pcnick
4 years ago
1 changed files with 635 additions and 0 deletions
@ -0,0 +1,635 @@
|
||||
# 250 貴族の婚礼 (3) |
||||
|
||||
250贵族婚礼(3) |
||||
|
||||
アーリンさんに連れてこられたのは、大通り沿いにある立派な店構えの服屋だった。 |
||||
|
||||
阿林先生带我来的是一家沿大道的气派服装店。 |
||||
|
||||
看板に『庶民お断り!』との文字が見えそうな、そんな店。 |
||||
|
||||
招牌上写着“拒绝平民!”这样的店。 |
||||
|
||||
ナツキたちのお供をする関係で、ちょっと高そうなブティック程度なら、あまり気にせずに入れる俺ではあるが、この店は少々入るのに勇気が必要となる。 |
||||
|
||||
因为是夏树他们的随从关系,如果是稍微贵一点的时装店的话,我会毫不在意的进去,但是这家店需要一点勇气。 |
||||
|
||||
今回はアーリンさんがあまりに普通に入っていくので、それに付いてするりと入ってしまったわけだが。 |
||||
|
||||
这次因为阿林先生太普通了,所以就跟着进去了。 |
||||
|
||||
店の中は一見すると、どこか上流階級の応接間のような印象で、服屋とは思えない。 |
||||
|
||||
乍看之下,店里给人一种上流阶层的客厅的印象,不像是服装店。 |
||||
|
||||
服は一切並んでおらず、広めのテーブルとソファーがいくつか置かれているだけ。 |
||||
|
||||
衣服完全没有排列,只是放了几张宽敞的桌子和几张沙发。 |
||||
|
||||
大きな違いと言えば、カーテンで区切れるスペースが何カ所かある事だろうか。 |
||||
|
||||
要说最大的区别的话,应该有几个地方可以用窗帘隔开吧。 |
||||
|
||||
「こんな店、初めて入るな」 |
||||
|
||||
“第一次进这样的店。” |
||||
|
||||
「そうなのですか? 皆さん、メアリちゃんたちも含め、しっかりとした仕立ての服を着ておられますが……たまに変わったデザインの物も見かけますが、あれも高いですよね?」 |
||||
|
||||
“是吗?各位,包括小玛丽们在内,都穿着很结实的衣服……偶尔也会看到设计很奇怪的东西,那个也很贵吧?” |
||||
|
||||
「あれらの服は、私たちの自作なんです。趣味みたいな物ですね」 |
||||
|
||||
“那些衣服是我们自己做的。像是兴趣一样的东西呢” |
||||
|
||||
「……お仕事、間違っておられませんか? あ、いえ、皆さんぐらいなら、冒険者の方が稼げますよね」 |
||||
|
||||
“……您的工作有错吗?啊,不,大家这样的话,冒险者能赚钱吧” |
||||
|
||||
ハルカの言葉に、アーリンさんが一瞬呆れたような表情を浮かべたが、すぐに俺たちが納品したレッド・ストライク・オックスのミルクの値段などを思い出したのか、逆に納得したように頷く。 |
||||
|
||||
对于Haruka的话,阿玲一瞬间露出了惊讶的表情,不过,她似乎马上想起了我们交给她的红·好球·牛克斯的牛奶价格等,反而点了点头。 |
||||
|
||||
ただ確かに、駆け出しの冒険者よりも仕立屋になる方が安全で稼げるのだから、アーリンさんの言う事も間違ってはいない。 |
||||
|
||||
但是确实,比起刚开始的冒险者,成为裁缝更安全,所以阿玲说的也没错。 |
||||
|
||||
もっとも、それには“仕立屋を開く事ができれば”という前提はあるので、簡単な事ではないのだが。 |
||||
|
||||
不过,这是以“如果能开一家裁缝店就好了”为前提的,所以并不是简单的事情。 |
||||
|
||||
「いらっしゃいませ。今日はどのような……?」 |
||||
|
||||
“欢迎光临。今天怎么样……?” |
||||
|
||||
店の奥から出てきたのは、少し年配の女性店員。 |
||||
|
||||
从店里面出来的是稍微年长一点的女店员。 |
||||
|
||||
笑顔で近づきながら、アーリンさんと俺たち二人に視線を走らせ、一瞬だけ迷い、ターゲットをアーリンさんに定める。 |
||||
|
||||
