……那件事还要继续吗?”
あの後、とりあえずはユキやナツキと結婚する予定は無いとは伝えたのだが、シモンさんは『ガハハ!』と笑って、俺の背中をバシバシと叩くだけ。
那之后,虽然说暂时没有和雪和夏树结婚的计划,但是西蒙先生说“哈哈!”只需轻轻地拍我的背。
その後ボソリと、『人生、案外ままならねぇぞ?』と呟いていたのが、妙に耳に残ったのだった。
在那之后,他自言自语地说:“人生真是出乎意料的不如意啊?”这样嘟囔着,奇怪地留在了耳边。
シモンさんとそんな事を話しながら、作業を進めていると、トーヤが家の門から入ってくるのが見えた。
一边和西蒙先生说那样的话,一边进行着工作的话,能看见Toya从家的门进入。
猫車は持っていないが、その代わりに大きめの物を入れるためのマジックバッグを手に持っている。
虽然没有猫车,但是取而代之的是拿着能放大一点东西的魔术包。
間に合わないと思っていたのだが、もしかして、早くも猫車ができたのだろうか?
我以为来不及了,难道是早就做好了猫车了吗?
「トーヤ、できたのか?」
“火炬,做好了吗?”
「おう。とりあえず、一つだけな」
“哦。总之,就一个吧”
そう言いながらマジックバッグから取りだしたのは、俺の知る猫車とそう違いがない物。
一边这样说着,一边从魔术包里取出来的东西,和我所知道的猫车没有什么区别。
あ、タイヤ部分が違うか。何かは良く判らないが、ゴムタイヤではないな。
啊,轮胎部分不一样吗。不太清楚是什么,但不是橡胶轮胎。
「コイツが、昨日言っていた猫車ってヤツか? 土砂を運搬する物ってぇ話だったが……」
“这家伙是昨天说的猫车吗?说是搬运沙土的东西……”
「はい。結構便利だと思うんですよ」
“是的。我觉得很方便”
「ふむ……確かに楽そうではあるか?」
“嗯……确实很轻松吗?”
シモンさんは猫車を検分しながら、興味深そうに頷く。
西蒙先生一边检查着猫车,一边兴致勃勃地点头。
「へぇ、良くできてるじゃん。昨日の今日で」
“诶,做得很好啊。在昨天的今天”
ユキも近づいてきて褒めるが、トーヤの方は少々不満そうな表情を浮かべて、首を振った。
雪也靠近来表扬,但是托亚的表情有点不满,摇了摇头。
「いや、そうでもない。パイプが無いから、結構手間が掛かるんだよ」
「不,不是那样的。因为没有管子,所以很费工夫”
「……そう言えば、骨組みってパイプを曲げて作ってあったな」
“……这么说来,骨骼是弯着管子做成的。”
工事現場で使われている物を思い出してみれば、確かにパイプが使われていた。
回想一下施工现场使用的物品,确实使用了管道。
工業製品としてパイプが生産されていれば、それを曲げるだけで作れるわけだが……うわっ、これ、鉄板を手作業で丸めてるのか? 面倒くさ!
如果作为工业产品生产管道的话,只要把它弯过来就可以做了……哇,这个是手工制作的吗?真麻烦!
「なかなか手間が掛かってるんだよ、これ。売り出す事を考えると、もうちょっと楽に作りたいところだが、鉄棒を使うと重くなりすぎるし、強度と軽さ、両立しようとするとなぁ」
“这可真是费了不少功夫啊。考虑到要出售的话,我想做得更轻松一些,但是用铁棒的话太重了,要想兼顾强度和重量啊”
「軽くて強い素材か……あ、そう言えばあれがあったな。トレントの木材。あれなら強度があって軽い――」
“是又轻又强的材料吗……啊,这么说的话确实有。山沟的木材。那样的话有强度又轻——”
「バカヤロウ! そんなもん、誰が買うってんだ! ――と言うか、お前ら、トレントを手に入れたのか?」
“混蛋!那种东西,谁会买呢!——话说回来,你们拿到了多伦多吗?”
「え、えぇ、ダンジョン内で」
“嗯,呃,在迷宫里。”
突然シモンさんに怒鳴られ、俺が戸惑いつつも肯定すると、シモンさんは深くため息をついた。
突然被西蒙先生怒吼,我一边困惑一边也肯定的话,西蒙先生深深地叹了一口气。
「トレントの値段を知ってんのか? お前たちが持ち込む銘木の何倍も高たけぇんだぞ?」
“你知道多伦多的价格吗?你想比你们带去的名牌贵几倍?”
あー、そうだよな、高いよな。
啊,是啊,好贵啊。
骨組みだけに使うなら、そこまでの量は必要なさそうにも思うが……そう言えば、ハルカの使っている弓もトレントの枝をベースにした物だったな。
如果只是用在骨架上的话,好像不需要那么多的量……这么说来,Haruka使用的弓也是以trunt的树枝为基础的。
あれのお値段が、金貨八〇枚。
那个的价格是800枚金币。
弓に適した場所の選別や、それの加工にコストがかかるとしても、トレント素材自体、決して安いお値段では無いだろう。
即使在选择适合弓的场所和加工上花费成本,特莱特素材本身也绝对不是便宜的价格吧。
少なくとも、トレントを使った工事用品を現場で気軽に使うなど、考えにくい。
至少,在现场轻松地使用使用使用了truct的工程用品等,很难想象。
「確かにちょっと無理そうですね」
“确实有点勉强。”
「ちょっとじゃねぇよ! そんなもん、使ってたら盗まれるわ!」
“有点不对劲啊!那种东西,用了就会被偷的!”
「ですか。ちなみにシモンさん、トレントの木材、買いますか?」
“是吗。顺便问一下,西蒙先生,要买truct的木材吗?”
呆れたように言うシモンさんに俺は頷き、この機会にと提案してみたのだが、シモンさんは深く唸る。
我对目瞪口呆地说的西蒙先生点头,想借此机会提出这个建议,西蒙先生深深地呻吟着。
「……う~む、う~む、欲しくねぇと言ったら嘘になる。だが無理だな。買えねぇ……つーか、買っても使えねぇ」
“……唔,唔,唔,说不想要就撒谎。但是不行啊。买不到……话说,买了也不能用”
「使えない、ですか? それは、技術的に?」
“不能用吗?那是技术上的吗?”
「馬鹿にしてんじゃねぇぞ! 儂にかかれば、トレントぐらい、自在に加工してやるわ! そうじゃねぇよ、ウチは家具工房だぞ? トレントで作った家具なんぞ、誰が買うってんだ」
“别小看我!如果你画的话,至少可以自由地给你加工特莱特!不是哦,我们是家具工房哦?在多伦多做的家具是谁买的?”
「あぁ、なるほど……」
“啊,原来如此……”
銘木を使った家具ですら、貴族が買うような高級品なのだ。
就连用名牌木做的家具,也像贵族买的高级品。
それよりも更に高いトレントを使った家具の値段は、一体どれぐらいになるのだろう?
使用了比那个更高的truct的家具的价格,到底是多少呢?
ハルカの弓の値段を思えば、下手をすれば家が建つような値段になるんじゃなかろうか。
一想到Haruka的弓的价格,搞不好的话,不就等于盖房子了吗。
せっかくだから、俺たちの家具を作ってもらうって手もあるが、そんな高級家具が必要なのかと言われれば……要らないよな。
好不容易来一次,让他们做我们的家具也是有办法的,如果说需要那样的高级家具的话……就不要了。
今使っている家具も、十分に良い物だし。
现在使用的家具也是非常好的东西。
なんと言っても、全部無垢板。
不管怎么说,都是无垢板。
合板にシートを貼り付けただけ、みたいなまがい物は存在しない。
只是在合板上贴上了标签,这样的赝品不存在。
「売るなら、ガンツの所だろうな。武器の素材としては使えるからな」
“如果卖的话,应该是GANTZ的地方吧。因为可以作为武器的素材使用”
「けど、それって、あんまり量は売れないよね?」
“但是,那个量不怎么好卖吧?”
「売れねぇな。そもそも、そんな高級な武器を使う冒険者がこの町にいるか? お前らぐらいじゃねぇか?」
“卖不出去啊。说起来,这个城市有使用高级武器的冒险者吗?就你们这些人吧?”
「だよねー。結構苦労して伐採してきたのに――ナオとナツキが」
“是啊。明明费了很大的劲才砍伐过来的——那棵树和枣树”
うん、最初だけな。
嗯,只有一开始。
擬態に手を焼きはしたが、伐採自体はさほど難しくは無かった。
虽然拟态词很棘手,但是采伐本身并不那么难。
まぁ、硬い木なので、枝打ちが大変ではあったが。
嘛,因为是硬木头,所以树枝打得很辛苦。
帰った後、俺とナツキの使っていた鉈などは、トーヤによって研ぎ直されているのだが、トーヤ曰く、『もうちょっと良いヤツに変えた方が良いかもな』とのこと。
回去后,我和大枣使用的砍刀等,都是被TOYA重新研磨的,TOYA说:“也许换成更好一点的东西比较好。”。
実際、使っていた俺たちもそれは感じていたので、今後も伐採するのなら、買い換えを検討すべきだろう。
实际上,我们也感觉到了这一点,如果今后也要砍伐的话,就应该考虑更换吧。
「自分たちの武器を更新したらどうだ? 槍の柄としても使えるぞ? ……まぁ、普通は勿体ねぇから使わねぇんだが」
“更新自己的武器怎么样?作为枪的柄也能使用哦……嘛,一般来说太可惜了,所以不用”
「なるほど、擬鉄木よりも良いですか?」
“原来如此,比拟铁木好吗?”