一边笑着接近,一边用视线注视着阿玲和我们两人,只在一瞬间迷惑,把目标定在阿玲。 |
||||
|
||||
アーリンさんが言うように、俺たちの服もそれなりに良い仕立てではあるが、貴族が着る物とは違う。 |
||||
|
||||
正如阿伦所说,我们的衣服也是不错的做法,但是和贵族穿的不一样。 |
||||
|
||||
その点、アーリンさんは貴族の使用人と判るような格好をしているため、彼女に対して話しておけば、間違いは無いとの判断だろう。 |
||||
|
||||
在这一点上,阿玲打扮得很像贵族的佣人,所以如果和她说了的话,就不会有错了。 |
||||
|
||||
「こちらのお二人の服を一揃え、お願いします。ダイアス男爵の婚礼に出席できるように」 |
||||
|
||||
“请准备好这两位的衣服。为了能出席戴斯男爵的婚礼” |
||||
|
||||
「それですと、二日しかございません。追加料金が必要となりますがよろしいですか? それに、あまり複雑な物は……」 |
||||
|
||||
“这样的话,只有两天了。需要追加费用可以吗?而且,太复杂的东西……” |
||||
|
||||
「オーソドックスな物で構いません」 |
||||
|
||||
“正统的东西也没关系。” |
||||
|
||||
「かしこまりました。それではこちらへ」 |
||||
|
||||
“知道了。那么请这边走” |
||||
|
||||
俺たちが促されるままソファーに腰を下ろすと、俺の横に素早く年若い男性店員がやって来て、何枚かの絵を見せながら説明を始めた。 |
||||
|
||||
我们在催促下坐在沙发上,年轻的男店员迅速地来到我的旁边,一边给我看几张画一边开始说明。 |
||||
|
||||
「今の主流はこのタイプの礼服です。ズボン、コートの色はお好みで構いませんが、あまり派手な物は好まれません。多くの方は、飾り布で個性を出されますね」 |
||||
|
||||
“现在的主流是这种类型的礼服。裤子、外套的颜色可以根据自己的喜好来选择,但是不喜欢太花哨的。很多人会用装饰布表现出个性” |
||||
|
||||
ズボンにシャツ、ベストと上着。 |
||||
|
||||
裤子、衬衫、背心和上衣。 |
||||
|
||||
俺の知識の中で近いのは、フロックコートだろうか。 |
||||
|
||||
在我的知识中,离我很近的应该是软盘吧。 |
||||
|
||||
タイの代わりに、細長い飾り布をマフラーのように垂らし、胸の前で結ぶようだが、全体としては、仮に現代で着ていても、あまりおかしくない印象。 |
||||
|
||||
代替泰国,把细长的装饰布像围巾一样垂下来,系在胸前。 |
||||
|
||||
ただし、ベストやコートの裏地には柄物の布を使ったり、細かい刺繍を施したりするのが、今の流行りらしい。 |
||||
|
||||
但是,在背心和外套的衬里使用花纹布,实施细小的刺绣,好像现在很流行。 |
||||
|
||||
これは一種の豊かさのアピールで、一時期はコートの表地やズボンにまでそれが広まったらしいが、あまりにうるさすぎると、その流行りは短期間で終息してしまったとか。 |
||||
|
||||
这是一种丰富的魅力,一段时间甚至扩展到了外套的表面和裤子上,但是太过吵的话,这种流行在短时间内就结束了。 |
||||
|
||||
全く俺も同感である。 |
||||
|
||||
我也有同感。 |
||||
|
||||
華やかなのは女性だけで十分である。 |
||||
|
||||
华丽的只有女性就足够了。 |
||||
|
||||
しかし良かった、この世界の貴族の正装が、カボチャパンツにタイツ、びろびろの首巻き、みたいな物じゃなくて。 |
||||
|
||||
但是太好了,这个世界的贵族的正装,不是南瓜短裤,紧身裤,美色的围巾之类的东西。 |
||||
|
||||
郷に入っては郷に従えとは言うが、周りから見て普通でも、俺自身が恥ずかしい。 |
||||
|
||||
虽说入乡随俗,但在周围人看来即使很普通,我自己也觉得很羞耻。 |
||||
|
||||
そして、トーヤたちには絶対に爆笑される。 |
||||
|
||||
然后,他们绝对会被爆笑。 |
||||
|
||||
「最近流行りのベストはこのようなタイプで――」 |
||||
|
||||
“最近流行的背心是这样的类型——” |
||||
|
||||
男性店員の説明は続いていたが、俺はふむふむと聞き流し、最終的には『店員さんが俺に似合うと思う物でお願いします』と完全にお任せにしてしまった。 |
||||
|
||||
虽然男性店员的说明还在继续,但我还是忍不住听完了,最后完全交给了他“请给我一个店员觉得适合我的东西”。 |
||||
|
||||
ただ『飾り布だけはお好みの物を……』と言われたので、いくつか提示された布の中で、青っぽい物を選んでおいた。 |
||||
|
||||
只是因为有人说“只有装饰布是喜欢的东西……”,所以在几块提示的布中,选择了蓝色的东西。 |
||||
|
||||
正直、礼服なんて普段着る物ではないし、見るのは俺ではなく周りの人。 |
||||
|
||||
说实话,礼服不是平时穿的,看的不是我,而是周围的人。 |
||||
|
||||
俺の好みなんて二の次で良い。 |
||||
|
||||
我的喜好可以是次要的。 |
||||
|
||||
プロが俺に似合うと思ってコーディネートした物なら、大半の人はおかしいとは思わないだろうし、変だと言われたところで、自分で選んでいないので、俺の気持ち的には楽である。 |
||||
|
||||
如果专业人士觉得适合我而搭配的话,大部分的人不会觉得奇怪,即使被说奇怪,自己也没有选择,所以我的心情很轻松。 |
||||
|
||||
俺、チキンなので。 |
||||
|
||||
因为我是鸡肉。 |
||||
|
||||
服を決めて(丸投げして)しまえば、後は俺の身体のサイズをちゃっちゃと測って、終了。 |
||||
|
||||
决定好衣服(扔圆)的话,之后就把我的身体尺寸测量一下,结束了。 |
||||
|
||||
早速作業に取りかかるらしく、男性店員は奥へと引っ込んでしまった。 |
||||
|
||||
好像很快就开始工作了,男店员缩进了里面。 |
||||
|
||||
俺は他の女性店員が出してくれたお茶を飲みつつ、未だ話し合いが続いているハルカの方を見る。 |
||||
|
||||
我一边喝着其他女店员给我端来的茶,一边看着还在交谈的Haruka。 |
||||
|
||||
ハルカも俺同様、こちらの礼服事情など詳しくは無いはずだが、俺みたいな丸投げはしないようで、アーリンさんも交えて店員さんと議論を重ねているようだ。 |
||||
|
||||
Haruka和我一样,对这边的礼服情况应该也不太清楚,但是像我这样的人好像不投圆球,阿玲也和店员讨论了很多。 |
||||
|
||||
「お客様のボディラインであれば、こちらの方が綺麗に見えるかと」 |
||||
|
||||
“如果是客人的身体线条的话,我觉得这边看起来更漂亮。” |
||||
|
||||
「ハルカさんの髪色であれば、こちらの布の方が映えませんか?」 |
||||
|
||||
“如果是Haruka的发色的话,这边的布不好看吗?” |
||||
|
||||
「首元のラインはこちらの方が好みですね。袖はこれが――」 |
||||
|
||||
“脖子的线条我更喜欢这个。袖子是这个——” |
||||
|
||||
「お客様は身長がありますから、あまりスカートが広がらないタイプが良いかもしれません」 |
||||
|
||||
“因为客人有身高,所以裙子不怎么宽的类型可能比较好。” |
||||
|
||||
俺が見た絵は数枚だったが、ハルカの方は数十枚もの絵がテーブルの上に広げられ、他にも実際に使用する布なのだろう、光沢のある絹のような布も並んでいる。 |
||||
|
||||
我看到的画有好几张,而Haruka则有几十张画在桌子上展开,还有其他实际使用的布吧,像有光泽的丝绸一样的布也排列着。 |
||||
|
||||
…………うん。空気になろう。 |
||||
|
||||
……嗯。变成空气吧。 |
||||
|
||||
下手に存在感を出して、『ナオはどう思う?』とか訊かれたら、面倒くさい事、この上ない。 |
||||
|
||||
笨拙地表现出存在感,“娜奥怎么想?”被这样问的话,最麻烦的事莫过于了。 |
||||
|
||||
そういう風に訊かれた時、必要なのは“良い物を選ぶ”能力ではない。 |
||||
|
||||
被那样问的时候,需要的不是“选择好的东西”的能力。 |
||||
|
||||
“相手が気に入っている物を選ぶ”能力なのだ。 |
||||
|