「良いな。つか、トレントで作りゃ、単なる木剣ですら、並の鉄の剣以上だぜ?」
“真好啊。话说回来,如果用特莱特做的话,就连单纯的木剑,也比普通的铁剑还要厉害吧?”
「マジで? うわー、俺の木剣、作り直してもらおうかな」
“真的吗?哇,我的木剑,请重新制作吧”
「何のためにだよ……」
“这是为了什么啊……”
驚きに目を見張るトーヤに、俺はため息をつく。
对吃惊得瞠目结舌的火炬,我叹了一口气。
こちらに来て最初に買った武器である木剣。
木剑是来这里最先买的武器。
あれは未だ捨てられる事も無く、活躍していたりする。――ただし、訓練で。
那个还没有被扔掉,活跃着。——但是,在训练中。
それをそんな、ある意味凶悪な武器に変更する意味があるのかと言えば、まず無いだろう。
要说有把那个变成那种某种意义上的凶恶武器的意义的话,首先是没有的吧。
いや、訓練で大怪我しかねないとか、むしろ害悪である。
不,可能因为训练受了重伤,或者说是有害。
「となると、大半は死蔵か……。この町なら売れると思ったんだけどな」
“这样的话,大半是死藏吗……。我觉得这个城市会很有人气的”
「すまねぇな。ウチの顧客層はもうちょい下なんだよ。別の町に売りに行くか、代官の奴にでも相談するか……いや、待てよ? それもありか?」
“对不起。我们的顾客层有点低。是去别的城市卖,还是找代官商量……不,等一下吧?那也有吗?”
申し訳なさそうに言ったシモンさんだったが、その途中、考えるように顎に手を当てて唸る。
虽然西蒙先生说了很抱歉的话,但是途中,他好像在想什么似的把手贴在下巴上呻吟着。
「シモンさん?」
“西蒙先生?”
「いや、チョイと考えがあってな。金に困ってねぇなら、しばらく売らずに持っていてくれるか?」
“不,我有个想法。如果不愁钱的话,能暂时不卖而带着吗?”
「それは構いませんが……」
“那没关系……”
少し前に銘木を売ったおかげで、資金的には余裕があるからな。
因为不久前卖了名牌,所以资金很充裕。
「儂の方で代官に話を持って行ってみる。それの如何いかんによっては買い取れるかもしれねぇからな」
“我去给代官提个话。根据那个的情况,也许能买到”
「そうですか? ならお願いします」
“是吗?那就拜托了”
ここで売れないのなら、ネーナス子爵領内で販売する事は望み薄。
如果在这里卖不出去的话,很难在纳纳斯子爵领内销售。
となると、他の貴族の領地まで出向く必要があるわけで、それはなかなかに面倒である。
这样一来,就有必要前往其他贵族的领地,这是相当麻烦的。
「おう。けど、ま、今はこっちの酒蔵だな。美味い酒ができれば、代官の舌の滑りも良くなるだろうさ」
“哦。但是,嘛,现在是这边的酒窖啊。如果能喝到美味的酒,代官的舌头也会变滑吧”
「そうでしたね。それではもうちょっと頑張りましょうか」
“是啊。那我们再努力一下吧”

399
322js.md

@ -0,0 +1,399 @@
# 322 副業は必要? (1)
322需要副业吗?(1)
「お疲れ様でした。ナオくん、ユキ」
“辛苦了。娜奥君,小雪”
「あぁ、少し疲れたな」
“啊,有点累了。”
俺たちが関わる酒蔵作りは、昼頃には一旦終わりとなった。
和我们有关的酿酒厂的制作,在中午左右就结束了。
地下室部分の壁を作り、建物の土台を固めた後は、シモンさんに『後は儂らでやるから問題ねぇ』と言われ、お役御免になったのだ。
在建造地下室部分的墙壁,巩固了建筑物的基础之后,西蒙先生对我说:“之后由你们来做,没问题。”。
なので、今も外からはトンテンカンと、工事の音が聞こえている。
因此,现在也能从外面听到工程的声音。
「けど、やっぱりこっちの大工さんは凄いよね。作業が凄く早いもん」
“但是,这位木匠果然很厉害啊。工作非常快”
「この家ができる時も思いましたが、やはりそうですよね」
“我也想过要建这个房子,果然是这样啊。”
「ナツキたちの味噌は終わったんだよな?」
“大枣们的大酱结束了吧?”
「はい、仕込み自体は。できあがりにはしばらく掛かりますが、楽しみにしていてください」
“是的,训练本身是。完成需要一段时间,请期待”
「あぁ。ところで、酒の方はどうにかなりそうなのか? あれ、どう見てもかなり力が入ってるが……」
“啊。话说回来,喝酒的人怎么这么多呢?咦,怎么看都很用力……”
そう言いながら俺が指さすのは、窓の外の工事現場。
一边这样说着,我一边指的是窗外的施工现场。
シモンさんが還元云々を言ったところで、あれだけのコストを掛けて何もできませんでした、では少々マズい気がする。
西蒙先生说了还原之类的话,花了那么多的成本什么也做不了,那么感觉有点不好。
「そのあたりは、トミーたちが頑張るでしょ。麹菌と米、場所の提供はしたんだから」
“在这一点上,汤姆他们会努力的吧。因为提供了曲霉菌和大米的场所”
「成功はして欲しいですけどね。米が入手しやすくなるかもしれないですし」
“我希望你能成功。说不定大米很容易入手”
ナツキたちの興味はそこか。
夏树他们的兴趣在那里吗。
もちろん俺も、米が欲しいのは同じなのだが。
当然我也同样想要大米。
「ってことは、後はお任せ、放置ってことで良いのか?」
“这么说来,之后就交给你了,放任不管可以吗?”
「いえ、実は少し関わってみようかと思ってるのよ、副業的に」
“不,其实我想和你有点关系,就副业来说。”
話の流れ的に、後は酵母の抽出に力を貸すぐらいかと思ったら、ハルカから意外な言葉が返ってきた。
故事的流程是,之后还以为可以帮助酵母的提取,没想到Haruka却说出了意外的话。
「何でまた?」
“为什么又来了?”
副業なんかしなくても、十分に稼げているし、生活にも困ってない。
即使不做副业,也能挣很多钱,生活也不困难。
あえて酒の製造に関わる必要は無いように思うのだが……。
我觉得没有必要刻意去制造酒……。
「だって、副業って流行ってるし?」
“因为副业在流行吗?”
「……いや、流行ってはないだろう、少なくともこの世界では」
“……不,应该不流行吧,至少在这个世界上。”
日本では最近、副業OKな会社も増えている、みたいな報道もあったが、少なくともこっちで副業をしている人なんて聞いた事がない。
在日本,最近允许副业的公司也增加了,虽然有这样的报道,但至少没听说过在这里做副业的人。
それこそ、まともな休日すらないのが普通の事なのだから。
这才是正常的事,连像样的休息日都没有。
「副業って言えば、ハルカはバックパックの収入もあっただろ。あれは?」
“说到副业,Haruka应该也有背包的收入吧。那是?”
「微々たるものね、あれは。生活費で簡単に消える程度だから、全然足りないわよ。それに、ずっともらえるものじゃないから……」
「那真是微不足道啊。只是因为生活费很容易消失的程度,所以完全不够啊。而且,不是一直能得到的东西……”
「……何か、金が必要なのか? ある程度なら、俺も出せるが」
“……需要什么钱吗?在某种程度上,我也能拿出来”
まさかトーヤじゃあるまいし、娼館に嵌まって金がない、なんて事は無いだろう。
不会是图雅吧,也不会是镶在娼馆里没钱吧。
必要な事なら、俺の分配の中から払う事も厭わない、そんなつもりで言った俺だったが、ハルカは少し困ったような表情、そしてナツキは俺とハルカを見比べると、苦笑を浮かべて口を開いた。
如果有必要的话,我会毫不吝惜地从我的分配中支付,虽然我是这么说的,但Haruka露出了有些为难的表情,而夏树和Haruka相比,露出苦笑开口。
「ナオくん。ハルカは冒険者を引退した時の事や、冒険者として働けない時の事を考えているんですよ。ほら、ライフステージによっては、働けない期間、ありますよね」
“娜奥君。Haruka考虑着从冒险者引退时的事情,以及不能作为冒险者工作时的事情。看,根据生活舞台的不同,有不能工作的期间吧”
「ライフステージ……あ」
“生命舞台……啊”
なるほど、シモンさんにも言われたが、そういう事か。
原来如此,西蒙先生也这么说了,原来是这样啊。
場合によっては、一年、二年働けないような事も考えるべきなのか?