||||
是“选择对方喜欢的东西”的能力。 |
||||
|
||||
選択に失敗した程度で不機嫌になるほど、ハルカと俺の付き合いは浅くないが、失敗した分だけ悩む時間が加算される事は確実。 |
||||
|
||||
选择失败的程度也会变得不高兴,虽然我和Haruka的交往并不浅,但肯定会增加烦恼失败的时间。 |
||||
|
||||
逆に的確に選択ができれば、時間が短縮されるのだが……結構難しいんだよなぁ。 |
||||
|
||||
相反,如果能准确地选择的话,时间就会缩短……相当难啊。 |
||||
|
||||
ハルカのセンスが致命的に悪い、とかなら話は別だが、ハルカを含め女性陣のセンスは普通に良い。 |
||||
|
||||
如果说Haruka的品味是致命的不好的话那就另当别论了,包括Haruka在内的女性阵容的品味一般都很好。 |
||||
|
||||
意見を聞かれたところで、もう完全に僅かな好みのレベルでしかない。 |
||||
|
||||
即使被问到意见,也只不过是完全喜欢的程度而已。 |
||||
|
||||
なので、安全なのは、選択を求められない状況にする事。 |
||||
|
||||
因此,安全的是不要选择的情况。 |
||||
|
||||
相手の気分次第なので、失敗も多いんだけどな。 |
||||
|
||||
因为要看对方的心情,所以失败也很多。 |
||||
|
||||
結局、ハルカたちの議論が終わったのは、俺が五杯目のお茶を飲み終わり、二杯目のお茶と共に出てきた菓子を堪能し、そろそろトイレでも借りようか、と思い始めた頃だった。 |
||||
|
||||
结果,Haruka他们的讨论结束了,我喝完了第五杯茶,享受着和第二杯茶一起出来的点心,开始想着差不多该去厕所借一下了吧。 |
||||
|
||||
最後、俺の意見も聞かれたのだが、今回は楽だった。 |
||||
|
||||
最后,也听取了我的意见,这次很轻松。 |
||||
|
||||
ハルカ、アーリンさん、店員さんの三人で話し合っていたので、こちらの世界的にイマイチという物は既に却下されていたし、ハルカの意見もきっちり俺の耳に届いていた。 |
||||
|
||||
因为Haruka、阿林、店员三个人在一起讨论,所以这个世界上不太好的东西已经被驳回了,Haruka的意见也完全传到了我的耳朵里。 |
||||
|
||||
なので、それに沿って選べば問題は無い。 |
||||
|
||||
所以,沿着那个选择就没问题。 |
||||
|
||||
ハルカが自分一人、無言で悩んだ上で、いきなり『どっちが良い?』とか訊かれるのが一番困るのだ。 |
||||
|
||||
遥一个人默默地烦恼着,然后突然问“哪个好?”被这样问是最为难的。 |
||||
|
||||
そんなわけで、ハルカの着るドレスのデザインは決定。 |
||||
|
||||
因此,Haruka穿的礼服的设计决定了。 |
||||
|
||||
俺と同じようにハルカも――明らかに俺よりも長い時間は掛かったが――身体のサイズを計測し、服のできあがる二日後を待つ事になる。 |
||||
|
||||
和我一样,遥也——明明花了比我长的时间——测量了身体的尺寸,等待衣服完成的两天后。 |
||||
|
||||
◇ ◇ ◇ |
||||
|
||||
◇ ◇ ◇ |
||||
|
||||
「あと、申し訳ないのですが、お二人には軽く作法の方を勉強して頂ければ……」 |
||||
|
||||
“还有,不好意思,如果能请你们两位稍微学习一下礼法的话……” |
||||
|
||||
服屋……いや、正確には仕立屋から宿に戻ってきた俺たちにアーリンさんから告げられたのはそんな言葉だった。 |
||||
|
||||
服装店……不对,正确地说是从裁缝回到旅馆的我们,被阿玲告知的是这样的话。 |
||||
|
||||
「やはり、単に立っているだけでは済みませんか」 |
||||
|
||||
“果然,只是站着不就行了吗?” |
||||
|
||||
「もし、旦那様であれば的確にフォローして頂けるでしょうから、それで問題は無いのですが、イリアス様ですので……。むしろ、お二人にイリアス様をフォローして頂きたいぐらいでして」 |
||||
|
||||
“如果是丈夫的话,肯定会有准确的关注,这样就没问题了,因为是伊利亚斯先生……。倒不如说,希望你们两位能关注伊利亚斯大人” |