根据情况,也应该考虑不能工作一年、二年的事情吗?
「そ、そういう事なら、反対する理由は無いな。うん」
“是的,如果是这样的话,就没有反对的理由了。嗯”
「あたしたちには回復魔法があるとは言っても、やっぱり不安はあるしね」
“虽然我们有恢复魔法,但还是有不安。”
そうだよな。
是啊。
最初の頃は、怪我や病気で働けなくなれば、即座に路頭に迷うと戦々恐々だった。
最开始的时候,如果因为受伤或生病不能工作的话,马上就会迷路,战战兢兢。
幸いな事に、【頑強】さんが仕事をしてくれているのか、今のところ病気らしい病気もせずに済んでいるのだが、今後ずっと安心とは断言できるはずもない。
幸运的是,也许是【顽强】先生在工作,现在已经没有什么像样的病了,但是今后也不能断言会一直安心。
いざとなれば、それこそシモンさんのところで働かせてもらうのも手だが、この町で行われる土木工事の件数を考えれば、それこそたまのバイトぐらいがちょうど良い感じだろう。
如果有什么情况的话,请让我在西蒙先生那里工作也是一种方法,但是考虑到在这个城市里进行的土木工程的件数,偶尔的打工正好是好的感觉吧。
「トーヤはどうだ?」
“Toya怎么样?”
「もちろん、反対する理由は無い! むしろがっぽり稼いでくれ!」
“当然,没有反对的理由!不如多挣点钱!”
「あぁ、そうか。だよな」
“啊,这样啊。是吧”
こいつ、手元資金が減ってるもんな。
这家伙手头资金减少了。
まぁ、町にいる日数がそこまででもないので、本気で全財産をつぎ込むほどにはなっていないと思うが……まだ若いからなぁ。
嘛,因为在镇上的天数还没到那种程度,所以我觉得还没到认真投入全部财产的程度……因为还很年轻啊。
「しかし、関わると言っても、何をするんだ? 酵母の抽出に協力するだけじゃないんだよな?」
“但是,说是关系到你,你要做什么?”?不只是协助酵母的提取吗?”
「それだけなら、あえて言うことじゃないわね」
“如果只是这样的话,就不必说了。”
「私たちとしては、お米以外、そしてこの辺りで一般的に造られているお酒の原料以外で、何かしらのお酒が造れたら、と思っているのですが……」
“对于我们来说,除了米以外,还有在这附近一般制作的酒的原料以外,如果能生产出什么酒来就好了……”
「いや、それって、かなり難しくないか?」
“不,那个不是很难吗?”
俺もあまり詳しくは無いが、この周辺で手に入る酒と言えば、麦を原料としたエール、ブドウを原料としたワインが一般的。
我也不太清楚,但说起在这附近能买到的酒,一般都是以小麦为原料的啤酒、以葡萄为原料的葡萄酒。
高級品として、リンゴの様な果物を原料とした果実酒もあるようだが、産地でもないここで、これらを作るのは論外だろう。
作为高级品,也有以苹果那样的水果为原料的果酒,但在不是产地的这里,制作这些酒是不可取的吧。
あえて言うなら、ディンドルの産地ではあるが、ただでさえ高いディンドルなのだ。それを大量に使う酒など、どんな値段になるのかと。
硬要说的话,虽然它是丁元的产地,但它本来就是很贵的丁元。大量使用这种酒的话,会是什么价格呢。
「価格競争力があるのか? こんな場所で造って」
“有价格竞争力吗?在这样的地方建造”
果物に関しては言うまでも無いが、ラファンの町は決して穀倉地帯というわけでもない。
水果就不用说了,拉斐尔的城镇绝对不是谷仓地带。
ピニング周辺では麦が多く作られているのでエールの産地になっているようだが、ここラファンに原料を輸入するのであれば、よほどの酒を造らなければ、売れはしないだろう。
因为在平宁周边种了很多小麦,所以好像是淡色啤酒的产地,但是如果向拉斐尔进口原料的话,如果不酿很多酒的话,是卖不出去的吧。
……いや、もしかして、本当にディンドルを?
……不,难道真的要买丁元?
超高級酒なら、ワンチャンある?
超高级酒的话,有小碗吗?
「うん。だから目標は、利用されていない植物、もしくは安い植物を使ってお酒を造る事ね」
“嗯。所以目标是使用没有被利用的植物或者便宜的植物制造酒”
違った。その上――。
不一样。而且——。
「更に難易度アップだし」
“难度更高了”
「難しいとは思うけど、あたしたちもまだ一〇年ぐらいは十分に冒険者ができるじゃない? それぐらいを目処に何か見つかれば良いかなって」
“虽然觉得很难,但是我们不也能在十年左右就足够成为冒险者了吗?”?以这些为目标找到什么就好了”
「地球のお酒を考えると、予想外な物から造られていたりしますから、可能性がゼロとは言えないかと。この世界の一般的な人よりも、知識面では私たちに分がありますから」
“一想到地球上的酒,就会想到是由意想不到的东西制成的,所以说可能性是零。比起这个世界上普通的人,在知识方面我们更了解”
「まぁ、そこはなぁ……」
“嘛,那是……”
地球の酒に関する知識、デンプンが糖になる仕組みやアルコール発酵の知識、酵母の知識など。新たに発見するのは難しいが、真似をするのはよほど簡単。
关于地球酒的知识,淀粉变成糖的结构,酒精发酵的知识,酵母的知识等。虽然很难重新发现,但是模仿起来相当简单。
そう考えれば、不可能ではないのかもしれない。
那样想的话,可能不是不可能的。
「一応、トーヤには森で何か探してきて、とは言ってるんだけど」
“我说先去森林里找点什么。”
「そうなのか?」
“是吗?”
トーヤの方に顔を向けると、トーヤは軽くうなずく。
面对着火炬,火炬轻轻点头。
「おう、明日にでも行ってみるつもりだぜ? ナオも一緒にどうだ?」
“哦,我打算明天去看看?娜奥也一起怎么样?”
「そりゃ、つきあうのは別にかまわないが……」
“那倒是,交往倒没什么关系……”
そう簡単に見つかるか? 酒の材料になるようなものが。
那么简单就能找到吗?像酒的材料一样的东西。
「蜂蜜や果物の様な糖分がある物が一番だけど、それらはそれ自体に十分な価値があるからね。狙い目はデンプンを蓄えていそうな、芋とか、球根とか、茎とかそんな感じの植物かしら」
“像蜂蜜和水果那样有糖分的东西是最好的,但是那些本身就有足够的价值。目标是储存淀粉的芋头、球根、茎之类的植物吧”
「了解。探してみる」
“明白。找找看”
ヨウ素液がないので、実験はできないが、なんか粉っぽい物を探せば良いか。
因为没有碘液,所以不能做实验,但是找些粉的东西好吗。
ジャガイモみたいに。
像土豆一样。
「ミーも一緒に行くの!」
“我也一起去!”
「お、そうか? じゃあ、行くか。遊びがてらに」
“哦,是吗?那么,去吗。玩的同时”
「ミーが行くなら、私もおつきあいします」
“如果我去的话,我也陪你。”
メアリも参加を表明し、これで四人。
玛丽也表明要参加,这就是四人。
森に気軽に遊びに行けるようになるとは、思えば俺たちも成長したものである。
想到能轻松地去森林里玩,我们也成长了。
「メアリには、私たちの方にもアイデアをもらいたいんだけど……」
“玛丽,我们也想要个主意……”
「私にできる事なら……。ですが、私なんて、ハルカさんたちに比べると頭悪いですし……」
“如果是我能做的事的话……。但是,我和Haruka他们比起来脑子不好……”
「気にしなくても、メアリちゃんは十分に賢いですよ?」
“就算不在意,小玛丽也十分聪明吧?”
「そうですか? ありがとうございます」
“是吗?谢谢”
自分を卑下するような事を言ったメアリを、ナツキが率直に褒めると、メアリは少し嬉しそうにはにかんだ。
枣坦率地赞美了说了贬低自己的话的玛丽,玛丽有点高兴地腼腆了。
「それに、訊きたいのは、ある意味メアリの得意分野? だからね。味は気にしないから、とにかく安い食べ物って、何か知らない?」
“还有,我想问的是,在某种意义上是玛丽的擅长领域?所以呢。我不在乎味道,总之你不知道什么便宜的食物吗?”
「安い食べ物、ですか? お金が無い時に私たちが食べていたのは、エゴイモですね。凄く安いので」
“便宜的食物吗?没有钱的时候我们吃的是自私的红薯。因为非常便宜”
考える事も無く即答したメアリの言葉に、そばにいたミーティアが眉を寄せて、口をへの字に曲げる。
面对面无所思即答的玛丽的话,旁边的米蒂亚皱起眉头,将嘴弯成“へ”字。
「あれ、美味しくないの! 食べたら、いーってなるの。そしてイガイガってなるの」
“咦,不好吃吗?”!吃了之后,会变成“いー”。然后就变成IGO了”
「ははは……。かなりえぐみの強い芋なので、食べるためには磨り潰して、水に晒して――と手間のかかる食べ物なんですが、それでもやっぱり……。ミーティアじゃないですけど、いーってなります」
“哈哈……。因为芋头的口感非常好,所以要吃的话就磨碎,放在水里晒——虽然是很费事的食物,但还是……。虽然不是Metier,但是会很开心”
なかなかに解りやすいミーティアの表現に、俺たちはそろって苦笑を浮かべる。
对于非常容易理解的Metier的表现,我们一起苦笑。
ミーティアが子供舌という事を差し引いても、決して美味しくない芋なのだろう。
就算去掉肉蒂是孩子的舌头,也绝对不好吃的芋头吧。
「それって、普通に売っている芋なの?」
“那个是普通卖的芋头吗?”
「ケルグだと市場で買えましたが、こちらだと……すみません、ハルカさんたちに拾ってもらってからは、ありがたい事に、食べる機会も無かったので」
“虽然在市场上买到了凯尔格,但是在这里……不好意思,自从被Haruka他们捡回来后,真是太好了,连吃的机会都没有。”
「あぁ、かまわないわよ。探してみるから」
“啊,没关系。我去找找看”
申し訳なさそうなメアリに、ハルカは軽く手を振って応える。
面对抱歉的玛丽,Haruka轻轻挥手回应。
しかし、エゴイモか。
但是,是自私的吗。
探してみれば、結構いろんなものが売ってるのかもな、この町でも。
如果试着找,相当各种各样的东西卖着,这个城市也。

395
323js.md

@ -0,0 +1,395 @@
# 323 副業は必要? (2)
323需要副业吗?(2)
翌日、ナオたちが森へ出かけるのを見送ったハルカたちは、三人である場所を訪れていた。
第二天,目送娜奥他们去森林的春佳他们来到了三人所在的地方。
そう、困った時のディオラさん。冒険者ギルドである。
是的,困惑的时候的迪奥拉先生。冒险者行会。
昨日、トミーやガンツさんたちに、『酒造りを事業化するのなら、私たちも一口』と話をしに行ったところ、『ノウハウを提供するのはお前たちなんだ。お前たちに権利があるのは当然だろうが!』とか、『むしろお前たちが経営しろ』とか言われ、慌てて相談にやってきたのだ。
昨天,我去和汤米和GANTZ他们说“如果酿酒事业化的话,我们也吃一口”,结果他们说“提供技术的是你们。你们当然有权利!”或者,被说“不如说你们来经营吧”,慌慌张张地来找我商量。
トミーからは、『実際にお酒ができるのは先のことでしょうし、商売になるかも判りません。運営、その他に関しては、それからでも遅くは……』とは言われたのだが、それでもすぐに動くあたり、ハルカたちのきっちりとした性格が出ていると言うべきだろうか。
汤米说:“实际上能喝酒是在将来的事情,也不知道会不会做生意。运营、其他方面,之后也会晚些……”,尽管如此,在马上行动的时候,应该说Haruka他们性格很好吧。
「こんにちは、ディオラさん」
“你好,迪奥拉。”
「はい、こんにちは。今日はどうしました? 先日お預かりしたハンマーの鑑定には、もうしばらく掛かりますが……」
“是的,你好。今天怎么了?前几天寄存的锤子的鉴定还需要一段时间……”
いつものように、ハルカたちを笑顔で迎えたディオラだったが、それと同時に少し困ったような表情も見せる。
和往常一样,迪奥拉带着笑容迎接了Haruka他们,同时也露出了有些为难的表情。
ボス部屋をスキップして手に入れたあのハンマー。
从BOSS房间跳过得到的那个锤子。
如何にもガーゴイルに有用そうなアレは、ダンジョンから帰ってきてからすぐ、冒険者ギルドに鑑定に出されていた。
看起来对格哥尔非常有用的那个,从地牢回来后马上被冒险者行会鉴定出来。
だが毎度の如く、複雑な物をここで鑑定できるはずもなく、数日程度では結果が出ていなかった。
但是,像每次一样,复杂的东西在这里是不可能鉴定的,几天左右是没有结果的。
「それも気になるけど、今回は別の用件。私たち、副業でお酒でも造ってみようかと思ってるのよ。その相談に乗って欲しくて」
“虽然也很在意,但是这次是别的事情。我们想做点副业酒什么的。希望你能参加那个商谈”
「お酒、ですか? お酒は色々と面倒ですよ? ギルドは無いですが、許可制ですし、そもそも簡単に作れない上に、作ったとしても売れるかどうか……」
“是酒吗?酒很麻烦哦?虽然没有行会,但是因为是许可制,原本就不容易做,而且就算做了也卖不出去……”
冒険者であるハルカたちが口にするには、少し意外な相談に、ディオラは困惑したような表情になる。
作为冒险者的Haruka等人要说的话,面对稍微有些意外的商量,迪奥拉露出困惑的表情。
それでもあっさりと切り捨てないのは、ハルカたちのこれまでの実績故だろう。
即便如此也不能轻易地舍弃,这是因为Haruka他们至今为止的实绩吧。
「作る方に関しては、たぶん大丈夫よ。ただ、経営の方が、ね」
“关于制作方法,大概没问题。只是,经营方面呢”
「シモンさんや代官も関わっているようですし、許認可の方は何とかなると思うんですが、良ければ、ディオラさんにも協力してもらえたらと思いまして」
“西蒙先生和代官好像也有关系,我觉得许可证的人总会有办法的,如果可以的话,希望迪奥拉先生也能协助我。”
「ディオラさんにはお世話になってるからねー。……利権があれば、結婚相手も見つかりやすくなるかも?」
“我一直受迪奥拉先生的照顾呢。……如果有权利的话,也许很容易找到结婚对象?”
ニヤリと笑って付け加えたユキの言葉に、ディオラは「うっ」と呻いて胸を押さえる。
面对笑着加上的YUKI的话,迪奥拉“嗯”地呻吟着,捂住了胸部。
だが、苦渋の表情を浮かべて視線を逸らした。
但是,脸上浮现出苦涩的表情,转移了视线。
「と、年上のお姉さんとしては、さすがにそれを受け入れるわけには……」
“这么说来,作为年长的姐姐,到底是不能接受……”
そんなディオラの様子にハルカたちは顔を見合わせると、にまっと笑って軽く頷く。
看着迪奥拉的样子,遥他们面面相觑,笑着轻轻点头。
「あー、そうよね。ごめんなさい。軽率だったわ」
“啊,是啊。对不起。太轻率了”
「ですよね。それに、お金に惹かれて寄ってくる相手じゃダメですよね。すみません、他を当たりますね。――やはり、シモンさんを頼るのが順当でしょうか?」
“是啊。而且,被金钱吸引而接近的对象是不行的。对不起,我想找其他的。——果然还是依赖西蒙先生比较合适吧?”
「もしくは、直接ネーナス子爵を頼るかだよね。エールと競合しないお酒なら、収入になるし、協力してくれるんじゃない?」
“或者,直接依赖妮纳斯子爵吧。如果是不与啤酒竞争的酒的话,既能获得收入,又能给予协助不是吗?”
「そうね。それじゃ、ディオラさん、お邪魔――」
“是啊。那么,迪奥拉先生,打扰了——”
「ちょ、ちょっと待ってください!」
“等一下,请稍等!”
あっさりと帰ろうとするハルカたちの様子に、ディオラは慌てたように声を上げ、カウンターから身を乗り出すようにして、ハルカの腰をガッシリと抱え込んだ。
面对打算轻松回去的Haruka等人的样子,迪奥拉慌忙地提高声音,从柜台探出身子,紧紧地抱住了Haruka的腰。
「ハルカさん? もうちょっと粘っても良いんですよ? 私こう見えて、人脈も広いですし、色々と知識もあります。ちょっと頼りになるお姉さんですよ?」
“Haruka先生?可以再黏一点吗?我看起来这样,人脉也很广,也有很多知识。是有点可靠的姐姐哦?”
「え、えぇ、ディオラさんが頼りになるのは、この一年で良く理解しています。……今の状況を見ると、ちょっと不安になりますけど」
“嗯,呃,我这一年很理解迪奥拉先生的可靠之处。……看了现在的状况,有点不安”
「おっと。コホン」
「哎呀。话筒”
ディオラはハルカの腰から手を離すと、座り直して咳払い一つ。
迪奥拉把手从Haruka的腰上放开,重新坐下来清了一个咳嗽。
「ちょっと、はしたなかったですね」
“有点不好意思啊。”
ちょっとじゃない、とはハルカたち共通の気持ちだったが、彼女たちにはそれを口に出さないだけの分別はある。
小遥和小遥他们的心情是一样的,但她们有着不说出来的区别。
「えっと、でも、ダメなのよね?」
“呃,但是,不行吧?”