||||
|
||||
正直、不服申し立てをしたいところではあるが、一〇歳に満たない子供が頑張っているのだと思うと、口には出しにくい。 |
||||
|
||||
老实说,虽然很想申诉,但是一想到不满十岁的孩子在努力,就很难开口。 |
||||
|
||||
「それは、付け焼き刃で何とかなる物なのですか?」 |
||||
|
||||
“那是临阵磨枪能想办法解决的东西吗?” |
||||
|
||||
ハルカの問いに、アーリンさんは静かに頷く。 |
||||
|
||||
对于Haruka的提问,阿林静静地点头。 |
||||
|
||||
「付け焼き刃でも鈍なまくらよりはマシです。一日保てば良いのですから」 |
||||
|
||||
“即使是临阵磨枪也比钝钝钝钝钝的要好。只要保持一天就好了” |
||||
|
||||
なるほど。至言である。 |
||||
|
||||
原来如此。至理名言。 |
||||
|
||||
一日――いや、実際には半日ほども乗り切ればそれで終わり。 |
||||
|
||||
一天——不,实际上只要过了半天就结束了。 |
||||
|
||||
想定される状況も非常に限られた物であり、その範囲だけ学べば何とかなるのだ。 |
||||
|
||||
设想的情况也是非常有限的,只学习那个范围的话总会有办法的。 |
||||
|
||||
それに、僅かではあるが、出発前に受けた授業も多少は頭に残っている。 |
||||
|
||||
而且,虽然只有一点点,出发前上的课也多少留在了我的脑海里。 |
||||
|
||||
「イリアス様も、そういう訳ですので、頑張りましょう」 |
||||
|
||||
“伊利亚斯大人也是这样,加油吧。” |
||||
|
||||
仕立屋から戻った後は、一度部屋に戻った俺たちだったが、トーヤたちに速やかに送り出され、今はイリアス様の部屋。 |
||||
|
||||
从裁缝店回来后,我们回到了房间一次,但是被TOYA他们迅速送出,现在是伊利亚特先生的房间。 |
||||
|
||||
初めて入ったのだが、派手さは無くとも、高級感が漂う部屋である。 |
||||
|
||||
虽然是第一次进去,但即使没有华丽感,房间也充满了高级感。 |
||||
|
||||
「はい。ハルカさん、ナオさん、この度は、お手数をおかけしてすみません」 |
||||
|
||||
“是的。Haruka先生,nao先生,这次给您添麻烦了,对不起” |
||||
|
||||
「いえ、お仕事として請けましたから、問題ないですよ」 |
||||
|
||||
“不,我是作为工作承包的,没问题。” |
||||
|
||||
「少し不安ではありますが、微力を尽くします」 |
||||
|
||||
“虽然有点不安,但我会尽力的。” |
||||
|
||||
「ありがとうございます」 |
||||
|
||||
“谢谢” |
||||
|
||||
問題ないと微笑むハルカに倣い、俺もまた笑顔で軽く頷いておく。 |
||||
|
||||
模仿着微笑着没有问题的Haruka,我也微笑着轻轻点头。 |
||||
|
||||
正直、不安の方が大きいのだが、それをイリアス様に言うわけにもいかない。 |
||||
|
||||
说实话,虽然不安的地方更大,但也不能对伊利亚斯那样说。 |
||||
|
||||
「まともな貴族が、お二人にいきなり話しかける事はまずありませんので、イリアス様が上手く対応できれば問題ありません」 |
||||
|
||||
“因为正经的贵族不会突然跟两位搭话,所以如果伊利亚斯大人能够很好地应对的话就没问题了。” |
||||
|
||||
「私にできるでしょうか……」 |
||||
|
||||
“我能做到吗……” |
||||
|
||||
「できるようにするのです。大丈夫です。まだ二日あります」 |
||||
|
||||
“我会做到的。没关系。还有两天” |
||||
|
||||
不安そうな表情を浮かべたイリアス様を励ますように、アーリンさんは笑顔で力強く応え、イリアス様の傍にかがみ込み、その耳元でごにょごにょと何か話しかけている。 |
||||
|
||||
为了鼓励浮现出不安表情的伊利亚斯大人,阿玲带着笑容强有力地回应,蹲在伊利亚斯大人的旁边,在她的耳边喃喃地说着什么。 |
||||
|
||||