「ダ、ダメって言うか……その、年上としては、おこぼれに与るみたいなのは、ちょっと抵抗があるというか……」
“啊,你说不行吗……那个,年纪大了的话,像是给零花钱的话,有点抵触……”
この期に及んで渋る様子を見せるディオラに、ハルカも少し面白くなったのか、うんと頷いて、踵を返そうとする。
对于到了这个时期还表现出苦涩样子的迪奥拉,Haruka也稍微变得有趣了吧,点了点头,打算转身回去。
「そうよね。ではやはり、誰か他の協力者を――」
“是啊。那么,还是找一位其他的合作者吧——”
「わ、解りました! そこまで! そこまで言うなら協力しましょう! えぇ、全力で!」
“我明白了!到此为止!既然说到这里就合作吧!嗯,全力以赴!”
ドンと胸を叩くディオラに、『そこまでは言ってないです』と言ったりしないだけの優しさも、ハルカたちは持ち合わせていた。
对于扑通一声捶胸的迪奥拉,哈尔卡他们持有着一种不只是说“没说到那种程度”的温柔。
三人で顔を見合わせて笑うだけにとどめ、話を先に進めた。
三个人只是相视而笑,把话向前推进。
「では、お願いします。えっと、どうしましょう? お酒に関する手続きはシモンさんからしてもらうのが良いですか?」
“那么,拜托了。嗯,怎么办?从西蒙先生那里办理有关酒的手续可以吗?”
「いえ、お任せください。代官に話が通っているのであれば、さほど難しいことでもありませんから。……他にもできる事があれば何でもおっしゃってください!」
“不,交给我吧。如果和代官说得通的话,也不是那么难的事情。……如果还有其他可以做的事情的话请尽管说!”
両手を握り力を込めるディオラに、ハルカは少し考えてから訊ねる。
小遥想了想,想了想之后问了握着双手注入力量的迪奥拉。
「他には……あ、ディオラさん、エゴイモって知ってる?」
“其他的……啊,迪奥拉,你知道自私的吗?”
「エゴイモ……あぁ、“最初にして、最後の糧”と呼ばれるアレですか?」
“我的红薯……啊,是被称为‘最初,最后的粮食’的那个吗?”
「え、何、そのちょっとカッコイイ名前!」
“什么,那个有点帅的名字!”
初めて聞く言葉に興味深そうな表情を浮かべたユキに対し、ディオラの方は苦笑。
对于第一次听到的话露出兴趣很深的YUKI,中提琴苦笑。
「由来はそんな良い物じゃないですけどね。開拓の際、最初に植えられるのがこれなんです。荒れ地でも水さえあれば、異常なほどの短期間で育ちますから。だから最初の糧」
“由来并不是那么好的东西。开拓的时候,最先种植的就是这个。就算是荒地只要有水,也能在异常短的时间内成长。所以最初的粮食”
「へー、そんな理由なんだ?」
“啊,是那样的理由吗?”
「なるほどね。最後の糧の方は?」
“原来如此。最后的粮食是?”
「こっちはもっと悲しいですよ? 貧乏になって食べる物が買えなくても、エゴイモぐらいは食べられるって話ですから」
“我更伤心了?就算穷了买不到吃的东西,也能吃到点自私的东西”
「おぅ……。それは本気で悲しい」
“呜呜……。那是真的很悲伤”
呻くように言葉を漏らしたユキの頭をよぎったのは、たまに食べていた風な事を言っていた、メアリとミーティアの姿。
从呻吟般说出话的雪的头上闪过的是偶尔吃的样子,玛丽和米蒂亚的样子。
だが実際には、あまりお金が無い庶民の間では、時々食べられる程度の物なので、決してメアリたちが底辺だったわけではない。
但是实际上,在没什么钱的平民之间,因为只是偶尔能吃到的东西,所以绝对不是玛丽们在底层。
どうこう言っても中流以上、どちらかと言えば上流寄りなディオラが、そう聞いただけの話である。
不管怎么说,这只不过是中游以上,硬要说的话,是偏上流的中提琴听到的。
「凄く簡単に育つので、本当にお金が無くても何とかなるようですよ? 芋を適当に刻んで地面に埋め、水をやれば一ヶ月から長くても三ヶ月ほどで、これぐらいまで育つらしいですね」
“因为长得非常简单,所以就算真的没钱也没关系?将芋头适当切碎后埋在地面上,浇上水的话,一个月到三个月左右就可以长到这种程度了”
そう言いながらディオラが手で示したのは、直径三〇センチ弱の円形で、厚みは一五センチほど。
一边这样说着,迪奥拉用手表示的是直径不到30厘米的圆形,厚度约为15厘米。
仮に三ヶ月だとしても異常なほどの成長率だが、事実それだけ成長するのがエゴイモなのだ。
即使是三个月也会有异常的增长率,但事实上只有这样的增长才是自私的。
「魔素が成長に影響しているんじゃないか、って話もありますけど、そのへんは良く判ってないんですよね」
“虽然有人说魔素影响了成长,但我不太清楚。”
「それはちょっと興味深いですね。――もし、そんな芋でお酒が造れたら、凄いと思いませんか?」
“这有点有趣呢。——如果能用那种芋头酿酒的话,你不觉得很厉害吗?”
「えっ、できるんですか? できたら凄いのは間違いないですけど、難しいと思いますよ? エゴイモの活用法は、色々と試されていますから」
“啊,可以吗?”?如果可以的话肯定很厉害,但是我觉得很难?因为各种各样的方法都在试验自私薯的活用方法”
ナツキの言葉に、ディオラは目を見開きつつも、懐疑的な表情を浮かべる。
面对夏树的话,迪奥拉睁大眼睛,脸上浮现出怀疑的表情。
事実、そんな効率的な植物が研究されないはずもなく、これまでも美味しく食べる方法は無いか、他の物に加工できないかなど、試行錯誤は行われている。
事实上,那样有效率的植物不可能不被研究,到现在为止也有没有好吃的吃法,不能加工成其他的东西等,正在进行试验错误。
その結果が、“最初にして、最後の糧”なのだから、研究成果は改めて言うまでも無いだろう。
那个结果是“最初,最后的粮食”,研究成果不用再说了吧。
「それに、万が一お酒ができたとしても、美味しくないと売れませんよ?」
“而且,万一有酒了,不好吃的话是卖不出去的。”
食べたことは無くても、エゴイモの不味さは話に聞いているディオラからすれば、そんな物で造るお酒が美味しいとは、とても思えなかったが、いろんな意味で常識外れなところがあるハルカたち。
虽然没有吃过,但在听了迪奥拉的讲述后,很难想象用那种东西做的酒很好喝,但是从各种意义上来说,Haruka他们都有着不合常理的地方。
もしかしたらという気持ちもまたあり、ディオラはハルカたちの話を頭から否定はしなかった。
也有可能这样的心情,迪奥拉根本没有否定Haruka他们的话。
「絶対とは言えないけど、可能性はある、ってところかしら? エゴイモだけに絞ってるわけじゃないけど、どうせなら意外な物、普通なら食べられない物で作りたいし。ディンドルでお酒を造っても、あんまり意味が無いでしょ?」
“虽然不能说绝对,但还是有可能性的吧?虽然不只是局限于自我意识,但无论如何都想用意外的东西,普通人吃不到的东西来做。就算用丁克美元造酒,也没什么意义吧?”
「それは勿体ないです! ――あ、でも、ちょっと飲んでみたいかも?」
“那太可惜了!——啊,但是,可能想喝点?”
ハルカの言葉を被せ気味に否定したディオラだったが、その味を想像したのか、迷うように視線をさまよわせる。
虽然迪奥拉略带否认了Haruka的话,但可能是想象到了那种味道吧,她迷惑地目光徘徊。
とは言え、食べて美味しい果物を使えば、美味しいお酒が造れるとは、必ずしも限らないのだが。
虽然这么说,但是如果吃了好吃的水果的话,未必能造出好喝的酒。
「心配しなくても、ディンドルでお酒を造ったりはしないわよ。私たち、お酒はあまり飲まないし、普通に食べる方が美味しいと思うからね」
“不用担心,我不会用丁克美金造酒的。我们不怎么喝酒,一般吃会更好喝”
「そうですか……」
“是吗……”
ホッと息を吐きつつも、どこか微妙に残念そうにも見えるディオラ。
迪奥拉一边呼气,一边看起来有些微妙的遗憾。
ディンドル好きなだけに、お酒を味わってみたかった事も否定できないのだろう。
正因为喜欢丁德尔,所以想尝一尝酒的事也不能否定吧。
「ま、それはそれとして。試しにエゴイモを手に入れたいんだけど、市場で手に入るかしら?」
「嘛,那就算了。我想试着买个自私的红薯,在市场上能买到吗?”
「私は買った事がありませんのでなんとも言えませんが、たぶん売っていると思いますよ。えっと、ちょっと待ってください。……こんな感じの芋ですね」
“我没买过,所以没什么好说的,大概有卖的吧。嗯,请稍等。……就是这种感觉的芋头呢”
少し席を離れたディオラが一冊の本を持ってきて、ハルカたちにその一ページを示す。
离开了座位的迪奥拉拿来了一本书,向Haruka他们展示了那一页。
そこに描かれていたのは、喩えるならば蒟蒻芋こんにゃくいものような物。
这里描绘的是,比喻的话就像魔芋魔芋一样的东西。
カボチャを大きくしたような黒くて丸い芋から真っ直ぐに茎が伸び、その茎から放射状に広がるように葉が伸びている。
从像南瓜一样又大又黑又圆的芋头开始,茎一直伸长,叶子从茎上放射状地伸展开来。
背丈は一・五メートルほどで、葉の形はイネ科の葉の様に細く長い。
身高1.5米左右,叶子的形状像稻科的叶子一样细长。
ただし、形こそ似ているが、育てるのが案外難しい上に、収穫まで数年間が必要な蒟蒻芋に対し、エゴイモの方は放置していても成長し、収穫まで数ヶ月。
但是,虽然形状相似,但是培育起来却意外的困难,对于需要几年才能收获的蒟蒻,即使将芋头放置不管也会成长,到收获为止已经几个月了。
その点はまったく異なる。
这一点完全不同。
「これですか……そう言えば、市場で見かけたような気がします。その時は良く判らないので、買わなかったんですが」
“是这个吗……这么说来,好像在市场上看到过。那个时候不太清楚,所以没有买”
「私も見かけたわね。蒟蒻芋かと思ったから、スルーしたんだけど。さすがに蒟蒻の作り方は知らないし、わざわざ作りたいと思うほどの物じゃなかったから」
“我也看见了呢。我以为是魔芋,所以就把它放了过去。毕竟我不知道蒟蒻的制作方法,也没必要特意去做”
「まぁ、無理して食べたいと言うほどの物じゃないよね。あれば買うけど。……ちなみにディオラさん、これって、増産して欲しいと思ったら、増産できる物かな? お酒の原料にして、手に入りにくくなったら、他の人が困ると思うし」
“嘛,也不是勉强想吃的程度吧。有的话就买。……顺便提一下,迪奥拉先生,如果你想要增产的话,是不是可以增产呢?作为酒的原料,如果很难入手的话,其他人也会很困扰”
それこそ、“最後の糧”と呼ばれるような代物。
这才是被称为“最后的粮食”的东西。
下手にハルカたちが買いあさってしまっては、それで生活している人が困る。
如果Haruka他们很不擅长购买的话,生活在这方面的人会很困扰。
そう考えてのユキの言葉だったが、ディオラはすぐに問題ないと頷いた。
虽然yuki是这么想的,但迪奥拉立刻点头说没有问题。
「先ほど言ったとおり、片手間で育てられる物ですからね。農家に声を掛ければ、適当に畑の脇にでも植えてくれますよ。それこそ、数百キロ程度なら、ハルカさんたちの家の庭でも育てられると思いますよ? 世話の必要も無いですから」
“就像刚才说的那样,是一种需要花点功夫培育的东西。跟农民打招呼的话,可以适当地在田地旁边种。我觉得那样的话,几百公里左右的话,在Haruka他们家的庭院里也能养的吧?因为没有照顾的必要”
「少しならそれもありね。あの肥料もあるし」
“一点点的话也是有的。还有那个肥料”
ユキたちが『ガーデニングをやる!』と言って作った花壇など、まともな状態の方が少ないのだが、家を空けることが多い彼女たちではそれも仕方が無いこと。
雪树他们说“要做园艺!”像这样说着做出来的花坛等,正面状态的人很少,但是经常不在家的她们也是没办法的事。
その点、エゴイモは適当に刻んで埋めるだけで良いのだから、冒険に出かけるハルカたちでも安心である。
在这一点上,只要适当地刻上自己的小芋头就可以了,去冒险的Haruka们也很安心。
灌水も自然の雨で十分なため、空き地さえあれば、本当になんの手間も無く育つのだ。
灌水也是自然的雨就足够了,只要有空余的地方,真的是没有任何麻烦的成长。
「でも、それも上手くお酒ができてから、ですね。今日のところは、エゴイモを買って帰りましょう」
“但是,那也是在能很好地喝酒之后。今天的时候,买个自私的红薯回去吧”
「そうね。ディオラさん、上手くできるようなら、また相談に来るわね」
“是啊。迪奥拉,如果能做好的话,我会再来找你商量的”
「はい、お待ちしております。下準備はしておきますから、決定したら声を掛けてください。きっちりと、許可を取ってきますから!」
“好的,我等您。我会事先准备好的,决定了的话请告诉我。我会好好取得许可的!”
力強く応えるディオラに手を振って、ハルカたちは冒険者ギルドを後にしたのだった。
向有力回应的迪奥拉挥手,Haruka他们离开了冒险者行会。

495
324js.md

@ -0,0 +1,495 @@
# 324 副業は必要? (3)
324需要副业吗?(3)
「凄く安かったですね、エゴイモ」
“非常便宜呢,自私的薯”
「えぇ、ちょっと信じられないぐらいに」
“诶,简直难以置信。”
自宅に戻ってきたハルカたちはテーブルの上に並んだ四つのエゴイモを見て、想像以上に安かった価格に驚いていた。
回到家里的Haruka他们看到桌子上摆着的四个蛤蜊薯,对比想象中便宜的价格感到吃惊。
直径三〇センチほどの芋が四つで銀貨一枚。
直径三十厘米左右的芋头四个,一个银币。
パンなら一個しか買えないような金額である。
这是只能买一个面包的金额。
「さて、どんな物か味見してみますか」
“那么,要尝尝是什么样的东西吗?”
「おぉ、さすがナツキ、勇気ある!」
“哇,不愧是枣,真有勇气!”
「確認してみないと、方針も決まりませんからね」
“不确认一下的话,方针也不会决定。”
ナツキはエゴイモを一つ取り上げて洗うと、薄くスライスしてそのまま口に含んだが、すぐに顔をしかめて吐き出した。
大枣拿起一个蛤蜊薯洗了一下,切成薄片就这样含在嘴里,马上皱起眉头吐了出来。
「……確かにこれは、いーって感じで、イガイガですね。ハルカとユキも味見してみますか?」
“……确实,这个感觉很不错,很不错呢。你也尝尝Haruka和yuki吗?”
「いえ、結構」
“不,不用了。”
「あ、あたしも良いかな」
“啊,我也可以吗?”
そう言いながらナツキがエゴイモのスライスを差し出すが、ハルカたちは揃って身を引いて首を振る。
夏树一边这样说着,一边拿出了豌豆片,春树们一起缩着身子摇着头。
まぁ、ナツキの表情を見て、『食べてみる』とは、普通、言わないだろう。
看了枣的表情,一般不会说“尝一尝”吧。
「それで、何とかなりそうかな?」
“这样的话,能想想办法吗?”
「美味しく食べられるように、と言われると厳しそうですが、お酒の原料としてなら何とかなる、かもしれません。これでも私、【薬学】スキル、レベル5ですから」
“如果被人说要好吃的话会很严格,但如果是作为酒的原料的话,也许会有办法。这也是我的“药学”技能等级5”
「薬学……まぁ、薬学よね、【調理】というよりも」
“药学……嘛,与其说是药学,不如说是‘烹饪’。”
「イガイガの方はシュウ酸カルシウムでしょうか? こちらは蒸留で取り除けますね。えぐみの方はタンニンだと思いますが、こちらも問題はないでしょう」
“伊ガガ的话是草酸钙吗?这个可以用蒸馏除去。我觉得艾绒是单宁的,但是这边也没问题吧”
「えーっと、そんな状態で酵母って働くの?」
“呃,在这种状态下酵母会起作用吗?”