それに従い、不安そうだったイリアス様の表情が引き締まり、何やら気合いの入った表情へと変わっていく。 |
||||
|
||||
随着那个,看起来不安的伊利亚斯先生的表情变得紧张,变成了什么充满气势的表情。 |
||||
|
||||
それを満足げに確認したアーリンさんは再び立ち上がり、俺たちの方へと向き直る。 |
||||
|
||||
满意地确认了这一点的阿玲再次站了起来,向我们走来。 |
||||
|
||||
「さて、お二人に話しかける貴族の目的は二つです。まず一つは、優秀な冒険者として、自領へ引き抜きたいという場合」 |
||||
|
||||
“那么,和两位搭话的贵族的目的是两个。首先一个是,作为优秀的冒险者,想把他引到自己的领地” |
||||
|
||||
「俺たち、引き抜きたいと言われるほどでは……」 |
||||
|
||||
“我们还没到被人说想拔出来的程度……” |
||||
|
||||
「大丈夫です。そう思われるように噂を流します。というか、流しています。ケトラが」 |
||||
|
||||
“没关系。为了让别人这么想而散布谣言。或者说,在流。凯特拉” |
||||
|
||||
ケトラさん、いないと思ったら、そんな仕事してたのか! |
||||
|
||||
凯特拉先生,我以为他不在,原来是做这种工作的! |
||||
|
||||
「それは、むしろ大丈夫ではない、というのでは?」 |
||||
|
||||
“那倒不如说不要紧吧?” |
||||
|
||||
「過大評価だよな……」 |
||||
|
||||
“评价太高了吧……” |
||||
|
||||
「はい。過大評価して頂きたいのです。当家のためには」 |
||||
|
||||
“是的。请过高评价。为了我们家” |
||||
|
||||
確かに、そんな話ではあったが……う~む。 |
||||
|
||||
确实,是那样的话……嗯~。 |
||||
|
||||
イリアス様が、上手くあしらってくれれば良いのだが。 |
||||
|
||||
伊利亚斯大人要是能巧妙地对待就好了。 |
||||
|
||||
視線を向ければ、任せてくださいと言わんばかりの笑顔で、深く頷いている。 |
||||
|
||||
视线相对的话,笑着像是说请交给我吧,深深地点头。 |
||||
|
||||
「こちらはあまり問題は無いでしょう。自領の冒険者の引き抜きを止めるのは、自然な事です。イリアス様の傍から離れなければ、割って入れます」 |
||||
|
||||
“我们这边没什么问题吧。阻止自己的冒险者拔出是很自然的事情。如果不离开伊利亚斯先生身边的话,就打碎放入” |
||||
|
||||
「お任せください。メアリたちがいなくなるのは、当家の損失です」 |
||||
|
||||
“交给我吧。玛丽们不在是我们家的损失” |
||||
|
||||
胸を張って言うイリアス様だが、そこは俺とハルカの名前を出して欲しかった。 |
||||
|
||||
虽然是挺起胸膛说的伊利亚斯大人,但我希望他能说出我和Haruka的名字。 |
||||
|
||||
まぁ、メアリたちと順調に仲良くなっている事は間違いないようだ。 |
||||
|
||||
嘛,确实和玛丽他们关系很好。 |
||||
|
||||
「もう一つ、こちらが少々面倒なのですが、一人の男性、女性として話しかけられる場合ですね」 |
||||
|
||||
“还有一点,我这边有点麻烦,是作为一个男性、女性被搭话的时候。” |
||||
|
||||
「……えっと?」 |
||||
|
||||
“……呃?” |
||||
|
||||
「簡単に言えば、結婚相手としてです」 |
||||
|
||||
“简单来说,就是作为结婚对象。” |
||||
|
||||
「はい? 冒険者として噂を流すんですよね?」 |
||||
|
||||
“是吗?作为冒险者流传谣言吧?” |
||||
|
||||
婚礼の儀式に出席するのは貴族。 |
||||
|
||||
出席婚礼的是贵族。 |
||||
|
||||
冒険者は結婚相手にならないだろう。 |
||||
|
||||
冒险者不会成为结婚对象吧。 |
||||
|
||||
俺たちのような従者もいるだろうが、それらの人が主人を放置して声を掛けてくるはずもない。 |
||||
|
||||
虽然也有像我们这样的随从者,但是那些人不会把主人放在一边打招呼的。 |