「そのあたりは実験ですね。米麹を混ぜるのが良いのか、麦芽で糖化させるのが良いのか、それとも別の方法が必要なのか。ちょっと難しそうですが、芋を直接麹にすることも可能かもしれません。あの麹菌なら」
“那附近是实验呢。是要搀和米曲好,还是用麦芽使之糖化好,还是需要其他的方法。虽然有点难,但是也可以直接用芋头做曲子。如果是那个霉菌的话”
「あれかぁ……。確かにあれなら何とかなりそうな気がするよね」
“那个啊……。确实,如果是那样的话,感觉会很不错呢”
ユキは異常な短期間で米麹を作り上げたあの菌の事を思い出し、腕組みをしてウンウンと頷く。
雪想起了在异常短时间内制造米曲的那个细菌,抱着胳膊轻轻点头。
それこそ、下手に拡散すると他の食品まで汚染されそうなレベルであるが、ハルカたちが念入りに『殺菌ディスインファクト』を使っているからか、今のところその兆候は現れていない。
正是因为这样,扩散得不好的话,其他的食品也会受到污染,也许是因为Haruka他们精心使用了“杀菌Diswin factor”,现在还没有出现那个征兆。
「まぁ、パラシュートも作らないといけませんし、その作業の傍ら、いろいろ実験してみますね」
“嘛,也必须要制作降落伞,在做这项工作的同时,也要进行各种各样的实验。”
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
当たり前と言えば当たり前なのだが、俺たちの森探索の結果は、芳しくなかった。
如果说是理所当然的话那是理所当然的,但是我们的森林探索的结果却并不令人满意。
突然森に行って、都合の良く“デンプンや糖を蓄えた植物”を見つけるなんて、簡単にできるはずもない。
突然去了森林,不可能很容易就能找到“淀粉和糖储存的植物”。
そりゃ頑張って地面を掘れば、山芋みたいなものは見つかるかもしれないが、それでは今回の趣旨に反しているわけで。
如果努力挖地的话,也许会发现山药之类的东西,但是那是违反了这次的宗旨的。
何回か森に出かけるうちに、俺たちの森探索は、ほとんど散歩に変わっていた。
几次去森林的时候,我们的森林探索几乎变成了散步。
たまに出てくるゴブリンを駆除し、猪をゲットする――メアリとミーティアが。
驱除偶尔出现的妖精,得到猪——玛丽和米蒂亚。
俺たちは、そんなメアリたちの活躍を見ながら、魔法の練習。
我们一边看着这样的玛丽们的活跃,一边练习魔法。
俺の魔法が無くても何の問題もないので、魔力の残存量を考える必要もない。
没有我的魔法也没什么问题,所以没有必要考虑魔力的残留量。
そして時にはハルカたちも誘って、山の紅葉を楽しんだり、川で魚やエビを補充したり。
有时也邀请Haruka他们,欣赏山上的红叶,在河里补充鱼和虾。
そんな感じに、ゆっくりと秋を楽しんでいるうちに、庭で建設されていた酒蔵が完成した。
就在这样慢慢享受秋天的过程中,在庭院里建造的酒藏完成了。
「これは……立派な酒蔵になりましたね!」
“这……成了很好的酒窖呢!”
なぜか三階建てになっている酒蔵を前に、感心したような声を上げたのはトミー。
不知为何,在三层建筑的酒窖前,汤米发出了赞叹的声音。
彼も工事途中で見に来た事はあったのだが、仕事もあるので来たのは一度きり。
他也在施工途中来看过,但是因为有工作所以来了只有一次。
その代わりと言っては何だが、猫車は三台に増量されていた。
虽说是代替它的,但猫车被增加到了三台。
もちろん、トミーの頑張りである。
当然,这是汤姆的努力。
若干の改良はされているようだが、コスト面での問題は、未だ解決には至っていないようだ。
虽然似乎进行了一些改良,但是成本方面的问题还没有得到解决。
なお、ガンツさんは仕事があるので、今日は来ていない。
另外,GANTZ先生因为有工作,所以今天没有来。
「と言うか、シモンさん、二階建ての予定じゃなかったですか?」
“这么说来,西蒙先生,你不是打算建两层吗?”
「気が向いたんだよ! 気にすんな!」
“我很乐意!别在意!”
「気が向いたって……」
“听说你很乐意……”
建物を作るのに、そんな適当で大丈夫なのか?
建造建筑物,那么合适没问题吗?
しっかりと構造計算とか、そんな感じのものが必要なんじゃないのか?
好好地构造计算之类的,不是需要那种感觉的东西吗?
「私たちとしては、自分の家よりも高いのがちょっと気になるんですが……」
“对于我们来说,有点在意比自己家还贵……”
「お? お前らの家も増築してやろうか?」
“哦?你们家也要扩建吗?”
少し困ったように言うハルカに、シモンさんが少し面白そうに言うが、ハルカは首を振る。
西蒙先生对说有点为难的Haruka说得有点有趣,Haruka摇了摇头。
「いえ、必要ないですけど。これ以上、部屋は必要ないですし」
“不,没必要。再也不需要房间了”
「まぁ、見た目も悪くないから、別に良いんじゃないか?」
“嘛,外表也不错,不是挺好的吗?”
確かに俺たちの家よりは高いし、家の窓からの視界を一部遮るようにはなっているのだが、敷地の端に建てたおかげで距離は十分に離れていて、目障りと言うほどでは無い。
确实比我们家要高,从家的窗户可以遮住一部分视野,但是多亏建在地基的边缘,距离非常远,还不至于说碍眼。
外壁にはきれいに漆喰が塗られて、トーヤが面白がって教えたなまこ壁――酒蔵の壁の模様まで再現されているので、なかなかに風情もある。
外墙上涂着漂亮的漆喰,Toya觉得很有趣而告诉我们的海参壁——酒窖墙壁的花纹也被再现了出来,很有风情。
「しかし……かなり分厚い壁を作りましたね? コスト、かなりかかってますよね?」
“但是……建了相当厚的墙呢?成本很高吧?”
「安くはねぇな。だが問題はねぇよ。酒造りには必要な事だろう?」
“不便宜啊。但是没有问题。造酒是必要的吧?”
作業開始時にも思ったが、どんだけ酒造りにガチなのかと。
工作开始的时候也想过,到底是怎么的酿酒才好呢。
まぁ、酒造りを副業にしようかという俺たちにとっては、ありがたい部分はあるのだが。
嘛,对于以造酒为副业的我们来说,有值得庆幸的地方。
ちなみに、酒造りの事業に関して、技術を提供する俺たち、各種事務手続きを担当するディオラさん、そして建物の建築や道具の作製、必要であれば人員を提供するシモンさんたちという事で、話はついている。
顺便说一下,关于酿酒事业,提供技术的我们,负责各种事务手续的迪奥拉先生,还有建筑建筑和道具的制作,如果需要的话提供人员的西蒙先生们,关于这件事,我们有话要说。
「さて、早速酒造りを始めてぇとこだが、そっちはどうなってる?」
“那么,马上就要开始造酒了,那边怎么样了?”
「それについては中で話しましょう」
“关于那个我们在里面谈吧。”
ナツキがそう言って、シモンさんたちを案内したのは、ウチの食堂。
夏树这样说着,带着西蒙他们去的是我们的食堂。
この場にいるのは、メアリとミーティアを除いた俺たちに、トミー、シモンさん、さらにはディオラさんもテーブルに着いている。
除了玛丽和米蒂亚以外,汤米、西蒙还有迪奥拉都在这里。
ディオラさんは『将来に関わる重要なお話ですから!』と、仕事を抜けてきたらしい。
迪奥拉说:“因为这是关系到将来的重要故事!”似乎是从工作中脱身而来。
メアリとミーティアの二人は孤児院。
玛丽和米蒂亚两人是孤儿院。
酒造りにはあまり興味なさそうだったので、遊びに行かせたのだ。
因为对造酒好像没什么兴趣,所以就让他去玩了。
「まずは、今回のお酒造りに使うお米です。これを加熱した物がこちらです。この前のパーティーの時にも出していたので、見たことがあるかとは思いますが」
“首先,这是这次酿酒用的米。加热这个的东西在这里。上次聚会的时候也参加过,我想应该见过”
ハルカが最初にテーブルに並べたのは、生米と蒸米、それに普通に炊いた米。
Haruka最开始摆在桌子上的是生米、蒸米和普通煮的米。
生米は、籾付き、玄米、精米済みと三種類を並べている。
生米分为带稻谷、玄米、精米结束三种。
「この蒸米に麹を付けたのがこちらで、この米麹と炊いた米を混ぜて作ったのが、こちらの甘酒になります。“酒”と言っても、酒精は含まれないんですけどね。どうぞ、飲んでみてください」
“在这个蒸米上加上曲子的是这里,把米曲子和煮好的米混合做成的是这边的甜酒。”虽说是酒,但也不包含酒精。请尝尝”
ナツキがコップに甘酒を注ぎ、三人の前に並べる。
枣往杯子里倒甜酒,摆在三人面前。
白く濁ったその液体を見て、躊躇いなく手に取って飲んだのはトミーのみ。
看到白色浑浊的液体,毫不犹豫地拿在手里喝的只有汤米。
シモンさんとディオラさんはコップの中を、目を細めて覗き込んでいたが、トミーが普通に飲むのを見て、少し戸惑いながらも口を付けた。
西蒙先生和迪奥拉先生眯着眼睛往杯子里看,看到汤米平常喝,虽然有点不知所措,但还是咬了口。
「へぇ……僕、麹を使った甘酒を飲むのは初めてですが、こんな味だったんですね」
“哎……我第一次喝用曲子做的甜酒,原来是这种味道啊。”
「トミーは飲んだこと無かったのか?」
“汤米没有喝过吗?”
「はい。酒粕を使った物はありますけど」
“是的。有使用酒糟的东西”
なるほど。同じ甘酒でも味はかなり違うからなぁ。
原来如此。就算是同样的甜酒味道也大不相同啊。
アルコール分が含まれず、独特の風味がある麹甘酒に対し、酒粕を使った甘酒は砂糖で甘みを付けるため、どちらかといえばくせがない。
与不含酒精成分、具有独特风味的曲子甘酒相比,使用酒糟的甜酒是用砂糖调甜的,要说是哪一种的话是没有癖好的。
アルコール分は使う酒粕によって様々だが、物によっては酔うほどに強かったりもする。
根据酒糟的不同,酒精的含量也会不同,但有的酒糟会越醉越厉害。
ちなみに、俺の好みは酒粕の方。
顺便说一下,我喜欢酒糟。
麹甘酒はその風味が少し苦手である。
曲子甜酒的味道有点不好。
「ほう、これは甘いな」
“啊,这个好甜啊。”
「これって、砂糖とかは入っていないんですよね? 凄いですね、想像以上です」
“这个没有放糖吧?好厉害啊,超出了我的想象”
トミーに続いて口にした二人も、その甘さに目を丸くする。
继TOMY之后,两个人口中的甜度让人瞠目结舌。
麹甘酒の糖度がどのくらいあるのかは知らないが、俺たちが飲んでもかなり甘く感じるのだ。普段、甘味を食べる機会が少ないこの世界の人からすれば、余計だろう。
虽然不知道曲子甜酒有多少糖度,但是我们喝了也会觉得很甜。在平时吃甜食的机会很少的这个世界的人看来,这是多余的吧。
「ご覧の通り、ここまでは問題なく成功しています。後はこれをお酒にする部分ですが、これに関しては時間もかかりますし、多少、試行錯誤が必要かと思います」
“正如您所看到的那样,我们已经成功地做到了这一步。还有就是把这个作为酒的部分,关于这个要花很多时间,我觉得多少需要尝试错误”
「ふーむ。これぐらい甘けりゃ、そのままでも酒になりそうな気もするが、安定はしねぇか」
“嗯。这么甜的话,感觉就这样也会变成酒,但是不稳定吗?”
「はい。後は味ですね。一度成功すれば、それなりに安定して作れるようになると思いますが、私たち、冒険者としての仕事もありますから……」
“是的。还有就是味道。如果成功一次的话,我想一定能做出比较稳定的作品,但是我们也有作为冒险者的工作……”
「その時間が取れませんよね」
“我没法抽出那个时间。”
ハルカの説明に、ディオラさんも納得したように頷く。
对于Haruka的说明,迪奥拉也点头表示赞同。
「では、私は、お米を安定的に手に入れられないか、検討してみます。産地の調査や流通経路なども含めて。もしかすると、近隣で作っているかもしれませんし」
“那么,我来研究一下能否稳定地获得大米。包括产地的调查和流通途径等。说不定是在附近做的”
「ありがとうございます。私たちも、クレヴィリーで買ってきただけで、そのあたりについては、さっぱりですから」
“谢谢。我们也只是在克里维利买来的,关于那一点,完全没有”
あそこで売っているということは、どこかで作っているのは間違いないわけで。
在那里卖的话,肯定是在哪里做的。
商品の仕入れ先なんて、簡単に聞き出せるものではないが、冒険者ギルドの情報網や貴族との伝があるディオラさんなら、きっとどうにかしてくれるだろう。
商品的供应商之类的,虽然不是很容易就能听到的,但是有冒险者行会的情报网和贵族的传说的迪奥先生的话,一定会想办法的吧。
「なら儂は、必要な道具作りだな。木材で作る道具は任せろ」
「那我就做必要的道具吧。交给我木材做的工具”
「人手の方は僕……と言うか、師匠が。真面目にやるのを探しておく、と言ってました」
“人手是我……或者说,师傅。说是要找一个认真做的”
「じゃあ、その人たちに造り方の指導をするのが、あたしたちのお仕事ってことだね。すぐには成功しないと思うけど、長い目で見てね?」
“那么,指导这些人的制作方法就是我们的工作。虽然我觉得不会马上成功,但是请长远看吧?”
「わぁってる。見習い数人の賃金なら、数年程度は大したことねぇ。まぁ、酒の方は早く飲みてぇけどな」
“哇。学徒数人的工资的话,几年左右没什么大不了的。嘛,酒的话想早点喝”
「そこまではかからないと思いますが、失敗が続くようなら、なんとかします。その点は安心してください」
“我觉得不会花那么多时间,但如果继续失败的话,我会想办法解决的。这一点请放心”
ハルカたち曰く、『お酒にするだけなら難しくない』らしい。
Haruka他们说,“只是喝酒的话并不难”。
美味しい酒になるかどうかは別として、極論、パンを作るイースト菌と砂糖水でも酒はできる。
先不说是不是好喝的酒,极端地说,制作面包的酵母菌和糖水也能喝酒。
そんな酒でもアルコールであることは間違いないので、どうしても上手くいかないようなら、果物の皮などから適当な酵母を培養し、蒸留酒を造ることも考慮に入っているようだ。
那样的酒也肯定是酒精,如果无论如何都不好的话,就要从果皮等中培养适当的酵母,制造蒸馏酒。
そうやって造った蒸留酒に価格競争力があるかどうかが問題なのだが……そのあたりは今から考えても仕方がないことだろう。
这样制造的蒸馏酒是否有价格竞争力是个问题……这一点从现在开始考虑也是没有办法的吧。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
数日後、やって来たのは三人の若者だった。
几天后,来的是三个年轻人。
名前は、ジェイ、ピータ、キセ。
名字是杰伊、皮塔、奇迹。
全員、俺たちと同じか少し年下ぐらいの男だったが、技術指導をするナツキに対する態度はガチガチで、かなり緊張しているのが、はっきりと感じられる。
全体成员都是和我们差不多年纪小的男人,但是对技术指导的枣的态度却很严肃,让人清楚地感到非常紧张。
ナツキが可愛いから? とか、ちょっと思ったのだが、どうもそんな感じでも無い。
因为枣很可爱?之类的,稍微想了一下,但怎么也没有那种感觉。
あんまり緊張しすぎても上手くいかないだろうと、同じ男同士という事で、トーヤが話しかけて訊き出してみたところ、ここに来るにあたって、注意を受けた――いや、はっきりと言ってしまえば、脅迫に近いぐらいの、かなりぶっとい釘を刺されたらしい。
因为是同一个男人,所以即使过于紧张也不会顺利进行,托亚搭话问,来这里的时候受到了注意——不,说清楚的话,好像是被相当接近威胁的钉子刺伤了。
ガンツさん、シモンさん、そしてディオラさん。その三人にサボったり、手を抜いたり、秘密を漏らしたりしたらどうなるか、と。
冈茨,西蒙,还有迪奥拉。如果对这三个人偷懒、偷懒、泄露秘密的话会怎么样呢。
ガンツさんとシモンさんの迫力は言うまでも無く、ディオラさんもギルドの副支部長をやっているのは伊達じゃないからなぁ。
不用说GANTZ先生和西蒙先生的魄力,迪奥拉先生也担任吉尔德的副支部长不是伊达啊。
……普段はとても優しげなお姉さんなんだけど。
……平时是非常温柔的姐姐。
ナツキは『もう少し気軽にやってもらっても……』と声を掛けたのだが、三人揃って必死に首を振って『人生が掛かっていますから!』と口を揃えた。
夏树对夏树说“再轻松点也没关系……”,三个人一起拼命摇着头说“人生就要开始了!”异口同声。
事情を訊いてみれば、三人は所謂“余り物”。
问了一下情况,三个人就是所谓的“多余的东西”。
継げる家業や農地も無く、このままいけば冒険者になるしかない状態らしい。
没有继承家业和农田,这样下去只能成为冒险者。
つまり、これを成功させれば、安定した職業を手に入れることができ、結婚も可能。
也就是说,如果成功的话,可以找到稳定的职业,也可以结婚。
晴れて明るい人生が約束されるが、失敗すればその時点で終わり。
虽然约定了一个明朗的人生,但是失败的话就在那个时候结束了。
ギルド副支部長のディオラさんの覚えも悪く、普通に冒険者になるよりも悪い状態で、マイナススタート。
吉尔德副支部长迪奥拉的记忆也不好,比成为普通的冒险者还差,开始负数。
ほとんどデッド・オア・アライブって感じである。
基本上都是死的、奥亚的、对准的感觉。
うん、巻き込んでしまって、なんだか申し訳なくなるな。
嗯,卷进来了,总觉得很抱歉。
だが、成功する確率はかなり高いから、頑張ってくれとしか言いようがない。
但是,成功的概率相当高,只能说请加油。
そんな状態でのナツキの指導は三日ほどで終わり、無事に最初の仕込みも終了。
在这种状态下,枣的指导在三天左右结束,顺利地完成了最初的训练。
まだ酒は完成していないが、後は上手く酵母が付いてくれることを祈るだけである。
虽然酒还没有完成,但之后只是祈祷能很好地加入酵母。
そんなこんなで、俺たちはやっと本来の仕事、ダンジョン探索へと戻る事になる。
就这样,我们终于回到了原来的工作——迷宫探索。
Loading…
Cancel
Save