||||
|
||||
「いえいえ。それが高ランクの冒険者なら、そうでもありません。当家の北から西にかけてのエリアもそうですが、この国の周辺にはまだまだ人の住んでいない土地がありますからね。冒険者から貴族になる事もあるんです」 |
||||
|
||||
“不不不不。如果那是高等级的冒险者的话,也不是那样。我家从北到西的区域也是这样,但是这个国家的周边还有很多没人住的地方。也有从冒险者变成贵族的时候” |
||||
|
||||
領地を広げるため、腕の良い冒険者を貴族に叙して、空白地帯を任せる。 |
||||
|
||||
为了扩大领地,他把技术高超的冒险者讲述给贵族,把空白地带交给他。 |
||||
|
||||
高ランクであれば金も持っているし、魔物などの討伐もできる。 |
||||
|
||||
如果是高等级的话既有钱,也能讨伐魔物等。 |
||||
|
||||
国からすれば低コストで領地を広げる事ができ、とてもありがたい。 |
||||
|
||||
在国家看来可以以低成本扩大领地,非常感谢。 |
||||
|
||||
失敗すれば、それを理由に爵位を取り上げれば元通り。大した損失も無い。 |
||||
|
||||
如果失败的话,以爵位为理由取得爵位的话就如原来那样。没有什么大损失。 |
||||
|
||||
そういう事らしい。 |
||||
|
||||
好像是那样的事。 |
||||
|
||||
「それに、貴族になれなくても、優秀な冒険者を一族に入れておく事は価値がありますし、ハルカさんやナオさんの場合、エルフで外見も良いですからね。とても狙い目です」 |
||||
|
||||
“而且,即使不能成为贵族,把优秀的冒险者放在一个家族里也是有价值的,Haruka和Nao的话,外表也很精灵。非常有目的” |
||||
|
||||
アーリンさんのぶっちゃけた話に、ハルカが顔をしかめる。 |
||||
|
||||
对于阿林的直截了当的话,Haruka皱起了眉头。 |
||||
|
||||
これまではエルフであっても、それが原因でトラブルに巻き込まれる、なんて事は無かったが、今回のこれらはエルフだから、だよなぁ。 |
||||
|
||||
到现在为止,即使是精灵,也不会因为这个原因被卷入麻烦中,但是这次的这些都是精灵,所以啊。 |
||||
|
||||
見方によっては悪くないのかもしれないが、打算的に貴族のお嬢さんたちにモテたとしても、正直、嬉しくはない。 |
||||
|
||||
根据看法也许也不错,但就算算计受贵族的小姐们欢迎,说实话,我也不开心。 |
||||
|
||||
この前、アドヴァストリス様から貰った【ラッキー!】の恩恵、仕事してる? |
||||
|
||||
上次,从爱德瓦斯特里斯那收到的【幸运!】你在工作吗? |
||||
|
||||
全然、効果を実感した事が無いんだけど!! |
||||
|
||||
完全没有实感过效果,但是!! |
||||
|
||||
ま、それは前々回貰った経験値アップも同じなんだが。 |
||||
|
||||
嘛,上次拿到的经验值也一样。 |
||||
|
||||
アリとナシで比較できないし。 |
||||
|
||||
蚂蚁和梨不能比较。 |
||||
|
||||
「今回の婚礼、金持ちとは言っても所詮は男爵、来ている人の爵位も高くありません。冒険者相手としては、ちょうど良い感じですね」 |
||||
|
||||
“这次的婚礼,虽说是有钱人,但毕竟是男爵,来的人的爵位也不高。作为冒险者的对手,感觉正好” |
||||
|
||||
「ちょうど良いと言われてもね……。少し困るのですが、何とかなりませんか?」 |
||||
|
||||
“就算说正好呢……。我有点为难,能不能想想办法?” |
||||
|
||||
「そうですね……相手がいるなら、さすがに周りの目がある状況で声を掛けたりはしませんが……ハルカさんとナオさん、どうなんですか? 実は結婚していたり?」 |
||||
|
||||
“是啊……如果有对象的话,就不会在周围有目光的情况下打招呼了……Haruka和nao,怎么样?实际上你结婚了吗?” |
||||
|
||||
「「い、いや、結婚はまだ……」」 |
||||
|
||||
“不,不,还没结婚……” |
||||
|
||||
思わず声がハモり、俺とハルカは顔を見合わせてしまう。 |
||||
|
||||
不由得声音沙哑,我和春佳面面相觑。 |
||||
|
||||
微妙に頬と耳が赤くなっているハルカ。 |
||||
|
||||
微妙的脸颊和耳朵都红了的Haruka。 |
||||
|
||||
そんな彼女の様子に、妙に気恥ずかしくなり、目を逸らしてしまう。 |
||||
|
||||
她那样的样子,让人莫名地害羞,移开了视线。 |
||||
|
||||
「まぁ、まぁ、まぁ! やっぱりそうなんですね! 素敵です!」 |
||||
|
||||
“嘛,算了,算了!果然是这样啊!太棒了!” |
||||
|
||||
イリアス様が両手をパンと合わせ、笑顔で瞳を輝かせる。 |
||||
|
||||
伊利亚斯双手合拢面包,用笑容让眼睛闪闪发光。 |
||||
|
||||
「お二人は、とてもお似合いだと思いますよ?」 |
||||
|
||||
“我觉得你们俩很般配哦?” |
||||
|
||||
追い打ちを掛けるように、アーリンさんまで言うが……俺たち、結婚以前に、まともに告白すらしてないんだが……。 |
||||
|
||||
像是在追上她一样,连阿玲都这么说……我们结婚之前,都没有好好告白过……。 |
||||
|
||||
チラリとハルカを見れば、バッチリと目が合う。 |
||||
|
||||
一瞥Haruka,两人的视线就完全吻合了。 |
||||
|
||||
そして更に赤くなる、ハルカの顔。 |
||||
|
||||
然后变得更红的是Haruka的脸。 |
||||
|
||||
「なるほど、了解しました」 |
||||
|
||||
“原来如此,我明白了。” |
||||
|
||||
「どういうことですの、アーリン?」 |
||||
|
||||
“这是怎么回事?阿林?” |
||||
|
||||
「互いの好意が解っていても、なかなか一歩踏み出せない、そんな初々しいお二人なんですよ、イリアス様」 |
||||
|
||||
“即使知道对方的好意,却怎么也迈不出一步来,就是这样天真无邪的两个人啊,伊利亚斯大人。” |
||||
|
||||
「まぁ。これは、背中を押して差し上げるべきでしょうか?」 |
||||
|
||||
“嘛。这个应该给你推背吗?” |
||||
|
||||
アーリンさん、そんな事、本人の前で解説しないでくれ! |
||||
|
||||
阿伦,这种事不要在本人面前说明! |
||||
|
||||
そして、イリアス様、色々台無しだ! |
||||
|
||||
然后,伊利亚斯大人,各种各样的都毁了! |
||||
|
||||
「そんな微妙な関係のお二人には、揃いの飾り布をお勧めします。ナオさんは首に巻く物を選ばれたと思いますが、それと同じ物をハルカさんの腰に巻くのです」 |
||||
|
||||
“对于有着这样微妙关系的两位,我推荐大家用同样的装饰布。我觉得娜奥先生选择了卷在脖子上的东西,但是和那个一样的东西卷在了Haruka先生的腰上” |
||||
|
||||
「……それの意味は、やっぱり?」 |
||||
|
||||
“……那个的意思,果然是?” |
||||
|
||||
「恋人同士、婚約相手、そんな感じですね。そんな相手が隣にいる時に声を掛けるのは、非常に無作法です。まともな貴族ならやりません」 |
||||
|
||||
“恋人之间,订婚对象,就是这种感觉吧。那样的对方在旁边的时候打招呼是非常没礼貌的。如果是正经的贵族的话是不会做的” |
||||
|
||||
「……どうする? ナオ」 |
||||
|
||||
“……怎么办?那奥” |
||||
|
||||
「拒否する理由は無い、か」 |
||||
|
||||
“没有拒绝的理由吗?” |
||||
|
||||
「だよね」 |
||||
|
||||
“是吧。” |
||||
|
||||
アーリンさんとイリアス様のニヨニヨとした笑みを視界の隅に捉えながら、俺たちは頷き合い、その提案を受け入れる事にする。 |
||||
|
||||
我们一边捕捉着阿琳和伊利亚斯的含笑,一边点头接受那个提案。 |
||||
|
||||
そして、翌日からの二日間、付け焼き刃の貴族教育を受ける事になるのだった。 |
||||
|
||||
然后,第二天开始的两天里,接受了临阵磨枪的贵族教育。 |
Loading…
Reference in new issue